ばばニッキ   ――おおきく知りかぶって――

2017/01/31 2016年のエロマンガ無差別級ランキング

[] 2016年のエロマンガ無差別級ランキング - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― を含むブックマーク 2016年のエロマンガ無差別級ランキング - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― のブックマークコメント

年間マンガランキング30作を各自が持ち寄って、同人誌にまとめて冬コミで売るというサークル活動を始めてもう10年以上になる。

最近は男性・女性向け両方のエロマンガを読むので無差別級ランキングというのをはじめて、2016年のものも作ることができた。


30作のリストだけ先に出しておきます。

1-1011-2021-30
doumou「惚れときどきヌクもり」イサム「五十嵐くんと中原くん」中陸なか「たゆたう種子」
上原あり「セックスフレンズ」さとまるまみ「浄化系彼氏」嘉村朗「ちっちゃな彼女にせまった結果。」
斉木マキコ「気持よくて声も出ない? 〜裏カレシの贅沢な躾け方〜」雨山電信「雨山式雌穴マンゲ鏡」知るかバカうどん「ボコボコりんっ!」
スカーレット・ベリ子「ジャッカス!」高尾鷹浬「女体化ヤンキー学園★ 〜オレのハジメテ、狙われてます。〜」amco「愛しのストレンジマン」
小石ちかさ「大江戸妖怪快奇譚 人外枕草子夏野ゆぞ「女装メイドは逆らえない」西形まい「 GAME〜スーツの隙間〜」
御免なさい「だから神様、ボクにしか見えないちいさな恋人をください。」天原「貞操逆転世界」塔サカエ「大胆不敵ラブコール」
朝田ねむい「Loved Circus」ニャンニャ「スイートハート・トリガー」紅唯まと「僕は管理・管理・管理されている」
虫歯「フェイクファー」冴月ゆと「オネエ失格 ケダモノに豹変した午前3時」丸木戸マキ「ポルノグラファー」
叙火「八尺八話快樂巡り 異形怪奇譚」ヒゲフサ「ゲーム屋BL」加藤茶吉「娼年インモラル」
六角八十助「乱乱♪おにくまつり」青丸「センセー(仮)のお仕事」コダ「漫画家とヤクザ」

2014年版はこちら。http://d.hatena.ne.jp/nekokamen/20150112


1〜10位


01. ドウモウ「惚れときどきヌクもり」(男性向け)

惚れときどきヌクもり (真激COMICS)

惚れときどきヌクもり (真激COMICS)

コミックアンリアル快楽天で活躍するドウモウ/doumouだが、クロエ出版のコミック真激で描くようになって作品の幅……有体に言えば変態性がぐっと広がった。更に具体的に言えば近親相姦のことで、様々な近親相姦を描いてきた「好き好き!」シリーズが、この単行本収録作で見事にまとまったことはとても嬉しい。禁忌である血縁関係なのに、いやおう無く惹かれあう男女二人の葛藤・愛情を、エグくもロマンチックに描き出す手腕には感謝の念しかない。真激の前作「セックスのち両想い」も、男装少女が少年野球でハプニングを起こす話がなかなか変態的かつ爽やかな青春ストーリーになっていて、ショタBL出身の業を感じさせるよい出来だった。




02. 上原あり「セックスフレンズ」(女性向け(BL))

自分は元々BL読みなのでBLランキングには男性向けより自信があるが、2016年も引き続き竹書房Qpaは強かったと言わざるを得ない。2014年に出てきた人気ツートップ、はらだ・おげれつたなかの影響から未だ脱しきれないのが今のBLジャンルだが、その中でもQpaの打率は高く、また層も厚かった。本作は繊細でオシャレ、なのにただれきっててユルユル! タイトル通りヤリチンのカジュアルなセフレ交遊録でキャラクターと退廃的なセックスシーンで延々と場面をつなぐのだが、画面の華やかさゆえに全く眼福としかいえない。登場人物のチャラい遊び人っぷり・端整で垂涎モノの肢体・汁まみれなセックスシーンと、どれをとっても華やかできらめいており、読んでいて非常に気分がアがる。パリピ。きらびやかで艶めかしい人物の一方で、背景・調度品のCG描写はカチッと無機的なフォルムから漂うデザイン性にもくすぐられるところで、ヤリチン共のアーバンオシャレライフを一層ラグジュアリーに彩っていた。カップリング固定化のハッピーエンドを目指す恋愛ジャンルにおいて、構造的に縁遠いはずのセフレ肯定をテーマに乗りこなした手腕も高く評価したい。




03. 斉木マキコ「気持よくて声も出ない? 〜裏カレシの贅沢な躾け方〜」(女性向け(レディコミ))

秘密の社内恋愛という舞台設定はレディコミの中でも王道に位置するところだが、本作は性行為の描写力という点でずば抜けており、特に焦らしの演出には大変はかどるものがあった。男性向けに頻出の局部アップやトロ顔描写を取り混ぜつつも、フィニッシュよりも過程の濃密さに重点をおいた構成は女性エロらしく、いいとこどりなスタイルがうまく成功している。2016年の女性エロのブームからは若干外れるところだが、女性向けでもエロさを積極的に出してほしい自分の性癖においてはダントツだった。BLでも単行本を出しているがそちらは比較的淡白。




04. スカーレット・ベリ子「ジャッカス!」(女性向け(BL))

男子校を舞台にしたちょっとアブノーマルな青春模様。ストッキングフェチな男子高校生の煩悶というとプルちょめの「フェティシズム少年」に連なるところだが、男子校的な青臭いガキ共のひたむきさとバカさが眩しい一冊。人間模様の整理が上手く、メインは高校生同士だがサブキャラの年の差恋愛も丁寧な話運びが光った。特に三十路姉御はBL助演女優賞として2016年屈指の素晴らしさ。作者はBLのポーズ集・デッサン集を手がけていて、身体の描き方・体位の絡みは流石に安定感がある。まあBLも画力の高い人がごろごろしてる世界だが……あと、女の子の扱い慣れてる手つきで本命落としてくるの興奮するよねっていう。舞台は男子校なのにね。




05. 小石ちかさ「大江戸妖怪快奇譚 人外枕草子」(男性向け)

百鬼夜行のエロというと少し戸惑うが、妖怪ロリババア連合とその寄生先となった主人公男性の話。人外エロは1ジャンルとしてもう珍しくもないレベルにまで成長したが、本作のように空想の生き物をケモノベースで独自のエロさにまで落とし込むとなるとブラボーという他ない。ロリでありケモであり人外であり屍姦であり、というエルドラージな特殊性癖オンパレードは正直恐ろしい位で、これを余すところなく使用できる人というのは尊敬してしまう。妖怪・性癖大戦争みたいな設定だがストーリー・キャラクターの作りこみも充実しており、相当な力作に仕上がっている。なお作品の刊行は2015年末なのだが、ここでは2015/11〜2016/10末までの作品からセレクトしている。この作品を外すと、同じ男性向けエロならディビ「その指先でころがして」(2016/12)がどこかに入るだろう。




06. 御免なさい「だから神様、ボクにしか見えないちいさな恋人をください。」(男性向け)

御免なさい待望の復帰作。ロリコン漫画の中でも、ロリに抗えず惹かれてしまうという展開は格別だし、ロリ可愛い描写をかくれみのにして高画力から超展開のバカエロ演出に費やす無駄遣い感もこの上なく好きだ。ロリコン漫画界に御免なさいがいるという事実が勇気を与えてくれる。今までより更に磨きのかかったエロ描写、ドライヴ感溢れるその筆致にこれからも期待していきたい。




07. 朝田ねむい「Loved Circus」(女性向け(BL))

Loved Circus (Canna Comics)

Loved Circus (Canna Comics)

借金苦からゲイ向け風俗で働くこととなった主人公とその同僚達の話。ヘテロである主人公がゲイ風俗でキャストとして働くという割とひどい展開はコミカルに済ませていて、話の本筋は風俗店の仲間やオーナーとの運命共同体の人間模様にある。日陰暮らしな彼ら(実際、話の大半は屋内か夜間に進む)の各自ばらばらな生き様はたまらなく人間臭くてヴィヴィッドで、ノワールな基調のこの作品をまばゆく彩っている。特に物語が収束に向かう終盤のストーリー運びが出色で、キャラクターの魅力がBLを超えて人間賛歌のレベルで発揮されているエピローグは必見。朝田ねむいが正直ここまで人物を描ける作家とは思っていなかったというのが本音なのだが、妄想を昇華させるだけのキャラ愛を持って、是非また長編で読みたい。




08. 虫歯「フェイクファー」(女性向け(BL))

フェイクファー (Dariaコミックス)

フェイクファー (Dariaコミックス)

セフレと旅行に行き、恋人になって同棲にいたる話。BLではいくらでもある設定だが、そんな当たり前の展開を独特のテンポ感で綴り、ロードムービーのような雰囲気の親密さと共に、妙な説得力を持って読ませてしまう不思議な魅力がある。ポップで特徴的な絵柄が目を惹くが、展開にマッチした画面構成とコマ演出、効果音や背景の入れ方がいちいち絶妙で、マンガちょっと上手くないこれ? という驚きが感動と共に湧いてくる作品。




09. 叙火「八尺八話快樂巡り 異形怪奇譚」(男性向け)

5位の「大江戸妖怪快奇譚 人外枕草子」と同じ、ジーウォークのQooPA/コミック彩蛇で連載されたホラーアダルトコミック。八尺様をはじめ、洒落怖系のオカルト話をエロアレンジした造りになっているが、アレンジしてても怖い! むしろエログロ描写によって生理的な嫌悪感が増幅されており、夢に出てきそうなトラウマ級の怖さがエロ以上に光る作品になっている。ご存知のように広告から人気に火がついた作品で、amazon限定版が出るなどだいぶ興味深い盛り上がりを見せた。基本的な作風自体は既刊の「悪意の匣」「ヒトモエ委員会」の頃から変わっていないのだが、題材ひとつで大化けするのがエロに限らずマンガの面白いところ。




10. 六角八十助「乱乱♪おにくまつり」(男性向け)

