机上クラブ

2009-09-21

アフリカの日々

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イサク・ディネセン『アフリカの日々』

合本の『やし酒飲み』と続けて読むと、なんとも奇妙な感じだな。カップリングのヘンさとしては、光文社文庫江戸川乱歩『孤島の鬼/猟奇の果て』みたいな感じか。大傑作と○♪×☆!が一緒に並ぶ、ある意味最強の本。

それはさておき、これはデンマーク女性のディネセンが植民地ケニア珈琲農園を切り回す、紀行文学。どうやら実際は、ディネセンのアフリカ生活が幸せに包まれてばかりいたわけではない、らしいのだが、これはそこから蒸留された結晶であろう。

植民−被植民といったものでなく、異文化に触れる新鮮な驚き、愉しみ、大地の光と影との交歓、ライオン狩の昂揚、猟銃事故とその地の理に則った裁判、マサイ族の少年との友情、云々。ゴシックロマン調のゆったりと、そしてセンスのよい気持ちのよい文章でつづられる。ディネセンの五感はあまりに精緻で素晴らしい。

キリンの行進を「花梗の長い、花弁に斑点のあるめずらしい花々が、ゆっくりと動いてゆくようだった」と描写する。また、ある馬丁がラバをキジコ(スプーン)と名づける。どうにもスプーンには見えないラバだが、御者(上=神)の席からみると、「キジコの肩はばは異常にせまく、尻のあたりがひどくふっくらしていて、底の側を上向きにして伏せたスプーンにそっくりだった」といった次第。物事をあらゆる角度から眺め観察するだけ。だけだが、とにかく引き込まれる一冊。

土地の人びとは、人間のかたちをとったアフリカそのものだった。