Hatena::ブログ(Diary)

みちくさのみち(旧) RSSフィード

2018-08-30

お知らせ

はてなダイアリー終了のお知らせを受けて、はてなブログに移行します。



新しいURLは以下の通りです。

https://negadaikon.hatenablog.com/

相変わらずの更新頻度だろうと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2018-08-26

近代日本の留学生の歴史に関する文献リスト

 我が家にテレビがないので「西郷どん」は視聴できていないのだが、8月26日の放送では、長州ファイブや薩摩スチューデントについて言及があったようだ。

長州ファイブ [DVD]

長州ファイブ [DVD]

グローバル幕末史 幕末日本人は世界をどう見ていたか

グローバル幕末史 幕末日本人は世界をどう見ていたか

 春学期に担当した、日本と欧米の「文化交流史」に関する歴史の講義で、私も長州ファイブなどを取り上げた。

 この授業では幕末に国禁を冒して渡英した人々から始まる「留学生の歴史」をテーマに、あれこれと調べつつ試行錯誤しながら話してみたのだが、けっこう改善の余地があったので、あとで思い出して修正するために、まだ仮のリストではあるが、講義で使った参考文献をあげておく。すべてを網羅しているわけではないが、もし何かあれば、授業改善のため情報をお寄せいただけると幸いである。

 留学生の通史に関しての基本文献には

近代日本の海外留学史 (中公文庫)

近代日本の海外留学史 (中公文庫)

 幕末幕臣たちの渡航者、長州ファイブ、薩摩スチューデントたちについては、上記文献以外に

幕末オランダ留学生の研究

幕末オランダ留学生の研究

明治を作った密航者たち (祥伝社新書)

明治を作った密航者たち (祥伝社新書)

森有礼 (人物叢書 新装版)

森有礼 (人物叢書 新装版)

 留学先で困難な状況に立ち会ってもメンタルが強すぎる高橋是清などの場合

 岩倉使節団については、『米欧回覧実記』に書かれた場所を実際に見聞しながら物された

岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)

岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)

 をはじめ多数の文献がある。

 岩倉使節団に同行した女子留学生津田梅子については

津田梅子の社会史

津田梅子の社会史

 明治十年代に帰朝して法律知識を持ち帰ってくる官僚たちについては、

 中江兆民森鴎外夏目漱石をはじめとする個々の人物について。

和魂洋才の系譜 内と外からの明治日本 上 (平凡社ライブラリー)

和魂洋才の系譜 内と外からの明治日本 上 (平凡社ライブラリー)

和魂洋才の系譜(下) 内と外からの明治日本 (平凡社ライブラリー)

和魂洋才の系譜(下) 内と外からの明治日本 (平凡社ライブラリー)

あめりか物語 (岩波文庫)

あめりか物語 (岩波文庫)

 姉崎正治「洋行無用論」に関して、その発端になったドイツ黄禍論について。

黄禍物語 (岩波現代文庫)

黄禍物語 (岩波現代文庫)


 留学に限られないが、文化交流の歴史を推進する団体について。

 そのほか、日本からの文化の「発信」について考えさせられた本として。

その他近現代における国際交流の基本的な通史として。

 戦後だと

逆に、日清日露戦争のあと、海外から日本にやって来た留学生たちの動向については授業でほとんど取り上げられなかったので、今後の課題ではある。

2018-08-07

高校日本史の学び直しに向けて今何ができるだろう

※8/23ちょっと文献追加

 図書館を退職して大学に移って日々感じていることの一つに、高校で日本史を取らずに大学に入って、後で日本文学やその他の授業でやっぱり日本史知識がいるんじゃないかと苦しんでいる子の存在がある。日本史の担当教員になった以上、なんとかこういうギャップを埋めてあげたいと思う。

 そんな関心から手に取り、目を通した本を並べてみる。

教科書・通史のリバイバル

 最近は社会人にも日本史の学び直しがブームのようで、教科書が新しい形で出ている。アナウンサーが読んでくれる本なども出ている。

もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本近代史

もういちど読む山川日本近代史

 また、新書もある。

やりなおし高校日本史 (ちくま新書)

やりなおし高校日本史 (ちくま新書)

