ブリッジ・オブ・スパイ(2015,米)

ブリッジ・オブ・スパイ ―王道大作に文句なし。長く愛されるべき作品。―


解説:スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、ジョエル&イーサン・コーエン脚本と、いずれもアカデミー賞受賞歴のあるハリウッド最高峰の才能が結集し、1950〜60年代の米ソ冷戦下で起こった実話を描いたサスペンスドラマ。保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとしてFBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だったアメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。(以上,映画.comより)


20160219,金,ユナイテッドシネマ・キャナルシティにて観賞。上映最終日に何とか間に合った。最終日にしては客入りは意外と大目。といっても小さめのスクリーンに20名程度。まあ時間帯も早かったしこんなもんか。最近深夜回ばっかり行っていたから感覚がおかしいのかも。

007 スペクター(2015,米)

007 スペクター ―ヴァルツの「ちっきしょー!!」って顔がもっと見たかった―


解説:ダニエル・クレイグが4度目のジェームズ・ボンド役を演じる「007」シリーズ第24作。前作「007 スカイフォール」に続きサム・メンデス監督がメガホンをとり、レイフ・ファインズベン・ウィショーナオミ・ハリスら共演陣も続投。新たなキャストとして、ボンドガールとなるモニカ・ベルッチレア・セドゥー、「SHERLOCK シャーロック」のアンドリュー・スコット、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のデビッド・バウティスタ、そしてオスカー俳優のクリストフ・ワルツらが参加。「スカイフォール」で焼け残った写真を受け取ったボンドは、そこに隠された謎を追って単身メキシコ、ローマと渡っていく。その過程で悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルキア・スキアラと出会ったボンドは、悪の組織スペクターの存在を突き止めるが……。(以上,映画.comより)


2月18日(木)ユナイテッドシネマ・キャナルシティで鑑賞。明日で上映終了なので2200の回だけどなんとか到着。なお終演は0040なのでもちろんタクシーで帰宅。

さて,いつものように忘れないうちに感想などを記録。後で修正する可能性あり。

とにかくかっこいい。みんなかっこいい。スタイルも,ファッションも,しゃべり方も!もう登場人物たちの着こなしやしゃべりを見ているだけでうっとりしてしまう…。

まずつかみのオープニング。メキシコシティのカーニバルのなかを長回し(風の?)カメラワークでスタイリッシュに歩くボンド。ガイコツ仮面をしていても,タキシードのバックに背骨と骨盤ががペイントされていても,もちろん彼はボンド。ジェームズ・ボンド。一瞬で仮装を脱ぎ捨ててブリティッシュスーツに変身。いつの間にかライフルを構えて……と,この流れが本当にかっこいい。

敵の動機がお子様すぎる…というのはいいとしても,お子様な理由ならそれをもっとこじらせてほしい。理由の割にはあっさりすぎる。

ヴァルツの「ちっきしょー!!!!!」って顔がもっと見たかった。最後はコテンパンになるのだけれど,それまでにじわじわと追いつめられていたために彼は「傷」を負っていた。その「傷」のインパクトが強すぎるせいで,最後に引導を渡されるときの彼の表情がちょっと分かりにくい。もっと「ちっきしょー!!!!!」って感じが見たかった。

最近見たDVDなど

最近見たDVDなどを忘れないように記録しておきます。


SHERLOOK シーズン1(2010,BBC)

今週末に公開されるのを前に,シーズン1を一気見してしった。

一言でいうと漫画的。コミックス的。とにかくホームズ&ワトソンのキャラクターの魅力が立っている。現代ロンドンの街で,スタイリッシュにスーツを着こなす長身のシャーロック(ベネディクト・アンダーソン)と,シャーロックに振り回されているように見えて,実は結構ちゃんとシャーロックを解決に導いているジョン・ワトソンマーティン・フリーマン)。

肝心のトリックはいつも微妙。たとえば第1話「A STUDY OF PINK」ではオープニングで第1の被害者が電話で「タクシーに乗ってよタクシーに!」と言われていた。この時点で「ロンドンの街で不特定多数の被害者に怪しまれずに接触できる人」がどんな人かなんて,ドラマの登場人物以外=視聴者は全員分かっている。なのにせっかく張り込みで見つけたタクシーの運転手に注意を払わず客だけ尋問するなんて…。
犯人の動機も微妙。結局3人はどうやって選ばれた?犯人に恨みを買う理由なんてないのでは?では誰でもよかったのか。しかし第3話ラストで満を持して登場したM教授は「殺人依頼のプロ」だった。え,じゃあ誰でもよかったのにプロに依頼したの?うーん,この終盤あたりはがっかりした。

