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三十路でアニメ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-06-10

[] ダメ就職指南

■α-Synodos vol.5

http://kazuyaserizawa.com/synodos/mm/index.html


現在配信中のメールマガジン「アルファ・シノドス」で荻上チキさんと対談させてもらっています。


拙著『凶暴両親』と、荻上さんの最近の研究テーマであるところのITリテラシー、情報モラル教育を引き合いに、超近視眼的な(「親として」なんて立場での。当事者性バリバリの)教育論争の不毛さ加減について話をしたのですが、テキストをまとめた荻上さんの琴線により強く触れたのは、ボクの来歴のほうらしい。えらい紙幅を割いています。


気持ちはわかる。ボクのダラダラ話をキレイに交通整理していただいたテキストを読み返してみるぶんに、この人(ボク)、今のこの仕事にありつくために、いや、大学進学にですら、なんの努力も払ってないことがよくわかる。今、ボクがココにあるすべての理由は、強力にもほどがあるコネと営業のおかげ。最悪だわ、この人。絶望したっ!


いや、なりゆきで、意外とどうにかなっちゃってるのは、なにもボクに限った話ではない。もっともっと能力のある方々だって、そんなもんだったらしい(と自分を慰めたい!)。


たとえば、'90年代、ターザン山本!政権下の『週刊プロレス』黄金期を支えた小島和宏氏。回顧録『ぼくの週プロ青春記』によると


高校時代、父親の勤めていた会社が左前になり、家計がひっ迫

茨城から電車通学できる大学以外に進学できなくなる

当時からプヲタだったからと、日本武道館と後楽園ホールにほど近い大学を選択

あわせて、常連投稿者として、やっぱり大学の近所にあった『週プロ』編集部に出入り。そのままバイトくんに

卒業後、嘱託社員から正社員に

新日本プロレスや全日本プロレスのような老舗で大手の団体には、すでにガッチリ食い込んでいる担当記者がいる

だから、当時『週プロ』で扱いの小さかった女子プロと、まだ海のものとも山のものともつかなかったインディ(FMWとみちのくプロレス)の担当に回ることに

空前の女子プロブーム、大仁田ブーム、みちプロブーム到来

名物記者に


もちろん、小島氏の記事に煽られて女子プロ、大仁田、みちプロ人気に火が付いた部分もある。取材力、筆力に恵まれたからこそ名物記者にもなれたのだろう。が、状況を羅列するぶんには、まったくもって、なりゆきで、そうなっている。


先日、お酒の席でご一緒した尾谷幸憲さん曰く


「オレ、ライターになってすぐ『大学受験Vコース』編集部に潜りこんだんスよ。専門卒なのに(笑)。『サークルってチョー楽しそうだなぁ』って思いながら記事作ってましたよ」


それが、今やベストセラー作家だ。


これは、出版業なんつう「米一粒、釘一本もよう作らん」、社会の役に立ってるんだかどうだかもよくわからない、ふんわりした職業だからなせる業なわけじゃないと思う。


できる社員は「やり過ごす」』(好著!)の著者にして、東京大学大学院教授の高橋伸夫氏から、以前こんなお話をしていただいたことがある。


「ボクらの世代(高橋氏は'57年生まれ)のサラリーマンって、若手社員に『この仕事にやりがいを持ちたまえよ』なんてことを言いがちだけど、冗談も休み休み言え、って感じなんですよね」


高橋氏が就職活動をしていたころは、石油ショックによる不景気の影響で氷河期のまっただ中。大半の連中が希望どおりの会社になんて就職できなかったという。


「でも、食うためにはその職場で与えられた仕事を粛々とこなしていくほかない。そうこうしているうちに、たまに仕事がうまくいったりなんかして、なんとなく『オレ、この会社に向いているかも』とか『仕事って結構楽しいじゃん』って思えるようになっていっただけなんです。そんな気持ちを忘れて、若者にだけ『やりがい』を強要するのはズルいですよ」


現状、いろいろ言いたいことは誰しもあるだろうけど、よほどのことじゃないかぎりは、なんとなく今の流れに乗って働いちゃったほうが、ちょっとくらいは、いいことあるらしいよ。


【付記】

メディアの人は「若者と仕事」とか「サラリーマンの処世術」なんてお題で記事や番組を作るとき、高橋先生を取材するといいと思うよ。ルックスは、ジャガー横田の旦那チックというか、ジェントルなメガネハンサム。なのに、出てくる言葉は、上記のとおり、皮肉が効いてて、やたらとキレ味がいい。マジでオススメ。


ぼくの週プロ青春記 90年代プロレス全盛期と、その真実

ぼくの週プロ青春記 90年代プロレス全盛期と、その真実

できる社員は「やり過ごす」 (日経ビジネス人文庫)

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