ニュース・ワーカー2 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2016年-10月-01日

安倍政権が沖縄で海保、警察、自衛隊にやらせていること〜所信表明演説の拍手劇の何が問題か

 臨時国会が開会した9月26日、安倍晋三首相衆院本会議での所信表明演説中に、何とも奇異な光景が出現しました。安倍首相演説の中で海上保安庁、警察、自衛隊をたたえて壇上で拍手。呼応して自民党議員たちが一斉に立ち上がって手をたたき続けたとのことです。

 以下は共同通信の記事です。

※47news=共同通信「首相の拍手に自民議員一斉起立 『北朝鮮中国』と野党」2016年9月26日

 http://this.kiji.is/153104600219747828?c=39546741839462401

 安倍晋三首相が26日の衆院本会議で、自衛隊員らをたたえるため所信表明演説を約10秒中断し拍手、多くの自民党議員がこれに応えて、一斉に起立し拍手する一幕があった。野党は「北朝鮮か中国共産党大会みたいだ」(小沢一郎生活の党共同代表)と批判した。

 首相は演説で「今この瞬間も、海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が、任務に当たっています」と訴えた上で「今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」と呼び掛け、拍手した。自民党議員が立ち上がり首相に倣ったため、大島理森議長が「ご着席ください」と注意した。

 27日になって、野党が議院運営委員会理事会で抗議し、自民党は「適切ではなかった」と認め、首相に伝えることを約束しました。

 朝日新聞は、演説前に萩生田光一官房副長官が、自民党の竹下亘国会対策委員長らに、海上保安庁などのくだりで演説をもり立ててほしいと依頼し、議場の前の方の議席に座る当選1、2回の議員らには「拍手してほしい」との依頼が伝わった、との話を伝えています。

※朝日新聞「首相演説に一斉起立・拍手、事前に『指示』飛び交う」=2016年9月27日

 http://www.asahi.com/articles/ASJ9W55NWJ9WUTFK00D.html


 首相が壇上で拍手した場面の演説の内容を以下に書きとめておきます。「その彼らに対し、今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」と、自分にならうように促しています。

 そして、わが国の領土、領海、領空は、断固として守り抜く。強い決意を持って守り抜くことを、お誓い申し上げます。

 現場では、夜を徹して、そして、今この瞬間も、海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が、任務に当たっています。極度の緊張感に耐えながら、強い責任感と誇りを持って、任務を全うする。その彼らに対し、今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか。


 日本の国会で、大勢の議員が立ち上がり、演壇上の首相とともに拍手をする光景は確かに異様です。では、なぜ問題なのでしょうか。品がないからか、国会のルールを無視しているからか、議事の進行が遅れたからでしょうか。あるいは北朝鮮や中国共産党みたいだから問題なのでしょうか。

 わたしは二つのことを考えています。一つは、安倍晋三政権が沖縄で海上保安庁や警察や自衛隊を使って、何をやっているかです。

 名護市辺野古沖では、米軍普天間飛行場移設先となる新基地建設に反対して、海上からカヌーや船で抗議行動を行う市民らを、海上保安庁が実力で排除。その手法はしばしば暴力的だったとして、市民や地元メディアから批判を浴びています。米軍北部訓練場では、ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)工事に反対して抗議行動を続けている市民らの排除に、全国から集められた警察の機動隊が当たっています。ここでもやはり、その手法に批判があります。そして、抗議行動で大型の資機材が陸路では運び込めない状況になると、何と陸上自衛隊の大型輸送ヘリが投入され、重機などを空輸しました。これには沖縄県の翁長雄志知事も、事前に十分な説明がなかったなどと批判。米軍施設建設への自衛隊ヘリ投入には法的な根拠がなく、違法ではないか、との指摘も、沖縄のメディアでは報じられています。

 つまり沖縄では、海上保安庁、警察、自衛隊は直接ないしは間接的に、非暴力の住民らの抗議行動を実力で抑え込むために動員されています。そして、しばしばその手法は暴力的だとの批判を浴びています。そうした状況を考えると、安倍首相が国会で拍手を送り、これらの機関をことさらに称えることには、私には違和感があります。称えるのなら、自国民に対するこのような任務を解いてからではないかと思いますし、安倍政権が沖縄でやっていることが、本土ではなかなか知られないままになることを危惧します。

