残しておく

佐々木元勝(1904−1985)の『野戦郵便旗』(全2冊、現代史出版会、1973年)です。
この方は、1937年から1939年にかけて、野戦郵便局の設営と管理のために、上海から武漢まで日本軍の侵攻とともに行動された方で、その時の記録を、ガリ版刷りで残しておいた(前半部分は1941年に公刊されたそうですが)ものだということです。
直接の戦闘にはかかわらないとはいえ、実際の戦地の状態を見ていることでは、かえって生々しいものがあるようにも見えます。
郵便業務には、郵便だけでなく、為替送金も大きな仕事で、戦地の兵士がもらう給料を故郷に送金するという業務を担っていたのだそうです。そうした戦地での仕事が記されます。
それとともに、当時の一般的な日本人が中国に対してどのように見ていたかの証言にもなっています。格下の存在と見ながらも、抗日をよびかける本やスローガンなどもみて、それなりの敬意を払って対しています。そこがある意味、リアルなものなのでしょう。
こうしたものを発掘した高崎隆治さんにも、敬意を払いたいと思います。