GV

 商品発表時からとりあえず飲んでみようと思っていた「ペプシストロング5.0GV」。
 TVCFが始まってもスーパーなどで見かけないため、下手すれば流れ品の特売でもあてにしなければならないかと思っていたら、100円ショップに売っていた。
 とにかく惹かれるのはけた違いの電圧にある。
 何と言ってもギガボルトだから。
 特高線なんかでさえ桁が違いすぎて話にならないレベルでたとえが思いつかない単位だし。
 まぁ、そういうボケは置いておくとして、サントリーのニュースリリースには米印で『GV(ガスボリューム)とは、飲料中の炭酸ガスの含有量を表す単位であり、標準状態において、1Lの液体に1Lの炭酸ガスが溶けている場合を1GVといいます。』と説明されているのだが、聞いたことなかったよそんなの、という状態である。
 そもそも驚嘆さんと尾端さん(←ひどい誤変換。強炭酸と微炭酸)の定義もろくにされないまま今に至っておきながら、今更数値を持ち出すのもどうかという気もするのだが、言ってもしかたがない。
 実は、業界内部で基準があるのかも知れないが、「C.C.レモン」が微炭酸扱いだとして「C.C.スポーツ」はなんじゃらほい的な話になりかねないので、無駄な分析厨としては、きっちりしてもらいたいところではある。(一応ガス圧の最低値は法的に決まってたはずだけど。)
 とはいえ、メーカーとしては突きたくない領域なのか、それとも何か別の意図があるのか分からないが、購入した「ペプシストロング5.0GV」には5.0GVの説明はどこにもない。
 というか、「GV」を知っていることが大前提とされているようで、「GV」を知らないことで疑問を持つことがいかに恥ずかしいことか暗喩しているかのような錯覚を覚える、とまで言うのは言い過ぎかもしれない。
 というか、「GV」を知らないこと自体が非常識なのかも知れないのだが・・・。
 で、手にとるより先に「GV」ってのがよく分からなかったわけで、理科の得意な人に5GVって内圧はどんぐらいなの?と訊くと、基準温度(20℃)で0.48MPaぐらい、と教えてもらった。
 どうやって求めたのかは恐ろしくて聞けないのだが、理科の得意な人はちゃんとやってみて欲しい。(くれぐれもこんなところを確認もせずにコピペしないように。)
 で、大雑把にいうと5気圧ぐらいだということになるわけだが、では、他の炭酸含有の飲料がどの程度の炭酸ガスボリューム(GV)なのかをいろいろ調べてみると、ファンタが2GV、ビールが3GV、コカコーラ、ペリエが4GV、シャンパンが5GVぐらいらしい。
 5GVならコルクを飛ばして天井の安物のボードを貫通させることが可能なレベルなのかと考えたりするが、これまた米印として『炭酸飲料の製造時の特性上、充填時ガスボリュームは約5.0GV〜4.5GVとなっております。』とあるように、実際に消費する現場において小学校レベルの実験で二酸化炭素量を計測するなりしたならば、既に5.0GV分も溶存していない可能性も高いのかもしれない。
 あと、ボトル自体も耐圧のために改良が加えられているということなのだが、ペットボトルロケットを作っている(もしくは突き詰めている)人なら知っていることとして、周囲の安全性や機器の損傷など無視すれば、ペットボトルは個体差はそれなりにあるものの大体2MPaぐらいまで耐えられるらしい。(あくまで炭酸用のヤツ。耐えるというのは変形は含まない。)
 そういう意味では0.48Mpaなどカスみたいなものだろうが、多分かなりのボトル自体としての安全側な設定と製品全体としての衝撃や例えば車内放置時の加温などにも配慮した設計になっているのだと思われることを考慮すれば、さらに何らかの形で耐圧性能を高めてきているのかもしれない。

