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2015年-03月-30日

辺野古調査の停止と対話を求める地方紙社説

 前回の記事(「政府を変えるのは沖縄支援の声の広がり」〜辺野古作業の停止指示、在京紙も1面トップ)の続きになります。

 沖縄県宜野湾市米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、名護市辺野古地区の代替基地建設を進めるため日本政府が予定海域のボーリング調査再開を強行したことに対し、翁長雄志・沖縄県知事が3月23日、ボーリング調査など一切の作業を停止するよう、沖縄防衛局に対して指示したことについては、地方紙やブロック紙も大きく取り上げ、琉球新報の記事によると24日付朝刊紙面では15紙が1面トップに据えたとのことです。

 ここでは、ネットの自社サイトで社説を公開している新聞について、その内容を一読してみました。全文をチェックできたのは13紙(中日新聞東京新聞は1紙とカウント)、ほかに見出しのみの公開が3紙(会員制で会員には全文を公開)でした。多くは、知事選衆院選で沖縄の住民意思が明確に示されていることを指摘し、安倍晋三首相政府に対し、調査をいったん停止して翁長知事と対話するよう求めています。その中で「普天間飛行場返還のためとはいえ、その負担を同じ県民に押し付けていいわけがない。基地負担を極力減らし、日本国民が可能な限り等しく分かち合うために力を尽くす。それが政治の仕事のはずである」(中日新聞・東京新聞)、「在日米軍専用施設の大半が沖縄に集中する現実を、全ての国民があらためて直視する必要がある。基地負担軽減、中でも世界一危険といわれる普天間飛行場の移設は最優先すべき課題だが、県内移設では負担軽減にならない」(愛媛新聞)と、沖縄以外の地域が負担を引き受けることにも触れた社説もあります。この考え方は選択肢として重要だと思います。普天間飛行場が単に閉鎖されるだけでは終わらず、機能の移転(代替施設の建設)が必要だとしたら、沖縄以外の場所でなければ沖縄に対する差別的な扱いは解消できません。まさに「政治の仕事」だと思いますし、まずもって沖縄の基地の過剰負担を「すべての国民があらためて直視する必要がある」と思います。

 もう一つ、目を引かれたのは北國新聞(27日付)です。辺野古地区への移設それ自体に対しては日本政府の方針を支持していますが、首相の安倍晋三氏や官房長官菅義偉氏らが翁長知事と会おうとすらしないことには「争いの中にあっても対話を途切らせてはならない。そのための配慮を特に首相官邸に求めておきたい」と、安倍政権側に注文を付けました。同じように政府方針を支持している読売新聞産経新聞とは一線を画したようにも多少趣を異にしているようにも思いました。

 以下に、備忘もかねて各紙の社説のそれぞれの一部を引用し書き止めておきます。

【24日】

▼中日新聞・東京新聞「辺野古基地調査 県に従い作業停止を」

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015032402000109.html

 菅氏(注:官房長官)は常々「法令に基づいて粛々と対応する」と述べているが、県の指示も法律や県の規則にのっとった法的手続きだ。安倍内閣が日本は法治国家だと自負するのなら、まず県の指示に従い、作業を停止させるべきではないか。

 安倍内閣が辺野古での作業を進める根拠としているのは、公約に反して米軍普天間飛行場の県内移設容認に転じた仲井真弘多前知事による埋め立て許可である。

 しかし、仲井真氏は昨年十一月の県知事選で、県内移設反対を掲げた翁長氏に敗れた。前回当選時の公約を破った仲井真氏に、県民は厳しい審判を突き付けたのだ。

 続く十二月の衆院選でも、沖縄県内の全四小選挙区で県内移設を掲げる自民党候補は敗北した。

 にもかかわらず、安倍内閣は県内移設を拒む沖縄県民の民意に向き合おうとせず、翁長氏と政権首脳との面会も拒み続けている。抗議活動中の市民を逮捕、排除してまで作業を進めようとする。そんな法治国家がどこにあるのか。

 翁長氏が会見で指摘したように県民の理解を得ようとする政府の姿勢は「大変不十分」である。まずは安倍晋三首相の方から沖縄県民に歩み寄るべきだ。

 在日米軍基地の約74%が沖縄県に集中する現状は異常だ。普天間飛行場返還のためとはいえ、その負担を同じ県民に押し付けていいわけがない。基地負担を極力減らし、日本国民が可能な限り等しく分かち合うために力を尽くす。それが政治の仕事のはずである。

京都新聞「辺野古停止指示  政府は亀裂を深めるな」

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150324_4.html

 安倍首相は4月末の訪米に向けて辺野古移設計画の進展を鮮明にしたいようだ。だが、米海兵隊の司令官は米議会上院軍事委員会公聴会で辺野古移設に懸念を表明した。これ以上こじれれば、県民の怒りの矛先が沖縄の米軍基地全体に及ぶことを憂慮しての発言だろう。移設に揺れる沖縄の姿が、当の米軍関係者の目にも危ういと映っているとみていい。

 政府が優先すべきは強引な移設計画推進ではなく、沖縄との関係修復だ。ボーリング調査の現場では、反対派住民との間で衝突が頻発している。強引に進めれば反対派もエスカレートし、取り返しのつかない事態に発展しかねない。

 菅官房長官は県側に説明責任を果たす考えを示した。遅きに失した感は否めないが、まずは自ら沖縄に出向いて知事との対話を始めることだ。「辺野古移設しかない」という根拠は何か、県民が納得のいく説明をしなければならない。

 地元の理解が得られないまま移設を進めても、安全保障にプラスになるとは思えない。政府は、沖縄だけでなく、日本の将来のためにいったん調査を止め、誠実に民意と向き合うべきだ。


【25日】

北海道新聞「辺野古基地移設 作業停止の政治決断を」

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0025002.html

 移設問題を司法の場に持ち込むのは避けるべきだ。県側は岩礁破砕許可だけでなく、埋め立て工事そのものの許可取り消しも視野に入れている。対立が長引いて泥沼に陥りかねない。

 辺野古移設案をめぐってはかつて県側も理解を示していた時期もある。それは国側が粘り強い話し合いを続けた結果だった。

 問答無用とばかりに移設工事を進める安倍政権の姿勢は歴代政権と比べても突出して強権的だ。

 反対の声を力でねじ伏せて工事を続け、後戻りできない既成事実を重ねる手法は禍根を残す。

 選挙公約を覆した前知事の許可に頼って正当性を主張する安倍政権の側に無理がある。昨年の知事選と衆院選で反対の明確な民意は示された。選挙結果には従うのが民主主義の基本だ。

北日本新聞「辺野古調査の停止指示/強行突破は泥沼を招く」※見出しのみ

神戸新聞「辺野古停止指示/沖縄の民意を無視するな」

http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201503/0007850807.shtml

 政府は「手続きに法的な問題はない」と主張する。だが、その根拠となる前知事による埋め立て承認は、昨秋の知事選で県民の信任を得られなかった。続く衆院選でも、沖縄4小選挙区全てで辺野古推進・容認派が敗れた。沖縄県民は「辺野古反対」の意思を鮮明に示している。

 ところが、辺野古移設に反対する翁長氏が県知事に就任して以来、安倍晋三首相は面会を拒み、沖縄振興予算を減額するなど露骨に冷遇してきた。政権にとって都合の悪い「民意」には向き合わず、ねじ伏せようとする。あまりに傲慢(ごうまん)ではないか。

 防衛局が辺野古に投入したコンクリート製ブロックがサンゴ礁を傷つけているのを、県が潜水調査で確認してから1カ月。周辺では、県民による座り込みや海上での監視などの抗議行動が続いている。

 そんな中で工事を強行すれば県民が反発を強めるのは当然だ。すでに抗議行動の参加者と警察官らとの衝突が相次いでいる。地元の理解を得られないまま移設を進めたとしても混乱は続くだろう。

