中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

アルゼンチンで大規模な反政府デモ

 アルゼンチンでハビエル・ミレイ氏が大統領になって初めて大規模なデモが行なわれました。デモは23日、公立大学の予算削減に反対して行なわれたもので、学生を中心に労働組合の代表者ら15万人が参加しました。デモ隊は大統領官邸に向け行進、50万人の市民が集まりましたが、大きな混乱は起きませんでした。

 ブラジルのメディアによると、ミレイ政権が推進する公立大学の予算削減に抗議して行なわれたデモ行進では、「アルゼンチンの公立大学を守る」「公立大学を守れ」「勉強は権利だ」「ミレイの計画を無視して予算を増額せよ」などと書かれた横断幕が掲げられていました。抗議活動にはセルジオ・マッサ元経済大臣、ブエノスアイレス州のアクセル・キシロフ知事も参加しました。

 1980年のノーベル平和賞受賞者アドルフォ・ペレス・エスキベル氏は「教育とは自由な男女を生み出すことだ」と述べ、デモを擁護しました。名門ブエノスアイレス大学で学んだ82歳の建築家、ペドロ・パーム氏も「私は公立大学を守る」と語り、「予算が削減されると閉鎖せざるを得ないかもしれない」と警告しています。無料の学部教育を提供するブエノスアイレス大学など公立大学は、運営のために政府の資金に依存しています。

 ミレイ大統領は経済危機を乗り切ろうと公共部門の予算削減を実行しており、大統領は22日の国営テレビで「3か月連続の財政黒字を記録した」と予算削減の効果を強調しました。しかし、各分野で行政との緊張が高まっています。公立大学についてマヌエル・アドルニ大統領報道官は記者会見で「教育はわれわれのイデオロギーの基本的な柱の一つだ。大学を閉鎖する気はない」と政府の立場を説明しました。

ベネズエラ野党連合は大統領候補に外交官を決定

 ベネズエラ野党連合の統一民主綱領は、マドゥロ大統領反対派、エドムンド・ゴンサレス氏を大統領選挙候補者に「全会一致」で承認しました。ブラジルのメディアが20日に報じたもので、ゴンサレス氏は10月の野党予備選で勝利したにもかかわらず登録を阻止されたマリア・コリーナ氏の後任として指名されました。

 統一民主綱領事務局では「ゴンサレスは全国選挙評議会に登録されており、勝利の選挙戦となるだろう」と宣言しています。マリア・コリーナ氏がゴンサレス氏の立候補に同意するかとの記者団の質問に同事務局は「マリア氏は討論会に参加しており、適切と判断したタイミングで声明を発表するだろう」と答えました。

 マリア氏の所属政党であるヴェンテ・ベネズエラも、この決定を祝うメッセージをソーシャルメディアに投稿し、マリア氏もソーシャルネットワークに「ベネズエラ人の皆さん、私たちは前進します」と投稿しています。

 野党候補として指名されたゴンサレス氏は74歳で、1991年から1993年までアルジェリア大使を務め、ウゴ・チャベス政権初期にはアルゼンチン大使を務めた外交官です。彼は数冊の本を出版し、2013年から2015年まで野党の一員として民主統一円卓会議の国際代表を務めていました。

コロンビア・ブラジル首脳会談でベネズエラの国民投票実施で合意

 ブラジルのメディアによると、コロンビア訪問中のルーラ・ブラジル大統領は17日、首脳会談後の共同声明で「ベネズエラの大統領選挙前に国民投票を開催するというコロンビアのペトロ大統領の提案に同意」しました。ベネズエラの大統領選挙問題では両国首脳会談で重要議題として話し合われ、両首脳が一致したものです。

 先週、ペトロ大統領はベネズエラの首都カラカスを訪問し、「国民投票の結果は政府か野党かを問わず、選挙に勝った者が敗北した反対派を迫害しないことを保証する」ことを、再選候補のニコラス・マドゥロ大統領と野党候補のマヌエル・ロサレス氏に提示していました。

 共同声明では「ブラジルとコロンビアが、政府と反政府勢力に対し、世論調査で支持できる民主的保障について合意に達する可能性を検討するよう促した」としています。ペトロ大統領は記者会見で、この提案をルーラ大統領に提示したが、ルーラ大統領はこの件についてはコメントしなかったそうです。

 ブラジル外務省は「期待と懸念」を持ってベネズエラの選挙経過を見守っているとのメモを発表し、マドゥロ政権はクリーンな選挙を約束したバルバドス合意に「適合しない」行動をしていると説明しています。一方、ペトロ大統領も野党候補の立候補資格を剥奪するといったベネズエラ政府の行動を批判しています。

 また共同声明では、「ベネズエラ国民の苦しみを増大させるだけのいかなる制裁も拒否する」と指摘し、17日、対ベネズエラ制裁の復活を発表した米国を牽制しています。ブラジルの意見は、国連安全保障理事会 で承認された制裁のみが有効というものです。