ワニマガジンのエロは好物で、このランキングにあまり入ってこないのはチョイスがだいぶひねくれているからなのだが、まあ本作に関して言えば夢のような洗体プレイを見せてくれた「おもてなしっ!」の破壊力に撃沈したということに尽きる。汗っかき土方ヒロインの理緒さんもよかったけど。洗体やマッサージがメインのエロマンガ、もっと増えてほしいんだよなあ。


11〜20位


11. イサム「五十嵐くんと中原くん」(女性向け(BL))

高校デビューでヘタレチンピラにチェンジした中原くんが出会ったのは、オラついたガタイで用心棒のような威圧感のある、ガチ不良の五十嵐くん。クズシンパシーを少し覚えるも、五十嵐くんの上から目線な物言いに、キレ気味でメンチを切ったら何故か懐かれて……という話。小心ビビリな中原くんが接する不良文化のカルチャーギャップが秀逸で、サブキャラのキャバ嬢のウザ絡みなどギャグとしてもかなり楽しい(未成年の五十嵐くんの取り巻きがキャバ嬢って流石にリアリティを認めたくないぞ)。設定勝ちなカップリングBLなのだが、無気力クズな自分に嫌気がさしている五十嵐くん、根が常識人で世話焼きな中原くんという内面を掘り下げていくつくりが丁寧で、設定にとどまらず行動原理に落とし込んだ上でキャラクターが動いている良作。真面目系クズという世知辛いカテゴリーに陥りそうなところを懸命に踏ん張っている中原くんを応援したい。




12. さとまるまみ「浄化系彼氏」(女性向け(BL))

ふゅーじょんぷろだくとのBLは2015年はオメガバース、2016年は食男アンソロジーと企画力が群を抜いており、二次創作の商業化で食ってる同人ゴロ、みたいな認識からだいぶ上方修正されている。このランキングでBLは候補が絞りきれなかったので、1社1作品の制限を入れて作ったが、ふゅーじょんからはこの作品にした。さとまるまみ2016年には「おさななじみUMA」、「先生、ためしてみますか?」と合わせて3冊、2015年にも2冊を出していてなかなかの量産力で、本作もストーリーとしては平凡なのだが独特の癒し系な作風が上手くハマッていた。階級社会としてのオメガヴァースに踏み込んでいたのも評価したい。

丸顔めめ「よなよなもしもし」、エマオ「残骸はあさってのほう」、よつあし「僕のハイスペック彼氏様」、イゴ彦「愛しのセンチメートル」など、ふゅーじょんは他も良作が多かった。「コオリオニ」について言えば、梶本レイカの中ではやはり「高3限定」の方が……という想いで選外。というか今更わざわざランキングに入れなくても皆知ってると思うし。




13. 雨山電信「雨山式雌穴マンゲ鏡」(男性向け)

雨山式雌穴マンゲ鏡 (エンジェルコミックス)

雨山式雌穴マンゲ鏡 (エンジェルコミックス)

創作同人で活躍する雨山電信の初単行本。自分が同人からの熱心なファンかというとそうではないが、少し時代がかったオタク趣味的世界の香りがあり、なかなかに変態な内容だが読んでいて不思議と居心地がいい。絵柄のアクの強さもあいまって、独特の蠱惑的な雰囲気が癖になるような作風だ。岩波先輩とか留々家姉妹とか可愛いんですよね。作中の漫研サークルの売上38部というところに親近感を覚えてしまって辛い。




14. 高尾鷹浬「女体化ヤンキー学園★ 〜オレのハジメテ、狙われてます。〜」(女性向け)

内容はタイトルが示すとおりで、特に大した理由なく女体化したヤンキーがライバルだった相手に勘違いされたまま惚れられてヤられる話。女体化というジャンルを一概に男性向け/女性向けと規定するのは難しい。一応、刊行元がリブレ出版ということを勘案して女性向けとしているが、しかしBLジャンルのビーボーイレーベルでここまで女性裸体とセックス描写が盛り沢山の作品が出てくるというのは、ジャンルの多様化を痛感させられる。




15. 夏野ゆぞ「女装メイドは逆らえない」(女性向け(BL))

女装メイドは逆らえない (マーブルコミックス)

女装メイドは逆らえない (マーブルコミックス)

バイト先のメイド喫茶で何故か女装して働くことになり、客として来た同級生のボンボンに目を付けられてしまう。女装男子は可愛い、メイド服ならもっと可愛いという萌エロ一直線な発想に基づいた内容だが、画面のクオリティが高く眼福である。メイド服ほか着衣の表現はなかなか力が入っていて、フリル地のめくれ方が扇情的だったり、体のラインを感じさせる上着のシワをツヤベタ込みで見せてくれるのは嬉しい。肝心のメイド服男子も、ガリ気味で薄い胸にまるく膨らんだ股間という定番要素をしっかり出してくれる。全体に欲望に忠実な内容に仕上がっていて素晴らしいの一言だ。




16. 天原「貞操逆転世界」(男性向け)

貞操逆転世界 (KAIOHSHA COMICS)

貞操逆転世界 (KAIOHSHA COMICS)

「発想の常勝無敗」というキャッチコピーが単行本帯に付いていたが、モン娘ソープと貞操逆転世界という天原の2大マスターピースが味わえる発明博覧会だと思ってよいだろう。この発明品でどれだけ同人DL数を稼いでるんだ? と誰しも考えるわけだが、同人から商業単行本化して更にコミックヴァルキリーで全年齢向けコメディとして連載化という流れもかなり異常。同じように同人人気作をそのまま商業単行本化した作品というとまろん☆まろんの「強制孕ませ合法化!!!」が記憶に新しい。どちらもも同人作家の人気に出版社があやかる形なので思うところが無いではないが、貞操逆転世界についてはヴァルキリーでの連載の方も単なる焼き直しと思いきやユニークで、最新話(第5話)では貞操逆転先の世界で学生漫研が貞操逆転ジャンルを議論するという構造が面白い。単にこじれていると言えばそれまでだが、貞操観念(というか社会のジェンダー意識前提)が違えば生まれるエロ表現も変わってくるという話であり、社会通念に囚われない自由な表現を模索できているかという問いにも通ずる汁ワックスやゴムつけフェチが自然な流れで出てくるエロマンガは、貞操逆転先の世界で無いと本当に生まれないのか? 単にエロの発想とニーズが貧困なだけではないのか? そう考えると、我々エロマンガ読みとしても居住まいを正さざるを得ない。

エロもいいんだけど、そのずば抜けた発想力・構成力(エロではあまり発揮されてない)を生かして、原作者として青年誌で長編連載を組んで欲しいといつも考えてしまう。「平穏世代の韋駄天達」も更新が長いこと止まってるし……。




17. ニャンニャ「スイートハート・トリガー」(女性向け(BL))

ハイスクールのジョック(カースト頂点)に勝手に惹かれた陰キャのナードが、袖にされたと勝手に勘違いして銃で殺してやると空回り。病的な主人公の思考と、それを鷹揚にうけとめながらも振り回される相手、仲直りックスで立ち直すもまたネガサイクルが再燃して……という流れは読んでいて飽きさせない。実際に付き合うとしたら到底勘弁だが、一貫してネガティブかつわがまま(しかも銃を所持している)という心底扱いづらい受のキャラクターは新鮮で面白い。個人的にはサブキャラで出てくる女の子が当て馬どころではない活躍をして非常に魅力的だった。moment/シュークリームの作品だし、フィールヤングで女の子主人公の短編連作でもやってくれないかな。




18. 冴月ゆと「オネエ失格 ケダモノに豹変した午前3時」(女性向け(レディコミ))

TL(ティーンズラブ)の大御所となった宮越和草が女体化TL「『女』として抱かれたい」を開始したり、アルファポリスのエタニティコミックスで幸村佳苗/井上美珠の「君が好きだから」が2ヶ月足らずで4刷と健闘したりという話題はあったが、2016年のレディコミ・ティーンズラブがオネエ失格と漫ヤク(後述)で語られるのは間違いない。オネエ要素は元々BLで一定の需要があり(いちいち例示するまでもない)、それがレディコミに流入していくのは自然な流れ。これまでのランキングで見てきたように、女装・女体化といった要素もBLが通ってきた道だ。長い睫毛とタレ目はオネエの基本にして独特の色気をかもし出す作画記号で、個人的にもオネエ要素というのは好物である。

性的マイノリティを商業人気を取るための売れ筋要素の鉱山であるかのように、次々と消費していくことは当然省みられるべきなのだが、ことレディコミに関しては流されやすいヒロインであったり男性側の狼藉であったり、もはや構造的な次元でポリティカル・コレクトネスへの脆弱性がある。男性向け/女性向け両方をたしなむ身としては、そうしたお約束の問題は自覚しつつ楽しむ他ないという認識だ。セクシャリティを都合よく曲解したキャラクターを組み合わせて、君だけのオリジナル性癖カップリングを作ろう! と自覚的に割り切ってジャンル深化・細分化を進めていくことは、このセンシティブな問題への呼びかけ・アプローチとして文化が持つ機能であり、それ自体は極めて健全なものだと信じている。

もう少しフォローしておくと、オネエ失格には終盤にオネエ側について性的嗜好を改めて問うくだりがある。そのやり取りの是非はジャッジしないが、作者側がオネエというセクシャリティを少なくとも自覚的に扱っていることが確認できて、自分としては嬉しかった。ちなみに配信開始・単行本刊行共にオネエ失格の方が漫画家とヤクザよりも後のタイミング。どちらも早い時期から人気のあったタイトルだが、結果として後塵を拝する形となりながらも版を重ねているオネエ失格は奮闘したと言ってよいだろう。




19. ヒゲフサ「ゲーム屋BL」(女性向け(BL))

ゲーム屋BL 上 (IDコミックス)

ゲーム屋BL 上 (IDコミックス)

ゲームクリエイターの上司と部下、2人が製作中のゲーム世界に迷い込んでしまうという破天荒な設定のBL作品。同人での人気作で、発表は2014年頃までさかのぼる。計700ページに及ぶ大作だが、コミカルな絵柄とゲーム世界らしい怒涛の展開が飽きさせない。開発に携わっていたという作者のゲーム愛は世界設定や小ネタからも感じられ、BLでここまで恋愛と無関係の方向性(ゲーム)に突き進んだ内容も珍しい。ゲーム考察に負けない強度で繰り広げられるヒゲの濃いオヤジと新卒リーマンの絡みが若干人を選ぶのだが、トンデモな舞台設定と合わせて全力入魂の圧倒的なボリューム・読み応えを堪能できる一冊。




