2012-11-30
旅のおわり・旅のはじまり
9月末にVを後にしてから、
いろいろなことがあった。
Vから、次の街NYまで車で走破。
なんでも、寝ずに行けばたったの55時間なんだそうだ。
もちろんこれは、運転手の数が揃って、車が途中で空中解体/煙を吹くなんてことにならなければの話。
実際には一週間くらいかかった。
USAという国は、なんとまあだだっ広いことか。
飽きれて口が数日閉まらなくなったくらいだ。
☆
さて。度肝を抜かれ、お尻が十分痛くなって到着した、
その数日後には
飛行機でひとっ飛び。
気づけば故郷Nの川っぺたに立っていた。
こういう神をも恐れぬ空間移動が可能になったとはいえ、
ここにいるのは、身一つ、
昔と同じ、ぽつんとした人間の形が一つ。
その影法師のような形のまんまで、
目的もなく街中を歩き回ったりした。
今回はちょっと時間があったので、
16年間手つかずだった荷物・書類などを整理した。
16年前に、ちょっと1年くらい外国に行くと言って出てから、
チっとも帰ってこなかった間に、
普通の手紙や書類や、名刺であったはずのものが、
「玉手箱」に変わっていて、
開けたらやっぱり、
ざわざわと、内側の方が大変なことになった。
☆
ともあれ、Vでの時間には一つの「。」が打たれ、
この長いあれこれの綴り書きも、ひとまずこれにて「。」
☆
次にまたVの水辺に立つ日がいつか分からないけれど、
ぬるりとしたアザラシの頭たちよ、
私は君たちのぬるぬると楽しそうな視線を忘れない。
君は忘れた頃に、思いも寄らぬ場所にぬるっと出て、
ずっと追っていたい私たちの眼を置いてけぼりにして、
フイとまた水の中へと消えてしまうのだ。
そして、君がまたぬるりと出現するまで、
私たちはずっとずっと、
ただ揺れている水面を、
眺めている。
2012-09-21
時の流れ
この街で12歳くらいの時から知っている男の子が働いている、
スパゲティ屋にでかける。
レトロ風にしているファミレスみたいな所だ。
ステンドグラスはなんだか教会みたいだし、
そこかしこにこれでもかとアンティークの雑貨、
店の中に路面電車がドカンと置いてあって、目の落ち着く暇もない。
若者が初デートで向き合い、
家族連れは大きな卓を囲み、
さっきからもう3度もハッピーバースデーの歌が聞こえ、
ナルコレプシーの女が、テーブルで眠る、
そんな店だ。
彼はもうすぐ19歳になる。
青白く、不安げに、細く立ち尽くしていた少年は、
いつのまにか、細いままで青年になり、
お洒落に長めの前髪を流して、
きびきびとテーブルを調えている。
私がVでなにをしたのか、
大したことは思い出せないが、
彼は確かに、成長した。
時は流れる。
柔らかすぎるパスタと、
甘すぎるアイスクリームを平らげながら、
その、美しく育っていくものの姿を、
どこか遠くから眺めるように、眺めていた。
2012-09-18
中有の蛇口
住み慣れた家を出て、Vのダウンタウンで仮住まい中。
とはいえ、元の家から車で3分くらいの距離。
同じ街の中なのに、住む場所が違うとここまで街の見え方が違うのかと驚いた。
仮住まいの家で、はじめてシャワーを浴びた時に、
蛇口の仕組みがよくわからなくて、ひゃっと冷たい水が出たり、
急に熱くなったり、
びくびく、どきどき、
それでも、そのうち大体の仕組みが分かって来て、
今は適温ぬるま湯に落ち着いた。
街も同じように、出会った時には何をどうしたらいいのかわからなくて、
どきどき、ひやひや、
それがいつの間にか、目をつぶっていても蛇口から適温を出せるようになり、
何も感じなくなっていった。
ほんの少し、移動してみただけで、また街が新しい顔を見せてくれている。
カットアウトではなくて、
フェードアウトな感じの今回の引っ越し。
まだここにいるのに、もうここにはいない、のかもしれない。
今はまさに中有という位置にいる。
変な感覚だよ。