ブラジル大統領がコロンビア訪問、ベネズエラ問題で会談

 ブラジルのメディアによると、コロンビア訪問に出発したルーラ・ブラジル大統領は16日夜、コロンビアの首都ボゴタに到着しました。ルーラ大統領は17日に同国のペトロ大統領と首脳会談を行い、ボゴタで行われる国際ブックフェアに参加する予定です。ルーラ大統領のコロンビア訪問は3期目の大統領任期中で2度目になります。

 首脳会談では、7月に予定され各国が公平性を懸念しているベネズエラの大統領選、両国が領有するアマゾン地域の発展政策などについて話し合われます。また、同日に行われるビジネスフォーラムとブックフェアにもペトロ大統領と共に出席の予定で、同フェアではブラジル人作家の表彰を見守る予定です。

 注目されるベネズエラ問題については、ペトロ大統領、ルーラ大統領共に、ベネズエラマドゥロ大統領が有力な野党候補の出馬資格を剥奪、出馬できないようにしたことに重大な懸念を表明すると思われます。

 アマゾン問題では、両国が領有するそれぞれのアマゾン地域の持続可能な森林開発について話し合い、ブラジルは「富める国はアマゾン維持のためもっと財政支援をすべきだ」と強調するとおもわれます。

パンタナールに猛毒物質を散布した牧場主が告発される

 牧場主が猛毒物質をパンタナールに散布、森林を伐採したとして告発されました。ブラジルのメディア14日付によると、告発されたのは牧場主クラウデシー・オリベイラ・レメス(52 歳)で、マットグロッソ州に11の農場を所有しています。

 調べによると、牧場主は飛行機からベトナム戦争で米国が使用した有毒な化学枯葉剤を投下、草を植えて牛の牧草地を作るためにパンタナール川の一部を森林伐採した疑いが持たれています。捜査官は「牧場主は最も背の高い植物を根絶することが目的だった。散布地は葉をすべて失った木々が乱立する灰色の風景になった。これは化学的落葉と呼ばれる結果であり、航空機から保護林に大量の殺虫剤を投下する犯罪散布の証拠である」としています。

 牧場主はこの農薬代だけで2,500 万レアルを支出していました。マットグロッソ連邦大学のヴァンダレイ・ピニャティ教授は、「それは非常に安定した薬剤で、20、30キロ離れたところまで風に乗って運ばれ、他の都市、他の農場、他のプランテーション地域にまで想像をに超えて影響する」と指摘しています。

 検察官は「牧場主はこれまでも環境犯罪で15回有罪になっている」と語り、もし有罪になれば罰金だけで20億レアルになると言います。記者が被災地域の上空を飛行し調べたところでは、森林伐採があった地域は合計8万ヘクタール(サンパウロ郊外のカンピナス市の規模に相当)に達するとしています。

ブラジルはイランがイスラエルを攻撃した件で重大懸念を表明

 イランがイスラエルを攻撃した件で、ブラジルは重大な懸念を持っていると表明、国際社会に「エスカレーション」を避けるよう要請しました。ブラジルのメディアによると、ブラジル外務省は13日のイランによるイスラエル攻撃を受け、両国に最大限の自制を求め、国際社会に紛争激化を避けるよう要望しました。

 同外務省は「ブラジル政府は、イランがイスラエルに向けて無人機やミサイルを飛ばし、ヨルダンやシリアなどの近隣諸国を警戒させているとの報道を深刻な懸念をもって見守っている。ガザ地区で進行中の紛争が始まって以来、ヨルダン川西岸だけでなく、レバノン、シリア、イエメン、ブラジルなど他国への敵対行為の拡大の可能性を考慮し、関係国に最大限の自制を求めるとともに、国際社会に対し、事態の悪化を避ける努力を結集するよう呼びかける」との声明を出し、同地域への不要不急の旅行を中止するよう呼びかけました。

 イランのイスラエル攻撃に対しては、14日に国連安全保障理事会が開催されます。イスラエルの要請で開かれるもので、イスラエルは「イランの攻撃は世界の平和と安全に対する深刻な脅威であり、安保理があらゆる手段を使ってイランに対して具体的な行動を取ることを期待する」としています。

 イランは200機以上の無人機とミサイルを発車後に攻撃終了を発表、国連憲章第51条を引用し「軍事侵略から自国の利益を守るために行った」と正当性を強調しました。この攻撃は、イスラエルがシリアの同国総領事館を爆撃し、イラン革命防衛隊の司令官と他の6人の将校が死亡したことで始まりました。イスラエルは、総領事館攻撃の犯行声明を出していません。

 イラン・イスラエルの緊張が高まり、米国はイスラエルを守るために軍艦を派遣するなど、国際的懸念を引き起こしています。アルゼンチンのミレイ大統領はイスラエルへの連帯とを表明し、「アルゼンチンはイスラエルが自国を防衛する権利を認める」と述べました。 

