虎の

 話題になっているかどうか分からないけども、不二越の件について。
 一応いろいろな考え方はあろうかと思うが、個人的には、三菱樹脂の件あたりから考えると、当然に違法とすることができるわけではないという観点から、とりあえずは法令において云々というわけではないとしかいいようがない。
 ただ、特定の法令で禁止事項が存在する場合はダメだけども。(出生地云々でふじこふじこ)
 あと、当然ながら当事者もしくは当事者に近しい状況に置かれてしまうと感情はついてこないけども。
 立場的にお互い法的に私人同士ではあれど、その力の差は歴然なのだが、まぁ、そうなんだからしょうがないとしか。
 雇用される側としては、判断基準をあらかじめ明示してもらえたことを有効活用するぐらいしか自衛手段はないかもしれない。
 とはいうものの、結局は、同様の件で和解した某アナウンサーの件ように雇用する側が折れる(要は権利のコンフリクトに際して採用の自由、選択の自由側を制限する)ことにつながるケースが多くなりがち(基本的にもめればだろうが)なわけで、公言することから波及する種々のメリットデメリットを相殺してどちらに振れるかは知ったことではないが。
 個人的には、当該事案がただのそこいらにあるワンマン零細企業ではなく一部上場企業が今にも炎上を起こしそうな分かりやすい発言をすることは、たとえそれが事実であるとかどうかが解明されるようなものだとしても、デメリットでしかないとは思うのだが。
 事案として毛色は違うとは思うが、経営者としての判断に際した論理構造が「○○を雇うより罰金(注:正確には納付金)を払った方が断然得やで」とがはは笑いをする某経営者と根は同じような気がしてならないのは、私の考え方が企業は公器であるとした方向に振れているからかもしれない。(というか、それは極端なものでもなく企業側にとっての最適解が公器側よりにあるんじゃないだろうか、というレベルなのだが)

 個人的には、発言に即した採用プロセス云々の問題がどうのというよりは、時期的に、内定者のなかに事実上努力で挽回不可能な経験をもって社長が無能だと断言した属性の者がいたとするなら、その者にとっては地獄なのではないか、と思う。
 もはや、かけることばもない。
 とはいえ、派閥、学閥などが未だに幅を利かせている世にこういった件のみあげつらうと甘やかせているなどといわれそうではあるが。

 今回の不二越の件で思い出したのは、採用とかいう話ではなくて、大学時代の単位の話だった。
 Fラン特有の事案なのかどうかは分からないが、教養科目の教授は結構他の教科、分野を目の敵にしているところがあって、とある必須科目の教授が、初回授業で「高校で○○(科目が入る)をとってそれで受験したヤツはキ○○イ!キ○○イには単位をやらんから先に言っておく」と言い放ったため、何十人かは机を蹴飛ばしながら教室を出て行ったものである。(Fランなのでどっちもどっちなんだけど。)
 ちなみに私もまんま『高校で○○をとってそれで受験したヤツ』だったので出て行ってもよかったといえばよかったのだが、とりあえず必須なので面倒な課題は逃げて出席だけして単位出なかったら翌年に別の先生のを取ればいいかとか思って、そのままやっつけ作業でやってたら単位が出ていた。
 後から聞いた話(というか、初回授業で出て行った者を含む出席率が低い者は期間中に知っていた)だが、当該教授は、その件について大学の教務課からきつく指導されたのち、出席率が低い者に「くだんの発言を全面撤回するし、出席してくれたら単位も配慮する」などと各個人に教授秘書やら自身のゼミ生を派遣したりして説明していたらしく、さらには翌年必須科目の担当から外されたりと、なにがしかの虎の尾でも踏んでしまったようだった。

 結局、同様に考えてみると、自ら見世物として虎の尾を踏んで返り討ちにあうのか、それとも尾を踏んで、そこから脊椎ごと引き剥がして虎を絶命させるほどのパワーを見せつけるのか、というところにかかっているのかもしれない。
 そんな気がした。