 政府はいったん立ち止まり、沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

高知新聞「【辺野古移設問題】沖縄を突き放さず対話を」

http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=335317&nwIW=1&nwVt=knd

 移設反対の翁長氏が昨年の知事選で勝利した後、政府と沖縄の溝は深まる一方だ。安倍首相も菅官房長官もいまだに翁長氏と会っていない。

 知事選だけでなく衆院選の全小選挙区、名護市長選、名護市議選のいずれも県内移設の反対派が勝っており、民意ははっきりしている。

 翁長氏の警告にもかかわらず調査を継続するのは、こうした沖縄の民意に向き合っていないことになる。

 安倍首相らはこれまで「沖縄の方々の理解を得る努力を続ける」と繰り返してきた。政府として十分努力していると県民に説明できるだろうか。

 県が許可を取り消した際、今のように国が無視すれば、作業中止を求める仮処分裁判所に申し立てる案が出ている。逆に防衛局側も許可取り消しの無効を求める行政訴訟を起こすとの見方がある。まともな対話もせず、法廷闘争になれば沖縄と政府の関係はさらにこじれるだけだろう。

 政府の対応次第では移設反対派の抗議活動が激しくなる恐れがある。今でも海上保安庁や県警との衝突で危うい状況があり、非常に心配だ。流血の事態となれば取り返しがつかない。

熊本日日新聞「辺野古『停止指示』 安倍首相は知事と対話を」※見出しのみ

南日本新聞「[辺野古移設] 政府は話し合いの席に」

http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201503&storyid=64684

 強硬姿勢の背景には、工事を進め既成事実を積み上げることで県民世論を変化させようとの狙いが透けて見える。4月下旬に予定する安倍晋三首相の訪米をにらみ、移設計画を進める姿勢を鮮明にしなくてはとの判断もあろう。

 しかし、普天間飛行場の移設をめぐっては昨年1月、受け入れ側の名護市長選で辺野古移設反対の稲嶺進市長が再選。11月の知事選も反対派の翁長氏が初当選し、翌12月の衆院選では沖縄の4小選挙区で反対派が全勝している。沖縄県の民意は反対でまとまっているといって過言ではない。

 翁長氏は知事就任以降、移設問題を政府と直接協議するため6度も上京したが、安倍首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏との会談は実現していない。

 こうした政府の不誠実な対応が翁長氏を作業停止指示に駆り立てたのは間違いあるまい。

 普天間飛行場の返還で日米が合意して20年近くになる。依然として移設が進まない現実を直視して政府は対応を考え直すべきだ。


【26日】

秋田魁新報「辺野古で全面対決 冷静になり関係修復を」

http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20150326az

 しかし、ここで最優先すべきなのは、政府も県も冷静になり、関係修復に動くことである。まずは政府が海底作業を中断し、翁長知事と話し合う度量を見せる必要がある。移設計画がどんな方向に動くにしても、敵対したままでは沖縄の協力は得られるはずもなく、安全保障上もプラスにはならない。

 政府とすれば、安倍首相が4月に訪米する前に辺野古移設を前進させ、首脳会談の場で移設推進を確認したいとの思惑もあるようだ。だが、その前に沖縄との信頼関係をつくることが不可欠だ。

 県側もいたずらに問題を複雑化させることは避けるべきだろう。基地問題への不満が渦巻いているからこそ、翁長知事には抑制の利いた対応が必要だ。

 政府と県の対立が続けば、法廷闘争に突入することは避けられず、問題の長期化は必至だ。傷口をさらに大きくするような対応はお互いに慎まなければならない。

信濃毎日新聞「辺野古移設 工事を止めて対話せよ」

http://www.shinmai.co.jp/news/20150326/KT150325ETI090006000.php

 辺野古反対という沖縄の民意は昨年の知事選や衆院選などで繰り返し示されている。辺野古の海や移設先に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前では反対派の抗議活動が続く。

 首相が4月に訪米する。政府にすれば普天間移設の日米合意を進める姿勢を示したいのだろう。日米関係を優先して地元の反対を無視することは許されない。沖縄との溝を深めるだけだ。

 このまま全面対決が続くようだと、県が工事差し止めを求めるといった訴訟も想定される。政府には裁判になっても「負けることはない」との判断があるようだ。対話によって解決するのが本来の姿である。県と法廷闘争を繰り広げる展開は避けるべきだ。

 政府は夏にも埋め立て工事に着手しようとしている。菅氏は普天間の危険除去を強調しつつ、「粛々と進める」と繰り返す。移設を既成事実にしようと作業を進めることがあってはならない。

 政府に求められるのは、埋め立てに向けた作業を止め、県と話し合うことだ。知事は就任後、何度も上京しているのに、首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏は会おうとしない。一日も早く会談すべきである。

新潟日報「辺野古海底調査 沖縄の声に向き合わねば」

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20150326171066.html

 政府は海底作業中止の指示にも「違法性は重大で明白」と強気だ。訴訟になっても負けないという判断があるのだろう。

 だが、過度に米軍基地の負担を背負った沖縄の苦しみ、移設をめぐる混乱を顧みる時、その態度は誠実といえるかどうか。

 一連の選挙の経緯や勝ち負けを超えて、今こそしっかりと地元の声に向き合い、対話を深めていく姿勢が求められる。

 安倍首相は4月に訪米し日米同盟の強化を発信する考えのようだ。辺野古移設の推進をその象徴として掲げるというのは、いかがなものかと思う。

 地元の反発を無視したままでの移設強行は、地元受け入れを重視してきた米政府も歓迎することではないはずだ。政権の強引さや異論を受け付けない狭量さを印象付けることにもなろう。

 また、国が一方的に計画を進めて、仮に移設が完了したとしよう。その時、県民の日米両政府への視線がどれほど厳しいものになるかを想像すべきだ。

 政治は異なる意見を広く聞き、説得し、決断するのが役目だ。その前提になる信頼関係を取り戻す努力を始めねばならない。

▼愛媛新聞「辺野古調査継続 沖縄の民意黙殺は許されない」

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201503264270.html

 名護市長選、知事選、衆院選小選挙区など、昨年沖縄であった一連の選挙では辺野古移設反対の民意が示された。作業をやめて翁長氏と話し合い、基地負担軽減の道を共に模索することこそ政府の務めだ。安倍晋三首相は速やかに対話に応じてもらいたい。

 同時に、沖縄県側を追い詰めたことを政府は猛省しなければなるまい。安倍首相や基地負担軽減を担う菅義偉官房長官は、翁長氏が就任後何度上京しても会談に応じない。また、仲井真弘多前知事による埋め立て承認を検証する間は調査を見合わせるよう求めても、無視を決め込む。施政方針演説などで首相が「沖縄の理解を得る努力を続ける」と繰り返す姿勢に反しよう。

 菅氏は「行政の継続性」を理由に工事の正当性を強調する。しかし、埋め立てを承認し辺野古移設容認に転じた仲井真氏に、多くの県民は「ノー」を突きつけたのだ。移設は白紙に戻ったと言うべきであり、民意を黙殺して強行するようでは、もはや民主主義とは呼べまい。

 看過できぬ発言があった。中谷元防衛相が「国の安全保障を踏まえて考えていただきたい」と翁長氏を批判したのだ。安保政策を盾に、沖縄に負担を強いるのはやむを得ないと宣言したに等しい。

 在日米軍専用施設の大半が沖縄に集中する現実を、全ての国民があらためて直視する必要がある。基地負担軽減、中でも世界一危険といわれる普天間飛行場の移設は最優先すべき課題だが、県内移設では負担軽減にならない。政府は今こそ、「辺野古ありき」で対米追従を強めてきた姿勢を改めるべきだ。

西日本新聞「辺野古移設 政府はまず沖縄と対話を」

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/158523

 翁長知事は昨年11月の知事選で「辺野古移設反対」を掲げて当選した。かねて「あらゆる手法を駆使し、辺野古に基地を造らせない」と発言している。今回の作業停止指示や、今後予想される法的措置も、その「あらゆる手法」の一つなのだろう。

