今日は8月の晦日

 8月の末になったら、めっきり涼しくなって、東北地方の稲穂は大丈夫だろうかと思うくらい、天候不順だ。
              
 今日は8月の最終日だ。
 今日は、今週末に予定している会の全国運営研鑽会の準備をしたり、9月の各種企画のスケジュール調整をしたり・・・。
 そして、先週からの続きで、会の新聞「けんさん」9月号の最終段階の編集をする。
 ほぼ、紙面も出来上がりつつあって、細部の表現や字数調整、写真の入れ替えなどをする。
 明日には最終版にしたいと思っている。


◇今、読んでいる『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』について
 ほんとうに感動しながら、知的好奇心を刺激されながらページをめくっている。
       
 半身不随の免疫学者・多田富雄さんは
 「私の障害は重度ですが運動麻痺だけです。右半身は全く動かない。でも考えることは出来ます。知力の点では、普通の人と全く変わりない。
 喉も筋肉の重度の麻痺です。嚥下ができなく水さえも飲めないし、声も出ない。でも人格に変化があるわけではない。大脳半球のウェルニッケの言語野は、日本語の部位だけでなく、英語やイタリア語の部位も、生き残ったらしい。単に運動機能障害が強いだけなのだ。そう気づいたとき、おおげさに言えばある種の覚悟が生まれました。そして、障害と闘う気持ちが出来たのです。」
 このような身体で、左手だけで長時間かけて、ワープロを打っているのだ。
 また、
 遺伝学者の柳澤桂子さんは、難病・シャイ・ドレーガー症候群の激痛に,
 「やっと退院して参りましたが、からだの凝りから来る痛みがひどく、とてもパソコンに向かう状態でなく、さらにお返事が遅くなってしまいました。」「ひどいからだの痛みに見舞われ、結局痛みは五週間続きました。」「今日はすっかり治っているはずの激痛がまた舞い戻ってきました。」「今日は胸の痛みが強く、起きあがれないので、寝て右手の人差し指でキーボードを打っております。」と、
 そんな状態の中で、いろいろな分野についての意見交換をしているのだ。

 例えば、科学については
 多田富雄さんは、「私たちは人間として、『知る』という大きな喜びを共有しています。科学の『知』というのは人類共有の財産です。科学の発達がなぜ起こったかというと、それが何かに役立つとか、お金が儲かるというより、単に知ることが喜びだったからだと思います。(中略)お金になるからとか、人類に貢献するためにというような目的は後からついてきたものです。」「それが、このごろは科学がお金と結びついたのです。科学の研究で一獲千金も夢でない。生物学も例外ではありません。(中略)特許をとるのに大わらわの研究者もおおいです。それが昨今の科学研究のトレンドです。」
 柳澤桂子さんは、「先生がおっしゃるように、私どもの時代は、科学も健全でした。知を求めるのは、美を求めるのとおなじで、科学は芸術の一種だと私は思っています。それにお金がからんできたことは、ほんとうに残念なことです。人類共通の財産としてあるべきものに特許を取って、お金を儲けることができるという社会のシステムそのものを憎みます。」
 と、現代の科学研究のあり方を危惧しているのだ。
 こんな科学研究の環境が、小保方晴子さんのSTAP細胞論文問題を起こしたのではないか。多田富雄さんが存命だったら、どう思われただろうか。そんなことを思ってしまった。


 まだ、半分を過ぎたところを読んでいる途中だが、ゲノムのこと、クローン人間のこと、音楽のこと、能楽のこと、と幅広く論じている。
 季節の流れ、自然の移り変わりを感じながら、そして困難な身体を互いに労りながら、書簡を交わし、日々、生きている姿に感動する。