しかしシーズン1の3話を見終えてあらためて考えてみた。うん,でもこのドラマにおいてトリックの整合性はそんなに重要じゃない。

はじめに書いたようにこのドラマはコミック的。登場人物のキャラクターがとても立っていて,このキャラたちをいかに魅力的に魅せるかが大切なのだ。そしてそれは十二分に達成されている。
たとえばセリフがないシーン,登場人物を見せるだけのシーンがきれいだ。探偵コンビがタクシーで移動しているシーンが多いが,ロンドンの都会的な街並みのネオンを背景としてイケメンの顔をアップで映す。キャーだ。



ジュリー&ジュリア(Julie&Julia,2009,米)

解説:実在の料理研究家ジュリア・チャイルドと、ジュリアに憧れる現代のOLジュリー。50年の時を隔てた2人の女性を「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」のノーラ・エフロン監督が描いた人間ドラマ。食べることが大好きなパリ在住のアメリカ人ジュリアは、名門料理学校で習得した誰でも簡単に作れる家庭料理の本を出版し、本は大ベストセラーとなる。50年後のニューヨーク、作家になる夢をあきらめたOLのジュリーは、憧れのジュリアのレシピに挑戦し、それら全てをブログに綴ることを思いつく。(以上,映画.comより)



ハッピー・フライト(Veiw from the Top, 2003,米)

解説:国際線のスチュワーデスを夢見る女性が、様々な障害に遭いながらも目標へ向けて奮闘する姿をコメディタッチで描く。監督は「クアトロ・ディアス」のブルーノ・バレット。主演は「愛しのローズマリー」のグウィネス・パルトロウ
ストーリー:小さな町で生まれ育ち、一度も町を出たことのないドナ(グウィネス・パルトロウ)の夢は、華やかな国際線のスチュワーデスになること。ある日、テレビでカリスマ・スチュワーデスが『誰でもなりたい自分を想像して、信じて努力をすれば、その夢を必ず自分のものにできるのよ』と言ったのを観たドナは、その言葉に背中を押され、地元のマイナー航空会社のドアを叩く。首尾よく乗客わずか50人足らずのコミュータ機のスチュワーデス...(以上,映画.comより)

再び,再開

映画の記録をつけるのをしばらくサボっていたけど,
忘れたくないので再開します。
とりあえず,覚えているところから記事だけ作って,
後で時間があるときに感想を書き込んでいこうと思います。

アメリカン・スナイパー(2014,米)

アメリカン・スナイパー ―気を使いすぎてどっちつかず―


ストーリー:イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。(以上,シネマトゥデイより)



どうしても初日に観たくてユナイテッドシネマ・キャナルシティIMAX、2320の回で鑑賞。初のIMAX体験。画面でかいし音すごいし、びっくりした。もっと早く体験しておけばよかったな。戦車が猛スピードで突っ込んでくる場面なんて跳ね飛ばされるかと思った。

さて、忘れないうちにいくつかメモ。よくできてるとは思うけど,あまり面白くなかった。その理由を考えてみる。あとで追加修正する可能性大。

人物描写がペラい。登場人物みんなだけど、特に主人公のクリス。この戦争の何に問題を感じ、何に葛藤をしていたのか?

そもそも30歳まで放浪のロデオ生活をしていた主人公がなぜ唐突に愛国心に目覚め,人が変わったようにエリート軍人としての人生を選ぶのかが分かりにくい。父親の影響,テレビの報道が引き金…など一応ヒントはあるのだが,これだけでは弱い。

それからラストの家族のシーン。それまで全く描かれてこなかった家族だんらんの様子が唐突に描かれる。どういう経緯かはわからないが,一応(?)トラウマは乗り越えた様子。だけど、どうやって乗り越えた?直前の退役軍人たちとのかかわりによって主人公も成長したということか。しかし本人は,負傷軍人たちをサポートする気はあっても,彼らにサポートされるつもりは全くない様子だった。つまり,自分が治療の必要があるある種の病を抱えていることは決して認めたくない様子だった。もちろん周りから見れば,彼には何らかのサポートや治療が必要なことは明らかだ。では彼はどうやって病を乗り越えたのか。いやそもそもどうやって病を認めることができたのか。そのあたりのクリスの心情の変化や人間的な成長の様子が全く分からない。

それから銃の扱いがひどい。自分の子どもには銃の扱いを慎重にしろと注意していたのに、当のクリス本人は家の中でジョークを言いながら振り回してる。しかもポンと棚の上において外出する。ちょっと前まで戦争の精神的後遺症に苦しんでいた夫が家の中で,しかも子どもの前で銃を使ってふざけているのを妻が冷静に見ていられるとはとても思えない。しかも妻も悪乗りするし!うーん、雑すぎる。