 ただ、硬派で良いといえば良いのだが、最近の日本近代史系の新書に関して言うと、テーマのせいなのか微妙に内容難しくなっているようにも感じる。

 その他著名講師によって1冊にまとまっているものもある。この辺、問題意識を持った先生の活躍がすごい。

 こうして、ドラマなどの影響もあるのか、日本史を一通り理解したいという欲求は高いみたいである。書店に行くと結構この手の本が目に付く。

 

 びっくりしたのは雑誌でも特集が組まれていたりすることだ。

 とはいえ、大学の日本史と高校の日本史は、同じではない。高校日本史が基礎となる一通りの知識について教科書をベースにして教えているとしたら、大学の日本史は教科書の知識の重要さや記述バランスの妥当性を問い直し続けていることになる。

 「発展的な内容」だとか「応用的な内容」と言ってしまえば言えるが、大学でそれを教えないで、高校日本史の復習を大学でやるというのも変な話になってしまう。

 日本史の高大連携の壁は、思っているよりも意外と高い。

 その辺を架橋しようと試みた大学向け日本史の本もあるが、独学で読もうとすると難しいのではないか。

 そうすると勢い、補習や復習の形で、各自で学び直しのための工夫というのも求められるのだが、これも難しい。

動画で

 時間がある人ならYoutube日本史の講義をしてくれているムンディ先生のような高校の先生もいる。ほかにも高校日本史ならNHKの高校講座の日本史サイトでも紹介されていたりする。

 テレビなので、視覚的に入ってくる情報は非常に優れており、印象に残りやすい。最近世界史についての本も出た。


高校の学習参考書なら

 学び直しに向けて、高校の学習参考書を見るという手はある。語学春秋社の実況中継シリーズは人気が高い。ただ、ボリュームが多くてその分値段も張る。

 

 私が高校生だった1990年代後半は菅野の日本史実況中継があって、ノート綺麗に作ることをとても推奨していて、大学で日本史をやろうと思ったものの大して知識がなかった私は素直にノートを作っていたのだった(3色ボールペンにはまっていて、超重要事項は赤、やや重要なものを緑、人名だけは鬼門と思っていたらしく区別するために青を使っていた。いまだにその名残がある)。

 

f:id:negadaikon:20180808100915j:image

 最近見返していたら、時期区分など依拠している学説は古いものの*1、基本情報はそんなに変わらないし、まだ使えるんだなと改めて思ったりしたところだった。

 『自由民権運動』の最新動向は松沢さんの新書を読むと良いと思う。

 


 佐藤優氏が勧めている学習参考書も多いらしく、最近は書店に帯がついていたりする。

 高校時代、日本史を極めようというやつが『詳説日本史』などを手に取って周りを圧倒していたが、あれも参考書としては良い本だと思う。

詳説日本史研究

詳説日本史研究

 復習するのに、内容では、何といっても一番教科書が良いのだが、文字が多すぎてなかなか頭に入ってこないという人もいるだろう。

 それに、教科書の内容もだいぶ変わってきている。


ビジュアル系

 歴史研究者が本気を出して作ったビジュアル系解説は、良いのだが、高い。図書館で見るか、個人で買うのはなかなか難しいだろう。

 歴史漫画も馬鹿にはできない。ただやっぱりセットで揃えるのは、「ちょっと日本史の勉強し直しをしたい」というニーズに対して割高かもしれない。

 各社の比較サイトまであるが、近現代が充実しているので、個人的には集英社推しだが、この辺は好みかと思う。

 私の場合、とくに留学生には、高校の副読本の「図説」という資料集を買うように勧めている。これはビジュアルが豊富だし、索引も年表もある。元号もだが、とりわけ旧国名などは地図を見なければ留学生にはハードルが高いはずだ。慣れるとすぐ物足りなくなるだろうが、これに慣れないとその先はけっこうつらいはずである。高校時代に買った(買わされた)人は引っ張り出すといい。 

 なにより、学習参考書、学校の副読本ということで、この情報量で千円前後というのがありがたい。



人物を攻略する

 日本史知識がないと、専門の本を読んでいくのはけっこう苦痛である。私にも覚えがある。

 

 そしてその苦痛のたいがいの原因の8割近くは、人名に心当たりがないということになると思う。大学でいきなり学ぶ日本史の本はたいがい、登場人物が多すぎるのである。知らない人がどこで活躍していったという話を聞いても、頭には残らない。学生からの反応でも、一人の人物の意外なエピソードみたいなのを雑談で話してもらうと面白くて興味が持てそう、というコメントがあったりした。