20. 青丸「センセー(仮)のお仕事」(女性向け(BL))

センセー(仮)のお仕事 (G-Lish comics)

センセー(仮)のお仕事 (G-Lish comics)

実習先の不良生徒に振り回されるセンセー(仮)のBL作品ほか短編集。クリアな描線で綺麗どころの青少年たちの友情とラブをつづる、G-Lish/ジュリアンパブリッシングのスタンダードな作品だ。個人的にはもみあげ・首筋のラインになかなか色気があってはかどるところ。掲載誌aQtto!は竹書房のQpa/麗人Uno!に次ぐ電子配信のBL誌。ジュリアンは紙の雑誌を持たないBL出版社として電子配信BLの隆盛を象徴する存在である(関係の深い大誠社&ブライト出版も今は雑誌刊行していない)。


21〜30位


21. 中陸なか「たゆたう種子」(女性向け(BL))

たゆたう種子 (アイズコミックス)

たゆたう種子 (アイズコミックス)

ホーム社/集英社から刊行のBL新人作品。ホーム社経由とはいえ集英社からBLコミックが出ているのは少し意外かもしれないが、2016年は同社からBLアンソロ誌「.Bloom」も創刊されており、BLへの集英社の歩み寄りは年々高まっている。本作は休刊したホーム社BL誌「BLink」のレーベルに連なるもの。生物教師と補習生徒2人の微妙な三角関係が植物のモチーフを挟みながら描かれており、ボタニカルアートを思わせる単行本装丁の落ち着いた雰囲気とよくあっている。丁寧な描線と少し顔を歪めて笑うキャラクターの表情が印象に残る作品だ。




22. 嘉村朗「ちっちゃな彼女にせまった結果。」(女性向け(TL))

このランキングで1つだけ未単行本化作品を入れた(書影は電子配信第1話だが、2016年には8話まで収録した電子単行本が出ている)。奥手で恥ずかしさのあまり、告白が暴走しちゃったヒロインと、それをちゃんと受け止めてくれた彼氏。たどたどしい二人三脚な恋を甘酸っぱく描いたフレッシュな作品だ。素直になれないヒロインの可愛さが溢れており、ともすればエッチ描写は余計な位にラブラブな初々しさがイイ。電書で合冊版が出ているので、2016年の作品ということでランクインさせた。

作者の嘉村朗はキャリアも殆ど無い新人作家だが、本作に続いて始まった少女マンガ連載「まじめだけど、したいんです!」が現在進行形で大ヒットしている。既に次世代の波を感じさせる勢いで盛り上がっており、時代はエロが薄い方が受けるのかなと思わないでもない(「まじめだけど〜」は性描写が非常に薄いTLと言ってもよい)。




23. 知るかバカうどん「ボコボコりんっ!」(男性向け)

(書影なし)

2016年の話題作ということで入れない理由は無かった。雑誌ではじめて読んだ時はかなりショッキングだったし大丈夫かこれと思ったが、いざ出回ってしまうと波乱を起こしつつも人気作家として受容されているのは、なかなか凄い。某ムカデ食肉マンガもそういう流れに乗るのかな……。作者の言葉のセンスが好きなのだけど、作中で一番印象的なセリフは「ドラマなら100点だけどAVなら20点ぐらい」と親子丼撮影でカメラ役が評する箇所。同じような気分で作品を読んでる身としては、対岸からいっきに同じ立ち位置へと引き寄せられる感覚もあり、冷静に読めないのがいい。




24. amco「愛しのストレンジマン」(女性向け(BL))

愛しのストレンジマン (ショコラコミックス)

愛しのストレンジマン (ショコラコミックス)

勇気を振り絞った告白がぼんやりスルーされたところから始まる学生BL。双方が空回りしてすれ違う様がコミカルに展開されるが、個性的な絵柄ながら安定した作画で、キャラクターの多彩な表情を見せてくれるのがよい。単行本表紙のような1枚絵がとても魅力的なのだがキラキラとしたトーンワークも特徴的で、今後更に上達したマンガを読んでみたいと思わせる作品だった。




25. 西形まい「GAME〜スーツの隙間〜」(女性向け(レディコミ))

セックス中も会社の電話を優先してしまう仕事人間のヒロインと、女の子を食い荒らしてきたオーラ全開のいけすかない新入社員。お互いに恋が分からないもの同士で、「身体からはじまるレンアイ」が出来るかのゲームを始めるが……? あらすじを描いてみても何か論理の飛躍があるように感じるが、その違和感も綺麗に押し流してくれるコマ運びは流石ベテラン。花とゆめで長いキャリアを持つ作者だが、電書配信誌「Love Jossie」連載の本作でレディコミジャンルに飛び込み、またたく間に人気を席巻することとなった。謎めいたヤリチンと恋愛下手のヒロインという設定をどう深堀りしていくかというと、そういった進捗は既刊2巻まで読んでも全く無い。ベッドシーンでの手練手管を情感たっぷりに描いてくれるだけで毎話が進み読み手もはかどるという体制が構築され、この作品でヒロインが自らの罠に引っかかって致してしまうのと、内容の進展が一切無くても読者がついついページをめくってしまうのは鏡写しのドキドキ感がある。

全く関係ないが、性描写が1ミリも出てこない大学生サークルの清すぎる交際を描いた「ラストゲーム」の完結も2016年で、柳君とみこっちゃんは結婚して2人のゲームはこれからも続くんだという締めくくりに目まいを覚えてしまいましてね……同じ白泉社でGAMEだけにね……(ゲス顔)。




26. 塔サカエ「大胆不敵ラブコール」(女性向け(BL))

高校入学で出会ったクラスメートの世話を焼いて、急速に親しくなっていくBLストーリー。幻冬舎LYNXから同人作品の単行本化というのはちょっと珍しいような? キャラクターがばっちり立っていて、2人の関係がとてもいじらしく、微笑ましい。ポテンシャルを強く感じさせる作品だった。




27. 紅唯まと「僕は管理・管理・管理されている」(男性向け)

僕は管理・管理・管理されている (TENMA COMICS G4M)

僕は管理・管理・管理されている (TENMA COMICS G4M)

貞操帯をつけて勃起を禁じられる、位ではそんなに驚かないのが昨今のマゾ系エロマンガだが、本作は射精管理がメインであり、射精は(基本的に長期にわたって許可されないが)絶対NGというわけではない。まあ男性エロマンガの展開上、ノー射精でフィニッシュする作品はかなり珍しいし、その快楽を盛り上げるためにエロマンガの技法が発達してきたことを考えると、射精のコントロールというのはある意味、カタルシスのタイミングを意図的に極大化させるシナリオ設計と近しいものがある。そう思うと本作は特殊性癖を描きながらもストーリー展開としてはごく自然なエロマンガになっていて、初心者に間口が広い作品と言えるかもしれない。一応純愛だし。

射精管理は同人音声で発達してきたジャンルで、リピート・シャッフル機能やスクリプトの日次再生スケジューリングといった個人的な使用手続きのディレクション/メンテナンスを踏まえることで高度な管理感を満喫するような奥深さがあるのだが、その辺はマンガ媒体にはあまり馴染まないかもな……というのは少し残念。




28. 丸木戸マキ「ポルノグラファー」(女性向け(BL))

ポルノグラファー (onBLUEコミックス)

ポルノグラファー (onBLUEコミックス)

官能小説家と、彼の代筆業をすることになった青年の話。「円と球」が手がけた装丁は手書き原稿を表紙背景に配したもので印象的。眺めると自然と書き手を想像してしまう辺り(祥伝社の営業マンらしい)、作中の背徳感を上手く演出している。絵柄がやけに落ち着いているのは良し悪しで、メジャー感があるもののBLとしての昏さ・色気がやや物足りない。フィールヤングに進出して欲しいような……関係ないけど作中の桜桃社という出版社名、桜桃書房を連想して懐かしかった。




29. 加藤茶吉「娼年インモラル」(男性向け)

娼年インモラル (MDコミックスNEO)

娼年インモラル (MDコミックスNEO)

加藤茶吉の18年ぶり復帰作というのは流石にびびる。2015年に新刊出した胃之上奇嘉郎だってそんなに間空けてないぞ。女装少年ジャンルの隆盛に思いを馳せつつ掲載誌の脈々とした歴史を訳知り顔で語るのは、マニアに刺されるので触れられないが(司書房のPet-Boy'sとか流石に読んでないッス)、華美な衣装は男の娘が一番映えるなあと改めて認識した。収録全14作はバリエーション豊かな服飾に目移りしてしまうが、いずれも見入ってしまうような悪魔的な魅力を男の娘に与えており素晴らしい。同じ女装少年の同性セックスでも、BLと男性向けの差がはっきり感じられるのは興味深いところ。




30. コダ「漫画家とヤクザ」(女性向け(TL))

ラストはご存知の漫ヤクなのだが、「何故この作品が2016年に爆発的にヒットしたか」という話と切り離して語ることはできない。で、自分なりに考えたのだが色々長くなってしまったのでこの場では保留で。最下位に持ってきたのはあまりエロくないからです。pixivで公開されてるプロトタイプ版は結構エロいんだけどなあ。

2015/01/12

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2014年のエロ漫画ランキングを男性向け女性向けジャンル無差別級で作ってみました。