 知事選だけでなく、昨年12月の衆院選でも沖縄は4小選挙区の全てで辺野古移設反対派の候補が勝利した。「辺野古ノー」という沖縄の民意は明確だ。

 にもかかわらず、安倍晋三政権は、移設容認派の前知事時代になされた手続きを盾に「法令にのっとり粛々と対応する」としてボーリング調査を再開した。反対派の不信感は強まる一方だ。

 地域で反対が強い政策を実行するのなら、政府はまずその地域の住民と信頼関係を結び、情理を尽くして説得する必要がある。しかし、安倍政権が翁長知事を説得しようとした形跡はない。

 問答無用で推し進めるのではなく、まず安倍首相や菅義偉官房長官が知事と会い、日本の安全保障と沖縄の負担問題について、根本から語り合ったらどうか。自分の意見と違う人と対話する。これが政治の第一歩であるはずだ。

 

【27日】

▼北國新聞「普天間移設問題 争っても対話途切らせまい」※リンクなし

 米軍普天間飛行場の移設工事をめぐり、推進する政府と反対する翁長雄志知事の沖縄県が互いに法律に基づく対抗措置を取り、全面対決の様相を見せている。国の専権事項である外交・安全保障の重要政策が、地元自治体の反対で進まないというのは不幸な事態である。話し合い決着が困難な以上、国側が法的措置で事態の打開に動いてもやむを得ないということであろうか。

 それでも政府、沖縄県の首脳同士がまったく協議することなく、感情的にも対立がエスカレートする状況は尋常ではない。沖縄の基地問題は普天間飛行場の移設だけではない。基地負担の軽減策や地域振興策について政府、沖縄県は手を携えていかなければならないのであり、争いの中にあっても対話を途切らせてはならない。

 そのための配慮を特に首相官邸に求めておきたい。対話もなく沖縄県執行部との対立が泥沼化すると、普天間飛行場を名護市辺野古に移設する日米両政府合意の計画を支持、容認する県民の心情まで害することになりかねない。


【28日】

徳島新聞「辺野古移設で対立 政府は沖縄の声を聞け」

http://www.topics.or.jp/editorial/news/2015/03/news_14275014549174.html

 菅官房長官は「わが国は法治国家だ」「法令に基づき、粛々と工事を進める」としている。

 しかし、前知事が公約に背いて踏み切った辺野古の埋め立て承認は、昨年11月の知事選で大敗を喫したことで県民からノーを突き付けられた。

 昨年の名護市長選と衆院選でも、移設賛成派は完敗した。沖縄の民意は明確に示されている。それを無視して進めることが正当な方法といえるだろうか。

 翁長知事は就任後、安倍晋三首相と菅官房長官に一度も会えていない。

 安倍首相はきのうの参院予算委員会で「国と地元がさまざまな取り組みについて連携を深めていく中で、翁長氏との対話の機会も設けられると考えている」と述べた。

 首相は中韓両国首脳との会談開催をめぐり、前提条件を付けるべきではないとし、対話のドアは常にオープンだと強調している。

 その姿勢を沖縄に対しても貫いてもらいたい。地元の理解と協力を得ようとするなら、まずは県民の声に耳を傾けるべきである。

大分合同新聞「辺野古移設で対立 政府は対話の扉を開け」※見出しのみ


※追記 2015年3月30日8時45分

 2カ所に加筆・修正しました。

 本文で中日新聞・東京新聞と愛媛新聞の社説を引用した部分で「この考え方は重要だと思います」に「選択肢として」を加筆し「この考え方は選択肢として重要だと思います」としました。

 本文で北國新聞の社説を紹介した部分で、読売新聞や産経新聞との対比を「一線を画したようにも」を「多少趣を異にしているようにも」に修正しました。前回の記事で紹介しているように、読売新聞と産経新聞も政権の側に、沖縄側の理解を広げるよう求めています。 

2015年-03月-26日

「政府を変えるのは沖縄支援の声の広がり」〜辺野古作業の停止指示、在京紙も1面トップ

 沖縄県宜野湾市米軍普天間飛行場の移設問題で大きな動きがありました。同じ沖縄県内の名護市辺野古地区への代替基地建設をあくまでも進めようと、日本政府は3月12日から埋め立て予定海域のボーリング調査再開を強行。これに対し翁長雄志・沖縄県知事は23日、ボーリング調査など一切の作業を停止するよう、沖縄防衛局に対して指示しました。以下に琉球新報の記事を一部引用します。

※琉球新報「知事、辺野古埋め立て作業停止を防衛局に指示」2015年3月24日

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240803-storytopic-3.html

 翁長雄志知事は23日午後、県庁で臨時の記者会見を開き、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて沖縄防衛局が進めている海底ボーリング調査について、30日までに作業を停止することを指示したと発表した。その上で指示に従わない場合は「岩礁破砕許可を取り消すことがある」と述べた。防衛局が海底に設置したコンクリートブロックがサンゴを傷つけていることを受けた措置。同時に臨時制限区域内でのサンゴ損傷の潜水調査に向け、立ち入りを許可するよう米軍へのあっせんも求めた。

 辺野古移設阻止を掲げる翁長知事が政府による海上作業を停止させるため新たに権限を行使した形。だが政府側はいずれにも応じない姿勢を示しており、知事の許可取り消し判断は必至とみられる。

f:id:news-worker:20150325234858j:image

 形式上は、サンゴが傷ついていることをとらえた措置ですが、翁長氏はかねてより普天間飛行場の県内移設に明確に反対を掲げてきました。公約を守り、辺野古地区への移設を阻止するため、ついに起こした行動です。しかし沖縄防衛局は24日も作業を継続。また、行政不服審査法などに基づく対抗措置として、指示の取り消しを求める審査請求書と、指示の効力停止を求める申立書を林芳正農相に提出しました。日本政府と沖縄県の全面対決と呼んでいい状況です。

 既に何度もこのブログに書いてきましたが、地域の民意は明確になっているのに、その民意に反して日本政府が国家政策を強引に進めるような、この沖縄のような例がほかにあるでしょうか。翁長氏が打ち出した作業の停止の指示は、日本政府の沖縄に対する差別的な姿勢への強い異議申し立てでしょうし、もう後には引かないとの強い覚悟を感じます。昨年11月の知事選で翁長氏を当選させたのが、保革を超えた「オール沖縄」のムーブメントだったことを思えば、オール沖縄による日本本土への異議申し立ての意味を持つと思います。本土に住む日本国の国民一人一人に対しても、安倍晋三首相政権を支持しようがしまいが、主権者として否応なく、そのように差別をする側に身を置いていることの自覚が問われるのだと、個人的には受け止めています。

 東京発行の新聞各紙も、24日付けの朝刊では日経新聞を除く5紙(朝日、毎日、読売産経、東京)がそろって1面トップで報じました。以下に主な記事の見出しを書き留めておきます。普天間飛行場の移設問題では、朝日新聞毎日新聞が日本政府の強硬策に批判的で、読売新聞産経新聞は政府方針を支持というように全国紙の論調は2分化していますが、論調の違いに関わらず、翁長氏が発した異議申し立ては大きなニュースとの判断で一致しました。ブロック紙である東京新聞は、沖縄の地元紙の琉球新報から記事の提供を受けています。

 個別の記事では、毎日新聞の総合面「クローズアップ」の中で、沖縄大の仲地博学長(行政法)が「辺野古移設反対を求める沖縄県民を支援する声が国民にどれだけ広がっていくかで、政府の姿勢は変わってくるのではないか。多くの国民の支持を受けた43年前の復帰運動のような盛り上がりをみせるかどうかだ」と指摘していることが目を引きました。これから日本政府と沖縄県、安倍政権と翁長知事との間で起こる出来事は、細大漏らさず、本土に住む日本国民に知られなければならないだろうと思います。日本政府の沖縄に対する姿勢は今のままでいいのかどうか、国民一人一人が他人ごとではなく我がこととして考えるためです。

