そっちの都合

かれこれ20年以上も前の話であるが今頃の時期になると思い出すことがある。
当時私は20代半ばだった。女にモテるというようなことはなかったがそれなりに青春をエンジョイしていた。そんなあるときのバレンタインデー、知人の女の子からこんなことを言われた。

『好きになってもいいですか?』

その女の子に対してはなんの下心もなければ悪い感情も持っていなかった。そして今ならもっと気遣いのあるものの考え方をするのだろうが、その当時はバカだったというか考えが浅かったというか。とにかく私は大して考えもせずに

『うん、いいよ。』

と、気軽に返事をしてしまった。
その後すぐにバレンタインが来て手作りチョコをもらった。そしてその後、ホワイトデーにお返しをしたのかどうかはよく憶えていないが、ちょうど今くらいの時期、その女の子に号泣しながらこんなことを言われた。

『好きになってもいいって言ったやん!!』

確かに私はそういった。言い逃れするつもりもない。しかし、彼女がなぜ号泣するほど怒っているのかサッパリ意味が分らなかった。人を好きになるというのはそっちの都合であって、それを辞めさせる権利など私にはないはずだ。そしてその時、彼女は私に対して何かをして欲しいと要望をだしたわけでもなかった。

しかしまぁ、あんなにスゴく怒られたのだから少しは堪えたし、そんな風に適当に返事してはいけないということも学んだ。しかし、それでも、やっぱり今でも思う。

『好きになってもいいですか?』

そんな風に聞かれた場合はこう思う

『そんなんオマエの勝手やん。』