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naoyaのはてなダイアリー

June 10, 2005

隠さなくていいものは隠したってしょうがない

こういう重要な内部事情をどんどん外に向けてオープンにしていく発想が、はてなのユニークネスの中で最も不思議なところである。これは容易に真似できることではない。ある種の狂気と言ってもいい。

だいたいなぁ、ある機能を実装するのにどれだけ工数がかかったのかというようなことは秘匿すべき内容だ、というのが旧来型の常識なんだよ。

読んでいてはらはらする。

それが正直なところである。

でもそれは、そう骨髄反射してしまう僕のほうが古臭くて間違っているのだ、とあるときから考えることにした。

My Life Between Silicon Valley and Japan - 何でもオープンにすることについて

大きな企業そのほかが、社内の情報を外に出したがらない、秘匿にするというのにはいくつか理由があると思いますが、その主なものは、一つは自社のコアバリューが外部に漏れるのを防ぐ、つまり競争優位性のポイントやノウハウが流出してしまうのを防ぐ、ということ。もう一つは、リスク回避としての情報秘匿。何かまずい情報が流出してしまい信頼を失ってしまうことを防ぐために秘密にする、という類だと思います。

後者に関して、例えば社員が会社の外でお客さんの話しを大きな声でしゃべっているとか、そういう意味でのオープンというのはよくない。そもそもそれはオープンと呼ぶような話ではなく、道徳や企業文化の問題です。

一方、競争優位性保持のための情報秘匿。こちらに関してはおそらく賛否両論で、僕らのように日々の業務をどうまわしてるとか(例えばあしかでタスクを管理してるとか、合宿してるとか)といった情報や、裏側のシステムがどうなってるか(MySQL使ってるとか、Senna使ってるとか)そういう情報を特に気にせずどんどん出していくところと、徹底的に情報管理を行ってそれらを秘密にするところと両者あると思います。

僕は、真に参入障壁と呼べるものというのは、たとえその情報が開示されたとしてもそう簡単に真似できるものではなかったり、真似したからといってうまくいくものでもない、という事なんだろうと思っています。

例えば Google の検索の仕組みやアルゴリズム、それからアドワーズを含めたビジネスモデルは、Google 社員がそのアーキテクチャやモデルをプレゼンテーションしていたり、あるいは SEO の専門家によって日々 Hack されていて、だいたいどのような仕組みなのかというのは、知っている人は知っていると思います。が、それと同じものを作れといわれて作れるかというとそれはおそらくほとんどの企業には無理だし、同じものを作ったからといって、同じように成功するように思えるかというと、そんなことはない気がします。

サーバインストール型blogツールのデファクトになった Movable Type も、その内部コードは Perl で記述されているために、すべて読むことができます。中で何がどう動いてというのを完全に把握している Movable Type Hacker は世の中にたくさんいます。中には自分の blog ツールを作っている人もいますが、そんな彼らが Movable Type の仕組みを知ったからといって、(市場におけるポジションという意味で)あの製品を超える物が作れるとは思えません。

それから、昨日書いた合宿の話。僕らは合宿に行って、日記に書いたようなやり方で開発をすれば普段の数倍の効率でどのぐらいの物が作れることも知っていて、しかもそれを世の中に公開しています。が、世の中の企業、特に僕らのライバルに当たる企業が、はいじゃあ今から合宿行きますよ、といって行動に移せて、かつその合宿の中で同じかそれ以上の効率で物を作れるかというと、そんな簡単にはいかないでしょう。はてなが持っているちょっと(?)変わった企業文化があるからこそ、合宿が効果を生み出すんです。

以上の例は、製品開発や企業活動のプロセスを通じて徐々に徐々に生まれてきたものであるが故に、真似したからといって必ずしもうまくいくものではないと、そんな気がします。仕組みとか手段とか、それにかかった手間とかやり方とか、そういうものの上のレイヤにこそ本当の意味での参入障壁というものが築かれるんです。

