内因論と外因論

正月があけ,世の中の営みが日常に戻った途端に,激しく動いている.日本を始め世界中の株価もまた大きく動いている.日本政府は,中国経済が原因だとか原油値下がりが原因だとか,株価下落の原因を外に求める.その論調は,新聞などの報道も変わらない.そして「日本経済の基盤はしっかりしている」と,何の根拠もなく垂れ流す.このような論調は西欧諸国も変わらない.
何かの問題に直面したとき,原因を外部に求める態度を外因論という.それに対して内部に求め,そこから考えてゆこうとする態度を内因論という.私は『勉強のすすめ』のなかの「生きる力と勉強の力」で,内因論と外因論について書いたことがある.

ものごとはすべて内(うち)からの力によって動き,生成し,発展し,成長する.結局は内からの力による以外に何事も解決しない.どれだけ内部の要因が熟し,内部の力が育っているかである.このようなものの見方・考え方の基本を「内因論」という.つまり内因論とは,すべてのものは置かれた状況に対応して,それ自身の内部の要因によって展開しそれ以外ではあり得ない,という立場である.
そして,そうであるなら,われわれもまた自身の内の力を第一にして,何ごとにも取り組もう.この基本的な態度が内因論である.これは単純なことであり,誰もが否定しがたい.しかし現実には,すぐに人に頼ったり,外部に依存した生き方(行き方)をする人が多い.内因論を,ものの見方や考え方,人間の生き方,そして組織のあり方にまで一貫させるには,意識的な努力が必要だ.

受験勉強を通して,内因論の態度を身につけてほしい.そしてそこにも書いたが「目の前に二つの道がありいずれに進むか迷ったなら,困難に見える道を選べ.実はそれがいちばん確かな道なのだ.それが目的地に続く道なのだ.自分にとってより困難に見える道を選び,そして努力の末に解決した.このような経験はこれからの力になる.高校時代の勉強,受験期の勉強をとおして,このような勉強の姿勢,人生の態度が身につけば,それは何よりあなたの財産になる.」と考えてきた.
外因論とはこれとは逆の人生態度である.いつも外部のせいにして,己を改めない.アベノミクスとは,外因論で一貫した無責任の投機経済であり,とうとう昨年からは年金資金までつぎ込み,膨大な損失を生み,そして内を見ることができずに,あいかわらず外に原因を求めている.しかし,その投機資金さえ底をついてきたのがアメリカ経済であり,日本経済である.
では今日の経済を内因論の立場で見ればとうなるのか.それが資本主義の終焉,である.これれについては, 「資本主義の終焉」, 「株式市場の終焉」にも書いてきた.現代は,資本が人間を資源として使う段階から人間が経済を方法とする段階への,一大転換期である.資本主義は拡大し続けなければ存在しえない.しかし地球は有限であり,もはや拡大の余地は残されていない.資本主義の終焉,その序章としての株式市場の時代の終わり,それが現在起こっていることの意義である.
拡大しうる例外的分野,それが軍需産業である.唯一拡大しうる分野は兵器産業である.よって,強欲資本主義は戦争で儲けるしかなく,紛争をあおりファシズムに走る.現代世界の紛争はこのファシズムが作りだしたものである.帝国アメリカは現代のローマ帝国,資本主義の終焉期にのたうつローマ帝国である.こうして崩壊する帝国は世界に惨禍をもたらす.
今日人類が直面する最も困難な問題,それはアメリカ問題である.自らの内部の問題としてのアメリカ問題.これをを克服し,新たな,ものの循環する尊厳ある人の世を生みだす.歴史はそれを求めている.この客観的な歴史の段階を引きうけること,そして経済を方法として使う新しい人間を模索すること.これが今日の内因論に立つ人生である.その立場から見れば,さまざまに新しい動きが出てきている.このとき,私の願いは,われわれ内部の民主主義である.民主主義は,闘うものの内部にこそうち立てねばならない.互いに排除することなく対話を! 互いの思想信条にもとづく批判の自由を認めあい,そしてファシズムに対しては統一して行動する.これがまた,内因論の立場からの運動論である.