黄金探索者

J・M・G・ル・クレジオ『黄金探索者』

南の島で海賊が隠した黄金を探す……っても、『宝島』(『ワンピース』のがむしろ例えとして通りがいいのか)みたいなドラマチックな物語ではない。むしろここで描かれるのは自然への憧憬と、少年のイノセンスな成長だ。
舞台はモーリシャス近海あたり。1892〜1922年にかけて嵐で崩壊した楽園を取り戻すために、少年は父の暗号と地図を頼りに海へと繰り出していく。嵐の襲撃や航海を通して、自然の姿が少年の目を通して執拗に描かれる。「今では光が出てくるのは海からである、その色彩の奥深くからである。空は澄んでほとんど色がない。ぼくは青い海の広がりと虚空とを、めまいがするほど見つめている」といった次第で、池澤曰く「純正な叙事詩」とのことだ。
地図を頼りに宝を探すが、その目的地の夕陽の光景が素晴らしくて、それが「宝」と勘違いする……といった話を小学校の教科書で読んだ覚えがある。なんとも他愛のない話だが、本作でも少年は自然の光景のなかに「黄金」を見出す。自然との再会であり、合一であり、それが至上の喜びだ。
これこそ「いい本」だなとは思いつつも、このようなシンプルな構成の叙事詩にあまり魅力を見出すことは出来なかった。毎日毎日少しずつ、それこそ微速前進の宝探しのようにして読むのが良かったかもしれない。

「黄金なんて何にもならない。黄金なんて恐れてはいけない。それに刺されるのはこわがる人だけだわ。蝮と同じよ」