※参考 琉球新報の記事によると、地方紙でも15紙が24日付朝刊紙面で1面トップで報じたとのことです。

 琉球新報「在京5紙、1面トップ 地方15紙も 知事の停止指示」2015年3月25日

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240849-storytopic-3.html

f:id:news-worker:20150325234857j:image

※東京都内発行の24日付朝刊各紙(いずれも東京本社発行最終版)の主な記事と見出し

【朝日新聞】

 1面トップ「辺野古作業 停止を指示」「沖縄防衛局に 知事『1週間以内』」「岩礁破砕許可取り消しも」/「『引き続き工事』菅官房長官

 2面・時時刻刻「移設阻止 訴訟も覚悟」/「停止指示従わねば『許可取り消し』」「沖縄知事が新論法」/「政権『この期に及んで』」「『訴え、結論までの間も作業』」

 第2社会面「移設反対派『大きな一歩』」「知事停止指示 国の対応を警戒」

 社説「辺野古移設 沖縄の問いに答えよ」


【毎日新聞】

 1面トップ「辺野古 作業停止を指示 沖縄知事」「破砕許可 来週にも取り消し」「国は続行方針」/「『中止理由ない』官房長官」

 3面・クローズアップ2015「法廷闘争が現実味」「辺野古作業 停止指示」/「沖縄知事 本気の旗」/「強気の政府 想定内」

 社説「沖縄の対抗措置 政府は追い詰めるな」


【読売新聞】

 1面トップ「辺野古 作業停止を指示 沖縄知事」「許可取り消しなら 政府、訴訟検討」「菅長官『中止の理由ない』」

 3面・スキャナー「辺野古移設 法廷闘争か」「沖縄知事 指示停止」「政府『前知事の許可、有効』」/「正当性を強調」/「『腹は決めた』」

 3面「設計変更 自治体敗訴も」

※25日付朝刊に社説「辺野古移設作業 冷静さを欠く知事の停止指示」


【日経新聞】

 3面「辺野古作業の停止指示」「沖縄知事 政府は移設を継続」

 社会面「知事決断 評価の声 沖縄県民」

※1面トップは「原発の電気 新電力へ」「経産省方針 小売り競争促す」


【産経新聞】

 1面トップ「辺野古 政府、抗告訴訟へ」「沖縄知事 来週 許可取り消し」「海上作業停止を指示」「翁長氏 危うい決断・防衛省瑕疵ない』」

 社説(「主張」)「辺野古移設 知事は停止指示の撤回を」


【東京新聞】

 1面トップ「辺野古作業の停止指示」「沖縄知事『7日以内に』」「許可取り消し視野」「政府強硬 法廷闘争も」

 2面「翁長氏『腹は決めている』」「沖縄と国 辺野古攻防 新局面に」※「琉球新報取材班」のクレジット/「知事一問一答」

 第2社会面「『闘いに応えてくれた』「座り込み 市民ら沸く」/「翁長知事 移設阻止の決意固く」

 特報面「抗議テント 攻防激化」「沖縄の民意 新基地反対」「『座り込みの拠点 撤去許さない』」/「国との闘争の最前線」「脱原発象徴 再稼働反対」「『全国の仲間の心のよりどころ』」/「『法運用を正す宿営型市民運動』」※沖縄県名護市・米軍キャンプ・シュワブ前と東京・霞が関、経産省前

 社説「辺野古基地調査 県に従い作業停止を」


 各紙の社説のうち、それぞれに特徴的だと感じた部分を引用して書き留めておきます。

▼朝日新聞「辺野古移設 沖縄の問いに答えよ」

 翁長知事は会見で「腹を決めている」と述べた。沖縄側の最後通告ともいえる意思表示と考えるべきだろう。

 これまでの経緯を振り返ると、「沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら」と言ってきたはずの政府が実際には、沖縄の訴えに耳を閉ざして「粛々と」作業に突き進んできた状況がある。

(中略)

 知事選で辺野古移設阻止を公約して当選した翁長知事にしてみれば、知事の行政権限を駆使して沖縄の立場を訴える行動に出るのは当然の流れだろう。

 知事の姿勢を、中谷防衛相は「もう少し沖縄県のことや日本の安全保障を踏まえて考えていただきたい」と批判する。

 だが、米軍基地が集中する沖縄の県民にとっては、国の安全保障政策は「なぜ辺野古か」「なぜ沖縄に海兵隊か」といった疑問だらけである。沖縄からの深刻な問いかけに、政府はまず向き合うべきだ。

▼毎日新聞「沖縄の対抗措置 政府は追い詰めるな」

 政府が手続き上の問題はないというのは、一つ一つの行為だけを取り上げればそういう理屈も成り立つのかもしれない。だが、問題がここに至ったのは、政府が沖縄との対話の扉を閉ざしたまま、一方的に移設作業を進めてきたことが背景にある。

 政府が今のやり方を進めていっても、その先には何の展望も見いだせない。沖縄の理解と納得がないまま、将来、仮に辺野古に代替施設が完成したとしても、それは日米安保体制の強化につながるだろうか。

 むしろ、いつ暴発するともわからない県民感情を抱えて、同盟は不安定化しかねない。これ以上、沖縄を追い詰め、感情的な対立を深めれば、問題解決は遠のくばかりだ。

▼読売新聞「辺野古移設作業 冷静さを欠く知事の停止指示」※25日付

 住宅密集地にある米軍普天間飛行場の辺野古移設は、住民の基地負担軽減と米軍の抑止力維持を両立する最も現実的な方策だ。

 移設が遅れれば、飛行場の危険な現状の長期化に加え、在沖縄海兵隊のグアム移転など他の基地負担軽減策の実現も危うくなる。

 1996年の普天間飛行場返還の日米合意が、様々な曲折を経て、ようやく実現のメドが立った今、再び移設問題を迷走させる事態はあってはなるまい。

 政府は、地元関係者の理解を広げる努力を根気よく続けながら、決してぶれることなく、移設を進めていく必要がある。

 翁長知事は、辺野古移設を阻止するため、法廷闘争も辞さない構えを見せている。政治的パフォーマンスに走らず、冷静に政府との接点を探るべきではないか。

▼産経新聞「辺野古移設 知事は停止指示の撤回を」

 沖縄の島である尖閣諸島(同県石垣市)をはじめ南西諸島の安全は、中国の軍事的台頭により脅かされている。沖縄はいや応なくその最前線になっている。

 辺野古移設は、日米同盟の抑止力維持の観点から、沖縄県民を含む国民全体の利益となることを理解してほしい。

 混乱を回避する責任は、知事や県側だけでなく、政府にもあることも指摘しておきたい。

 国にこそ、安全保障を確かなものとする責任がある。辺野古移設に対する沖縄の理解を広げていく不断の努力が必要である。

 安倍晋三政権が移設工事に着手したことは評価できるが、首相や菅官房長官らと知事との会談が実現しないなど意思疎通を欠いている。沖縄への説得を強められるよう状況を改めることも急務だ。

▼東京新聞「辺野古基地調査 県に従い作業停止を」

 菅氏(注:官房長官)は常々「法令に基づいて粛々と対応する」と述べているが、県の指示も法律や県の規則にのっとった法的手続きだ。安倍内閣が日本は法治国家だと自負するのなら、まず県の指示に従い、作業を停止させるべきではないか。

 安倍内閣が辺野古での作業を進める根拠としているのは、公約に反して米軍普天間飛行場の県内移設容認に転じた仲井真弘多前知事による埋め立て許可である。

 しかし、仲井真氏は昨年十一月の県知事選で、県内移設反対を掲げた翁長氏に敗れた。前回当選時の公約を破った仲井真氏に、県民は厳しい審判を突き付けたのだ。

 続く十二月の衆院選でも、沖縄県内の全四小選挙区で県内移設を掲げる自民党候補は敗北した。

 にもかかわらず、安倍内閣は県内移設を拒む沖縄県民の民意に向き合おうとせず、翁長氏と政権首脳との面会も拒み続けている。抗議活動中の市民を逮捕、排除してまで作業を進めようとする。そんな法治国家がどこにあるのか。