 もちろん、2割くらいは特殊な歴史用語の可能性があるが、そのような言葉の場合は括弧書きや注で補足説明が入っていることも多い。

 だから、人物がわかれば歴史もそんなに怖くないということになる。

日本史人物辞典

日本史人物辞典

 自分の場合、入門書というか概説書を読んで、そこに出てくる人名の脇に傍線を引いてノートに書き写し、さらにそのノートをもって図書館に行き、『国史辞典』を引き続けながら重要事項を抜き書きするという方法で乗り切ろうとしていた(抜き書きにしていたのは全文書写すると訳がわからないのと、長すぎたからだ)。私が使っていたのは小学館日本の歴史シリーズだった。

大系 日本の歴史〈13〉近代日本の出発 (小学館ライブラリー)

大系 日本の歴史〈13〉近代日本の出発 (小学館ライブラリー)


 ネットの普及と言っても携帯で何かできるわけではなかった前世紀末の話であるが、人名を英語の単語帳のようにB6サイズの京大式カードに書き取って履歴とか参考文献のメモを作っていた。

f:id:negadaikon:20140707221455j:image

 しかし今なら人物履歴事典のように必要な情報がコンパクトにまとまっているものもあるし、Wikipedia日本大人名辞典が入っているコトバンクで引いたってかまわないわけだ。

日本近現代人物履歴事典

日本近現代人物履歴事典

 それをevernoteなどのノートに入れて自分用の人名辞典を作っておけばいつでも参照できる。

 国立国会図書館の「近代日本人の肖像」を眺めて顔を覚えるのも一つの方法だろう(著作権切れが判明している写真を収集しているので、どちらかといえば政治家が多く、学者や文化人には載っていない人も多いのだけれど)。



入門用の概説書とその他のツール

 もしこの方法で歴史の基礎体力をつけるなら、上のように文庫化している概説書のシリーズが良いと思う。岩波新書のシリーズもありだが、人によってはちょっと敷居が高いかもしれない。そのような場合には、岩波ジュニア新書の日本の歴史などもおすすめである。

日本の歴史21―近代国家の出発 (中公文庫)

日本の歴史21―近代国家の出発 (中公文庫)

幕末・維新―シリーズ日本近現代史〈1〉 (岩波新書)

幕末・維新―シリーズ日本近現代史〈1〉 (岩波新書)

明治維新―日本の歴史〈7〉 (岩波ジュニア新書)

明治維新―日本の歴史〈7〉 (岩波ジュニア新書)

 なお、大学の授業に出席するときには、特別講義や演習など専門性の高い科目に出るときにはハンディな日本史辞典を持参するよう指導されていた(山川の高校の用語集で手に負えるレベルではなかったのだ)

日本史辞典

日本史辞典

山川 日本史小辞典

山川 日本史小辞典

 さらに近代史の場合、人物の先輩・後輩についても抑えておくとよい。生年や出身と手がかりに並べ直しても良い。派閥も重要である。出身大学の縁で友達関係になっている場合だってある。木戸孝允伊藤博文はどっちが年上なのか、パッと見てわからないところから歴史を学び始める人はいる。

 あとは、放送大学のテキストは密度が非常に高いので、勉強しなおしにはうってつけかもしれない。

日本の近代―国民国家の形成・発展と挫折 (放送大学教材)

日本の近代―国民国家の形成・発展と挫折 (放送大学教材)

 加藤陽子先生と高校生の対談…も、学び直しの一助となるだろうか?

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

 一冊で近代史をということなら手に取りやすいのが最近の本ではこちらを勧める。


 教員の立場からやるとしたら…Vtuberは難しいとして、スライドなどの公開とかは出来そうだろうか。日本史の苦手な人に届けたいと思っても、結局日本史好きな人しか見ないという結果だと嬉しさとさみしさが半ばするのだが。

最近出た中公新書の『日本史論点』も、巻末に色々な文献ガイドがあってありがたい。

 ほかにもおすすめがあったら教えていただきたい。

*1:写真にうつっているところで言うと、士族民権とか豪農民権とかいう区分は、私が高校生だった90年代でもちょっと古い学説になっていたと思うのだが、大学に努める研究者の論争の最前線と、高校の受験業界で定着するのとではタイムラグがあるのだな…と思った次第。でも2018年でも豪農民権でググると結構な情報が出てくるので、一度定着してしまった受験向けの知識の体系化は、そう簡単には変わらないという事なのかもしれない

