「新見副長は法度を破ったため、昨夜切腹しました」
との報告を聞いて怒る近藤(香取慎吾)。
「仲間をわなにかけたお前は切腹しなくてもいいのか?」
と土方(山本耕史)を問い詰めると、
「あんたがそうしろと言うのなら腹を切る」と切り返す。
これは始めからこう言い逃れるつもりだったんだな。
まさか近藤が
「そうか。それなら切腹しろ」
と言うはずがない、だからやったもん勝ちだ、という目論みがあったのだろう。
第21回の感想を書いた時、
「人を切る人が社会を動かしている」
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040606
と書いたが、まさに今回、人を切る土方が事件を起こし、人を切りたくない近藤がその後をついていく展開である。
用心深くなった芹沢(佐藤浩市)は、用心棒として斎藤一(オダギリジョー)を連れて東山へ紅葉を見に行く。8月18日の政変の1月後、9月18日ということだが、もう紅葉が赤くなっていたのだろうか。
それにしても、沖田といい斎藤といい、芹沢は試衛館メンバーの1本釣りが好きである。
平山・平間・野口の生え抜き芹沢派の影が薄い。
紅葉を見ながらお梅(鈴木京香)は芹沢に、田舎への引退をすすめる。寺子屋を始めて子ども達に剣術や絵を教えればいい、と言う。
まさしくそうしていれば、芹沢やお梅もその後すぐに命を落とすことなく永らえていたのである。
側近の新見も失い、もはや芹沢には浪士組内に居場所はなく、近藤との勢力争いでの敗北は明らかだった。潔く引退していれば……。
人間、引き際が大切だと思う。引き際を見極めることができずに深入りして傷口を広げ、自分を含めた多くの人を不幸にするということがある。
傷が浅いうちに引いて出直すことで新たな展開が出てくることもあるというのに。
その点、8月18日の政変で、桂小五郎(石黒賢)の引き際は見事である。
新見切りの際は、法度を口実に一応“合法的”に行った土方だが、芹沢切りは正攻法の暗殺方式を取る。
芹沢はそれに気付き、
「俺の剣は酔うほど切れ味が鋭くなる」
と土方を牽制。
そして近藤には、
「近藤、鬼になれ。鬼になっておれを食ってしまえ」
とはまた格好いい。
史実はどうかしらないが、この三谷版芹沢、格好良すぎる。
酔って帰る際、近頃用心棒役となっている斎藤一も一緒に帰ろうとすると、
「お前はもういい」
と拒否。
格好良すぎる。
屯所で寝た頃を見計らい、土方、山南、沖田、原田の4人の刺客が布団に刀を突きつけると、そこにはいなくて横で座っており、
「随分と待たせやがる」
とはまた、すごい演出。そして4人を相手に互角に渡り合うとは、さすが筆頭局長だけのことはある。
結局、芹沢、平山(坂田聡)は討ち死に、平間(剛州)と野口(岡本幸作)は温情で逃がしてもらい、浪士組内の一本化は幕を閉じた。
果たせなかった芹沢の寺子屋の夢は野口青年が水戸で引き継ぐのであろう。
会津候から「新選組」の名をもらい、ついに新選組の誕生である。