 また、カナダのトルドー首相は「イラン政権は地域の平和と安定を軽視している。イスラエルを守る権利を支持する」と述べ、ポルトガルモンテネグロ首相も「ポルトガル政府はイランのイスラエル攻撃を強く非難する」と表明しています。

サンパウロ州知事の支持率は62%

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ州のタルシシオ知事の支持率は62%、不支持率は29%でした。調査はクエストが 4月4日から7日にかけて16歳以上の有権者1,656人を対象に調査したもので、11日に発表されました。

 また、州政府の取り組みについては、41% が肯定的で、35%が普通、16%が否定的でした。因みにクエストが3月に行ったルーラ大統領に対する調査では、サンパウロ有権者の51%が支持し、46%が不支持でした。

ブラジルが3カ国のビザ免除を延長

 ブラジルのメディアによると、ブラジル政府は9日、米国、カナダ、オーストラリアからの観光客に対するビザ免除を2025年4月まで延長しました。この措置がなければ、3カ国からの旅行者は10日からブラジルのビザが必要となるところでした。

 ブラジルは、ビザ免除は相互主義の原則に基づいて行っており、3カ国はブラジル人旅行者のビザを要求しているため、10日でビザ免除を中止するとしていました。観光業界などの反対もあり、政府は3度めの延期を決めたものです。

 ボルソナロ前大統領は2​​019年、米国、カナダ、オーストラリア、日本の各旅行者に対するビザ免除を一方的に実施しました。ルーラ大統領になって、米国、カナダ、オーストラリアは相互主義の原則に反するとしてビザ免除を停止する方針を打ち出していました。

 日本からの旅行者については、日本政府が2023年8月にブラジル人に対するビザ免除を決めたため、日本人旅行者には適用されず、観光ビザ不要が続きます。

無政府状態のハイチで再建の動き

 無政府状態のハイチで政治指導者たちが移行評議会設立で合意しました。ブラジルのメディアによると、評議会のメンバーは9人(投票権を持つ7人、オブザーバー2人)で、主要政党、民間部門、市民社会の代表者で構成されています。評議会が設立されたのは8日で、任期は2026年2月7日までです。

 評議会の目的は無政府状態を解消、秩序の回復を目指すもので、最初に、3月11日にアリエル・ヘンリー首相の辞任で空席になっている新しい首相を選出します。新首相は評議会と協力し内閣を組織、「民主的で自由で信頼できる選挙」の準備を始めます。この選挙には議会や政府のメンバーは立候補出来ません。

 ハイチは2016年以来選挙を実施していなく、長年にわたる政情不安と治安不安に悩まされています。現在、ヘンリー前首相に対する抗争で複数のギャング団が結託、2月に警察署、刑務所、官公庁、空港を襲撃して以来、ギャング団が首都ポルトープランスの80%以上を支配するなど国内は最悪の状態にあります。ギャングに支配されたハイチは政治的、人道的な危機に直面しています。

ブラジルで押収されたコカインが100トン

 ブラジルの港や空港では2年間で100トン以上のコカインが押収されました。ブラジル・メディアが未公開データを入手、調査したところ、2021年から2023年にかけ港や空港で109.2トンのコカインが押収されていることが分かりました。コカインはコロンビア、ペルー、ボリビアからやってきて、主にヨーロッパへ発送されるものでした。

 麻薬組織は、ヨーロッパのマフィア、ラテンアメリカのグループ、カルテル、アフリカで活動しているグループと結びついていると言います。過去 3 年間に発生した 1,330 件の押収記録を見ると、押収されたコカイン約 78.6 トンが92カ国以上に送られていました。アジアではマレーシア、アラブ首長国連邦、香港がの主な目的地とされています。

 連邦警察のデータによると、海外に向かう途中で押収されたコカインの量が急増しています。 2021年には香港へ向かう40kgが発見されました。 2 年後には、 1 トン半が地球の裏側に送られることになりそうです。国連の最新調査では、オーストラリアではコカイン 1 kg がブラジル価格の 20 倍以上で販売される可能性を指摘しています。国連薬物犯罪事務所は、コカインの生産は近年徐々に増加していると言います。

 ブラジルでよく麻薬押収されているのはサントス港とパラナグア港がトップになっています。2023 年、サンパウロ国際空港では平均して 1 日あたり少なくとも 1 人が逮捕されています。同空港は各国への飛行機便が豊富にあるため、麻薬組織には利用しやすいようです。麻薬運び人には旅行客を装った女性を利用するケースが多く、逮捕される女性も増えています。

 麻薬密輸の増加で政府は、「州政府を支援し、組織犯罪、ギャング、麻薬密売、武器密売を撲滅するよう支援する」として、海軍と空軍はリオデジャネイロサンパウロの港や空港での監視を強化しています。