 で、前置きは終わらせるとして、飲んでみて思ったのは、さほど・・・・、という感じであった。
 ガキのころにジャンクフード類をかなり制限されていたため、数少ない飲食機会においては普段食することのできない高刺激物にカテゴライズされるようなものを選択し、その刺激を脳内ループさせてきた私と、微炭酸がもてはやされ、清涼飲料水が嗜好品というよりは常用品として扱われるようになって以降の時代に暮らしてきた者とでは感じ方は違うのではないかと思うがどうなのだろう。
 結局、炭酸飲料ならば強めの炭酸を求めているのと、炭酸の刺激を過大に期待していた関係上、思ったほどではなかった、という形であった。
 確かに、最近のペットボトルコーラなどがかなり気が抜けた感じで原液の薬臭さと炭酸の刺激のバランスで成り立つ味覚が薬臭さ寄りになっているように感じていることを考えれば、正しいテイスティングではない脳内味覚という意味として昔の味に近づいて刺激的でかつちゃんと味がするというような味覚になっている気がしなくはない。
 ただ、そもそも炭酸の清涼感などの味覚はどういった物理変化によってもたらされているのかという話になってくると、単純に炭酸ガスの含有量のみで規定できない可能性もあり、注ぎ方やらカーボネーターの方法(フリードリンクの機械のような現場で水道水にCO2を添加するような場合と容器に詰めた時点で炭酸が添加されている場合など)とかを考慮しなければならなくなりそうなので、炭酸が強ければよいというわけではないのだろうが。

 ボトルについてだが、5.0GVを実現するために講じられた『充填時の最高ガスボリューム5.0GVに耐えられるペットボトルを新たに採用』という部分は、ペットボトルだけを見た限りあまり感じられない。
 感覚的に同容量の一般的なペットボトルと比べて若干重い気もするが気のせいかもしれない。
 電子天秤とかノギスで厚みとか測ってみたいがそんな機材はないのでパスする。
 500ml用のペットボトルとは容積的に10ml(この商品は内容量が490ml)少ない分、同じ重量でも計算上厚みがあるはずだが、その程度で格段に強度が上がるとも思えない。
 成型方法が違うとか昔サントリーが使っていたハイブリッドボトルみたいな技術が使われているのか分からないが、何らかの真新しい技術が投入されたならば、ニュースリリースに書きそうなもので、それがないところを見ると既存技術の延長なのかも知れないし、結局よく分からない。
 あと、ボトルのネック部分に取り付けてあった紙広告に『人類未体験』とまで銘打つぐらいなら、キャップ自体の形状を一般的なものとは少し変えるとか炭酸が強いことを想起させるようなイベントが認識できるギミックとかが付いているとかあれば、特別感があったのではないかとも思ったが、世の中市販飲料に高付加価値と高価格とをセットにした属性は求められていないらしい(話によると某メーカー社長肝いりの高級ブランドの凋落から導き出しているらしいとの噂。)ので、何か少しでも変わったことをすることでさえ無理がある世界なのかも知れない。

 と、いろいろ文句を書いてはみたが、個人的に炭酸飲料というのなら炭酸が強めの方が好きなので、とりあえず強そうなのは分かった、という意味で、できれば他の炭酸系にも広げて欲しいぐらいである。
 といっても、サントリーの他のペットボトル炭酸って弱炭酸系のC.C.レモンを除くとオランジーナぐらいしか思いつかないのだが、何かあったっけ?
 オランジーナも瓶レベルにもっと炭酸が強めでもいい気はするのだが・・・。
 パッケージがあんまり黄色くなくて別物な感じがするC.C.レモンSTRONGはもうないし。
 リプトンブランドで強炭酸ティースパークリングとか出たら飲んでみたいけど多分そんなものは作らなさそうだしなぁ。
 などと夢想しつつ終わる。



 余談。
 炭酸飲料が大の苦手でゲーマー(ここのところは某アイドルのゲームが主らしい)の先輩に「GV」ってなんの略だと思います?と訊いたら「ギルド戦」とのこと。
 なんというか、世界は広いさぁね・・・。