 翁長氏が会見で指摘したように県民の理解を得ようとする政府の姿勢は「大変不十分」である。まずは安倍晋三首相の方から沖縄県民に歩み寄るべきだ。

 在日米軍基地の約74%が沖縄県に集中する現状は異常だ。普天間飛行場返還のためとはいえ、その負担を同じ県民に押し付けていいわけがない。基地負担を極力減らし、日本国民が可能な限り等しく分かち合うために力を尽くす。それが政治の仕事のはずである。


 沖縄の地元紙2紙の24日の社説も紹介します。

沖縄タイムス「[辺野古 作業停止指示]筋を通した重い判断だ」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=108428

 臨時制限区域内では、民間の工事船や海上保安庁の警備船が多数出入りし、沖縄防衛局も独自の潜水調査を実施している。なのに、県の調査だけを認めないというのは、嫌がらせと言うしかない。

 菅義偉官房長官は「国としては十分な調整を行った上で許可をいただき工事をしている。全く問題ない」と法的正当性を強調する。だが、岩礁破砕の許可には条件がついており、条件に反する行為が確認されれば、許可を取り消すのは当然である。

 それよりも何よりも最大の問題は、前知事の埋め立て承認を唯一の根拠に、県との一切の対話を拒否し、選挙で示された民意を完全に無視し、抗議行動を強権的に封じ込め、一方的に作業を続けていることだ。

 埋め立て承認が得られたからといって、公権力を振り回して問答無用の姿勢で新基地建設を進めることが認められたわけではないのである。


▼琉球新報「新基地停止指示 安倍政権は従うべきだ 知事判断に正当性あり」/「主権」はどこへ/低劣な品格あらわ

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240804-storytopic-11.html

 「全く問題はない」。沖縄の基地負担軽減を担当しているらしい菅義偉官房長官はこの日も硬い表情で断定調の「全く」を再三口にした。強気一辺倒の物言いには、沖縄を敵視する響きがある。

 見たくない現実から目を背け、都合のよい事情だけ取り入れて強がり、恫喝(どうかつ)する。仲井真前知事による埋め立て承認にすがりつき、沖縄の民意を問答無用で組み敷くことしか打つ手がないことの表れだ。子どもじみた心性が際立つ。民主主義の価値を損なう政権の低劣な品格が映し出されている。

 沖縄の民意は「普天間固定化ノー、辺野古新基地ノー」だ。掘削強行や人権無視の過剰警備など、安倍政権のやることなすことが沖縄社会の反発を強める悪循環に陥っている。「辺野古移設か、固定化か」という脅しも沖縄に基地を押し込める差別を助長している。

 普天間飛行場は戦後、米軍が民有地を強制接収して造った。奪われた土地にできた基地を動かす先がなぜ県内なのか。かつて県内移設を認めていた県民も根本的な疑念を深め、今は総じて7割超が反対している。普天間飛行場を抱える宜野湾市でも民意は鮮明だ。昨年の県知事選と衆院選で危険性除去を訴えた仲井真前知事と自民党現職は大差をつけられた。

 民主主義を重んじる正当性は沖縄にある。安倍政権は工事停止指示を受け入れるべきだ。追い込まれているのは政権の側である。

2015年-03月-22日

「民主国家否定する暴挙止めよ」(愛媛新聞)〜辺野古の調査再開に批判的な地方紙・ブロック紙

 少し日がたってしまいましたが、備忘もかねて書き留めておきます。沖縄県宜野湾市米軍普天間飛行場移設をめぐり、日本政府は12日、沖縄県名護市の辺野古地区で、代替基地建設のための海底ボーリング調査を再開しました。昨年9月の中断から6カ月ぶりのことです。以下に琉球新報の記事を引用します。

※琉球新報「防衛局、辺野古掘削を再開 県の中断要求無視」2015年3月13日

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240262-storytopic-271.html

【辺野古問題取材班】沖縄防衛局は12日午前、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に向けた海底ボーリング調査を再開した。県知事選や衆院選などへの影響回避で昨年9月に中断して以来、6カ月ぶりの調査再開となった。

翁長雄志知事は前知事の埋め立て承認を検証する間は作業を見合わせるよう防衛省に要請していたが、国は県の意向を無視する形で調査を強行した。

 防衛局は午前10時23分、11日に辺野古崎付近の調査地点に移動させた大型のスパット台船1基で掘削作業を開始した。別の台船1基も調査地点に移動させ、周囲を浮具(フロート)や油防止膜(オイルフェンス)などで囲い、掘削に向けた準備を整えた。昨年8〜9月にかけて水深の浅い海域7カ所、陸上部分5カ所の計12カ所で調査を終えており、今後水深の深い海域の残り12カ所の掘削調査の実施を予定している。

(中略)

 東京に出張中の翁長知事は同日午前11時すぎ、都内で記者団の取材に応じ「第三者委員会による検証作業の間は代替施設建設にかかる調査を見合わせるなどの配慮を申し入れていた中で、ボーリング調査が再開されたことは大変遺憾だ」と憤りを示した。

 菅義偉官房長官は調査再開について「一昨年に当時の知事から埋め立て承認をいただいて工事を行っている。埋め立て工事の許可を受けてその準備が整ったから、ただ粛々と開始した」と話し、今後も作業を進める姿勢を示した。

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 昨年の11月知事選では辺野古への代替基地建設の可否が明確な争点となり、反対を掲げた翁長雄志氏が保革を超えた支援態勢の下で当選しました。続く12月の衆院選では、沖縄の4つの小選挙区すべてで自民党候補が敗北。沖縄の民意は、普天間飛行場の県内移転に反対であることは明確です。その中での今回の調査再開強行は、日本のほかの地域で同じようなことが起こり得るかどうか、という観点から見れば、沖縄に対する差別としか言いようがないと感じます。まさしく日本の民主主義が問われる事態であり、まずもって何よりも、辺野古で何が起きているかが本土で広く知られなければならないと思います。

 ここでは、12日以後、ネット上で目についた本土の地方紙やブロック紙の社説を引用、記録しておきます(地方紙・ブロック紙の社説すべてを網羅的に調べたわけではありません。また、見出しのみで本文は読めない新聞も含みます)。この問題をめぐる全国紙の論調は2極化して久しいのですが、地方紙は日本政府の強硬方針に批判的な論調が圧倒しています。今、本土に必要なのは、米軍基地は沖縄という一地域の問題ではなく日本全体の問題だ、との当事者意識なのだと思います。その意味で、「辺野古で起きている重い現実を、いま、日本の問題として国民全体で見つめたい」と説く愛媛新聞の社説(14日付「民主国家否定する暴挙止めよ」)は特に強く印象に残りました。


【13日】

京都新聞「辺野古調査再開  中断し、民意に向き合え」

 政府はまず、強硬一点張りの姿勢を改めることだ。

 安倍晋三首相選挙結果を受けて「民意を真摯(しんし)に受け止める」と語ったはずである。ところが翁長氏が再三にわたって上京し、移設問題の協議を求めても、いまだに会おうとしていない。

 沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官は接触を模索する動きもみせるが、歩み寄る気配はなく、調査再開の日も「環境保全に万全を期しながら粛々と進める」と語った。

 「辺野古が唯一の選択肢」というなら、その根拠をきちんと翁長氏に説明すべきだ。それさえしないのは、政府の責任放棄であり、沖縄の民意を無視するのに等しい。

 この間、辺野古の米軍キャンプシュワブ前では、抗議行動の中でけが人や逮捕者も出ている。

 政府は地盤の強度や地質を調べた後、夏ごろにも埋め立て工事に着手する構えだが、強行すれば沖縄を傷つけるだけでなく、政権の命取りにもなりかねない。民主政治の質が問われている。

 

