容疑者Xの献身/東野圭吾

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

この作品を楽しみにしながらも、わざわざ前2作を読んでからの満を持しての購入。


評判に違わず、ムチャクチャ面白い!
小説を読むために朝方まで起きていたなんて久しぶりです。
面白いと言われる東野圭吾作品の例に漏れず、世界観に引き込む文章力と構成力(この作品については特に後者)の素晴らしさに圧倒されて、一気に読んでしまいました。


ミステリ作品なのでトリックやらアリバイの要素も含んでいて、その内容も物凄いのだけど、この作品の凄いところはその「仕掛け」に主眼を置いていなくて、事件を取り巻く人間関係をドラマチックに書いているところだと思う。で、それを頑張って書いているので、『秘密』や『変身』のように読んでいて心が締め付けられるような感情移入をできるのです。ラストは凄く泣ける。電車の中で鼻水出た。


ただ、残念なのは、

  • 上にあるようにトリックに主眼を置かない物語の運びにしているため、ミステリばっかり読んでいる人からは「トリックが簡単すぎる」と叩かれる
  • ミステリを全然読まない人からは、「ミステリ的ご都合主義が癇に障る」と叩かれる

という、ミステリ派とアンチミステリ派のどちらにも支持されなくなってしまっているのが非常に勿体無いです。東野圭吾は「物凄いトリック」なんてなくても十分に面白いと思えるのだから、もう少しどちらかに傾けた内容でも良かったのじゃないかな。


と、これだけベタ褒めしたのだけど、実は個人的には『秘密』の方が好きだったりします。
この作品が直木賞を取れるのであれば、『秘密』でも十分受賞できたのではないかなぁ。