ある夏の日曜日

 今夕は梅田解放区の日.朝は七時半から市から委託されている神園公園の掃除をした.いつも二十数人でしている.それから夕方また出かけた.次回の梅田解放区の十九日は自治会の防災訓練と納涼会をこの公園で行うので,梅田にはでてゆけない.それで,少し疲れはあったが行ってきた.いつものように若い人らが語り歌うのを,横断幕をもって手伝ってきた.宮古島出身というわれわれの世代の人がやってきて,三線を弾きながら琉球の歌をうたい歴史を語ってくれたのがいちばん印象に残った.
 明日六日は広島原爆投下の日.梅田解放区を呼びかけてきた君は広島にいる.原爆は最も悪質な大量破壊兵器であり,原爆投下は戦争犯罪そのものである.しかしアメリカの戦争犯罪は議論にならない.日本の側から声をあげねばならないのに,それとは真逆の戦後七十年であった.また,歴史をふりかえると,二度愚かなことをしないと歴史の教訓としては根づかないのはそのようだ.しかし,たとえそうだとしても,広島・長崎の原爆と,そして福島原発が引き起こしいまも続く核惨事と,二度の経験を経ているではないか.なぜ再稼働なのだ.なぜ廃炉の方向を打ち出さないのか.それどころか日本は福島をテコにアベ政治をすすめてきた.ほんとうにわれわれはいま歴史の岐路にいると思う.
 もう一枚の祭りの写真は,昨日の土曜の夕方,犬の散歩で通りがかった六軒夏まつりの開始前の公民館前の公園である.同じ小学校の校区内で行われるもう一つの夏祭りである.「六軒」という地名は,江戸時代,六軒の家ががこの地に入植し田畑を拓いたという.それで六軒が地名となっている.この祭りと甲陽園夏祭りが七月末と八月はじめの土日に前後を入れ替えて夏祭りをやってきた.一方は先週の台風で中止となったが,こちらはできた.
 こういう手作りの年中行事と,そして歴史の岐路と,考えさせられる.その一方で,書斎にいるときは,この一週間『数論初歩』の増訂や今年の入試問題の解答づくりをやってきた.円順列を求める一般的方法については,前から整理したいと思っていたが,今年,慶応の入試に出たのを見つけ,やっておかねばと考え,整理した.結構面白かった.
 自分にとって,考えることの柱は『神道新論』の内容を深めることだ.これが自分のなすべきいちばんの仕事であり,いちばん難しい.いまわかってくれる人がどれだけいるかはわからない.それでも,根のある言葉で内から世を語れ.その言葉を育てよ.近代のなれの果てとしての現代を越えてゆくためには,この近代が覆いかくしたことをもう一度よみがえらせなければならない.それはまちがいない.夏祭りと歴史の岐路という問題と,ここでつながる.そんなことも考えて,青空学園日本語科と青空学園数学科で積みあげてきた.
 大きな歴史の趨勢を考えざるを得ない.いまは経済第一の時代から人が第一の時代への転換の時代である.それは数年のうちにやってくる,バブルの大崩壊によって,明確になるだろう.そして,非西洋で最初にこの西洋資本主義の世界に入った日本は,その果てに今日のアベ政治の段階を迎えている.資本主義の終焉という普遍的な問題が,日本においては,日本の固有の問題をとおして現れていることをおさえ,自分に準備できることとして,これらをやってきた.
 そして自分にとってもう一つの大事なことは,実際に高校生に数学を教えることだ.今年の夏期講習の三年生の授業はこちらにとっても面白かった.今の教育の置かれた状況の中で,それでも出会った生徒達には,少しでも学問としての数学を伝えたい.それが少しはできた.それと問題づくりもいろいろやっていて,これも面白い.実際に教えてきたこれまでの経験と青空学園での経験をもとに,教育数学について,これからの方向を提起したい.そのために,数理解析研究所の講究録の原稿を作っている.これはこの方面での遺言のようなものだ.
 そして,そういうことをやっている者として,この世の中の次の時代を開こうとする人々と力をあわせることだ.人民新聞を中心とする北摂や尼崎の人らの大きな流れのなかで,こちらができることをするということだ.二十年から二十五年前,この流れの源の一人である上田等さんにはほんとうに世話になった.そのお返しという思いもある.それで今夕も梅田に行ってきた.
そして最後が,地元の町内会や地域の様々の活動である.自治会長なので,地域の自治会連合での分担や,またいろいろと市や県との交渉ごとや,宅地開発業者とのやりとりや交渉などのつきあいもある.この二,三日は地元の諸々のことで役所に行ったりと出歩くことも多かった.この町内は新興の住宅街で神社や寺はなく氏子や檀家としてのつきあいはないが,一つだけ地蔵様があり,その世話人も引きうけている.それで私は週に四日は朝早く起きて七時には地蔵様の祠の扉を開けに行っている.今年も八月二十四日はその地蔵様の地蔵盆である.その準備もしてきた.
 こういう夏の日曜をはさんだ毎日である.時々やっていることを整理したくてこんなことを書いた次第.いささか論旨が入り組んでいる.こうやって書いて,それをまた見なおしてゆきたい.