オバマ政権の方向性、アーミテージ元国務副長官が講演12/5
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081205-OYT1T00638.htm
ちょっと古い記事なのですが…
オバマ次期米政権の行方を話し合うシンポジウム「変わるアメリカ、変わらぬアメリカ」(文明論としてのアメリカ研究会主催、読売新聞社など後援)が5日、東京都港区の慶応大で開かれた。
知日派のリチャード・アーミテージ元米国務副長官が基調講演し、オバマ次期政権の外交政策は「多国間主義に力点を置き、国連を活用する」と指摘した。
同氏は、ブッシュ政権が推進するミサイル防衛(MD)施設の東欧配備について、「オバマ氏は、やや減速させる」と予測。グルジア紛争を機に関係が悪化したロシアに対しては、「大国として敬意を払い、耳を傾けるだろう」と述べた。
また、同氏は「世界でパキスタンほど重要な場所はない」と指摘。「1億6600万人の国民がすぐにでも過激派となる可能性がある」として、アフガニスタンでの「テロとの戦い」に及ぼす影響に懸念を示した。
日本では、クリントン民主党政権が中国を重視した「ジャパン・パッシング(素通り)」の再現が懸念されているが、同氏は「根拠がない。(対日)政策は継続される」と断言した。
一方、北岡伸一・東大教授は基調講演で、「次期米政権は『多国間協調型』と言われるが、正しくは『主要国間協調型』だ」と述べ、オバマ氏が主要国に新興国も含めた枠組みで問題解決を図るとの認識を示した。パネルディスカッションでは、オバマ次期政権の金融政策の行方などについて過発な意見が交わされた。
(2008年12月5日21時07分 読売新聞)
クリントン政権の中国重視が再現しないという事は
町山智浩さん
■やれば、できる
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20081103
にも書いてあります。
ところで上の記事北岡教授によるとオバマ次期米政権の外交政策について
『多国間協調型』と言われるが、正しくは『主要国間協調型』
といわれている件ですが、『多国間協調型』については、前もご紹介した、
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集団安全保障モデルの変形として「多国間協調モデル」と呼べるものがある。p61
とあります。まず集団安全保障モデルは、ずばり国連なのですがご存知の通りなかなかうまく機能しません。
で、上の文の続きなのですが、
これ(多国間協調モデル)は、友好国、潜在的敵性国がともに参加して地域の安全保障環境を改善するため協力する体勢をいう。この際の協力は、国連のような国際機構ができる前の段階での協力であって、具体的には安全保障対話、各種の信頼醸成措置などをとることを指している。そうした体制は、不当な武力行使をした国に対して武力制裁を加える機能を欠いているが、全加盟国による協議を通して心理的な圧力を加えることができよう。その意味で、集団安全保障モデルの変形物とみることができる。具体的には、欧州安全保障境界会議(CSCE、1995年以降は欧州安全保障協力機構OSCEに改称)や1995年に結成されたASEAN地域フォーラム(ARF)などを指す。
とあります。
また、『主要国間協調型』モデルですが、
多極型勢力均衡モデルの変形として大国間協調モデルがある。p55
とかかれています。おそらく北岡教授が『主要国間協調型』と言いったのは、ここでいう「大国間協調モデル」という事ではないかと思います。
まずその元の多極型勢力均衡モデルは、例えば、米ソが冷戦をしていた頃は「二極」型勢力均衡モデルですが、そのような超大国は普通はあまり出てこないので、普通は「多極」となります。多極型勢力均衡モデルに関して上の本では
第一次大戦前も、三国同盟(ドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリア)に対して、英露仏による三国協商が成立していた。また第二次大戦直前に出来た日独伊枢軸と米ソ英仏中らの相互牽制もそうである
第二次世界大戦後の中近東地域の国際関係も、多極型勢力均衡モデルに属し、そこでは強調と対立関係が複雑に交錯している p52
とあります。と書くと「戦争前夜の話かよ」となりそうですが、
第一次世界大戦も、第二次世界大戦も勢力均衡が成立していたにもかかわらず勃発したのではなく、勢力均衡が崩れかけていたからこそ、勃発したのだという説明の方が妥当かもしれないp54
とあります。
大国間協調モデルとは
当時(1815〜第一次世界大戦まで、ただしクリミア戦争期間は除く)のヨーロッパの主要大国は、協調に努めながらも、どうしても協調できないときには、敵味方に分かれた。そこに明確な勢力均衡モデルが顔をだす。したがってこの過渡期には大国間協調モデルと勢力均衡モデルが、併存したのである。たとえば、1882年に三国同盟(ドイツ、オーストリア・ハンガリー、およびイタリア)が成立して勢力均衡モデルがより明確に顔を出しかけていたときにも、1884年から85年にはアフリカ植民地分割に関するベルリン会議が開かれた。この会議には、三国同盟の参加国のほか、英、仏、ポルトガル、スペインなど計15カ国が参加した。主要国はアフリカ植民地分割に関しては利害が一致していたのである。この後、三国同盟に対抗して三国協商(英、仏、露)が1907年に成立した時は、大国間協調モデルは崩れ、勢力均衡モデルに戻っていたp56
平たく言えば
・多国間協調モデルは潜在敵性国も含む集団を形成し、不当な武力行使をした国に対して武力制裁を加える機能を欠いている。
・大国間協調モデルは利害関係が一致しなくなると多極型勢力均衡モデルになり、その均衡がやぶれると戦争と。
そこでもう一度、北岡教授の言葉
『多国間協調型』と言われるが、正しくは『主要国間協調型』
ですが、利害の一致する国と手を結び潜在敵性国と対立するという意味のように思えます。
しかし
■ロシア、米がミサイル防衛計画撤回すれば戦略兵器の開発一部停止へ=通信社
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20081219/1229698363
で、中露関係について調べてみましたが、上海協力機構(SCO)
■原加盟国
中華人民共和国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン■オブザーバー加盟国
モンゴル、インド、パキスタン、イラン
では
■露「東のNATO」構想 米に対抗、上海協力機構が土台
SCOの中核を成す中国は、同機構が軍事ブロックになることには慎重な姿勢
とありましたし、多国間強調モデルを目指してもらいたいなーとは思うんですけどね。