長野まゆみ『お菓子手帖』

お菓子手帖

お菓子手帖

 とっても甘くて懐かしい1冊。作家長野まゆみが誕生するまでを(祖父母の代から!)、記憶の中のお菓子を掬いあげて綴る自伝小説。私と長野さんとはちょっと年が離れているのだけれども、それでも作中名前が挙がる「動物ヨーチ」「量り売りの駄菓子」に懐かしさがこみ上げてくる。昭和の始めから昭和の終わりまで、お菓子を通じて東京の、時代の雰囲気が追体験できるのもいい。
 そればかりかデヴュー裏話に、お菓子から宮澤賢治作品を読み解く試みが興味深かった。
 ファン向け、でも、長野まゆみファンでよかったと思った1冊。