北がプルトニウム型に加え、ウラン型の核開発に乗り出した理由は?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090620-00000572-san-int

 北朝鮮プルトニウムの全量兵器化に加え、否定してきたウラン濃縮作業の着手を表明した。ウラン型核兵器の原料となる高濃縮ウラン製造を目指すとみられている。米専門家は北朝鮮プルトニウム型に加え、ウラン型の核開発を行う理由について、「隠蔽(いんぺい)性」に優れている点に加え、「核技術などを輸出する際の選択肢の拡大」を挙げる。「核保有国」としての地位確立に向けた決意の表れとの指摘もある。日本は米国による「核の傘」も含め、核抑止の議論を深める必要に迫られている。(ワシントン 有元隆志)

 北朝鮮が過去2回に行った核実験はプルトニウム型とみられている。ウランの高濃縮は高度な技術が必要とされ北朝鮮が技術を保有しているかは不明だ。

 米ロスアラモス国立研究所の資料によると、ある国がプルトニウム型とウラン型を同時に最初から開発した場合、プルトニウム型のほうが早く生成でき、技術的にも簡単だ。米シンクタンク国際戦略評価センターのリチャード・フィッシャー上級研究員もプルトニウム型のほうが兵器化に必要な量も少なく、小型化に適している」と述べた

 同氏はプルトニウム型の核開発を行ってきた北朝鮮がウラン型まで進める理由について、「天然ウランが産出するため、ウラン調達が容易。パキスタンからウラン濃縮の設計情報も取得しており、開発を早く進めることができる。2つの計画を持つことで抑止力強化につながる」と分析する。

 パキスタン故ブット元首相は生前、インド人ジャーナリストに、1993年に訪朝したとき、ウラン濃縮情報が入ったCDを自ら運んだと証言した北朝鮮は当時米国と核問題をめぐり交渉中で、94年に枠組み合意に達した。寧辺の核施設は凍結されたが、プルトニウム型の代替となるもう一つの核計画を秘密裏に進めていたというわけだ。

 国防総省傘下の研究機関、海兵隊大学のブルース・ベクトル教授は「ウラン型のほうがプルトニウム型より隠蔽性に優れている」と説明する。遠心分離機を使ってウラン型の核開発を進めた場合、プルトニウム型のように大規模施設を必要としない。放射能放出もほとんどなく発覚しにくい。寧辺近くにウラン濃縮の地下施設が建設されたとの情報もあるように、米偵察衛星で察知しづらい。

 米政府はウラン型の情報収集に苦労した。米情報機関は北朝鮮パキスタンのカーン博士の「核の闇市場」を通じ遠心分離機を、ロシアからは濃縮用のアルミニウム管を入手したことをつかんだ。北朝鮮は02年10月に訪朝したケリー国務次官補(当時)にウラン型の計画の存在を認めたが、その後は否定し続けた。

 米情報機関は北朝鮮がウラン濃縮計画を進めているか「中程度の確信」に止まった。このためヒル前国務次官補は北朝鮮との交渉でプルトニウム型を優先し、ウラン問題を切り離した。

 しかし、ライス前国務長官は退任直前の1月、北朝鮮未公表の兵器級高濃縮ウランが存在していると情報機関はみている」と述べた。1月まで国務省東アジア太平洋局上級顧問を務めたバルビーナ・ホワン氏によると、ブッシュ前大統領やライス前長官は「最後まで北朝鮮に深い疑念を抱いていた」という。

 米中央情報局(CIA)は02年の報告で、ウラン濃縮施設が完成すれば1年間に2個以上の核兵器の製造が可能と推定した。ベクトル教授は北朝鮮とイランがパキスタンからミサイル搭載用の核弾頭の設計図を入手したと思われる」と述べ、北朝鮮とイランの核・ミサイルでの共同開発の可能性を指摘する。そのうえで、大量破壊兵器の「拡散の記録」(オバマ大統領)を持つ北朝鮮が、輸出の選択肢を増やそうとしているとの見方を示した。

 ホワン氏は「経済状態の悪い北朝鮮プルトニウム型とウラン型の核開発をする意味はあるのかという議論はあるが、本当に2つの核計画を進めているならば、確固たる核保有国になるとの戦略的な重大性がある」と語る。

     ◇

 核兵器は、核分裂を利用した原子爆弾(原爆)と、核融合を利用した水素爆弾(水爆)に大別される。原爆の材料には、おもに天然ウランに含まれるウラン235を濃度90%以上まで高めた高濃縮ウランと、原子炉で燃焼させた核燃料棒を再処理して抽出するプルトニウムがある。米国が広島に投下した原爆はウラン型、長崎はプルトニウム型だった。

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しかしなぜイランのときはウランの高濃縮は高度な技術が必要とされと言わず原発用濃縮を許せば兵器級濃縮もやるかのように書いておいて(と思っているんですが)、北朝鮮の場合は高度な技術が必要なんて書くんでしょうね。

故ブット首相が核情報を運んだという件はこれ
故ブット元首相が北に核情報? ワシントン・ポスト電子版
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080603/1212445236
ですね。情報元がインド人ジャーナリストと、英在住ジャーナリストという違いはありますが。

しかし「北朝鮮未公表の兵器級高濃縮ウランが存在していると情報機関はみている」んですね。それが本当なら探し出して欲しいところですが。