山陰中央新報 米軍普天間飛行場移設/対話の努力を払うべきだ

高知新聞「【辺野古移設問題】政府の強硬さは目に余る」

 辺野古周辺では、反対派の市民と海上保安庁や警察との衝突が続き、「過剰警備」との批判が高まっている。その抗議活動の目の前で、調査再開を強行した格好だ。

 政府は「沖縄の方々の理解を得る努力を続ける」(安倍首相施政方針演説)と繰り返してきたが、これでは言行不一致と言わざるを得まい。早急に強硬姿勢を改めるべきだろう。

 政府と沖縄の関係は日ごとに、悪化しているといってよい。

 昨年11月の知事選に続き、12月の衆院選でも4小選挙区全てで辺野古反対派が勝利した。明らかな民意にも、政府は翁長雄志知事との対話拒否や予算減額など、意趣返しにもみえる姿勢を取り続けている。

 中でも、市民の反対運動への対応は目に余る。逮捕者や暴行を受けたとの告訴が相次ぐのは、明らかに異常事態だ。一連の選挙が終わったとたん、強硬姿勢に転じた政府に強い違和感を覚える。

 

大分合同新聞 普天間飛行場移設問題 「県民のため」に立ち戻れ※見出しのみ

熊本日日新聞 辺野古調査再開 移設の強行は禍根を残す※見出しのみ


【14日】

秋田魁新報「辺野古調査再開 政府は地元と対話せよ」

 このままでは両者の溝は深まるばかりだ。関係を改善するため、政府はまず、翁長知事との対話から始めるべきだ。その上で隔たりを埋める努力をし、最良の方法を模索しなければならない。

 安倍首相には、意見が異なる人との対話を回避する傾向が目立つ。特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認などでも、反対意見を十分にくみ取る努力をしたとは言い難い。

 異論があるときほど、時間をかけて議論し、相手の理解を得ることが欠かせない。移設計画では安倍首相の政治姿勢そのものが問われている。

 

中日新聞東京新聞「辺野古調査強行 民意となぜ向き合わぬ」

 翁長氏の下、有識者六人による第三者委員会が設けられ、仲井真氏の埋め立て承認に法的な瑕疵(かし)がなかったか否かを検証しており、七月にも報告書をまとめる。

 翁長氏が求めるように、せめて検証が終わるまで作業を中止すべきではないか。作業を急げば急ぐほど、何か後ろめたいことがあるのではないかと疑いたくなる。

 在日米軍基地の負担は日本国民が可能な限り等しく分かち合うのが筋だ。沖縄県に約74%が集中する現状は異常であり、普天間返還のためとはいえ、米軍基地を県内で“たらい回し”しては、県民の負担軽減にはなるまい。

 民意と向き合わず、作業を強行すれば、辺野古への「移設」が完了しても、反基地感情に囲まれることになる。その是非は別にして基地提供という日米安全保障条約上の義務が果たせなくなるのではないのか。安倍内閣はいったん作業の手を止めて、今こそ沖縄県民と真摯(しんし)に向き合うべきである。

 

神戸新聞「辺野古問題/工事強行は不信を深める」

 普天間移設計画は、20年前の米兵による少女暴行事件を受けて日米両政府が協議した結果で、米国はそれを機に軍の再配置に動きだす。それが基地負担軽減につながる−。

 政府が描く道筋だが、当事者である沖縄の人たちの心に届いているとは言い難い。

 むしろ、一連の政府の対応が不信を深めているといえる。

 一昨年末の仲井真弘多(ひろかず)前知事による抜き打ち的な埋め立て承認、反対を押し切る形での工事着手、政権による沖縄振興費予算の減額…。政府による露骨な圧力を感じている県民は少なくないだろう。

 対抗措置といっても県知事ができることには限界がある。「しようがない」という県民のあきらめを期待する声も政府内にはあるようだが、民意を踏みにじられた痛みは残る。このままでは計画への「理解」など到底得られない。

 

▼愛媛新聞「辺野古海底調査再開 民主国家否定する暴挙止めよ」

 これが民主主義を掲げる国のすることなのか。

 政府は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向けた海底ボーリング調査を再開した。沖縄県の再開見合わせ要請や県民の強い反発に一切耳を傾けることなく、説明や対話の機会を持とうともしないままである。

 「粛々と工事を進める。法に基づいており、全く問題ない」(菅義偉官房長官)。権力を持つ政府が地元の民意を抑え込み、新基地建設へと突き進んでいる。これは民意の黙殺であり県民への抑圧にほかならない。民主国家を政府自ら否定する暴挙を、決して認めることはできない。直ちに中止を求めたい。

(中略)

 沖縄は戦争で多大な犠牲を出した。戦後も在日米軍専用施設の大半が沖縄にあり、今なお米国追従の影を背負わされている。戦後70年。米国の視点でなく、沖縄の痛みから国の針路を見つめ直す時機が来ている。地元の声から逃げず丁寧に対話することで、基地縮小の道を探らねばならない。軍縮と平和を沖縄から米国へ、世界へと発信したい。

 沖縄の人々は、自分たちの暮らしだけでなく、自然破壊を食い止め、海の生物を守るためにも声を上げている。ボーリング調査再開のため海中に投入した大型のコンクリート製ブロックが、県の岩礁破砕許可区域外でサンゴ礁を傷つけているのも確認されている。辺野古で起きている重い現実を、いま、日本の問題として国民全体で見つめたい。

佐賀新聞「辺野古調査再開」

 政府の頼みの綱は前知事による埋め立て承認だ。翁長氏は取り消しを視野に入れるが、政府は「取り消せない」と強調する。前知事も10年の再選時に県外移設を訴えながら変節した。承認の手続きに瑕疵(かし)がないとしても、県民の総意はそこにない。沖縄ではいくら選挙で意思表示しても、方向性を変えられないことへの不満が鬱積(うっせき)していることだろう。

 この問題は、普天間飛行場の危険除去を考え、日米両政府が飛行場返還で合意してから20年近くの歩みがある。強引な政府対応の背景には、合意を履行しなければ、同盟関係にひびが入りかねないとの危機感もあるとみられる。

 強硬姿勢は「知事に安全保障にかかわる基地問題の行方を決める権限はない」と言っているようなものだ。佐賀県には米軍も絡んだ佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画があり、新知事に「佐賀のことは佐賀で決める」と主張した山口祥義氏が就任した。事情の違いはあれ、沖縄で起きていることを前にすると、こちらに決定権があるのか、不安に思えてくる。

(中略)

 埋め立て工事の着手時期を中谷元防衛相は「夏ごろ」としている。既成事実を積み重ねれば、反対運動の勢いを削ぐことになろうが、このまま突き進んでは政府と沖縄、本土と沖縄に修復しがたい溝ができる。在日米軍基地面積の74%が集中する沖縄の不満が失望に変わり、爆発しかねない。

 基地の負担軽減を目指した普天間移設の原点は、「沖縄県民のため」だったはず。政府はここに立ち戻り、まずは翁長氏らと会い、互いの言い分に耳を傾けるべきだ。


【15日】

北海道新聞「辺野古調査再開 なぜ民意に背を向ける」

 民意を平然と踏みにじる安倍晋三政権の姿勢には驚くばかりだ。

 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の移設先とする名護市辺野古沖で、昨年9月から中断していた海底ボーリング調査を再開した。

 11月の県知事選への影響を避ける配慮があった。県民は選挙を通し、辺野古移設に反対の意思を明示した。その結果をどう解釈すれば再開という判断になるのか。

 国民よりも国家を上位に置く安倍政権の政治姿勢が透けて見える。憲法国民主権の原則に逆行するものと言える。

 強硬姿勢を改め、県側と話し合うべきだ。そうするほかに解決の道はない。

徳島新聞「辺野古調査再開 対立より対話が大切だ」

 政府の中には「手続きや工事が進めば、できたものはしょうがないという声も出てくる。県民世論も変わり得る」との見方があるという。

 既成事実を積み重ね、力で押さえつければ、反対運動はやがて下火になると見込んでいるのだろう。

 中谷元・防衛相は、夏ごろにも埋め立て工事に着手したいとの意向を示している。

 しかし、楽観的に過ぎるのではないか。

 沖縄では、移設計画が最大の争点となった昨年1月の名護市長選に続き、11月の知事選、12月の衆院選の沖縄4小選挙区全てで、辺野古反対派が勝っている。

 民意は明確であり、それを無視して推し進めるのは、怒りの火に油を注ぐようなものだ。反対の県民世論は一層高まろう。

 安倍晋三首相は、今年2月に行った施政方針演説で「引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、辺野古沖への移設を進めていく」と述べている。

