478 『"須佐能乎"完全体』

1.“須佐能乎”完全体…!!(1)

烏から登場したイタチの目は万華鏡写輪眼。天照が放たれます。

「ワシに幻術をかけたのは褒めてやろう…。が……」

実はこれは幻術。黒い炎に包まれても平静を保つダンゾウは、
すでにこのことを看破しているようです。
後ろから刀を持ち突進してくるサスケの行動を読んでいました。
刃がダンゾウを貫く寸前、なぜかサスケの身体がピタッと止まります。
サスケに黒い紋様が現れます。
どうやら先の攻撃の応酬中、喉元を鷲づかみにした際に
身体を縛る呪印をサスケに仕掛けていたようです。
最大のチャンスが一転して最大の危機に。
香燐は堪えきれずダンゾウの前に飛び出します。

「こいつに術を使う必要はなかろう。」

しかし、香燐はあえなく体術によって文字通り一蹴されます。

「体術とはな…。
 どうやらチャクラを温存しておきたいらしい…。」

ダンゾウの様子を静観するトビ。

「解!」

ダンゾウは何やら術を解いた様子。
チャクラが微妙に変化したことに香燐は気づきます。

「サスケがイタチの真実を知っているなら“暁”も…。
 情報を隠すのはもはや無理だな…。」

イタチが墓場まで持っていった決して語られることはなかったはずの真実。

「見てみろ…この様を…。
 こいつは…お前の唯一の―――失敗そのものではないか。

木ノ葉の里の為。心を鬼にして両親を歯牙にかけても、
どうしても弟だけは殺すことができなかった――イタチの真実。

「あいつにとってお前の命は里よりも重かったのだ。」

しかし、絶体絶命のその瞬間、
サスケから迸るように爆発した感情を表すように、
須佐能乎が完全体へと変化し、ダンゾウの呪印すら打ち破ります。
風遁を利用して一旦間合いを離れるダンゾウ。

「これがサスケ!? このチャクラ…、
 もうほとんど以前のサスケじゃない!」

香燐はサスケのチャクラが異質なものへと変化している様子を感じます。

「憎しみ、成長し力をつけてきた…。
 身体はそれに反応する…。」

一方トビはサスケの変化を悦びます。
サスケの須佐能乎は携えた弓で矢を放ちます。
距離を離し、着地した隙を狙われたダンゾウ。

「印が間に合わん! 仕方ない!」

ダンゾウの右肩のあたりが何やら蠢きます。
大樹が出現。その反動で、ダンゾウは矢が射抜く場所を間一髪かわします。
――突如出現したこの大樹はなんと“木遁”によるものです。
しかもヤマトのように角材っぽくはなく、
生き生きとしたその様は、かなり熟練している様子。

「なるほどどおりで…。あれほどの写輪眼の数…。
 うちは一族でもない者が扱うには、
 何か秘密があると思ってはいたが…。」

これには少しトビも驚いた様子。
同時に木遁が扱えるということから、
背景に大蛇丸の存在を感じ取ります。

大蛇丸め…。
 かなりダンゾウと接触していたようだな。
 初代の細胞を埋め込んで身体エネルギーを向上させていたのか。」

一方で香燐は、さきほどまでのまともに食らっては、
どこからともなく出現するダンゾウの様子と比べると、
今回わざわざ木遁を使って回避するという行動をとったことに
何やら違和感を感じた様子。

「一気にダンゾウのチャクラが減った!?
 ……そこまでしてなぜ“須佐能乎”の攻撃をかわす必要がある?
 こいつは死なない能力のハズ……。
 ……イヤ! 死ぬんだ!!
 さっきはかわさなければ死んでいた。
 だから、ここまでして!」