2018-08-05

日本文化論を学ぶ人に勧める本のリスト

 今年、本務校の大学で、「日本文化論」という講義を担当した。授業のレポートも締め切ったので、講義中で取り上げた本、発展的に知りたい人におすすめの本、本当は取り上げたかったのだが時間的制約で断念した本、などをまとめておく。不十分なリストであるが、検討し直しのための材料としたい。15回の授業でこんなに紹介するのはシビアだったはずだが、最後まで付き合ってくれた受講生に感謝したい。

 最近、書店の棚にも色んな日本文化論本が増えている(ピンからキリまで)ので、このリストも、受講生が復習に使ってくれたり、何かの参考になるのであればありがたい。

 なお、「日本文化」についてではなく、あくまで「日本文化論」の文献リストであることをお断りしておく。

総説

 

 近年でも、日本文化論の概説書には事欠かない。そのなかのいくつかは名著とされているものもある。

 南博の調査した文献だけでも、全部読むのは大変で、授業で取り上げるのも難しいだろう。

日本人論―明治から今日まで (岩波現代文庫)

日本人論―明治から今日まで (岩波現代文庫)

日本文化論キーワード (有斐閣双書KEYWORD SERIES)

日本文化論キーワード (有斐閣双書KEYWORD SERIES)


 また、「日本文化」なんて定義のしようがないんだし、あたかもすべての日本人に妥当するかのような特徴を取り上げても実証的でないので、「日本文化論」というのは基本的にはいかがわしいものであるという意見も結構ある。

 そもそも日本文化論が対象とする日本人の定義だって簡単ではない(例えばハーフやクォーターの場合はどうするのか、東日本西日本の文化的な違いはどうするのか、など)。だから血液型診断のように、いちいち日本文化の特質を取り上げて過度に共感したり、真に受け過ぎるのは考えものだ…というのが、1990年代以降、国民国家批判が盛んななかで大学の人文学を一通りかじった人の間で、比較的主流派の意見になっていると思う(私はそう思うのだが、どうだろうか。)

〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)

〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)

日本人はなぜ存在するか (集英社文庫)

日本人はなぜ存在するか (集英社文庫)

 もちろん国民国家批判より以前から、1970年代以降に急増した日本文化論の複数の出版について、「大衆消費財」であって学問的な議論でないとバッサリ切って捨てたハルミ・ベフの本などがあった。

 近年でも『日本文化論のインチキ』などのように、ある論者が日本の特徴と言っているものは別に他の国でも普通にみられるものであるということが続々と指摘する本も出ており、「日本文化論」のもっともらしさというのは、急速に意味を失いつつあるし、「創られた伝統」に対して、懐疑的なまなざしも向けられる。

イデオロギーとしての日本文化論

イデオロギーとしての日本文化論

日本文化論のインチキ (幻冬舎新書)

日本文化論のインチキ (幻冬舎新書)

「日本の伝統」の正体

「日本の伝統」の正体

 一方で、「日本は〇〇の国」という明確な答えを求める傾向が強いのはむしろ留学生であるということが、授業をしてみて初めてしみじみわかったことでもある。それはまあ、日本の文化に興味があって日本に留学して来たのに、来た先で日本文化論なんか信じるに足らないというメッセージを私みたいな教員がしたり顔で話していたら、普通はショックを受けるか、腹が立つだろう。

 自国の文化についてステレオタイプな文化論に疑義を呈して多様性を主張している人が、「〇〇だからアメリカ人は嫌い」というようなイメージ先行で、他国に対して恐ろしく単純化した固定観念を抱く傾向は、割と根深くあるような気もする。ステレオタイプ俗流日本人論批判が、しばしば国内向けの閉じた議論に陥っていくように見えるのも、なんだか残念だなという思いも持つ。

 なぜこんなにも日本文化論や日本人論が好まれるか。という点に踏み込んだ本もある。

「日本人論」再考 (講談社学術文庫)

「日本人論」再考 (講談社学術文庫)

 個人的には、歴史的にも日本文化の特徴というのを一つには定めがたいことを見極めた上で、時代ごとに異なったタイプの日本文化論が続々と生まれてくる背景は何なのか、時代背景を踏まえつつ思想史的に捉えてみて、上手な付き合い方を考えるということを、戦後は青木保の『「日本文化論」の変容』なども紹介しながらやってみたのだが、うまくいったかどうか。