 だが、翁長知事がこれまで7度上京したにもかかわらず、一度も会おうとしないのはどうしたことか。沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅長官も同様だ。

 さらに、「普天間飛行場負担軽減推進会議」も翁長知事の就任以来、開かれないままになっている。

 沖縄の米軍基地負担問題について、首相や関係閣僚が地元首長と協議する会合であり、前知事時代は、事務レベルの作業部会を含めると毎月開かれていた。

 知事選の意趣返し、沖縄いじめとも取れるやり方に、県民からは「露骨な嫌がらせだ」との批判が出ている。

 異論に耳を傾けず、意に沿わない人は排除する。そんな対応で理解が得られるわけがない。

 12日以前にも、この問題に関連した社説がいくつか目につきました。見出しのみ書き留めておきます。

3月 2日 中国新聞「辺野古サンゴ礁損傷 『粛々と』進められまい」

3月 4日 河北新報「米軍普天間移設/対話を通じて打開の道探れ」

3月10日 信濃毎日新聞「辺野古移設 強硬姿勢が深める溝」


 全国紙の関連する社説は以下の通りです。

朝日新聞 14日 「辺野古移設 作業を止めて対話せよ」

毎日新聞 14日 「沖縄との対話 首相側から呼びかけを」

読売新聞 13日 「辺野古調査再開 理解得ながら移設を進めたい」

2015年-03月-21日

再び「2つの『3月20日』」

 3月20日はオウム真理教による「地下鉄サリン事件」から20年の日でした。1995年のこの日の朝、東京営団地下鉄(現東京メトロ)3線の車内で猛毒サリンがまかれ、地下鉄職員や通勤客ら13人が死亡し、6千人以上が重軽症となりました。東京都内発行の新聞各紙は朝刊、夕刊ともに大きな扱いで、遺族や被害者の表情や、官庁街の霞ケ関駅で行われた慰霊式の様子などを報じました。

※47news=共同通信「地下鉄サリン20年、続く苦しみ 霞ケ関駅で慰霊式と献花」2015年3月20日

 http://www.47news.jp/CN/201503/CN2015032001001118.html

 13人が死亡、6千人以上が重軽症を負ったオウム真理教による地下鉄サリン事件から20年となった20日、駅員2人が犠牲になるなど多くの被害者が出た東京メトロ霞ケ関駅で慰霊式が開かれ、職員が犠牲者の冥福を祈り黙とうした。献花した遺族は「事件を語り継いでほしい」と訴えた。

 被害者や遺族の苦しみ、悲しみは続いている。世界的にテロ事件は後を絶たず、化学兵器を使った未曽有の無差別テロの教訓をどう未来に生かすかが問われている。

 死亡した同駅助役=当時(50)=の妻で、被害者の会代表世話人の高橋シズヱさんは「若い人にオウムの事件が何だったのか関心を持ってほしい」と話した。

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 また、3月20日は2003年にイラク戦争が始まった日です。地下鉄サリン事件の「20年」のような分かりやすい節目ではないためか、マスメディアでは関連記事はほとんど目にしていません。しかしわたしにとっては、個人的な体験の強烈な思い出もあって、地下鉄サリン事件とイラク戦争の二つは分かちがたく結びついています。

 20年前のこの日、わたしは社会部の記者でした。前夜から社内に泊まりこみで勤務し、一夜明けて「明け」と呼ばれるシフト。午前8時ごろ、警視庁詰めの記者から「地下鉄駅で乗客がバタバタ倒れている」との連絡が入ったのが第一報でした。間もなく全員呼び出しとなり、わたしはその日一日、持ち場に出ることもなく社内に缶詰めになって、同僚たちが電話やファクスで送ってくる情報をまとめ、記事にする作業に追われました。

 12年前、イラク戦争の開戦当日は、社会部でこの戦争の取材班の担当デスクでした。自衛隊イラクに出るのはまだ先のことで、日本社会の一般の人たちに、それほどなじみがあるとは言えないイラクという国での戦争をどう報じるか、同僚たちと頭を悩ませていました。

 この地下鉄サリン事件とイラク戦争の「二つの3月20日」が、日本社会では一つにつながっているように思うようになったのは、新聞労連委員長だったころです。当時運営していたブログに書いた9年前の記事を読み返してみて、今また同様の思いが強まっています。

 少し長くなりますが、このブログ記事を再録します。

※ニュース・ワーカー「2つの『3月20日』」2006年3月21日

 http://newsworker.exblog.jp/3683934

 3月20日はイラク戦争開戦から3年であると同時に、オウム真理教信者らによる地下鉄サリン事件から11年でもある。

 3年前は、この戦争の日本と日本人との関わりをどう考えていけばいいのか、わたしは社会部の職場で同僚たちと、あれこれと議論しながら取材を進めていた。米英軍がイラクに「侵攻」なのか「進攻」なのか、用語をめぐって議論があったりしたが、正直に言って、開戦当初を振り返れば、どこか遠い地域での出来事、メディア内部ではもっぱら外信部が主役、という雰囲気だったと思う。

 その後、人道復興支援を大義名分にした自衛隊派遣が急浮上し、イラクはぐっと身近な存在になり、社会部の取材も忙しくなった。年が明けて2004年1月、陸自先遣隊がクエート国境を超えてイラク入りした際には、社会部からも記者を現地に出し、取材・出稿はフル展開の日々が続いた。

 3年前、米国がイラク先制攻撃に踏み切った大義名分は、サダム・フセイン政権大量破壊兵器保有疑惑だった。小泉純一郎首相も即座に開戦を支持した。今は、大義なき戦争だったことが明らかになっている。しかし、ブッシュ大統領小泉首相も、開戦が誤りだったとは認めていない。自衛隊もイラクに派遣されたままだ。

 この間、米軍の世界的規模の再編に合わせて、在日米軍基地の再編協議が進み、大詰めを迎えている。そのこと自体、米軍と自衛隊の一体的運用の強化であり、有事法制をはじめとして、それを可能にする仕組みも着々と出来上がっている。憲法9条が自民党案の通りに改訂され、集団的自衛権行使も解禁されれば、新生「自衛軍」は米軍とともに『テロとの戦争』に参戦することになるだろう。イラクで英軍が果たした役割だ。

 この3年の間に、日本社会では小泉首相の構造改革路線によって、ますます「格差」が拡大した。雇用・労働問題の面では、契約社員派遣社員、パート、アルバイトなど非正規雇用の人たちがどんどん増えている。注意が必要なのは、決して望んで不安定な働き方を選んだ人ばかりではない、ということだ。しかし、そうは考えない人が多い。特に自らが正社員の場合、その風潮が強いように思う。また、「フリーター」や「ニート」も、勤労意欲に欠けているといったマイナスイメージで語られることが多い。

 仮に、このまま9条改憲に進んだ場合、「格差社会」は「戦場で殺し、殺され合うのはだれか」の問題に直結してくるだろう。「勝ち組負け組」の二元論が、「ろくに働こうともしないフリーターやニートは自衛軍に入って国のために死ね」という風潮を生み出すことを危ぐする。

 さて、11年前の3月20日は、わたしは社会部で前夜からの泊まり勤務明けだった。ことしと同じように、前日は日曜日で、翌日は春分の日の祝日だった。朝8時すぎだったと思う。「地下鉄で乗客がバタバタ倒れている」との警視庁詰め記者からの連絡が第一報だった。泊まり明けの少ない人数で手分けして取材を始めた。社会部員の総員呼び出しもやった。今のように携帯電話なんてなかったから、ポケットベルを片っ端から鳴らす。折り返し、部員から次々に電話がかかってきて、職場はあっという間に騒然となった。

