さまざまな生物間相互作用に興味のあるナチュラリスト向けの本が出版されました。
目次
はじめに
第1部:食うー食われるの新しい姿
第1章:形を変えるオタマジャクシ:操作実験からのアプローチ
第2章:右と左の共進化:追いかけるヘビと逃げるカタツムリ
第2部:寄主と寄生者の種間関係の進化
第3章:リーフマイナーの食性の進化を探る:野生生物を用いた実験系確立ストーリー
第4章:虫えいをめぐる昆虫群集
第3部:共生する生物の関係を紐解く
第5章:タイの熱帯季節林における大型の果実食鳥類サイチョウ類による種子散布
第6章:魚による農業:サンゴ礁におけるスズメダイとイトグサの栽培共生
第7章:花の臭いが結ぶ植物と送粉者のパートナーシップ
第8章:サトイモ科植物とタロイモショウジョウバエの送粉共生
第9章:キノコ類の隠れた種:共生する植物との相性を紐解く
第10章:マルカメムシ類と腸内細菌イシカワエラの絶対的共生―切り貼り自由な共生システム
第4部:新しい自然史研究の手法
第11章:野生生物からのDNAおよびRNA抽出
第12章:花の匂いの捕集方法
第13章:リーフマイナーの自然史と採集法、飼育法、標本作製法
コラム1:栽培共生とは
コラム2:核DNAとミトコンドリアDNAの比較による生殖的隔離の検出
コラム3:博物館標本の活用術
コラム4:ハーバリウムにおけるローン制度と貸し出し方法
捕食、寄生、共生など、さまざまな種間関係が知られています。これらは、海、陸、陸水と、場所に関わらず見られるものです。そんな種間関係の多様性を知りたいというちょっと欲張りな人向けの本かもしれません。オタマジャクシとサンショウウオにはじまり、ヘビとカタツムリ、樹木とサイチョウ、植物とホソガ・ゾウムシ・ショウジョウバエ・キノコ、カメムシと細菌との関係まで、さまざまな異なる分類群間の関係が、池、陸、海、熱帯、温帯など色々な舞台で研究者の視点から活き活きと語られています。
また、第4部は、これらの種間関係を研究していこうという初学者のための新しい手法の解説となっています。大学院生には有益でしょう。個人的には、リーフマイナーの飼育法や標本作製法はお薦めです。『絵かき虫の生物学』が出たとき、リーフマイナーの採集方法、飼育法についての手引きがあったら良いなあと述べたのですが(参考:潜葉虫の自然史)、まさにこれにあたるものです。ともかくも、在野の昆虫研究者には嬉しい情報と言えます。
このシリーズは、種生物学会の和文誌として、一般の人にも購入可能な形で発行されているようです。この本に興味がある人は、同シリーズの『共進化の生態学』も楽しく読めるかと思います。