Take me higher, take me to heaven 前編
マレーシアはマレー半島の南部とボルネオ島の北部を占める国であり,ほぼ全ての国土が熱帯気候に属する.
平地は常夏の気候であるが,半島中央部を貫いているTitiwangsa山脈にある高原地帯(ゲンティンハイランドやキャメロンハイランド)は常春の気候であり,夜間の気温は20℃を下回る.
特にキャメロンハイランドは日本であるところの軽井沢に例えられ,マレーシアの一大観光地になっている.
今回,われわれ三名,すなわちチョウ屋のほった,両爬屋のN田,そしてぼくがキャメロンハイランドおよび東部の低標高地帯で採集をすることになった.
ほったである
N田である
そんなワケで,2/27の夜8時か9時くらいにクアラルンプール国際空港に到着した.
レンタカー屋に1時間ほど待ちぼうけを食らわされたが(向こうの国の人間は時間を守らないのか?)なんとか車を借り一路キャメロンハイランドを目指した.
今回借りた車はPreduaのMyvyという車だったが,今回ボッロボロになるまで酷使してしまった.
途中でちょいちょい虫を探したりメシを食べたりして,夜中の3時にキャメロンハイランドのとある採集地点に到着した.
ここはアカエリトリバネアゲハTrogonoptera brookiana (Wallace, 1855)の吸水場所として有名である.このチョウは大型で美しいが,ワシントン条約により採集禁止である.
もちろんこんな夜中にアカエリの吸水が見れるはずもない.やることと言ったらゴミダマ探しくらいしかない.
マレーのゴミダマ.うんざりするほどいたが,2種混じっていた.
おそらくDerosphaerus属の何か.このような大型のものはここでは非常に少なかった.
場所はよさげなのに,ゴミダマの種数がやたら少なく,肩透かしを食らってしまった.
でかいヤスデと派手なゴキブリ.
サソリ.まだ子供だろう.
日の出まで森を歩き回ったが,ここでは結局マレーシアらしい虫が採れなかった.なんかマレーシアに来た実感が湧かないなあ…….
2/28
この日は午後まで採集した後,キャメロンハイランドで一番大きな街であるタナ・ラタで宿を取ることにした.
タナ・ラタに行く途中に寄ったタパーという街.
ここで問題が発生した.借りた車にはカーナビが付いていなかったので助手席のほった君にナビを頼んだのだが,なんとナビを間違え,さらに間違えた挙句助手席で爆睡し始め,さらにさらに謎の交通規制による渋滞に巻き込まれ全く移動できない状況に…….
午前10時に出発して,もう午後2時か3時になるというのに行こうと思っていた採集場所にも着けていない…….
あ,めっちゃイライラしてきた…….
採集できる日をくだらない理由で一日つぶしてしまうのは非常にもったいないので,とりあえずその辺で採集することにした.
なんとかハチくらいは採れそうな土壁.
畑の脇というしょうもない環境だったので甲虫はさっぱりだったが,狙い通りハチはそこそこ採れた.
今回は甲虫以外にもハチを採ろうと思っていたのでまあ良かった.
小一時間採集した後大急ぎで宿を取り,ナイターポイント探しへ.
こんな尾根道の見通しのいいところでやることになった.
ちなみにカッサカサである.
野生のウツボカズラだ!!
トラップをせこせこ仕掛けていたら日暮れになったので,ライトオン.
開始早々,結構な数の蛾や小さい虫が飛んでくる.これは……たくさんの甲虫が……
来なかった.
ぜ〜〜〜〜〜んぜん甲虫が飛んでこなかった.
ここ,本当にマレーシア?
しばらくすると,奥からコウモリのような物体が飛んできた.
んん〜〜〜〜?あ,エドワード!!!
エドワードサンArchaeoattacus edwardsiiは流石の大きさで,ぜひ見てみたかった種だ.一般に多くないと言われている♀であったことも嬉しい.
ちなみにLサイズの三角紙を2枚つなぎあわせてようやく収まった.
甲虫はしょぼしょぼだったが,今日はこれでおしまい.
2/29
今日も晴れ.この時思ったが,今ド乾季じゃん.だから虫が少ないんだ!
今日はまた別の採集場所へ行くことにした.
ここは前半は開けた林道で,途中の電照菊の畑を抜けると後半は暗いジャングルになっている場所のようだった.
これまでと違い,強い日差しにさらされる場所であり,空気だけは熱帯だった.
滝のような汗を流しながら林道を歩いていく.ここはちょくちょく甲虫の姿が見られた.
Cicindera sp. おそらくヤツボシハンミョウの仲間.それこそ大量にいる.
クビナガハンミョウの仲間だと思う.多くなかった.
熱帯カラーのハンミョウ.
あちーあちー言いながら歩いていると,飛翔中の甲虫が目の前を横切ったのでネットイン.
うぉゎ!メチャメチャ派手なカミキリムシだ.うう,マレーシアに来た実感が湧いてきたぞ.
と,ここで,ひらひらと飛ぶチョウをネットインしようとしたら,
バキ!
という音とともに長竿がポッキリと折れてしまった…….
おいおいマジかよ〜〜〜.買って3日くらいだぞ.しかも高かったんだぞ!!!ふざけんな!!!!
まぁ仕方ない.さらに歩いていくと,やがて薄暗いジャングルの中へ.
かっこいいサシガメ.
木にでかいものがへばりついていたのでびっくりしたが,セミの抜け殻だった.それにしてもすごい色だ.
ちなみにこの木にはなぜか多数のヒゲナガゾウムシの仲間が集まっていた.
ふと視線を戻すと,道の脇の草にカミキリが止まっていた.
落ち着いた色調だが,決して地味ではないカミキリ.
これは別種だろうか?
尾状突起が長いシジミチョウ.もっと長いものもいるが,ぼくはまとめてビロビロシジミと言っていた.
しばらく歩いたところで引き返し,本日のナイターポイントへ向かった.今回は高標高だ.
ライトオン!
渋いカミキリ.実は日中見つけたことは内緒だ!
ライトによく来る緑色のセミ.われわれはジ○ジ○ゼミと呼んでいた.
でかいセミ.あまりのでかさに「これがテイオウゼミか!!!」と大はしゃぎしたが,実は…….
よくわからんカブトの♀?ギデオンヒメカブトか?
他にもいろいろ甲虫が飛んできて,0時頃ナイターを終了した.
これから昼間行った場所に夜間採集に行くことにした.
なるほど真っ暗だ.
ちょっと歩くとシダの上にカミキリがいた.
似たようなのを台湾でも採ったような…….
この林道には少なからず材が置いてあるので注視しながら歩く.
カタモンビロウドをさらに格好良くしたようなカミキリが材に止まっていた.ちなみに ド普通種 だった.
他にはゴミムシ,ゴミダマ,カッコウムシ等がいた.しかし,ゴミダマってどうしても写真映えしないから野外では撮影しないんだよねぇ…….好きなんだけどねえ.
オマケでトカゲモドキ.こういっちゃなんだけど日本のやつのほうが百倍かっこいい.
2時間程度で採集を切り上げ,宿に戻ることにした.
気分よく車を運転する.
しかし……
あっ!!!!!!!!!!
バン!!!!!!!ズゴゴゴゴゴゴゴ……
脱輪からの2輪同時バーストで〜〜す……
ほぼ自走不能です……
帰れません……
ああああああああああ……
中編Iに続く……