 


各論―授業で取り上げた日本文化についての本

 授業ではこんな本を取り上げた。

 明治期、急激な西洋化に反対する意味で日本文化論の嚆矢となった著作は、明治20年代の志賀重昂三宅雪嶺らの国粋保存主義の運動のなかで生み出された。明治時代にはその後、新渡戸稲造内村鑑三のようなキリスト者、あるいは岡倉天心らによって、英文で日本文化を紹介するという試みがなされる。

日本風景論 (岩波文庫)

日本風景論 (岩波文庫)

代表的日本人 (岩波文庫)

代表的日本人 (岩波文庫)

武士道 (岩波文庫 青118-1)

武士道 (岩波文庫 青118-1)

茶の本 (岩波文庫)

茶の本 (岩波文庫)

 明治末期から大正期、さらに昭和戦前にかけては和辻哲郎九鬼周造などの哲学者谷崎潤一郎のような文学者の間で様々な日本文化が語られる。そこには西洋化によって失われてしまったものを求める、文明批評、近代批判的な要素も少なからず含まれていたといえる。

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

風土―人間学的考察 (岩波文庫)

風土―人間学的考察 (岩波文庫)

江戸芸術論 (岩波文庫)

江戸芸術論 (岩波文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

近代の超克 (冨山房百科文庫 23)

近代の超克 (冨山房百科文庫 23)

日本イデオロギー論 (岩波文庫 青 142-1)

日本イデオロギー論 (岩波文庫 青 142-1)

 戦後は、青木保『「日本文化論」の変容』で指摘されるように、否定的特殊性の認識、歴史的相対性の認識、肯定的特殊性の認識というように、日本の復興経済成長の度合いに応じて、特殊性がプラスの要素に見られたり、マイナスの要素に見られたりするということが起こった。

 そして1970年代以降、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』をはじめとして、大量の日本文化論が生み出されていくことになる。

堕落論・日本文化私観 他二十二篇 (岩波文庫)

堕落論・日本文化私観 他二十二篇 (岩波文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)

雑種文化 日本の小さな希望 (講談社文庫 か 16-1)

雑種文化 日本の小さな希望 (講談社文庫 か 16-1)

文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫)

日本の思想 (岩波新書)

日本の思想 (岩波新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

「甘え」の構造 [増補普及版]

「甘え」の構造 [増補普及版]

 1990年代以降、平成になってからは、「日本」とか「文化」の存立の根拠から問い直し、色々な先入見を相対化しようとする議論が相次いで出ている。

 70年代くらいに流行していた議論(日本の集団主義とか終身雇用とか官僚機構の優秀性とかは、今読み返すと、果たしてどのくらい今でも有効か?と首をかしげたくなるものがあるが、それは結局、「日本文化」に限らず、時代の変化から影響を被らざるを得ない文化というものの一貫性を証明するのが難しいということと、合わせて考える必要があるんだろう)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)


取り上げられなかった本

 取り上げたかったのだが、時間的制約で取り上げられなかった本もある。思いついたのでは、このあたり。

文化防衛論 (ちくま文庫)

文化防衛論 (ちくま文庫)

日本的霊性 (岩波文庫)

日本的霊性 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)

ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)

つくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫)

つくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫)

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

また新たな切り口で説明できないか、引き続き色々考えてみたい(2018/8/6追記)。

2018-07-26

大学1年生に一読を勧める本のリスト

図書館を退職して大学教員になって、4か月が終わろうとしている。なんだかあっという間だったが、学生さんの顔を見ていると元気が出てくるもので、授業は上出来とはいえなかったかもしれないが、どうにかここまで来ることができた。

図書館勤めの経験を活かそうと思い、出来るだけ本を紹介しようとしていたら、1年生などから、おすすめの本を教えてほしいというリクエストがあったので、このリストをごく簡単にしたものを授業でも紹介したが、こちらには補足も兼ねて書いておく。あわよくば使いまわしたい。


「大学生」「本」「おすすめ」のキーワードでググってみると、たくさんのキュレーションサイトなどが見つかるが、現役学生が作ったのか、あるいは社会人が作ったのか、人文系のものよりも、ビジネス書自己啓発系の本が多めなのが気になった。それも良いのだが、もうちょっと大学生のうちに、とくに人文系の人が腰を据えて挑む系のブックリストがあってもよいのではないか。とも思うのだった(昨今の大学生が例えば20年前と比べても非常に忙しい生活を強いられていることを知った上でなお。)。