結論として、現在進行形の事象を扱うのは難しいのだと思う。各方面に配慮した結果、主人公にどのような人間性を持たせればよいのか分からなくなったのか?退役軍人へのサポートの必要性ってメッセージは感じるが、果たしてそれだけでいいのだろうか。それとも,この点が示されただけでも「ハート・ロッカー」以降のイラク戦争映画が進化したとみるべきなのか。確かに,「ハート・ロッカー」ほどには「ひよってんじゃねーよ!」とは思わなかった。ただし作品としてのメッセージは,「ハート・ロッカー」同様あいまいなままだったけれど。

クリント・イーストウッド監督作品のミスティック・リバーグラン・トリノが好きだ。どちらも暴力にとらわれた人間の葛藤をドラマティックに描いている。主人公は自身の振るった暴力に対して落とし前をつけたし,少なくともつけようする様子がよくわかる。全く別のやり方ではあったが。それだけにかなり期待をしていたのだが,ちょっと残念だ。5年後か10年後,アメリカ資本でイラク戦争がどのように描かれていくことになるのか,気になるところ。

戦闘シーンが何度かあり、それぞれ割と長い描写だったのだけど、それはとても分かりやすかった。

うーん、一晩寝てもう少し考えてみよう。

【DVD】裏切りのサーカス(TINKER TAILOR SOLDIER SPY,2011,英仏独)

裏切りのサーカス ―最高の悲劇には最高のカタルシス


ストーリー:東西冷戦下の1980年代、英国諜報(ちょうほう)部「サーカス」を引退したスパイ、スマイリー(ゲイリー・オールドマン)に新たな指令が下る。それは20年にわたってサーカスの中枢に潜り込んでいる二重スパイを捜し出し、始末するというものだった。膨大な記録や関係者の証言を基に、容疑者を洗い出していくスマイリーがたどり着いた裏切者の正体とは……。(以上,シネマトゥデイより)


wowowの放送を録画していたものをようやく鑑賞した。2回連続通しでみて,さらにラストの3・4分は10回ぐらいみた。最高の最高です。生涯ベストに入れます。こんな素晴らしい作品を,なぜ今まで見逃していたのだろう…!映画館でみたかったと,まずは激しく後悔。

見どころは多すぎてどの点を言葉にするべきなのかが難しい。俳優の演技について,ストーリーテリングについて,こまごまとした演出について……とくにX'masパーティの懐古シーンについて,などなど。まだまだ考えたいことや語りたいことはたくさんある。だけど圧巻は,なんといってもラストの3・4分。スパイ映画にもかかわらず決して派手ではなかったこの物語を,「LA MER」の曲に乗せて一気に収めにいく。

パーティの懐古シーン。パーティ会場でビル(コリン・ファース)とジム(マーク・ストロング)がお互いを見つけて微笑む。だが先に目をそらすのはビルだ。しかも満面の笑みのまま。まるで相手の信頼を受け止めることができないこととバラしてしまっているかのようだ。残されたジムの顔はビルをやさしく見守っているようでもあり,相手の信頼に対してわずかな疑念を覚えてしまい戸惑っているようでもある。場面は現在に移る。屋外を歩くジムが収容所の庭にたたずむビルの姿を見つけて足を止め,ライフルを構える。ビルもジムに気がつく。するとジムがライフルの標準から目を離し,一瞬だけ二人の目が合う。ジムはすぐに標準に視点を戻す。だがビルはジムを見つめ続ける。今度こそジムの思いを受け入れようとしているかのように。銃声が鳴り,ビルはジムを見つめたまま血の涙を流して倒れていく。もちろんジムも泣いている。(なお,この効果的な「一撃」は映画至上ちょっとありえない場所に命中する!)

リッキー(トム・ハーディ)がどしゃ降りの中で立ち尽くしている。きっと彼も泣いている。ロニーが自宅で窓の外を見ながら煙草を吸っている。ジョージ(ゲイリー・オールドマン)が来ないということは,愛すべきサーカスの男たちにとって,悪い結果となったのだ。そして倒れたままのビル。ジムの時とは違い,今度は二度と起き上がることはない。
自宅に帰ったジョージは玄関で息をのむ。部屋にはアンが戻っていた。動揺してよろめきながらも何とかアンの方へ向かい,彼女を受け入れる。
そして現在のサーカス。権力も女も取り戻し,自信に満ち溢れた様子のジョージが,黒のスーツ,ネクタイ,コート(もちろんメガネも!)でビシッと決めて出勤する。古参のスタッフやピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)は,さっそうと歩く彼の姿に敬愛のまなざしを送る。そしてラストシーン。会議室のリーダーの席に座ったジョージがどや顔であたりを見渡したところで音楽が終わり,映画も終わる。