ちなみに2012年に増田で20作をやったのがコレ。女性向けのほうが熱が入ってるのは仕様です。

http://anond.hatelabo.jp/20130121021721


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漫画トロピーク」(ツイッター

「この漫画ガガガ2014」

2014年の年間コミックランキングをぶち上げる同人誌です。

ここで紹介したランキングも入ってます。

現在も通販受付中ですんで、ランキング好きな人は是非どうぞ。

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30作のリストだけ先に出しておきます。

1-1011-2021-30
kanbe「いじりもん!」樋口あや「らぶチェンジ〜快感♡女の体になったオレ〜」聖「えっ? 彼氏付き賃貸ルーム!?」
はらだ「変愛」蔓沢つた子「くさかんむりに化けると書いて」蜂宮よう子「縛られやケンちゃん」
吹屋フロ「桜花 咎の契」木村ヒデサト「マリアボーイ」高野弓「えろ♡めるへん 人魚姫」
おげれつたなか「恋とはバカであることだ」端丘「妄想くんのふたりあそび」荒木そらいろ「僕らの自由な恋の日々」
秋月伊槻「イビツナ彼女は年中『発情期!!』」瞬一「ぼくらパーク」紀伊カンナ「海辺のエトランゼ」
へんりいだ「はつこいりぼん。」A-10「GIRL? NEXT DOOR」井戸ぎほう「やさしくおしえて」
百合原明「靴下でエクスタシー」おわる「いじめて!歯医者さん」音音丸「恋するケモノと人外は…」
F4U「好奇心はネコをもアレする」山本アタル「偽×恋ボーイフレンド」荒井よしみ「あふれてしまう」
無望菜志「NTR2」豆「ミルククラウン」anco/かずいち「オトナのXX課〜カラダ開発がお仕事です〜」
未散ソノオ「KOH-BOKU」神谷ズズ「初恋カノジョ」枝空「らぶ♀らぼ〜俺が女になった日〜」


1. kanbe「いじりもん!」

いじりもん (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)

いじりもん (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)

  • 新人エロ漫画家の画力は毎年インフレが激しいですが、kanbe先生はその中でも存在感を主張していました。「いじりもん!」の収録作は寝取られ・逆転ショタ・ほのぼの系と多岐に渡り、その絵柄も様々に変化があります。ストーリーに応じて絵のタッチを使い分けている、というよりは新人単行本らしく画力模索中な印象ですが、どれを取っても第一級のレベル。絵柄自体は安定してないにも関わらず、どんな絵柄になってもコマの1つ1つがキマっているのは見事という他ありません。実力を持て余して本人にも制御出来てない感じがワクワクします。
  • もう少し付け加えるとkanbe先生の画力は丁寧な身体描写を踏まえた上で、表情の見せ方が非常に上手いです。ヒロインのトロけ顔を狙う作風は珍しくないですが、「いじりもん!」でそれと同等以上に印象深いのが、関係を迫るおっさんの有無を言わさぬ勢い、ご主人様からの命令で生徒に奉仕する女教師の嫌悪感丸出しな素振り、いじめられっ子の巨チンをからかうビッチが次第にのめり込んで本気になっていく過程、小うるさい母親の助けをすげなく断るヒロインの皮肉たっぷりな態度などなど。単純なビジュアルインパクトで勝負するのではなく、細やかな感情を的確に魅せることでストーリーを生かす手腕は、真の意味で「顔芸」達者と言えるでしょう。エロ漫画としてコトに及ぶまでの枕において人物を丹念に描くことで、キャラクターの複雑な関係性を軸とした物語が、確かな深みを持って展開出来ています。「いじりもん!」においてkanbe先生のこうした「漫画の上手さ」は短編の尺の中に濃密な内容を実現するべく発揮されていますが、長編でも更に掘り下げた人間模様が織り成すエロを読んでみたいですね。


2. はらだ「変愛」

2冊目にしてAmazon取扱が無いので、出版社通販ページにリンク。

  • BLにおいては電子配信からの新人作家が目立つ昨今ですが、一方でリブレ出版が成年向けレーベル「X-BL」でジャンルの新たな方向性を開拓しています。はらだ先生の初単行本「変愛」は表題作が同レーベル刊行のオリジナルアンソロジー「エロとろ R18」初出です。際どいエロ描写を売りにしたBL誌というとジュネットの「BOY'Sピアス」が連想されますが、ファンタジー要素(触手的な意味で)もアリアリで奇想天外な性表現に開き直ったバカBLの精神を尊ぶのがピアスの雑誌色です。対して「X-BL」が打ち出したのは、そうしたギャグ・照れを用意せずとも、エロい身体描写・性交シーンのフェティシズムを正面から堪能したい、という素直な欲求肯定だったように思います。「エロとろ R18」の執筆陣には岡田コウ先生が入っており、「X-BL」レーベルが男性向けエロの表現を強く意識した作りになっていることは大変興味深いです。なお、KADOKAWAのBL電子配信レーベル「BL☆美少年ブック」レーベルでも、淀川ゆおや刹那魁など一部の作家でエロシーン出してナンボなスタイルのBL作品が見受けられます。
  • 「変愛」は男子生徒が保健室のベッドに教師を縛り付けて犯すシーンで始まりますが、二人が本当は成人で合意の上のシチュエーションプレイをしていた、という中盤のネタばらしの際に「もっと普通のセックスがしたい」というやり取りが挟まります。「顔に似合わず乙女思考な男」と揶揄されながら始めた「普通のセックス」が次第に熱を帯びてきて……という流れは作中人物、ひいては読者の中の変態(変態性欲)を肯定する展開として読めます。と同時に、白抜き修正がたっぷり入った性交シーンを連発しながら「普通」を笑い飛ばし、様々なシチュエーションプレイの構想に「付き合ってやるよ、その性癖」と締める爽やかさからは、「X-BL」レーベルのスタンダードを掲げる意気込みが伝わってきます。一方で東京都からは早速、不健全図書のお墨付きをもらっているのもホットなところ。
  • 2冊目の単行本「やたもも」(竹書房の電子配信「Qpa」初出)は画力・キャラクター描写共により一層の充実を遂げており、はらだ先生の本格的なブレイクと相成った訳ですが、エロのためのエロとしてのBLが前面に出ている点で「変愛」が2014年のBLを語る上での最重要作に位置付けられるでしょう。ちな虹銀魂


3. 吹屋フロ「桜花 咎の契」

桜花 咎の契 (G-Lish Comics)

桜花 咎の契 (G-Lish Comics)

  • 吹屋先生のBL単行本として本作は2冊目です。初単行本「葉ツ恋ノ記」収録の「牛若丸と弁慶」の長尺リメイクになる歴史BLですが、驚くべきはその画面のリッチさ。装束や武具、船舶や建物、烏天狗や馬、荒波や薄雲など全てが精緻に描かれており、BLジャンルでは間違いなくトップレベルの描きこみです(敢えて例示するなら森薫の方向性に近いです)。人物はというとストーリーでの濡場は多くないのですが、ひとつひとつは大変エロティックに仕上がっています。特に牛若丸の裸身は妖しい色気を放っていて素晴らしい限り。筋肉の描き込みにも手を抜かない辺りに業を感じるところですが、個人的には足指の描写に半端ない拘りがありそうに思えました(水桶に浸かった爪先に光の屈折が入ってるの、執念込め過ぎなのでは……)。リブレ出版の「Citron」で連載中の「仇椿ゆがみて歯車」にも期待したいです。ちな虹落乱。


4. おげれつたなか「恋とはバカであることだ」

電子版のリンク

  • リブレ出版から2冊目の紹介です。BLの旗艦誌である「MAGAZINE BE×BOY」及びその増刊誌での掲載作を収録。BL新人作家の単行本が電子配信と無縁なのは今時珍しいですが、リアル志向でシャープな作画、体格の良い学生モノという直球な話作りはマガビ本誌に相応しいかもしれません。ショタ・女装男子・クソビッチなどの飛び道具設定が跋扈する電子配信BLとは対照的に、一貫した王道展開でキャラクターの心情を十二分に映し出す本作の説得力は桁違い。特に表情の描き分けは別次元の上手さで、大コマでのバストアップが画面に映える堂々とした作風は大型新人という枠に収まりきらない魅力があります。新書館「Dear+」での連載の他、pixivの創作BL「ヤリチン☆ビッチ部」のようなネタ設定もいけるのが頼もしいです。ちな虹黒バス。


5. 秋月伊槻「イビツナ彼女は年中『発情期!!』」

  • クロエ出版の「真激」掲載作を収録した、秋月伊槻先生の初単行本です。重版もかかったようで嬉しいです。瞳のハイライトや乳輪の艶など、テカッとした光沢表現に目を奪われがちですが、理想化された体型のキャラクターを自在に動かしてどのコマもデッサンがピタリと決まっているのが個人的には大好きです。顔は美少女だけどボディはリアリティがあって、それが立体として正確に描写されているアンバランスさには、フィギュアにそそられる感覚と近い気がします。フィギュアと違うのは表情の豊かさで、先にも述べたように秋月先生の描くヒロインは目力が強く、ヤンデレ系ストーリーで見せる悪企みやサイコな表情がとても愛らしく映えているのもグレイトです。ワニマガジンの「X-EROS」にも載るようになったので、読者を増やして表現にも更なる磨きをかけていって欲しいと思います。


6. へんりいだ「はつこいりぼん。」

  • 「X-EROS」創刊当初からのメンバーだったサークルもすまんの商業単行本が遂に出る! でかしたワニマガ! ということでそれ以上の説明は野暮なんですが、やっぱりへんりいだ先生の女児の涙目が……最高やな! という感じでした。帯をかけた表紙は極めて健全な少女漫画テイストであり猥褻が一切ない。いいね? というカバーデザインや、なかよしりぼんという収録作のネタ、それと連動したの誌上作家インタビュー記事の作りこみ、ウェブ掲載の後日談漫画公開など、エロ以外にも行き届いた読者サービスが尊いとしか言えない。エロ漫画の最先端にいる作家さんだと思います。
  • 勿論、表現規制的な意味で真面目に言うならば、帯があろうが無かろうが、このマンガは猥褻ではないことを明記しておきます。


7. 百合原明「靴下でエクスタシー」

  • 芳文社の百合アンソロジー誌「つぼみ」で活躍していた百合原明先生のBL単行本です。寒いダジャレの効いたタイトルはいかにもジュネット(マガジン・マガジン)らしくセックス描写もフェチに走っているものの、短編各話のストーリーは意外にもしっとりとしています(ピアスレーベル水準比で)。キャラクターの燻ぶる情念が作品全体でのエロい雰囲気を支えており、エキセントリックな題材でもシリアスで見入ってしまうのが上手いです。エロの雰囲気作りという点で近いことをやってるのは、百合ジャンルだと大朋めがね先生かな……? 会話劇と雰囲気重視のストーリーは百合漫画の傾向なので、そこから本作のようにエロ方向へ進むのはもっと見てみたいですね。


