高橋和夫『イスラム国の野望』幻冬舎新書

IS日本人人質殺害事件をきっかけに、シリアやイラクの情勢に関心が高まった人、新聞でニュースを読む前にこの新書に目を通しておくとよいですよ。
イラクやシリアが現在のようになるまでの流れがつかめます。
「はじめに」より、著者のことば。

なぜイスラム国が登場し、なぜ世界中がこれを脅威とみなしているのかを理解するには、現状と歴史的背景の両方を、立体的に見る必要があります。
とはいえ、ここ数十年の歴史をさかのぼっても、中東地域は、世界有数の紛争多発地域で、多くの国、民族、宗教組織の対立がからみあい、その全体像を把握するのはなかなか難しいのも事実です。
そこで本書では、複雑な枝葉の部分をできるだけ省略し、大事なポイントだけを絞りに絞って、最大限にシンプルな解説をするよう心がけました。
(引用元:高橋和夫イスラム国の野望』幻冬舎新書 p4-5)

目次紹介

  1. イスラム国、急拡大の背景
  2. イスラム国とは何なのか
  3. イスラム国出現までの100年史
  4. イスラム過激派とは何者か
  5. イスラム国と国際情勢
  6. イスラム国はいつまでもつか

イスラム過激派について日本で話題になるとき、彼らが自分の行為を正当化するのにイスラム教を持ち出してくること、また、イスラム圏の国々では、その地域の勢力がしばしば宗派によって分かれているせいで、権力闘争や紛争もすべてイスラム教という宗教に絡めて語られてしまい、日本人にとってはわかりにくいものにされてしまいがちですが、アラブ世界においてイスラム教というのは無視できない大きな要因ではあるものの、紛争に至る過程ではそれを構成する要素のひとつに過ぎないことがわかります。
にわかに関心を持って、ニュースを読みだした者としては、この新書を読んでおくと、“イスラム教”に目をくらまされて妙な印象にとらわれたりせずに済むと思いました。
あとがきによると脱稿されたのは2015年初頭、IS日本人人質事件が起こる直前になりますか。あの事件後、日本とISの間はこの本が書かれた時点とは変容したかもしれませんが、著者の高橋先生は、あの事件を特集したテレビ番組でも解説者として出演しておられました。だからこの本の後のことは、テレビでお聞きになった方も多いでしょう。
読んでいて、ふと思い出されたのは、前アサド大統領です。私にとっては、リアルタイムでニュースで見たというより、死去された後、日本で前アサド大統領についてまとめた記事を雑誌で読んでキョーレツな印象が記憶されているのですね。そこに掲載されたお写真は顔の輪郭と目の細さから、なぜか小泉純一郎に似てるなと思ったりした。
現アサド大統領は、前アサドのご子息となるわけですが、たしかにあのお父様にくらべるとご子息はまだ甘口に見えるわ。それぐらいお父様はすごかったし、そうでないと統治できなかったようですね。そういう国もあるということでしょうか。