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☆ネコのシムズ3日記☆

2018-04-19

第61話 心の扉

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「失礼ですが、あなたは?」

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「篠原です。千夏の、元彼氏の。」 ニコッ


一瞬驚いたが、ビリーは篠原宗太を千夏の部屋へ案内した。

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「千夏、ちょっといい?君に会いたがってる人がいるんだけど・・・」

ガチャ

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千夏は少し気怠そうにドアを開けた。



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「・・・!!」

時が止まったのかと思った。


ビリーの後ろに立つ青年に目を奪われると、驚きのあまり千夏は一瞬動けなくなった。。


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「や!千夏!」


そこにいたのは、かつての恋人、宗太だった。


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バタン


しーーーーーん


「えっ」

「えっ・・・・おっ」




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「おい!開けろよ!!千夏ーーーっ!!」

ガチャガチャガチャガチャ・・・

宗太が激しくドアノブを回そうとしても、千夏の部屋のドアはビクともしなかった。




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千夏に速攻で閉め出しをくらった宗太は、ビリーに慰められていた。


「実は千夏は階段から落ちたショックから声が 出なくなってしまったんです。」


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「今は誰にも会いたくないみたいで、ずっと部屋に。

 今日は久しぶりに外へ出掛けたみたいなんだけど、帰ってきてからはずっとあんな感じで…」

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「そうですか…ところで、千夏はこの頃歌はどうでした?」


その問い掛けに、ビリーは首を横に振った。


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「そっかぁ・・・なんかそんな気はしてたんだよな。」


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「あのっ、あまり千夏にとっては言って欲しくない話だとは思うんですが・・・」

ビリーはゆっくりと丁寧に、これまでの事を話した。

千夏を傷つけないような言い方を必死に頭の中で考え、少しずつ言葉を選びながら。

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それは、自分には救えない千夏の心の助けになってくれるのではないかと、

宗太に淡い期待を抱いたからだ。



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「そんな事があったのか。・・・あいつ、本当に変わってないな。頑固で負けず嫌いで、」

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「全く。正義感が強くて、困ってる人がいたらほっとけない性格なんだよ。」



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「だから自分を責めてしまったんだと思います。・・・あの、篠原さん。」

「ん?」

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「どうやら千夏は、階段から落ちた時とその少し前後の記憶がないそうなんです。

僕はその場にいなかったので、病院の先生から聞いた話にはなるんですが。」

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「どうしても思い出したくない事があったのかもしれません。」

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「寮長さん、俺、今日のところは帰るわ。また明日来てもいいかな?」

「勿論です。千夏の事、どうかよろしくお願いします!」

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「いや、実は。よろしくって言われても俺あいつにフラれてるんだ(笑)」

「えっ・・・す、すみません。」

「フった男が突然会いに来て、千夏にしてみたらいい迷惑だよな。」

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「まぁ、フラれた身でここまで乗り込んで来て、未練がましいし男らしくないけど、

正直、あいつの事をほっとけない自分にもマジでビビってるよ。」

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そう言ってその日、宗太は帰って行った。


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そして次の日も宗太は千夏の部屋のドアをノックした。

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コンコンコン

「千夏〜〜いるんだろ?開けてくれよ〜〜!」


しーーーーん

「おーーーーい!!」


コンコンコンコン・・・


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「・・・ダメか」


その次の日も、またその次の日も、しつこいくらいに宗太は千夏に会いにきた。

千夏の部屋の前でドアを叩いたり、ドアノブをガチャガチャと回したり、

正直ウザがられてもいいから、あらゆる手を使ってでもこのドアを開けたかった。

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「開けてくれよーーーっ!ちなつぅ〜〜〜!!!」


いくら呼んでも出てこない。

叫べば叫ぶほどに空しくなる。

決して開こうとしないドアは、まるで心を閉ざした千夏のようだ。

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「頼むよ・・・どうしてもお前に会いたいんだよ・・・」


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「・・・。」



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宗太がまた昨日と同じように寮を去った後、千夏は一人物思いにふけっていた。