8. F4U「好奇心はネコをもアレする」

  • 初単行本「今夜のシコルスキー」から5年ぶりとなるF先生(誤解を招く呼称)の2冊目の成年向けです。シコルスキーでは性本能と理性がせめぎ合う侵略戦争というのがひとつのテーマでしたが、本作では唯一無二のハイセンスなネーム回しが五臓六腑に沁み渡る、最高に自分好みな漫画でした。収録作の「絶対王様ゲーム」「あいつは! ノリでハメパコれる子さん」では同調圧力によってまかり通るレイプが描かれています。登場人物達の意思を押し流して不可避的にコトが進行する不条理さ、モノローグ・ト書きが神の声として展開を決定付ける作劇は独特ですが、まるでストーリー自体がヒロインを犯すべく駆動しているような暴力的な読み心地が快感です。もう1つ、F先生の最大の特徴は猛々しい男根描写ですが、「X-EROS」で掲載されていた作家インタビュー記事がカバー下に再掲されていたのはとても嬉しかったです。雑誌の時はびっしり黒塗りだったので……「仏を彫る仏師の気持ちでチンポを描く」という作者の言には読む側としても居住まいを正す思い(正確な引用句はあやふやですが)。


9. 無望菜志「NTR2」

  • ワニマガジン「X-EROS」から3冊目の紹介です。触手モノに定評のある作者の最新作はNTRジャンルで、畑は変わっても陵辱・輪姦シーンは手堅く仕上がっており、読み手の期待を裏切りません。「寝取られ×寝取らせ」と読むタイトルはストーリーとつながっていてややネタバレですが、NTRの輪の中にいた登場人物がNTRそれ自体を志向するようになる、というメタ的な流れを汲み取ることも出来ます。結末まで緊張が途切れることなく、最後までダークな物語のカロリー・重厚さには圧倒されます。惜しいところがあるとすれば、男性側のキャラ立ちが若干弱いことでしょうか……輪姦定番のモブおじさんがいかにも定番で、ややギャグっぽいかも。


10. 未散ソノオ「KOH-BOKU」

  • タイトル通り、登場人物が公僕……経済産業省を舞台にした官僚のBLです。主人公は伏魔殿での終わり無き責務をしたたかに飄々とこなす初老上司と、彼に心酔して番犬として尽くすことを希望する仏頂面の若きトップエリートの2人。息をつく暇も無く働き、仕事の面でしか関わりを持てず、辞令が下れば会うことすら難しい。お互いの気持ちを分かっていながらも、今にも壊れそうな関係を守るためにはそしらぬ顔を貫き通すという、淡々としたやり取りの中にも危うさを孕んだバディの雰囲気に引き込まれます。今にも壊れそうな、というのは初老の受の健康面もあって、線の細いおじさまに萌えつつも、その病弱さにはハラハラさせられっぱなし。セックスがしたいか、と聞かれた返事が「僕はあなたと仕事がしたいんです」というストイックさっつーか公畜っぷりがシビれます。昨年のBLでは丹下道先生の「恋するインテリジェンス」という外務省を舞台にしたBLも人気を博しており、省庁シチュ流れがあるかもしれません。


11. 樋口あや「らぶチェンジ〜快感♡女の体になったオレ〜」

  • 11作目でようやくTL(ティーンズラブ)の紹介です。秋水社の電子配信【メンズ宣言】掲載、単行本でのレーベルは「DaitoComics TLシリーズ」となっていて、男性向けなのか女性向けなのかよく分からない女体化漫画。昨年8月に刊行された本作で通算3冊目となる長期連載です(書影リンクが第3巻)。朝起きたら女になってた、という簡潔な導入に始まり、男友達に相談したらサカられてコトに及んでしまうという展開は女体化ジャンルとしてもシンプルな部類でしょう。しかし本作では「生ハメすると相手に『女』が乗り移る」というルールが加わっており、そこに様々な利害・思惑が絡んだ結果、収拾のつかない乱交パラダイスが繰り広げられています。人間関係/肉体関係が段々と複雑に、段々と節操無しに変化していくカオスっぷりは読んでいて大変面白いです。樋口先生の絵に若干ぎこちなさは残るものの、はっきりとした表情付けのおかげで読みやすく、特に快感で虚ろになる目の描き方がなかなかそそります。乳首愛撫の執拗な描写もイイ。
  • 女体化はその設定上、異性愛とも同性愛とも判別し難く、本作に限らず読者層も男性向け/女性向けという区別を当てはめづらいジャンルですが、昨今の電子配信エロでは一定の需要があるようで良く目にします。そもそもエロ漫画について男性向け、女性向けと切り分けた議論に限界があるのでは? というところも含めて、その方面の漫画研究者の人には電子配信界隈にも面白いネタなのではと思います。


12. 蔓沢つた子「くさかんむりに化けると書いて」

  • 2014年の電子配信BL誌の代表格、竹書房「Qpa」掲載作の新人初単行本です。上の方で「飛び道具設定が跋扈する電子配信BL」と言及しましたが、この作品は束縛気質のオネエキャラが受役主人公という、こういうの待ってましたなニッチ設定が特徴的。ですがイロモノで終わる作品ではありません。些細なことから束縛欲求が沸いて不機嫌な態度が外に出てしまうところ、素はオネエ口調だけど肝は据わってて対人関係は慎重なところなど、奇抜な設定はキャラクターの作り込みにしっかり落とし込まれていて、共感度は高いです。浮気を疑われそうな流れから自覚的に回避する筋立ても新鮮で、ストーリー展開もなかなか凝っています。高い頭身でガタイの良いキャラクター達が丁寧に描かれている一方、コミカルな場面ではちびキャラ化するのも違和感無い可愛いさがあって、かなり漫画が達者な印象。電子配信BLのフレッシュな勢いと、ポテンシャルを感じさせてくれる一冊です。ちな虹黒バス。


13. 木村ヒデサト「マリアボーイ」

  • 同級生への恋心を隠し通し、遊び人の年上セフレと割り切った関係を続ける高校生の主人公。実は想い人がセフレの溺愛する弟で……という病みかけ三角関係なBLです。絵の柔らかいタッチ、重要なシーンや悶々とした感情表現がギャグっぽく通り過ぎるところはSHOOWA先生に近いです。そうした特徴は若さゆえの前のめり、という描写に上手くつながっていて爽やかな読後感があります。青春やね。表題作は年上セフレさんの方を救済する本編サイドストーリーの立ち位置ですが、相手のヒモ体質ダメ人間の憎めなさ・調子乗りな性格が見事です。前作「猫とはセックスなんかしない」に比べて、話作りがぐっと良くなったと思います。グレー地にポスターカラーで彩られた題字が目を引くカバーの装丁は、売野機子の単行本でお馴染み? のsimazimaデザイン。ちな虹HQ。


14. 端丘「妄想くんのふたりあそび」

妄想くんのふたりあそび (ビーボーイコミックス)

妄想くんのふたりあそび (ビーボーイコミックス)

電子版(描き下ろし付き)のリンク

  • リブレ出版3冊目は全編描き下ろしの単行本です。コンビニのバイト/客として出会った見ず知らずの高校生に歪んだ王子様願望を抱き、一人歩きした妄想でストーカーするという、かなり仕上がった主人公の「妄想くん」。出落ち感のある設定と、高校生と会うたびにスイッチが入る妄想こそドリーム臭の強いナンセンスギャグですが、周囲と異なる性指向について幼少時から戸惑い、その結果として恋愛への内向きな態度(フィクションへの逃避)が形成された、という過程の描写は真に迫っており、実はとてもシリアスな内容です。相手に惹かれれば惹かれるほど、自分の思い描く妄想と現実のギャップを恐れて離れようとする。自分の人並みな恋愛感情を壊したくないから、想いを寄せるだけで実際のつながりは持ちたくない。屈折した思考の向かう先が、コテコテな乙女設定の王子様妄想というのが大変面白いけど笑えません。全編描き下ろしと言及しましたが、同人再録でも無いようなのでリブレの新人としては結構珍しいお披露目ですね。同人は、二次はやってないのかな……


15. 瞬一「ぼくらパーク」

ぼくらパーク (IDコミックス gateauコミックス)

ぼくらパーク (IDコミックス gateauコミックス)

電子版のリンク

  • BLが続きますが、一迅社Gateauレーベルから。WEBで発表していた掌編シリーズのまとめ本という体裁です。こういう新人抜擢の手腕は青田買い巧者なGateauらしいですね。pixiv系の短ページ創作を単行本に仕立てるスタイルは昨今増えてきたものの、元々のファンを超えてアピールするのはやっぱり難しいね! 正直言って! というのがあるんですが、本作は「ぼくら」達の日常の交流が巧みに描かれていました。ノリとやんちゃと無根拠な万能感という、思春期の無軌道な勢いとBLの相性。個人的には中村明日美子のアレやコレを連想するところですが、それらのコアな部分を濃縮させた萌えが詰まっていて、まとめて読む満足度はとても高いです。個々の尺の短さも、キャラクター達のプライベートなやり取りを盗み見るようなドキドキ感を演出すると共に、関係性の刹那的・断片的な儚さも感じさせているのがイイ。WEB形式での一つの最適解なのかなーと思いました。


16. A-10「GIRL? NEXT DOOR」

GIRL? NEXT DOOR (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

GIRL? NEXT DOOR (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

  • 成年コミックに戻りまして、足裏の伝道師ことA-10先生の新刊です。商業単行本は2010年の「Lord of Trash (電子版リンク)」メガストア完全版以来、2冊目?になります。美少女ゲーム総合誌「PC Angel neo」での連載コラムをまとめた同人誌「萌絵考古學大系」も記憶に新しいですね。中世ファンタジー長編を描いた前作とは一転、オタク文化の周辺への愛ある筆致に和みますが、やはり一番印象的なのはセリフ回しでしょうか。百花繚乱の隠語表現と舌足らずなアクメという作者の十八番は冴え渡り、カラオケ歌唱Hや声優演技指導などの全開シチュも凄いインパクトです。男性受け・年上女性を基調とした本作は男女共に良い鳴きっぷり。男性向けエロで男にダブルピースさせるとは……ていうかトラウマもいいところや。2014年初出は1作のみというのが若干寂しいところですが、その「砂糖とスパイス それと素敵な…」ではガールズラブともフタナリとも言えるキャラクター達が非常に可愛らしく、作風の広がりを感じさせました。女の子同士な話も読んでみたいところです。射精は不可欠なのかもしれませんが。ちな虹まどマギ。
  • ビブロス版の「Lord of Trash」は2002年刊行で実に干支一回り昔。当時新刊で買ったんですが、TAGRO先生の初期単行本のどれかに「Lord of Trash」の宣伝折込が入っていたのが自分の直接の購入動機だったと憶えてます。刊行タイミングが近いからスタジオDNA版の「マフィアとルアー」かな……これからも長いキャリアを期待してます。