すかさずサスケに、今目に映るダンゾウこそ本体であることを知らせます。

「この女が感知タイプだったか!?
 …少々気づかれたか。しかし遅い!」

ダンゾウは印を結び終えます。
露になった右腕は肩に柱間の顔のようなものが、
下腕部にはたくさんの目玉を覗かせるグロテスクな姿。
香燐はダンゾウのチャクラの感じが微妙に変化したことを感知します。
感知タイプの忍でなければ気づけないほどの微細な変化のようです。


ところで、チャクラを完全回復しきれていないであろう状況で
木遁によってごっそりチャクラが減った状態でもこの未知なる術が扱えるなら、
わざわざ先ほど術を解く必要はなかったと思われますが、
この術は常に発動している状態と考えられることから、
チャクラは時間とともに減少していくと考えられます。
これはたとえば風遁の術などで瞬間的にチャクラ量Qを解放するのに対し、
ある瞬間の時刻tでのチャクラ減少量q(t)の連続的な和


Q=\int_{\qquad 0}^{\qquad \qquad \qquad T} \, q(t)dt

であり、その瞬間の時刻で消費されるq(t)は徐々に負担という形で
おそらくは指数関数的に増加していくため、
常に発動させている状態では非常にしんどいと考えられます。
つまり、決定的に相手に止めをさせると踏んだあの状況で、
わざわざこの術を発動させている必要はないとダンゾウは考えたのでしょう。

2.“須佐能乎”完全体…!!(2)

サスケがダンゾウを再び射抜いた時にはすでに遅く、
ダンゾウの術は発動していて、ダンゾウは無傷です。

「また術をかけ直してさっきのダンゾウの姿になったのに…、
 三つの目は閉じたまま…。」

香燐は3つの眼が閉じたままであることに着目します。

「見るかぎり腕の写輪眼は十個…。
 そして初代の細胞…。
 うちはの力と柱間の力…、
 九尾をコントロールするつもりでいるようだな。」

ダンゾウの“チート”チックとでも言えそうな、
つぎはぎで得た能力の最終目的の一つをトビは見抜いた様子。
ナルトは――ダンゾウにも狙われていたのです。

「ダンゾウのチャクラがさらに減った…。
 やっぱりこの術にはかなりのリスクがあるんだ。
 だから術を一度解く必要があった…!
 チャクラを温存するために!
 それともう一つ…あの右腕の写輪眼が奴の術に関係しているのは確か!
 閉じていくあの眼に秘密がある。」

どうやら10個ある写輪眼が閉じていくたびに、
チャクラが減っているという事実を表しているということは、
10個の目が全て閉じるまでを限界時間T_{10}とすると、
ダンゾウのこの術における限界チャクラ量Q_{best}を次のように表せると考えられます。


Q_{best}=\int_{\qquad 0}^{\qquad \qquad \qquad \qquad T_{10}}\, q(t)dt

閉じていく眼のわけを上記のように考えるなら、
この術の弱点は最大限界チャクラ量Q_{best}と、
時刻t=T_{k} \, (k=1,2, \cdots .10)で、
チャクラが減っているという状況を写輪眼が瞑ることで表してしまうことといえます。
ダンゾウに術を解かせず長期戦を強いればサスケに軍配があがる、と読めます。

「間違いない…。
 これはうちはの中でも禁術にされていた瞳術イザナギ。」

ダンゾウが使用している術の名はイザナギ
しかし、うちはですら禁術という域にあったこの術イザナギと、
こともあろうか初代火影千住柱間の木遁を、
付け焼刃のようにダンゾウに付与させてしまう大蛇丸の禁断技法は感服。
ダンゾウもこれらの借り物の術を操って善戦していますが、
ダンゾウ本来の術のスタイルが風遁・真空波とかしょぼいと言われても否めないかも。


――ところで、ダンゾウにはまだシスイの眼が存在しています。
トビの言う10個とは包帯で隠されたこのシスイの眼も見抜いているのでしょうか?
もし見抜いてなければダンゾウにある写輪眼は実は11個あることになりますが…。