自分が大学教員としてどの程度信頼されうるかにもよるが、情報過多の時代にあっては、身近な人が都度つくる個性的なブックリストが、専門分野により多少偏っていたとしても、有用なものになりうるという気がする。


最近出た、大澤聡さんの『教養主義リハビリテーション』は、良書なのだが、まだちょっと難しい気がする。脚注は丁寧についているが、学術書を読みなれていない1年生だと、まだ言葉になじめないのではないか。第4章のまとめは、4年間卒業まで人文系で行こうと思う人は一度読んでおいた方がいい文章だと思うけれど、太刀打ちできるようになるまではほかの本を読んで語彙や知識を蓄えたほうがいい。

教養主義のリハビリテーション (筑摩選書)

教養主義のリハビリテーション (筑摩選書)


以下、独断と偏見による1年生向けの本のリストである。読書好きな人はとっくに読んでいて面白みがないと言われそうでもあるが、これから試験が終わって夏休みに入る学生さんたちがこのなかの1つでも2つでも読んでくれるといいなという願いを込めつつ。


学問論

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 大学で学ぶということの考え方について、千葉雅也『勉強の哲学』(文芸春秋社2017年)では、大学での勉強で知っておいた方が気楽になるいくつかの心構えが説かれる。大学ってそもそも何なのかということについても、いくつか新書がある。

大学とは何か (岩波新書)

大学とは何か (岩波新書)

 何で勉強するのかということを少し古典から考えるとすれば、福沢諭吉学問のすすめ』とか、ウェーバーの『職業としての学問』(最近新訳が出た)を、読んでみるのもアリだと思う。

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

職業としての学問 (岩波文庫)

職業としての学問 (岩波文庫)


読書論

 千葉さんが取り上げている本で、読書に関するものとしては『読んでいない本について堂々と語る方法』も、教養についての考え方を広げてくれると思う。

 読書については、ほかに永江朗『本を読むということ』(河出文庫)がある。

 永江さんの読書方法、おそらく全部真似するのは多分無理だと思うが、とっつきやすい読書術の参考として、自分もやってみようかなという手法は取り入れていくといいのではないだろうか。

 読書術に関しては『本を読む本』や加藤周一の『読書術』など、挙げていくときりがない。松岡正剛佐藤優の対談本『読む力』なんていうのもある。

読書術 (岩波現代文庫)

読書術 (岩波現代文庫)

 読んだ本を何らかの形で記録に残しておくというのも良い方法である。本は、必然的にたくさん読んでいくことに迫られるが、そうすると絶対に前の内容を忘れるものである。色々なやり方があるが、カードに書くのならば梅棹忠夫知的生産の技術』とか、『読書は一冊のノートにまとめなさい』、あと佐藤優の『読書の技法』などがあろうか。

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]

読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]

読書の技法

読書の技法

 ただ、読むことの玄人というべき人たちの本の読み方は、ハッキリ言って、物書きになるつもりでもなければ参考にはならないと思う。「ここまでやらないといけないのか」では、読書のモチベーションが削がれてしまうので、「こんなことまでやる人がいるのか」と思いつつ、興味深い方法があれば取り入れるくらいのつもりで十分だと思う。

 やりすぎてしまった読書記録については、原田宗典『お前は世界の王様か』にサンプルがある。私が好きな本の一つ。

おまえは世界の王様か! (幻冬舎文庫)

おまえは世界の王様か! (幻冬舎文庫)

 小説家となった著者が、大学生時代に付けていた読書カードを20年ぶりくらいに読み直して悶絶し続けるエッセイ。それぞれの大作家への入門でもあり、また、各自の読書記録の付け方の参考にもなると思う。


 そういう意味で読書苦手な人向けの読書術としては、いかに効率的に本を読むかを追求した『理科系の読書術』というのもあるが、人文系の人はここから出発してもう少し発展的に頑張ってほしい気もする。

ライティングについて

大学生になってレポートを書く経験をするとなると、やり方がわからなくて困ることが多々あると思う。私の場合、教科書として『アカデミックスキルズ』を活用させてもらっているが、それ以外でレポートの書き方本を探すと大量にあって、また絞れなくなる。

こういうのは好みによって当たりはずれがあるではあるが、もし1冊選べと言われたら、古典である『レポートの組み立て方』を推す。

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)