17. おわる「いじめて!歯医者さん」

いじめて!歯医者さん (ミッシィコミックスYLC Collection)

いじめて!歯医者さん (ミッシィコミックスYLC Collection)

  • TL(ティーンズラブ)の紹介2作目です。2013年にBL新人作家として初単行本「純情ビッチ、ハツコイ系」(竹書房Qpa)を出したおわる先生ですが、並行して宙出版のTL誌「恋愛Revolution ラブレボ」「Young Love Comic aya」でも男女恋愛を執筆。BL/TLのジャンル掛け持ち作家というのは散見されますが、1年の間に両ジャンルで単行本を出した新人というのはちょっと見当たらないと思います。ジャンル越境する作家さんの、良い意味での節操の無さは逞しくもあり応援しています。BLでのおわる先生は、繊細な線から描かれる体格のよいイケメンが破壊力高かったですが、TLではそうした雰囲気ホストな官能性を更に押し出しつつ、女子も負けず劣らずキュートで素晴らしいです。がっつり巨乳やセクシーランジェリー含めた細かい服飾描写、もそそられますが、ヘアスタイルの緻密な描写には一層のこだわりを感じました。BLの最新作には竹書房の「キチク、エンカウント」があります。ちな虹T&B。


18. 山本アタル「偽×恋ボーイフレンド」

電子版・限定かきおろし付のリンク

  • リブレ出版4冊目、Citronコミックスレーベルの女装少年BLです。2014年1月頃にツイッターで話題になった「女装男子(攻)と童貞(受)がキスしたらこうなる」の画像投稿を発端とする単行本化。帯は「Twitter10000RT超!」という宣伝文句ですが、その人気はちゃんと売り上げにも反映されたようで、現在は重版4刷目というから凄いです。コンセプトは元ネタの通り、女装を隠して接近する攻の視点で描かれています。女装に気付かない受の反応や、それを見て気持ちが通じたと誤解する攻のすれ違いギリギリ感が上手い演出でした。単行本を通して読むと涙目&頬染めの受という構図には少し使いまわし感があるものの、嗜虐をあおる可愛さが十二分に発揮されていて大変良いカンジ。「MAGAZINE BE×BOY」最新号では可愛い系女装攻の新連載「いじめてウサギくん」も始まり、そちらにも期待が高まります。


19. 豆「ミルククラウン」

ミルク*クラウン (TENMAコミックス G4M)

ミルク*クラウン (TENMAコミックス G4M)

  • 2012年創刊の「Girls forM」(ガールズフォーム)から、同レーベル「G4M」唯一の単行本です。金蹴り・ペニバン・乗馬鞭と定番ながらも洒落にならんキーワードが手加減無しに出てきますが、それでも怖いもの見たさで読んでしまうことがコワイ! SMの精神性について言及した漫画というと甘詰留太先生の「ナナとカオル」(特にBlack Labelの方の第1巻)が傑作ですが、本作では一方的な屈服のあり方が、身体的苦痛の劇薬スパイスをぶっ掛けて表現されています。中でも印象的なのが、対等以上の関係から始まり、自らの意思で恋人としての明け渡す過程を描いた収録作「ダブルエスサイズ」でした。弱者として尽くすことで相手の歓心を惹きたい心理が切ない。切ないと言えば、掲載誌「Girls forM」が「逆転なし」というフレーズに辿り着くまでのニーズ調査過程を考えると胸が切なくなりますね。……というような余裕を繕ってみても、怖いものは怖いですが。
  • 宝島社の「この漫画がすごい!」選者で本作を挙げてた方は、結構チャレンジャーだと思いました。


20. 神谷ズズ「初恋カノジョ」

  • ワニマガ5冊目、kanbe先生と同じく新人作家です。いちゃラブH短編集の体裁は成年コミックの基本のキという感じですが、女の子の豊満な体つき、行為に至るまでの過不足ない導入、始まってからの迫力ある画面といったツボがきっちり押さえられていて、高いレベルでワニマガのスタンダードを魅せてくれました。ハイライトの入れ方が個性的なタレ目が可愛い一方、緻密なトーンワークによる肌や服の質感はとてもエロティックです。ストーリーもエロ漫画のお約束を踏まえつつオリジナリティがあって、親しみやすくて飽きない……要するに実用性が高い一品ですね。単行本の中でも近作ほど艶かしさが凄いので、今後も更なる女体描写を目指して欲しいです。


21. 聖「えっ? 彼氏付き賃貸ルーム!?」

えっ? 彼氏付き賃貸ルーム!? (miel TL comics)

えっ? 彼氏付き賃貸ルーム!? (miel TL comics)

  • 3つ目のTLジャンルです。声に出したいタイトルですが、内容はご想像通り。「彼氏付」の謎賃貸に入居したらミステリアスイケメン先住者がいて、なし崩し的にエッチして、怪しみつつも情が沸いてしまって……。初出はウェイブ発行の電子配信、「純愛革命G!」レーベルです。ツッコミどころの多い見てくれ&あらすじに電子配信のいかにもなチープさが漂いますが、それはそれ。デジタル指向でシンプルな作画はライトエッチな本作の雰囲気を邪魔せず、イケメンの不可解な行動を訝しみながらも強く出られない女の子の不安感が良く出ています。でもまあ細かい分析をするよりも、なし崩しエッチいいよね! あくまでフィクションで楽しもう! と割り切って楽しむべき作品です。好評につき続巻が出て、作中の謎も解決される形でめでたく完結、1巻は重版がかかりました。電子配信TLは単行本刊行まで漕ぎ付かない作品が大多数なので、恵まれた例と言えるでしょう。


22. 蜂宮よう子「縛られやケンちゃん」

  • 東京漫画社apres comicsレーベルのBL単行本です。初出はBevyの電子配信BLレーベル「ペロペロ男子図鑑」で、ティーンズラブを除くと多分この紹介の中で一番のマイナー作。自己中マゾビッチ受にドS認定クソ絡みされる、なりきりヤンキーヘタレというこじれた設定が電子配信ぽい。「ミルククラウン」のS側はMの心情を省みませんが、こっちは相手にS役を要求してくるMが実質優位に立ってるクソウザっぷりがいい味出してます。バカBLの範疇ですね。状況に流されてS役を果たすべく頑張る攻(?)の健気さも萌えどころです。作者はためこう名義で祥伝社「onBLUE」でも活動しているようです。なんかそっちの方が人気出そう……。
  • ちなみに、はらだ先生の「変愛」と同じく東京都の不健全図書に指定されました。よくチェックしてるね〜君たち。とはいえ本作は明らかに修正足りてないけど? 昨今の表現規制状況舐めてんの? という実態があるので、むしろ出版社側の脇の甘さが気になるところです。


23. 高野弓「えろ♡めるへん 人魚姫」

えろめるへん 人魚姫(1) (えろ☆めるへん)

えろめるへん 人魚姫(1) (えろ☆めるへん)

  • TL4作目、文庫サイズでの刊行です。メルヘンを扱った文庫版コミックというとぶんか社の残グリこと「いちばん残酷なまんがグリム童話」及びその系列誌が連想されますが、本作は竹書房が出版・版元はフォーセットの電子配信が初出です。童話ベースの翻案モノという点は本家の残グリと共通ですが、残酷グロテスク成分もエロに振り替えているのが差異でしょうか。高野弓先生はえろ♡めるへんシリーズ最大の功労者で、特に「人魚姫」は現時点で500ページを超える長編作。憧れの王子と結ばれたい一心で悪魔と取引をして人間になった人魚の恋心が、政敵や恋敵も入り乱れて翻弄される様を描いた王道なストーリーです。エロ可愛いヒロイン(海の中でも眼鏡着用)やどこか憎めない狂言回しの悪魔、ツッコミ役の世話係などコミカルなキャラクター達も多く、読み応えがある作品です。2015年完結予定のようですが続巻単行本は果たして出るのか気がかりです……。ちなみに新書館からBL単行本「月と馬」(電子配信BL誌「Cheri+」連載作)も刊行されています。


24. 荒木そらいろ「僕らの自由な恋の日々」

電子版のリンク

  • 幻冬舎のWEBコミックBL誌「ルチルSWEET」から、新人の初単行本です。荒木そらいろ先生は同誌で「青空書店コミック担当柳田君」を発表後に本作を手がけ、1年半の連載がまとまった形になります。受攻両者がボブカット&眼鏡というキャラデザは珍しく、デフォルメの利いた独特の絵柄も最近のBL売れ線方向と開きがありますが、庇護欲を掻き立てるぬいぐるみのような受と、彼を見守る登場人物たちの描写には作者の深い愛情が感じられます。かといって受を表面的に愛でて満足する作りにはなっておらず、三角関係をそれぞれの視点から丹念に描き、友情の中で収束に向かう作劇は安易なハーレムエンドと一線を画す出来栄えです。ちな虹HQ。


