666『二つの万華鏡』

1.二つの万華鏡(1)

「すり抜ける……
 お前本来の右目の力か」

身体をすり抜けさせるオビトの写輪眼の力。
オビトを引き離さそうと振りかざした右手を
いとも容易くすり抜けさせます。
いったん間合いをとるマダラ。

「オレから尾獣を奪い、
 弱体化を狙っているのか?
 オレと取り合って勝てると思っているとはな!」

マダラの中に封ぜられし尾獣たちの片鱗。
それらチャクラを掴みにかかります。
チャクラの綱引き――。
マダラとの勝負です。

「弱いな。
 一尾と八尾をほんの少し引きちぎった程度とは。」

手強い相手です。
十尾の人柱力とまでなり、
尾獣たちのチャクラに慣れたオビトといえど、
一尾と八尾の一部を引きちぎったに過ぎませんでした。

「カカシィ!!
 ナルトを時空間へ運べ!!」

と伝えるオビト。
オビトの行動と言動に信頼をもったカカシは
すぐさまオビトが何を為そうとしているか考えます。

「(オビトはあっちで九尾を渡すつもりなのか!)」

すぐさま《神威》の力を開放し、
ナルトを介抱するサクラごと異空間へ飛ばします。
追うようにしてオビトも自身に《神威》をかけます。
しかしマダラに実体化のタイミングと弱点を知られています。
その隙を突かれた攻撃を
六道の錫杖でなんとか防ぐものの、
このままでは亜空間へ移動することはかないません。
マダラの攻撃のスピードは、
空間転移するスピードより上なのです。

「一度仙人化しただけはある…
 ほんの少しだが
 オレからその力まで吸い取ったか…」

オビトはマダラから尾獣のチャクラを引きちぎっただけでなく、
どうやら六道の力を微かながらに奪い取ったようです。

「マダラ…あいつはいつでも私を殺せた…!
 あまりの恐怖に息をするのも忘れてた…!!
 アイツは…アイツだけは……
 次元が違う!!」

異空間の静寂に包まれ、
先ほどまで自分がいた環境にぞっとするサクラ。
ぎっとを歯を食いしばり、
冷静になるように努めます。

「ナルトは運んだ!
 後はお前が向こうへ飛べば
 ナルトは助かるて事だな!?」

なんとかオビトに接近したカカシは
オビトと連絡を取り合います。

「ああ。任せろ。
 そして今回はオレがメイン――
 お前はバックアップだ。カカシ。」

許しがたい敵に陥った戦友。

「久かたぶりのツーマンセルだな。
 しくじるなよ、オビト。」

そいつが帰って来た喜びを、
二度と来ないであろうこの瞬間を
噛みしめるようにカカシが頷きます。

「……覚悟はいいか。」

オビトの言葉に

「ああ…。最後の作戦が
 お前とでよかったよ。」

と頷くカカシ。
岸本先生はこのシーンをどれほど描きたかったのでしょうか。


2.二つの万華鏡(2)

「オビト…
 カカシ…」

教え子二人を固唾を飲んで見守る先生。
二人が力を合わせれば、
恐いものなど何もないことを知っています。

「…オビト。お前に預けたモノは全て返してもらう。
 特に左目がまだ入っていなくてな…」

とするマダラに、

「気になるか? マダラ。
 …写輪眼は左右揃って本来の力を発揮するもの…
 そう言ったよな。…なら…」

オビトは言います。
左右揃った写輪眼の真価を――

「違う。もう写輪眼ではない…
 輪廻眼だ。」

輪廻眼にしか興味のないマダラ。
オビトの言うことなどどうでも良いという様に
話を遮るかのようです。

「違う…こっちの事を言ってんだよ。」

と右眼を強く見開くオビト。
まだ写輪眼も開眼していなかったあの頃――
リンの気をひくことに夢中で、
カカシよりも上をいってやろうと意地を張っていたあの頃――

「お前の歩く道はいつもどんだけ
 曲がりくねってんのよ、ホント!
 真っ直ぐ来い!」

そこは神社の境内のような場所。
いつものように待ち合わせに遅刻してきたオビト。

「だから! 
 道すがら、色々あったって、
 言ってんだろが!!」

とカカシの言葉にムキになって返します。

「忍なら決まりを守れ!!
 お前のその怠慢が、
 仲間を危機に陥れる可能性だってあんだから!」

といつものように小言を言うカカシ。

「ならオレがお前らを守ってやる!
 決まりを守る代わりによ!!」

小言を真摯に聴かないのはいつもの事。

「どの口が言ってんのよ!!」

とカカシが呆れます。

「眼は口ほどにものを言う!
 オレの写輪眼が開眼したら
 黙ってねーぜ!!」

そんな二人の様子を心配に、
しかし微笑ましく見守るリン。

「お前の写輪眼なんて役に立つとは思えないし!
 そもそも開眼してないなら黙っといて!」

二人の言い合いはヒートアップしていきます。

「るっせー!!
 マスクで口隠してるくせに。
 口がものを言いすぎなんだよ。てめーこそ!!」

4人が揃いはしましたが、

「…なかなか足並みが揃わないね…」

やれやれと閉口気味のミナト。

「確かに…
 でもね、先生…。
 そこは私に任せて!
 私が2人をちゃんと――」

その過去から繋がるように、
リンの想いが二人を繋げます。

「行くよ。2人共!!」

見開かれたオビトとカカシの万華鏡写輪眼
オビトの輪廻眼を警戒し《輪墓》を使うことをやめ、
どちらか一方の陽動と読んで、
2人同時攻撃を選択したマダラ。
2つの《神威》は互いをそれぞれ意図するところへ移動、
しかも倍速で成し遂げます。

「お互いまったく同時に神威を……
 倍のスピードで飛ぶとはな。」

攻撃を外したマダラは、
口惜しそうに呟きます。

「大丈夫だ。オレがナルトを助けてやる。」

ナルトのところについたオビト。
身構えるサクラに言います。

「オレは昔から真っ直ぐ素直には歩けなくてね…
 だがやっと辿り着いた。」

最後の最後で辿り着いた気がする正しい道。
それにオビトは懸けるように、
ナルトに手を翳し、マダラから引き抜いた
尾獣のチャクラをナルトに入れるのです。
一方、カカシへの追撃を防ぐ男の影――
ガイです。

「今回ばかりはいい時に来てくれたよ。」

と素直に感謝するらしくないカカシ。

「大丈夫か? カカシ。」

ちらりと一瞥するとそこにはマダラ。
なにやらマダラには面識があるよう。
一方のガイはいつものように
覚えていないようですが――