 前年には長野県松本市松本サリン事件が起き、オウム真理教とサリンのつながりも指摘されていた。午前中には、警視庁が「地下鉄車内でサリンが撒かれた疑いが強い」と発表した。あとはもう何が何だか分からなかった。その日、わたしがまとめた記事で「首都東京は終日、見えない恐怖におびえ続けた」と書いたのを覚えている。

 この日を境に、警察はオウム真理教への捜査を一気に加速させる。オウム真理教の信者であれば、微罪でも何でも即逮捕だった。森達也さんが「ご臨終メディア」で指摘している通り、いわゆる「ビラまき」逮捕事件が多発し、共謀罪の新設も強行されかねない今日の情勢はどこから来たかといえば、あの時の「オウム狩り」にさかのぼるのかもしれない。オウム真理教の信者なら、マンションの駐車場に車を止めれば「住居侵入」で、カッターナイフを持っていれば「銃刀法違反」で現行犯逮捕する、そういうやり方を社会が容認した。メディアはその以前から、俗に「ヤクザ過激派人権なし」とうそぶきながら、法令の明らかな拡大適用を許してきた。そのことの報いを今、メディアも受けつつあると思う。

 イラク戦争と地下鉄サリン事件。この2つの「3月20日」は今、ひとつにつながっている気がしてならない。9条改憲が現実のものとなり、共謀罪が新設されれば、日本の「戦時社会化」は完成する。そうなったとき、「戦争反対」の言論は「敵を利するだけで、国益に反する」として、弾圧を受けることになるのではないか。

 当時、危惧していたいくつかのことについて、現状はどうなっているか、思いつくままに書き並べてみます。

 現在は、憲法9条改正を悲願とする安倍晋三氏が2度目の首相の座に就き、高い支持を誇っています。憲法改正はいずれ具体的な政治日程に上ってくることを覚悟しておくべきだと思います。集団的自衛権の行使は既に憲法解釈の変更が閣議決定され、今は具体的な法整備の論議が政府与党内で「一方的に」と言っていい状態で進んでいる最中です。憲法改正を経なくても、条件次第で自衛隊はどんどん海外へ出て、武力を行使することになると危惧されます。

 在日米軍基地をめぐっては、沖縄普天間飛行場の移設問題で、県外移設を求める沖縄の県民意思が選挙で何度も明確に示されているにもかかわらず、安倍政権は日米政府間の合意である沖縄県名護市辺野古地区への代替基地建設を強行しつつあります。

 雇用・労働の面では、折しも真っ最中の春闘で、安倍政権の強い要請で企業側が正社員のベアを認める流れが続き、報道でも明るいニュースとして伝えられてはいます。しかし、非正規雇用の人たちの割合は増え続け、不安定な立場は変わらず、むしろ法改正(改悪)によって固定化へ、との流れが強まっています。正社員にしても、ホワイトカラーエグゼンプションの導入は「アリの一穴」のように広がることが危惧されます。何より、労働時間の規制を「岩盤規制」とネガティブ評価する安倍政権の発想には、戦争の惨禍を経て、「労働者の地位の向上」を世界平和のための課題として共有するに至った人類の近現代史への洞察が全く欠けていると感じます。

 昨年12月に施行された特定秘密保護法は、自由な表現活動や自由な取材活動と真っ向から衝突する恐れがあります。悪法は生まれた時には小さくとも、後に大きく育つことは、戦前の治安維持法などが顕著な例です。この法律には共謀罪の規定も含まれています。共謀とは密室でのやり取りです。それを処罰の対象にするということは、密室でのやり取りを立証することが前提になります。盗聴や盗撮、私信の開封などの捜査が広く合法化されることになりかねません。そうなれば密告も奨励されるでしょう。

 朝日新聞の慰安婦報道をめぐって、一部のマスメディアが「国益に反する」との趣旨で感情的な激しい言葉で批判していること、ネット上にはそれ以上の激しい憎悪があふれていること、慰安婦報道にかかわった元朝日新聞記者の現在の勤務先に脅迫があったことなどは、暗澹たる思いがします。

 このままでは遠くない将来、自衛隊が日本国外で武力行使に及ぶことになりかねません。「そうなったとき、『戦争反対』の言論は『敵を利するだけで、国益に反する』として、弾圧を受けることになるのではないか」。9年前にブログに書いた通りのことを、今また危惧しています。


※参考過去記事

 「2つの『3月20日』」2009年3月21日

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090321/1237565666

 6年前に書いた記事です。この時にも2006年のブログ記事を引用しました。この年の8月の衆院選を経て自民党から民主党政権交代が実現しました。改憲論議はひとまず収まっていた時期で、今読み返してみると、随分楽観的だったなと思います。

2015年-03月-11日

東日本大震災から4年

 東日本大震災から3月11日で4年がたちました。いまだ約22万9千人が避難生活を送り、行方不明者は岩手宮城福島被災3県を中心に今なお計2584人、震災の直接の死者や関連死を含めて、犠牲者は2万人を超えると報じられています。東京電力福島第1原発事故も、廃炉までの道のりはまだまだ遠く、難問は絶えることがないかのように見えます。犠牲者の方々のご冥福をあらためてお祈りするとともに、被災地復興の歩みが途切れることなく、一歩一歩でも前進を続けるように願ってやみません。

 わたしが住み、働く東京でも、新聞各紙は11日付の朝刊で、「震災4年」を1面に大きく据え、特集や関連記事を数多く掲載しました。写真は朝日、毎日、読売産経日経全国紙各紙の東京本社発行の最終版1面です。

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 目を引かれたのは東京新聞でした。

 「復興 途切れ途切れ」の見出しが白抜きで入った「高度9000メートルから国道6号を望む」の大きな写真。手前から奥へ東京電力福島第1原発、同福島第2原発、いわき市水戸市。いわき市より水戸市ははるかに明るく見えます。福島第1原発事故の深刻さと、福島の復興とを考えずにはいられないインパクトを感じました。新聞のブランケット版の大きさを生かそうとした試みとも感じました。

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 この日、被災3県の地元紙の岩手日報盛岡市)、河北新報仙台市)、福島民報福島市)の3社は、各県の現状を伝える特別紙面を共同で約100万部発行し、東京などでも配布しました。

 ※「被災地の現状を特別紙面で 東北3県の新聞社が配布」(47news=共同通信

  http://www.47news.jp/CN/201503/CN2015031101000944.html

 岩手日報(盛岡市)、河北新報(仙台市)、福島民報(福島市)の3新聞社は11日、東日本大震災から4年に合わせ、被災各県の現状を伝える特別紙面を共同で約100万部発行し、一部は東京などでも配布した。

 3社が合同で展開する「スマイルとうほくプロジェクト」の一環で、8ページにわたり震災から立ち直ろうとする岩手、宮城、福島の3県の「いま」を紹介。昼夜を問わず続けられている岩手県陸前高田市海岸線復旧工事や、被災地に花を植える活動などを報じ、写真も多く掲載した。

 また、岩手日報社は全国からの復興支援に感謝する「特別号外」約1万8千部を松山と東京、横浜、名古屋、京都、神戸で配布しました。

 ※岩手日報「愛媛などで震災号外配布 岩手日報、復興支援に感謝」

  http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20150311_7

 岩手日報社は東日本大震災発生から4年となる11日、全国各地から寄せられた支援に感謝し復旧・復興の現状を紹介する「特別号外」を松山と東京、横浜、名古屋、京都、神戸の6都市で配布した。

 4回目となる震災特別号外は1万8千部発行。復旧・復興を支える全国の応援職員らの思いや4年前と比較した被災地の現状などをカラー12ページで紹介する。各地の街頭で配り、官公庁やコンビニエンスストアにも置いた。

【写真説明】岩手日報社が東京で配布した特別号外紙面

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