25. 紀伊カンナ「海辺のエトランゼ」

  • 祥伝社の伸び盛りなオリジナルBLアンソロジー誌「onBLUE」の大型新人、紀伊カンナ先生の初単行本。同誌での市川春子との対談記事では「宝石の国」アニメPV製作に携わった(ぼかした表現)ことも取り上げられ、2014年のBL作家として最も注目を集めたのではないでしょうか。風光明媚な沖縄の離島を舞台にした作品ですが、「心が、洗われるようなボーイズラブ。」というキャッチコピーは言い得て妙。3年越しの再開で恋人となった2人の進展ストーリー以上に、視界に舞う落ち葉、足元でくだける波飛沫、家の外で鳴く虫の音色といった、1コマ1コマの風景描写に強烈な没入感があります。穏やかに秋へと向かう作品世界のアンビエントな空気感が心地よいですが、特に逆光・夜の表現は出色で、作中で繰り返される月夜の美しさには心を奪われます。やばい。カレンダー作って欲しい。単に背景を描く以上に、そこにキャラクターを配置した「絵」の存在感が物語の説得力を支えている作品です。続編「春風のエトランゼ」では北海道に舞台が移り、新たな情景描写への期待が俄然高まります。大洋図書のBL誌「CRAFT」にて「雪の下のクオリア」も連載中。
  • 女性が綺麗に描けているBLは個人的にポイント高いんですが、本作は当て馬婚約者のお嬢様や主人公妹の百合カップルもキャラが立ってるので、「FEEL YOUNG」での番外編展開を期待してます。


26. 井戸ぎほう「やさしくおしえて」

やさしくおしえて (EDGE COMIX)

やさしくおしえて (EDGE COMIX)

  • 26作目は茜新社の「OPERA」からのBL新人です。弟が連れて来た可愛い系男子が気になるも、恋愛ごとには半歩引いた主人公。進展のじれったい二人が羨ましくもあり、からかい半分世話半分で潤い補給してる退屈なポジションだったけど、ある日いきなり知らない男子に告白されて……というお話。主人公のやる気無いウダウダしたモノローグはなかなか共感しやすく、等身大なキャラクターが良く表現されています。最後まで大きな感情の発散を無しにストーリーを駆動するのも渋いところで、頭の中で答えを出す、行動に移す、という1つ1つのテンポの刻み方が不思議な読み心地です。惜しむらくは、人物以外の描き込みが不足気味なところかな……。11月にふゅーじょんぷろだくとから刊行された2冊目「夜はともだち」もあります。


27. 音音丸「恋するケモノと人外は…」

恋するケモノと人外は… (ムーグコミックス)

恋するケモノと人外は… (ムーグコミックス)

  • ジーウォークの成年アンソロジー誌「Qoopa」から、タイトル通り人外&ケモノエロの新人短編集です。擬人化ジャンルの中でもケモノはヒトに寄せる処理が多様なのでケモナーと一括りにまとめづらいところ。特にエロになると生殖器の構造や行動習性などのファクターも増えて面白いですが、本作は人外キャラの造形、特に装束デザインが目を惹きます。人外を描くにあたって、ヒトとの様々な関わり方を背景世界として伺わせているのもポイント高い。同人だと人外エッチは実力派作家が固まっている印象があるので、音音丸先生に続いて単行本が増えるといいなと思います。Zトン先生、鉄巻とーます先生、ドウモウ先生などなど。


28. 荒井よしみ「あふれてしまう」

  • BL紹介ラストは祥伝社「onBLUE」レーベルからの2冊目になります。但し本作は同誌連載作ではなく、編プロ・シュークリームの「恋するカラダBoys」レーベルでの電子配信が初出です。フラワーショップのお兄さん×気弱な高校生という年の差カップリングですが、書店で出会ってお兄さんの色気に当てられてそのまま手で……という導入は犯罪臭もあり、綺麗な絵柄でやってることは結構変態的。エッチから始まった2人の関係が深まっていくストーリーはちゃんとありますが、それ以上に各話の濃厚なプレイとショタを愛でる筆致が見所です。消しも薄いぞ。全編通じてお兄さんの魔性っぷりが出ており、ショタ側も妄想逞しいむっつりなのでごちそうさまな相性カップルです。現在はリブレ出版の「BE・BOY GOLD」にて「息をとめて、うごかないで」を連載中。ちな虹氷菓


29. anco/かずいち「オトナのXX課〜カラダ開発がお仕事です〜」

  • ティーンズラブ全5作の最後も上に同じく祥伝社の単行本です。こちらは編プロ・アイプロダクションの電子配信TL「黒ひめコミック」レーベルが初出。意図せずして女性用アダルトグッズの企画課に配属になったヒロインが、仕事を通じてH体験をするという筋立てです。TLジャンルで仕事モノの体裁を取っているのも珍しいですが、それ以上に本作が挑戦的なのは「ヒロインが傍観者視点」というところ。勿論グッズを使う描写はあるものの、ストーリー中盤までのエッチは会社が商品のモニターとして契約しているAV女優が役割を担っており、そもそもヒロインの性交シーン自体が最後の最後1回だけ。女優と絡む場面の方が多いという、かなり変則的な構成です。理由として考えられるのは、従来のTLストーリーからの脱却。TLのお約束である、パートナー役と出会って1話目から行為に及び、その後も毎話必ずシーンを挟むという様式は、男性向けエロ漫画の鏡写しと捉えれば極めて真っ当な娯楽要件。しかし具体的なストーリーに落とし込むと結構厄介です。何故なら女性主人公・相手役男性でこの条件を満たすと、訳ありレイプからスタートして衝突を繰り返しながらの強引エッチ、いけすかない奴だけど愛撫は優しくて、体を重ねる毎に彼の事情と本心が見えてきて……という、結果オーライかもしれないけど展開と女性心理が都合良すぎっていうか女舐めてんのかという内容に陥りがちだからです。自分はそういった事情を飲み込んだ上で楽しんでいますが、女性読者を対象とするTLジャンルの抱える、割とクリティカルな構造的欠陥だとも思っています。本作がそうした問題を自覚的に見据えているのか、純粋にストーリー展開の幅を模索しているのかは微妙なところですが、大きなストーリーとしても働く女性のキャリアアップという形式を取っており、従来とは異なる方法論を展開している点は高く評価したいです。ちなみに原作者のanco氏(Amazonの表記だと原画となっていますが)は「黒ひめコミック」他作品も手がけており、恐らくはアイプロダクションの編集・シナリオライター。編集サイドの原作者は通常表に出ないですが、電子配信TLではよくあるクレジット表記です。


30. 枝空「らぶ♀らぼ〜俺が女になった日〜」

らぶ♀らぼ~俺が女になった日~ (いずみコミックス)

らぶ♀らぼ~俺が女になった日~ (いずみコミックス)

  • 最後の紹介は枝空先生です。同人誌「エロ漫画ノゲンバ」シリーズの挿絵で知っている人も多いはず。ベーシックな画力の高さと読み手を選ばない絵柄は標準的なエロだと少しインパクトに欠けますが、女体化モノでは「カラダは女性・表情は男性」という描き分けがばっちり映えていて良かったです。表題作はロリ科学者や触手生物も出てきてコミカルで賑やかな展開が楽しめます。産業スパイの末路は闇。
  • 今回紹介したように女体化ジャンルは男性向け・女性向けという分類を跨ぐ形で存在しており、特に最近は電子配信エロの定番ジャンルとなりつつあります。ヤングジャンプの「ボクガール」という一般誌大手での展開も出て来ました。キャラクターの関係性が複雑化していった先に、男女関係なく楽しめるエロの境地があるのなら、それはとっても嬉しいなっていう気持ちでジャンル無差別エロ漫画ランキングを試作してみたのがこの紹介になります。拙文ですが興味を惹くタイトルがあれば是非ご一読を。


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漫画トロピーク」(ツイッター

「このマンガガガガ2014」

2014年の年間コミックランキングをぶち上げる同人誌です。

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サークル漫画トロピークは2015年のコミックランキングを作りたいというメンバーも募集してますので、宜しければツイッターの方にお声掛け下さい。

2013/01/14

[] 2013-01-14 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― を含むブックマーク 2013-01-14 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― のブックマークコメント

2012年のマンガランキングはこんな感じでした。


1 久嘉めいら「優等生の遊び方」

2 小山鹿梨子「校舎のうらには天使が埋められている」

3 香魚子「もう卵は殺さない」

4 相田裕「GUNSLINGER GIRL」

5 梶本レイカ「高3限定」

6 吉もと誠「ウソツキ!ゴクオーくん」

7 卯月妙子「人間仮免中」

8 田中ほさな「時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。」

9 ダ・ヴィンチ・恐山「くーろんず」

10 ブノワ・ペーターズ=作、フランソワ・スクイテン=画 古永真一・原正人=訳「闇の国々」

11 マルク=アントワーヌ・マチュー 原正人 訳「3秒」

12 神奈アズミ 原作/クレア・ウィリアムズ「レイン候爵と薔薇の館」

13 阿部共実「空が灰色だから」

14 西野マルタ「五大湖フルバースト」

15 アルコ×河原和音「俺物語!!」

16 竹内友「ボールルームへようこそ」

17 天望良一「亡国のジークフリート」

18 緑のルーペ 原作協力:フジワラキリヲ「ブラパ THE BLACK PARADE」

19 サトーユキエ「愛しの可愛い子ちゃん」

20 古味直志「ニセコイ」

21 鶴淵けんじ「meth・e・meth」

22 天堂きりん「きみが心に棲みついた」

23 ライフスタイル角田「なんとかやってます。」

24 松島直子「すみれファンファーレ」

25 松井信介「あなたのそばに」

26 木村リノ「あじさいタウン」

27 宮崎夏次系「変身のニュース」

28 田仲みのる「ロケット☆ガール -Rock it GiRL!!-」

29 原作:戸塚たすく 作画:阿久井真「ゼクレアトル〜神マンガ戦記〜」

30 原作:ONE 漫画:村田雄介「ワンパンマン」



ランキングの中身はさておき、忘れないうちに2012年のマンガで言及しておきたいものに言及します。



別冊マーガレット増刊「bianca」は2012年のコミック誌の中でも群を抜いて優秀な雑誌で、特に別マが擁する新人作家の弾数に驚かされました。同じ集英社でもYJ増刊のアオハルが創作同人作家のアンソロ誌になってしまうのと比べると、女性・少女向けと青年・少年向けの体力差を認めないわけにはいきません。短編集である「もう卵は殺さない」では、表題作がbiancaの巻末に掲載されました。悩めるマンガ家を助けるゴーストライター・プロット作成代行業者と、そこでお蔵入りになっている作品が主人公(いわば擬人化)です。作中では作品同士が売れる設定・売れない話の議論を始め、またマンガ家を挫折したゴーストライターの再挑戦が描かれます。物語は作者が暖め、作品として世に出すことで孵化して作者の手を離れていく。「もう卵を殺さない」とはそうした物語創作を肯定していくことであり、ひいては作り手であるマンガ家たちの成長の芽を摘まない、という主張に通ずる非常にメタ的な作品です。自前の新人作家多数で構成されたbiancaにおいて、この作品が掲載されたというのは、なかなか意義深いことだったのではないでしょうか。