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宗太の行動に揺れている自分がいる。

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水面に太陽の光が反射する。

ゆらゆらとゆれる水面を見つめていると、なんだか揺れている自分の心と重なる。



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「千夏さん。隣に座ってもいい?」

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「・・・。」


千夏は何も言わなかったが、ラリマーはそっと彼女の隣に腰を下ろした。


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「今日も、篠原さん来てたね。」

「...。」

「会わなくていいの?」

「・・・。」



千夏は首を縦にも横にも振らなかった。


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「千夏さん、私に言ってくれたこと覚えてる?」


「意地張ってちゃ損なんだよ。なんにも良いことなんてなかった。

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 自分の気持ちに嘘をついて、後悔ばっかりで・・・ラリマーにはそんな思いさせたくないんだよ。」

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千夏は、あの日ラリマーに言った言葉を思い出した。


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「あの言葉ね、ホントはすごく嬉しかったんだ。

 私も意地張って、ナオキ君とはもう会っちゃいけないんだって思ってたから。」

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「だけど、千夏さんのおかげで自分の気持ちに正直になれたんだよ。

 私も、千夏さんにはそんな思いしてほしくないんだ・・・。」


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「(ラリマー・・・)」




千夏はそっとラリマーを抱きしめた。



「千夏さん!?」

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「・・・。」

ギュッと千夏はラリマーを抱きしめる腕に力を込めた。


「千夏さん。あの・・・私のせいで・・・ごめんなさい。

 私、千夏さんの為に何ができるんだろうってすごく考えたんだけど、わからなくって・・・

 無力な自分が悔しいよ。これ以上、千夏さんのこと傷つけたくないのに。」



千夏の肩が震えている。

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「・・・千夏さん?」


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「(ラリマーは何も悪くない。私はラリマーのせいだなんて思ってない!)」



わかっている。皆が各々、自責の念にかられていることを。

もう誰も、自分のせいで私がこうなったって思って欲しくない。

ラリマーを抱きしめる腕に力を込める。

・・・本当に言いたい言葉は声には出せない。

だが千夏のそんな気持ちを知ってか知らずか、


「・・・ありがとう。千夏さん、本当にありがとう。」

ラリマーは何度も「ありがとう」と千夏に言った。





―次の日―

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「やっと会ってくれた。」


「・・・。」

「急になんで来たんだよって顔だな。」


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千夏はゆっくり頷いた。

「お前さ、俺に無言電話してきたろ?その後すぐ掛け直しても出ないし。」

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「何回掛け直したと思ってんの?」

「・・・。」

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「つか、声出ないのになんで電話してきたよ?」


「・・・。」

「千夏。」


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「・・・!?」

宗太は何も言えない千夏の頬に手をやり、一方的に話を始めた。

「聞いてくれるだけでいいから。」



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「・・・ごめんな。一人にして悪かったよ。」


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「・・・。」


「お前が夢諦めそうになってた時、電話くれたよな。

 本当はあの時すぐにここへ来ればよかったって、すごい後悔してる。」


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「頑張れ・・・って、無責任な言葉でお前の事追い詰めたのかもしれないって。」

「・・・。」

大きく首を横に振ると千夏は宗太に背を向けた。

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「・・・。」

「ごめん・・・俺さ、これまでもお前のこと振り回してばっかだったよな。」

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「この間再会した時だってそうだ。仕事と俺のどっちか今すぐ選べとか、お前の気持ち無視してさ…。」



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「マジで自己中で、我が侭で、自分勝手なヤな奴だよ。俺は。」



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「・・・。」


「後悔してるんだ。」

ふいに宗太の声が耳元に届くと、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


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「お前の前から姿消して、やりたい仕事に没頭してきたけど、本当はずーーっと後悔してた。

 だから無理矢理にでも再会して、プロポーズしたんだよ。冗談だって思うか?・・・まぁ、実際フラれたしな・・・。」


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「それでも、まだ諦められないでいる。・・・嘘じゃない。」



宗太の腕に込められた力は痛いくらいに、千夏への想いを伝えてくる。


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宗太の言葉はきっと、彼の本心なのだろう。嬉しくないと言えば嘘になる。


だけど、声が出ない。出せない。伝えられない・・・

それに、こんな自分の事をまだ諦めていないだなんて。

信じられない・・・


だって私は会話もできない、歌も歌えない、 なんにもできない役立たずなのに!!