誰もが「あぁ,これで終わったのだ。」と納得せざるを得ない力強さがある。悲劇のカタルシス効果をこんなに感じる映画は初めてだ。

エクソダス:神と王(EXODUS:GODS AND KINGS, 2014, 英・米・スペイン)

エクソダス:神と王 ―兄弟ケンカ再び,でOK?―


ストーリー:紀元前1300年。最強の王国として名をはせるエジプトの王家に養子として迎えられて育ったモーゼ(クリスチャン・ベイル)は、兄弟同然のような固い絆で結ばれていたはずのエジプト王ラムセス(ジョエル・エドガートン)とたもとを分かつ。その裏には、苦境に立たされている40万にも及ぶヘブライの人々を救わねばならないというモーゼの信念があった。そして、彼らのための新天地「約束の地」を探し求めることに。過酷な旅を続ける一方で、彼はエジプトを相手にした戦いを余儀なくされていく。(シネマトゥデイより)


ユナイテッドシネマ・キャナルシティにて,1人で鑑賞。今日はたまたま近くで仕事。しかも16時前に終わり。上映作品と時間を調べるとちょうどいいタイミング。本当はもっと見たいのあるんだけど…でもインター・ステラ―は終わったし。アメリカン・スナイパーも,セオリー・オブ・エブリシングも,イミテーション・ゲームもまだやってないし。ちょうど空白の期間。まあいいや,リドリー・スコットだし見てみよう,と劇場へ。


…え,これってグラディエーターじゃん。また兄弟ケンカじゃん。舞台がローマからエジプトに移っただけで歴史スペクタクルを背にした兄弟げんかじゃん!世界中の観客が,きっと上映中に何度もそう叫びそうになったはず。

IMAXとか3Dだと違うのか?クリスチャン・ベイルの大ファンだったらまた別の感想が?いやいや…。

この作品はどうみるべきなのだろうか。まず思いつくのはグラディエーターのような歴史スペクタクル・アクション・エンターテイメント。しかしこれは厳しいだろう。ローマがエジプトに代わっただけで,中身はグラディエーターそのもの。続編でもない。

いや,グラディエーターの方がまだ登場人物に魅力があった。マキシマス(ラッセル・クロウ)はもちろんのこと,コモドゥスホアキン・フェニックス),コモドゥスの姉,信頼できる将軍に元老院議員,そして剣闘士団のボス…。物語を構成する人々はみな,味方も敵も個性的で人間的な魅力があった。

主人公をとりまく人間模様はほとんど同じなのに,この作品に登場する人物たちには深みがない。最も象徴的なのがコモドゥスとラムセルの違いだ。コモドゥスはずっとマキシマスを妬み嫉み,憎み恐れてきた。その病的な態度や言動はコモドゥスのキャラクターを確固たるものにしたし,それゆえ彼は敵キャラとしての魅力にあふれていた。

だがラムセスはどうだろう。彼はただのボンボンだ。ちょっと見栄っ張りだけど家族を愛する普通の悪帝だ。兄弟のように育ったモーゼを追放したことにも負い目を感じている。根はいい奴かもしれないけど王の器ではなかったねってぐらい。終盤にラムセスが初めてモーゼを本気で憎み,彼と決別するシーンはそれをよく表している(それ以前には,モーゼを追い詰めることに何かしらの負い目を感じていた)。ラムセスはモーゼに反撃に出るが,それはコモドゥスのように自分が傷つけられ追い詰められたからではない。家族が傷つけられたからだ。…ふつーじゃん。そりゃ誰でも怒るわ。しかもコモドゥスのようにネチネチとはやらない。正面から全力で向かってくる。かたき討ちじゃー!!…彼はコモドゥスのような病的な悪帝ではない。普通の悪帝なのだ。

それから最後にもう一つ。たとえこれが単なるエンタメ作品であったとしても(割り切ってみるべきものだったとしても),それでもやはり違和感を覚えざるを得ない。いや観客は違和感を覚えるべきだろう。いくら「エンタメ」とは言え,人物配置が道徳的にここまで単純な物語を,よくまあ作る気になるな。実在の宗教を,とくに複数の解釈を有する信仰や聖典を扱っておきながら。しかもこのご時世に。エジプトとトルコの公開禁止についてはあまり経緯を追っていないけど,まあ禁止するだろうなとは思う。