講談社では「戦闘破壊学園ダンゲロス」の横田卓馬ことYOKO、集英社では「ワンパンマン」のONE、小学館では「ヒト喰イ」のMITAなど、2012年は各社で新都社作家のお披露目が行われた年でした。ウェブコミック作家の商業デビュー自体は今更珍しいものではないですが、新都社に大手出版社が大々的に手を付けたのははじめてでしょう。元々プロ指向だった横田卓馬はさておき、素人上等・ヘタウマ御免で、商業コミックとはある意味方向性が真逆の作品群が単行本化するというのは、なかなか複雑な気分です。自前で新人が用意出来ない青年誌が新都社の人気作家をハンティングしていくのって正直末期なのかなーと。独自文化の醸成されたコミュニティからタダ取りするなら、新都社作家×自社作家での化学反応を新規作品に仕立てて欲しいと私は思います。ゼクレアトルはその要件を満たしている貴重な作品です。ワンパンマンも化学反応はあるのだが、集英社における村田雄介の扱いがあれでベストとは考えたくない……


新都社では「平穏世代の韋駄天達」が好きです。この人の作劇上手すぎるから、商業で原作担当しないかなーと思ったり。長門は俺先生のムリゲー艦蹴りも面白いですよね。



2012年のマンガベストワンです。以前紹介したので繰り返しになってしまいますが、繊細な線から紡がれる描写の力強さ、特に表情の気迫が新人離れしてます。中身は一見想像がつかない位にドロドロの愛憎病みっぷりですけど、悪堕ちして開き直りつつも、自らの罪に苛まれる登場人物たちはとても美しいです。「人間は確かにキレイじゃいられないけど/完全に醜くもなれない」いい言葉だ……。携帯配信のモバフラでこういうマンガが出てくるようになったというのは、媒体変化によるジャンル更改を予感させて興味深いです。ちょうど先日モバフラの配信、モバプレ1/10号で新作が出たんですが、そっちも面白かったっすわ。



転校して周りと馴染めないでいた私のはじめての友達は、クラスいちの美少女・蜂屋さん。蜂屋さんは引っ込み思案で仲間外れの私と遊んでくれます。周りから冷たい目で見られても、蜂屋さんは臆病な私のことをかばってくれて、私はその勇気に助けられてクラスの一員になれたのです。でもそれは、全て私をクラスの慰み者、「わんこ」に仕立てる、偽りの友情でした。

というわけで別冊フレンドの伝統芸・いじめマンガの最新形です。クラスを支配する最恐JSの蜂谷さんと、不屈の闘志でそのいじめに立ち向かう漆黒のヒロイン・光本さんの対決を中心に、小学校での残酷ないじめが繰り広げられます。転校生のクラス仲間入りや、野外学習で男子とプチ遭難といった、お決まりのハートウォーミングな少女マンガ展開が、凄惨ないじめの現場に引きずり込まれる救いのなさが秀逸。天使の微笑で同級生を絶望に突き落とす蜂屋さんの心無い発言にゾクゾクすること間違い無しです。



「人間にとって神とは何か?」という問いに少年成長的な答を出した快作。中二病のなんて安易なそしりを寄せ付けないがっぷり四つな姿勢、能力バトル展開から背後の大きな仕掛けに迫っていく作劇、最終巻のどんでん返しと爽やかなラストにしびれました。作中で示される「神の存在意義」もシビアな答えだけれど、読んだ後に少し胸を張りたくなる。



別冊コロコロコミック生まれの絶対裁判テイストな騙し合い推理漫画。地獄の閻魔大王の主人公が小学生となって、校内で起こる事件とそれにまつわるウソを舌先三寸で暴いていくストーリーです。コロコロのオリジナル良作は最近だと板垣雅也の「STAND UP!」や松本しげのぶの「錬人」等ですが、誌面を大きく占める長寿作品・ベテラン作家を押しのけるのは簡単ではない。そんな中、ゴクオーくんは自らのウソで悪人をやっつける痛快さが大ヒット。既にコロコロ本誌の看板作の一角を担うまでの人気っぷりで、各話完結連載の短いページ数に二転三転するウソ事件を組み立てる構成力も高く、大人が読んでも楽しめます。ヒロインの天子ちゃんが可愛いんだなこれが。



日に2回以上歯を磨かない→減点10。お前にモテる資格は無い。読んでいて心が折れました。このままでは藤井さんが恋愛落伍者に……絶対に許さない。それはともかく、漫画アクションでは「LOVE理論」(今月刊行予定)、週刊漫画TIMESでは「レンアイガク」と、監修者つきでのハウツー恋愛マンガがオヤジ誌に載ってたのも印象深いです。ちゃおで真己京子が「恋愛メンタリズム」を書いてるのも同じ流れを感じる。



コミックZERO-SUMの長期連載が、昨年完結しました。王族の暗殺事件から始まるこの物語は、ホクレアという先住民族との確執、建国史にまつわる暗部など重厚なスケールのファンタジーです。ライトなファンタジーは舞台設定とキャラクターの掘り下げバランスが結構難しいですが、本作は両者を高いレベルでまとめています。食糧事情や交易のあり様にまで気を配った緻密な世界観の下で、ゼロサムらしいキャラクターの魅力を前面に出すつくりになっているのは、一迅社の目指すファンタジー像を高いレベルで実現しているように思います。王道ファンタジーもマイナージャンルに位置する今日において、こういう骨太な作品をじっくり続けていくのも並大抵では無いと想像しますが、また一迅社の良質ファンタジー、読みたいですね(遠い目)



好きな作品の話はなかなか手短に出来ないっすね。

2010/01/11

[] 2010-01-11 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― を含むブックマーク 2010-01-11 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― のブックマークコメント

2009年のマンガのランキングはこんな感じでした。


1位   アイシールド21   原作/稲垣理一郎 漫画/村田雄介

2位   マンガのマ   武内こずえ

3位   ゆゆ式   三上小又

4位   機械少年メカボーイ   川西ノブヒロ

5位   シュメール星人   ツナミノユウ

6位   キラメキ☆銀河町商店街   ふじもとゆうき

7位   茜新地花屋散華   ルネッサンス吉田

8位   ゴクジョッ。〜極楽院女子高寮物語〜   宮崎摩耶

9位   片恋トライアングル   天乃忍

10位   夏草ホームベース   平手将之

11位   マコトの王者   福井あしび

12位   ぼくらの   鬼頭莫宏

13位   わらってヒミコさん   中嶋ゆか

14位   りんたとさじ   オガツカヅオ

15位   バガタウェイ   古日向いろは

16位   ミツバチのキス   伊図透

17位   中国ふしぎ夜話   長池とも子

18位   エディドヤ   歩田川和果

19位   ケーキを買いに   河内遙

20位   PEEPO CHOO ピポチュー   フェリーペ・スミス

21位   イエロードラゴンがあらわれた!   田村光久

22位   黄昏乙女×アムネジア   めいびい

23位   デウスXマキナ   烏丸渡

24位   ベルとふたりで   伊藤黒介

25位   ケッコーケンコウ家族   栗原まもる

26位   ラブフール   けろりん

27位   しなこいっ   原作/黒神遊夜 作画/神崎かるな

28位   品川宿 猫語り   にしだかな

29位   空想コミュニケーション   倉田ひさ子

30位   アトムちゃん   西島大介


昨年末に出版社だけ羅列したときに「グ集」というのがあったけれど、勿論ゴクジョのことだった。分かる人にはバレバレ。10〜13位までが全て小学館なのが何となく気に入っている。TMR会誌の方の総評でも書いたが、雑誌読書量が減ったため未単行本化作品の候補を選べず、苦し紛れにTLの読みきりを29位に入れている。でも他にマイナーなのは2,18,28位の3つくらいで、ハーレクインやぶんか社グリムからランクインさせた2008年ランキングに比べるとだいぶメジャー志向になった、ということにしておきたい。ただ裏返せば網羅性とか変態レベルでは下がってるので、来年はちょっと建て直したい。

各作品についてのコメントとかは、また今度だ!

electroelectro 2010/01/12 04:07 『ゴーレム100』の「100」は本来の表記では「ゴーレム」の右肩に乗っかってます。Aice5みたいな感じ。

ばばばば 2010/01/12 10:44 『Aice5』の「5」は本来の表記では「Aice」の右肩に乗っかってます。ゴーレム100みたいな感じ。
と言ってくれたほうが分かる。

nasukanasuka 2010/02/02 16:40 ついったーからお邪魔します…。生涯現役で読み続けたいって、すごくよくわかります〜〜!!そういう環境で居られるように人生を何とかしたい、とか思ってます…。それにしても、1月だけでもたくさんありますね(☆△☆)保管場所が大変ですね。。

ばばばば 2010/02/02 19:30 >そういう環境で居られるように人生を何とかしたい
自分も何とかしたいですね、人生…。
購入予定は気になったもの・よく知らないものもチェックしているので、実際の購入はついったーの記録が正直ですね。でもたぶん、これでも物凄くたくさん買ってるって部類ではないハズと自分をだましだましです。

2009/12/04

[]9.5日目 9.5日目 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― を含むブックマーク 9.5日目 - ばばニッキ     ――おおきく知りかぶって―― のブックマークコメント

最後の最後まで順位を入れ替えてじたばたしてました。10作品は他の人と被るという目標もうまいこと達成できたようでよかったが、被らせたいと思って入れた作品が2,3作ボール球になっているので、完全成功とは言いがたい。空気を読むのは難しい。

それはそうと、これでTMRの総合ランキングが決まって、明日から100位までのコメント付けが始まって、冬コミまでの約20日間、1年で最も楽しい時期が来ると思うと超嬉しい。他のマンガ好きの人がこの楽しみを味わえないなんて、かわいそかわいそなのです。