海洋島のカエル(2)いかに海を渡ったのか

 「カエルを含む両生類はもともと海洋島には分布しない」というのが定説でした。しかし、海洋島での固有種の発見によって、カエルも近距離(数百km)なら海を渡っての分散が可能であることがわかってきました。


とはいえ、両生類が(成体でも幼体でも)数百Kmも海を泳ぐのは不可能でしょう。一般に、両生類は海水などに対する耐性(耐塩性)がほとんどないと言われています。


 どのようにカエルは海をこえたのでしょうか。


 西アフリカのギニア湾上に浮かぶ Príncipe と São Tomé の2島は、海洋島にも関わらず両生類(カエルとアシナシイモリ)の高い多様性を誇る。


(1)Príncipe (面積139km2、大陸から220kmの距離):両生類3種、淡水魚13種
(2)São Tomé (面積857km2、大陸から255kmの距離):両生類5種(アシナシイモリ1種を含む)、淡水魚14種
(3)Annobón(面積17km2、大陸から340kmの距離):両生類と淡水魚ともに分布しない


 ミトコンドリアDNAを調べた結果、これらギニア湾諸島では、カエル6固有種とアシナシイモリ1固有種が確認された。これらのうち5種は(西アフリカ産種よりも)東アフリカ産種と近縁だった。これはコンゴ川によって東アフリカから分散してきたのかもしれない。


 さらに海をわたっての分散方法は、嵐、鳥、天然筏など、それぞれ単独要因では難しいが、海流の方向、海水面の塩分濃度の低下などと組み合わせれば、天然筏(流木など)に乗って海を渡った可能性はあるだろう。



上図:西アフリカのギニア湾諸島(Googleより)
下図:西アフリカ海洋今年2月の塩分濃度の勾配(青から赤にかけて濃くなる:上記の島近辺の塩分濃度が低いことに注目)
塩分濃度のデータは以下のサイトから (http://www.mercator-ocean.fr).



文献
Measey GJ et al. (2007) Freshwater paths across the ocean: molecular phylogeny of the frog Ptychadena newtoni gives insights into amphibian colonization of oceanic islands. Journal of Biogeography 34: 7-20.


 上記の島々には淡水魚も多く分布しているので、(大河川による)周囲の海水の塩分濃度が低いことが重要な要因なのではないかという説でした。


大雨、大洪水によって、大河川から海に流れ出た流木に乗って、塩分の多い海水にさらされることなく島に流れ着いたのかもしれません。