なので、知られてしまったら競争優位性が失われてしまうなんてものは、もともと競争優位性としては脆すぎるのであり、それを企業の中に隠し持っていたって、あっという間に突き崩されてしまうんでしょう。そんなものを内に秘めておくよりは、自分たちなりのやり方をオープンにして世の中に還元したり、知ってもらったりして、その上で自分たちに興味を持ってもらえるほうが、遥かに価値がある行動だと思います。

それに、何も外でしゃべることができない会社というのはおそらくその会社で働いている人たちにとっても苦痛でしょうし、何を聞いても教えてくれない人と一緒にいても、楽しくないですよね。そんな閉塞感漂う組織の中にいるよりは、もっと開放的な環境で過ごしている方が健全だし、自分が所属するその組織に誇りが持てるというものです。

隠すべきものは隠すけれど、隠さなくていいものは隠したってしょうがない、それがはてななりの文化なんだろうと思います。

GenpakuGenpaku 2005/06/10 14:13 伊藤さん、はてなの”ちょっと(?)変わった企業文化”は100名規模の会社になっても継続できるものと思われますか?

naoyanaoya 2005/06/10 14:18 それは非常に困難な課題だと思います。が、近藤を中心に僕らはそれにチャレンジしようと思っています。大きくなってもはてならしさを失わないように慎重に拡大していこうと、それがもっとも根底にあるポリシーなんです。

今日も、朝のミーティングが人が増えたことにより少し億劫になりつつある、という話題が出ました。なんとかみんなで知恵を振り絞って、ここをこうしたらいいと改善案を出して、人が増えたなりのやり方を明日から実践することになりました。

人が増えてすこし歯車がずれてきたらすぐに元に戻す、というのを細かく続けていけば、なんとかなるかもしれないと、そう思っています。

suikyojinsuikyojin 2005/06/11 06:29 私は、「隠さなくていいものを隠すと、隠すべきでないものを隠すようになる」というように感じています。顧客の情報のように漏れてはいけないものを除けば、多少は隠したりないぐらいの方が、風通しのいい組織になるように思います。

nobuotakahashinobuotakahashi 2005/06/11 15:05 naoyaさんがニフティにいる頃、ココログの「今度こんな機能が追加されます」というような話が、「実装前」に書かれていて、ビックリしたことがあります。そのことを覚えていたので、後に「ココログの担当者に会う予定」といっていた同僚に、「きっと、話がわかると思いますよ、ああいう(良い)体質だから」と言ったことがあります。

直後にnaoyaさんが移ってしまったので、ついついいろいろ想像してしまいました。

「つまらんことを秘密にする」のは、みっともないだけですね。「相手に渡す情報は少なければ少ないほど交渉は有利である」ということだけにしがみついているのでしょう。

tmasaotmasao 2005/06/12 00:25 Googleのような隠匿主義の会社を例に出すのは不適切な感じがしますが、これは一種の皮肉でしょうかね。

mngmng 2005/06/12 13:41 はてなが今後持続的に成長していくかどうかは、規模的成長への誘惑を断ち切ることができるかどうかにあると思っています。
願わくばサービスの質の向上を社員の量ではなく質で実現できることを。

mngmng 2005/06/12 13:43 あ、あと「秘匿する意味がない」と「公開する意味がある」は別ですよね。後者についてのnaoyaさんの考えをお聞かせ願いたいです。

通りすがり通りすがり 2005/06/13 20:09 naoyaさんが出した例が少し適当でないような気がします。
確かに上にあった公開する例では、公開してもかまわないでしょうね。
しかし、例えばマスタープランとでもいいますか、会社の命運を握るようなアイデアなんかでも公開すべきとお考えですか?
タイトルが「隠さなくていいものは隠したってしょうがない」なので、逆に言えば「隠さないといけないものは、隠さないといけない」と言う意味にも取れますよね。もちろん顧客情報とかじゃなくてですよ。
naoyaさんのお考えを参考にしたいです。
もしよろしければご回答よろしくお願いします。