千夏は宗太の腕を振りほどいた。

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「千夏・・・?」

「・・・。」

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「何、それがお前の気持ち?」

「・・・。」

千夏はゆっくりと頷いた。

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「そ・・・そっか。・・・ははっ。」



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決して振り返らない千夏の背中を見つめ、宗太は少し悲しげな顔をすると、

「わかった。」と言い残し、そっと部屋を出て行った。


バタンと音を立ててドアが閉まる。

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「(一緒になんて、いられるわけが無い!!)」



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宗太との未来を少しでも想像した。

きっと冗談を言い合い、笑いで溢れる楽しい毎日なのだろう。

でもそれは、声に出して初めて成立すること…。


そんな眩しい未来への扉も、今、大きく音をたてて閉ざされた。




「後悔してるんだ」


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宗太が思う以上に、自分だって後悔している!!

それはもう数え切れないほどに。

今だってそうだ。彼の優しさから逃げ出したところだ。




生きていくのに全く後悔のない人間なんているのだろうか?

そんな人、恐らくほとんどいないだろう。

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「後悔しない生き方をしなさい」

脳裏にラリマーの祖母、アンバーの言葉が響く。

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後悔しない生き方が正しいのならば、

私の間違いだらけの人生は終わってるも同然だ。

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そしてまさに今、新しい後悔を生んでしまった。

できることなら一番最初からやり直したい。


今の千夏に、アンバーの言葉は酷く厳しいものだった。


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・・・千夏の心はもう限界だった。





―次の日―

ピンポーン


「やぁ!オオトモくんじゃないか。」

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「こんにちは。あの、実は・・・千夏さんにどうしても伝えたい事があって来ました。」

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「?」



コンコン

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「千夏、ちょっといいかい?」

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「・・・。」



「昨日、篠原さんと何かあった?」

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ビリーの問いかけに千夏は首を横に振る。

「・・・そっか。」

「さっき西崎オオトモくんが来たよ。千夏にどうしても伝えたい事があると言って、来てくれてたんだよ。

 それで、伝言を頼まれたから、僕から話していいかな?」

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「・・・。」

千夏はゆっくり頷いた。

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エメラルド社長が、君の声が出るようになるまでオーディションを延期してくれたそうなんだ。

 以前、君が受けたオーディションで悪い評価をつけていなかったらしくって、もう一度歌を聴かせて欲しいんだって。」

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「(延期って・・・いつ声が出るようになるのか、そもそもまた歌えるのかすらわからないのに。)」

千夏は複雑な気持ちでいっぱいだった。

困惑した表情の千夏に、ビリーは話を続ける。

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「延期とか言って、君にとってプレッシャーになるような事はしたくないってオオトモくんが言っていてね・・・」



「千夏さん、これを聞いたらきっと無理して声を出さなきゃ!って自分を追い込んじゃうと思うんです。」

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「でも僕もエメラルド社長も、気長に待つつもりですし・・・いやむしろ待ってるって思わないでいいです!!」

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「僕らの事はいっそ忘れてもらって・・・いや待て、忘れられちゃダメだ!・・・えっと、えっと・・・」

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フヒッ?うーん、なんだか意味がわからないぞ・・・」ブツブツ



ととと、とにかく!僕らは千夏さんの事を応援しています。

 声が出せるようになる事を信じているし、心の底から祈ってます!!」 

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「僕はとことんデリカシーの無い男なので、千夏さんのこと傷つけちゃったかもしれませんが、

 でもまた歌って欲しいと思ってるのは本当です。聴いてみたいんです、千夏さんの歌を。僕は!!

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「本気と書いてマジと読む男です!!」



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「(オオトモくん・・・)」

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「千夏、僕も君に謝らないとって、ずっと思ってたんだ。」

「歌う事を悩んでいた君に、見切りをつけるのと諦めるのとは違う、って言ったよね?」

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「・・・。」

「千夏の人生なのに・・・僕はなんて偉そうなことを言ってしまったんだろうって、悔やんでも悔やみきれない。」

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「こんなに、君を追い詰めていたんだって、僕は・・・・うぅっ・・・。ごめんよ、千夏・・・。グスッ」

ビリーは唇を震わせ、眼に涙が浮かべている。

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「(ビリー・・・)」


千夏は大きく首を振ると、涙を流して謝るビリーをそっと抱きしめた。

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「・・・」

「千夏・・・ごめん・・・ほんとに僕は、なんてことをしてしまったんだ・・・!!本当にごめんよ・・・グスッ」


ビリーは小さな子供のように、千夏の胸で泣いた。

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ごめんよ・・・!!うわぁぁぁん




何度も何度も、謝罪の言葉を繰り返して・・・


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