木下是雄さんは『理科系の作文技術』も名著で、最近はまんがでわかる本も出ているので、こちらを読んでも良い。事実と意見の区別など、文章の基本が書いてある。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

あとは『論文教室』。作文がヘタな学生が実際に登場して、対話形式で欠点を直していくというもの。会話のノリで好き嫌いが分かれそうだが、わかりやすさでいえば、近年の論文の書き方系の本では優れているかなと思う。

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)

ちょっと専門的な分野への入門書

2年生や3年生になってより専門的な勉強を始める前に、読んでおいた方がいい入門書のようなものは、分野ごとに存在する。『●●学入門』とか『●●学概論』のような本がそれである。ただこういう入門書ハードカバーの想定で結構ゴツくて、手ごわいということもあると思うので、さらに手に取りやすいものでお勧めなものをいくつか取り上げる。

井出英策・宇野重規・坂井豊貴・松沢裕作『大人のための社会科』(有斐閣2017年)は、歴史や社会科学に関心がある人におすすめ。

大人のための社会科 -- 未来を語るために

大人のための社会科 -- 未来を語るために

言葉と文化の深い結びつき、特に言葉が現実を作っていくことについては鈴木孝夫『ことばと文化』(岩波新書1973年)は、外国語を本格的に学習するときに役立つ考え方を教えてくれると思う。

ことばと文化 (岩波新書)

ことばと文化 (岩波新書)

新書にはすぐれた入門書が多い。

著名な学者の自伝なども、その分野を専攻しようとするときのヒントになる。私が高校から大学にかけて読んで影響を受けたのが、阿部勤也『自分のなかに歴史をよむ』だったりする。

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

ほかにも歴史学者は色々な自伝風の新書を出している。

日本近代史学事始め―一歴史家の回想 (岩波新書)

日本近代史学事始め―一歴史家の回想 (岩波新書)

日本史についてより深く知るための漫画もある。映画化された『この世界の片隅に』は未読の人はぜひ原作も読んで、日本の近代史について考えてほしいが、他にも日本の近代を舞台にした漫画作品もたくさんある。明治時代を扱った『王道の狗』とか。夏目漱石をめぐる人物群像を描く『坊ちゃんの時代』とか。


日本の思想について、自分が1年生から2年生にかけて読んでいてとても影響を受けた本も何冊か。

明治の文化 (岩波現代文庫)

明治の文化 (岩波現代文庫)

たぶん私が一番最初に読んだ本は色川大吉明治の文化』だったのではないかと思う。民衆思想という独自の立場からの記述が、タイトルから予想していた内容と少し違ったのに驚いたりしたのだが、マイナーな人物の生き生きとした造形に心惹かれるものがあった。

近代日本思想案内 (岩波文庫 (別冊14))

近代日本思想案内 (岩波文庫 (別冊14))

鹿野政直『近代日本思想案内』(岩波文庫、1999年)については、明治時代以降の日本の思想・文化の著作についてこれ以上コンパクトにまとめた本は現時点で存在しないと思う。このなかから日本の有名な作品を探ってみたい人のガイドとして活用できそうに思う。日本の思想全体であれば苅部直『日本思想史の名著30』もあわせて読みつつ、各章末の書誌事項を手掛かりに原典へとうつっていくのがよいと思う。

日本思想史の名著30 (ちくま新書)

日本思想史の名著30 (ちくま新書)


おまけ(図書館の活用術)

個人的に、本はある程度は身銭を切らないと内容は見につかないと思うが、どれがいい本でどれが悪い本か、自分の中に基準が出来上がる前にたくさん買うのが良いかどうかは、一概にいえないと思う(買って損したと思うことも重要な経験なのだが、いかんせん、新書も多角化しすぎて当たりはずれはわかりにく過ぎる)。自分に合わない本を高いお金を払って買う必要もないだろう(本を嫌いになってしまったり、いずれ手放す可能性があるからだ)。そういうときには図書館を活用して、自分に合ったものを厳選して集めていくのが良いと思う。

図書館の使い方も、有効な使い方があるのを知っているのと知らないのとでは雲泥の差が出る。大学生は、分類の0の棚に行くと図書館関連本のあまりの多さにびっくりすると思うが、使い方に慣れれば良い読書体験ができる可能性がぐっと広がる。井上真琴さんの本などを見ながら、その点も意識してほしい。

図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)