成馬零一が考えていること。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-05-16

[]編集されたメディアと、編集できないメディア




 『ザ・ノンフィクション アイドルすかんぴん』の感想がツイッターでフォローしてる人の間で結構あがってて、取材対象だった人のBLOGツイッターにもコメントもあがっている。

 こういう風に撮るとは聞かされてなかった。酷い。って感じのことが結構書かれていて、いろいろ考えた。


 これは神聖かまってちゃんの映画とドキュメンタリーを見た時も感じたことなのだが
 これだけネットで編集されていない動画(ニコ生、ユースト)が溢れ、一般の人がふつうにアクセスできるようになると、今まで見てきたものが、どれだけ編集され、作り手の言いたいことのために取捨選択された情報の集合体だったのかが、嫌という程わかってしまう。

 そもそも映画やドラマはもちろん、ドキュメンタリーにしても、時間という制約があって、二時間なら二時間という枠に収めるために仕方なくやっていた面もあったのだろう。

 でも、その時間の制約がネットの登場で完全に無意味になってしまった。

 こういう時、テレビやマスコミの側は、ネットは情報が溢れていて、玉石混交だから、我々が正しい情報を取捨選択して見せないといけないと言い、ネットの側は、それはこちらが判断するから、とにかく全部見せろという。

 どっちが正しいのかという問題ではないのだろうけど、自分達に情報の正誤を見極める権利があると無意識に思っていることが、テレビ局側からは伝わってくる。

 ここらへん、原発報道地震報道にも絡むんだろうけど、自分達に情報の正誤をジャッジする権利があると思っている人が、ポカをやると一気に権威が失墜してしまう。でも、正しい情報だけを見極められる人なんているはずもなく、どんな人でも必ずミスをする。

 津田大介さんなんかは、それを踏まえた上で、ネットの可能性(誤情報をすばやく修正できる)を語っているけど
 客観的に見て、こちらの方が理にかなっているかなと思う。

 編集ってのはある意味究極の作家性の発露だ。
 見せていい情報と見せたくない情報を選ぶという行為自体に、その人のすべてが出ているといってもいい。

 それに対してネットで出てきている新しい映像のアプローチは
 とにかく全部見せる。
 情報のコントロールはこちらでしない。

 というものだ。(場合によってはログを残し、誰もが、いつでもアクセスできるようにする)

 個人的にはそれこそが神聖かまってちゃんの面白さであり、恐ろしさであると思っている。 
 これは明らかにネット以降の感覚だと思う。
 そして神聖かまってちゃん程じゃないにしても、今はツイッター等で積極的に自分の情報を出していくことを選んでいる人が多い。

 例えば庵野秀明クラスの圧倒的な映像編集力を見せつけられると
 編集による作家性の発露も悪くないと思うけど、二流の映像編集を見せられると、お前が考えた陳腐な物語はいいから、もってる情報を全部見せろと、つい思ってしまう。

 たぶん、あのドキュメンタリーは、先に売れないアイドルの苦悩という物語を設定して、それにあわせて素材(という言い方はあまり好きではないが)を組み合わせるように作ってしまったのだと思う。

 ただ、ここで自己批判すると、あそこで語られるアイドルの負の部分を物語的に理解してる自分というものが、確実にいて、実は、ほぼあれに近い認識をしていた自分がいる。ユーストで喋った時などはそういうことを感じていた。

 ただ、キラキラした理想を見るのも、その裏にある厳しい現実を見るのも、どちらも最終的には本人達のものではなく、そういう物語を読み取ってしまうこちら側の問題なのではないかと思う。

 先日ユーストで放送された、ももいろクローバZのライブを見て、それを改めて感じた。
 神聖かまってちゃんニコ生もそうだけど、そういう陳腐な物語だけでは回収できない、強烈な体験をこの人達は与えてくれる。
 その体験の強度と、それが事後的に物語化していく、現在進行形のドキュメンタリーを今、僕らは見ているのだと思わされる。それは編集されていない未整理の情報がこちらに流れてくるからこそ感じられるものだと思う。  



 ただ、こうなってくると究極的には人の手の入った映像はダメで、一番いいのは監視カメラだよねってことになるかというと、まだ割り切れない自分がいる。

 もし、本当に無編集の長時間映像が氾濫するようになったら、普通の人は全部追うことなんかできるわけがなくて、結局、その映像を全部みた専門家が判断するようになるのだろう。そうなった時に、僕らは映像を見ているようで、結局、専門家が裏に設定した物語を見ることになるのかもしれない。

 最後に完全に余談になるが、映画やドラマ用に編集バージョンと、ファン向けの無編集グダグダバージョンを作るとかしてもいいのかもしれない。それで最後は各自自分で編集して自分の映画やドラマを作ってくれ。みたいな。 

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/narima01/20110516/1305570830