はにわ談義

2年目になったいまの職場。
子どもたちとも、少しずついろんな会話が楽しめるようになってきた。

2年生のY君が、「先生、遺跡で像が載ってるのが見たい。」と言ってきた。
遺跡で像かぁ…年度末に世界遺産のシリーズを買ったのは前の学校だったっけ。あの本を駆使することなく異動してしまったのが、今さら惜しくなるな…といらんことを連想しながら書架を探すが、写真がふんだんに載っているようなものがない。
像と言えば、モアイ像やスフィンクス像やアンコールワットでの像などしか、すぐ思い浮かばない。
それをY君に言っても、なんとなくぴったりしないようだ。

ふと、埴輪はどうかな?と思い、日本の歴史の大和朝廷のへんの号を出して、古墳のあたりを一緒に見る。
「昔のえらい人は、自分のお墓に人や馬や船なんかをかたどったものを焼いて、一緒に埋めたのよ。その人形たちを埴輪っていうんやで。」
その本の説明を読んでいると、当初は生きた人間を一緒に埋めていたという…。え〜、そんなんやったんや!ショック。
「奈良に行くと、お土産物でよく売ってるよ。先生も、ちっちゃいの持ってるよ。」
と話すと、結局その本を借りてくれた。

そして、「ぼくのおじいちゃんなあ、奈良にいるねん。タクシーの運転手をしててん。」とY君が言った。
「そうなんや!じゃあ、先生がいま言ってたようなことは、おじいちゃんがよく知ったはるわ。また、会う時があったら聞いてごらん。」と、私は答えた。

2年生にしては、ピンポイントでぐっと詳しい分野があるY君。
おじいちゃんと、また会話が広がればいいなと思った。

そしてその後自由読書だったので、しばらくは他の子どもたちの様子を見たりかかわったりしていた。
すると、Y君がまた来て言うのだ。
「Yなあ、あとフライパンがあればばっちりなんやけどな。」
「フライパン?」

「おじいちゃん、いるやろ。粘土あるやろ。あと、フライパンで焼いたら出来るやん。」
「あっ、埴輪か?」

私が言った「焼く」という言葉を、「フライパンで焼く」と結びつけたのだ。
「それは、フライパンでは出来ひんねん。」
陶芸を、Y君は知らないんだ。
私の説明も足りなかったな。

でも、おかしくておかしくて、フライパンでカラカラと焼かれている埴輪を想像して、笑ってしまった。

「今度、先生の家から埴輪持ってくるね。」
「うん。」

古墳の写真が満載な本も仕入れないといけないし、遺跡ももっと調べてみようと、Y君にきっかけを与えてもらったように思った。

しかし、家に帰ってみたら、引越し騒動で、見あたらないんだよね、私の埴輪くん…。お〜い、どこにいるんやあ〜?


そして、今日。
7月にする選書会の参考に、子どもたちに書いてもらうアンケートがある。どんな本が入れてほしいか書く欄がある。

Y君は、「歴史の本」と書いていて、(はにわ)とカギかっこがしてあった。

なんだか、すごくうれしい私だった。