11月7日(土)「ラヴ・ストリ−ムス」

「ラヴ・ストリ−ムス」('84・米)監督・脚本:ジョン・カサヴェテス 原作・脚本:テッド・アレン 撮影:アル・ル−バン 音楽:ボ−・ハ−ウッド 出演:ジ−ナ・ロ−ランズ/ジョン・カサヴェテス/ダイアン・アボット/リサ・マ−サ・ブルイット/シ−モア・カッセル
★'81年に上演された同名劇の映画化で、舞台版ではカサヴェテスの演じたロバート役はジョン・ヴォイトだった。脚本は戯曲の作者T・アレンとカサヴェテスの共作で、第一稿は「特攻大作戦」の撮影終了後書き上げられていたというから、20年越しの企画である。関心を持っているのは愛であり、それを失うこと、と言いきるカサヴェテス作品の主題が最も露骨に出た、見応えは充分だがかなりヘビーな作品。
ロバートは離婚歴のある、現代人の孤独や愛を描く人気作家。次回作を書くためハリウッド郊外の家に秘書や若い女友達らと奇妙な共同生活を送っていた。姉のサラ(ローランズ)は15年連れ添った夫ジャックと離婚に踏み切り、一人娘の養育権をめぐって協議を重ねていたが、娘は母との同居を拒み、彼女は発作を起こしてしまう。精神科医に勧められ出かけたヨーロッパでも憂さは晴れず、姉は久々に弟を訪ねる。その頃ロバートは、先妻との子アルビーを預かるが、実の息子にどう接するべきか皆目分からないでいた。留守を姉に頼んで、息子とラスベガスに向かったロバートだが、彼を置いて街に繰り出してしまい、翌朝になってホテルに帰ると、息子は母に会いたいと泣き叫んだ。早速、先妻の所へ出向いた二人だが、彼女の現在の夫にロバートは手ひどく殴られ、落胆し家に帰る。一方、サラは初めて自ら異性を求め出かけたボーリング場でケンという若者と出会い、明るさを取り戻すが、娘からの電話でまたも傷つく。彼女は電話口に夫を呼び出し尋ねた。愛は流れ続けるものか、と。そこへ割り込んだロバートは義兄をなじる。翌朝、目覚めた彼の見たものは大量の猛獣や珍獣。潰れた動物園から姉が買い取った動物たちだ。明らかに姉の様子はおかしい。が、その夜、大雨の中、ケンと共に家を出ていく彼女を彼は引き止めることが出来ないのだった…。ベルリン映画祭グランプリ受賞。<allcinema>

◎主人公ロバ−トが酒場で唄っていた歌手を口説き落とそうとして、立ち去ろうとする彼女の車の運転席に強引に割り込み、蹴られても叩かれてもハンドルを離そうとせず、遂に根負けした歌手を乗せて酔っ払い運転で家まで送り届け、送ろうとして階段から蹴落とされ、額から血を流しながらもなおもめげずに這い上がろうとする姿を見て、歌手はとうとう笑ってしまって家に入ることを許すシ−クエンスがある。ここを見ていてこのくどいほどの強引さと粘りこそが監督ジョン・カサヴェテスの真骨頂でありまたスタイルでもあるなと思ったのだった。そのスタイルを貫いてカサヴェテスは数々の愛の物語を創ってきた。この粘液質のスタイルは他に類を見ないほどのモノであり、カサヴェテスを一種奇態な非作家としたようだ。同伴者でアリ共犯者でもあるジ−ナ・ロ−ランズとジョン・カサヴェテスがこの作品に定着しようとしたのは、人間存在の絶対の孤独と愛という得体の知れぬモノだった。ラスト近くで見せたロ−ランズのゾッとするような喪失感に拉がれたマスクがトラウマとして残ってしまいそうな予感がある。呑気呆亭