 もう一つは自衛隊員の戦死の問題です。安全保障法制は実行段階に入り、自衛隊が海外で武力行使する事態が現実のものになりつつあります。仮に海外での戦闘で自衛隊員に死者が出たら、安倍首相は恐らく「国際貢献に身を捧げた隊員の志をわたしちは受け継がなければならない」などと言い、そして自民党の議員らが追随することになるのかもしれません。それはすさまじい同調圧力となって、わたしたちの社会を覆うかもしれません。自衛隊が海外で武力行使すること自体の是非を問い直すことも必要なのに、そうした主張はかき消されるようなことにならないか。それはマスメディアも当事者性を持つ問題になるだろうと考えています。

2016年-09月-21日

辺野古訴訟判決めぐり地方紙社説は批判が圧倒

 米軍普天間飛行場移設先とされる名護市辺野古の埋め立て承認を巡り、日本政府の主張を丸ごと認め、沖縄県敗訴となった16日の福岡高裁那覇支部判決に対して、沖縄県外(日本本土)の地方紙が社説でどのようにとらえているのか、ネット上で読むのが可能な範囲で調べてみました。これまでも沖縄の基地集中の問題に対しては、地方紙はそれを強いる日本政府の方針に懐疑的な論調が大勢を占めています。今回の高裁支部判決と、判決を受けて日本政府が強硬姿勢を緩めないであろうと予想されることに対しても、やはり批判的な論調が圧倒しています。政府と沖縄県の直接対話を求める内容が目に付きますが、中には「普天間の危険性を早期に除去したいならば、辺野古移設以外の選択肢を模索するしかない」(新潟日報)と辺野古移設の断念を求める強い論調や、「日米安保を享受しながら、沖縄に基地を押しつけている現状に目を向けなければならない」と、基地問題をわがこととして受け止めることを示した社説も目に付きました。

 判決を評価している例としては北國新聞の社説がありますが、「国の専権事項である国防政策も地域住民の理解が欠かせず、一方的に押しつけることがあってはならない」との指摘もしています。

 以下に、目にとまった範囲ですが、各紙の社説の見出しを書きとめておきます。

【9月17日付】

北海道新聞「『辺野古』国勝訴 沖縄の声は変わるまい」

岩手日報「辺野古移設訴訟 国は拳を下ろさないか」

神奈川新聞「辺野古高裁判決 歩み寄り対話で解決を」

山梨日日「[辺野古訴訟 国が勝訴]見えぬ道筋 協議の場に戻れ」

信濃毎日新聞「辺野古判決 誠実さ欠く政府の姿勢」

▼新潟日報「辺野古移設判決 対話路線へ転換すべきだ」

福井新聞「辺野古訴訟判決 もっと沖縄直視すべきだ」

京都新聞「辺野古訴訟判決  司法で決着する問題か」

神戸新聞「辺野古判決/沖縄の怒りは増すばかり」

山陽新聞「辺野古訴訟判決 対話による解決を目指せ」

中国新聞「辺野古訴訟で県敗訴 協議で解決策見いだせ」

山陰中央新報「辺野古訴訟/見えない解決の道筋」

愛媛新聞「辺野古訴訟で判決 誠実な協議しか真の解決はない」

徳島新聞「辺野古訴訟 国勝訴 解決への道筋が見えない」

高知新聞「【辺野古訴訟】対話なしには解決しない」

佐賀新聞「辺野古訴訟 これで民意に沿うだろうか」

熊本日日新聞「辺野古訴訟判決 強権的姿勢は禍根を残す」

※判決を評価

▼北國新聞「辺野古で国側勝訴 訴訟合戦の再燃避けたい」


【9月18日付】

東奥日報「誠意ある協議が打開策だ/辺野古訴訟 国勝訴」

南日本新聞「[辺野古判決] 解決は遠のくばかりだ」


 以下にいくつか、強く印象に残った社説を一部引用して書きとめておきます。

▼東奥日報「誠意ある協議が打開策だ/辺野古訴訟 国勝訴」

 http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20160918017944.asp

 政府内には国側勝訴に、中断中の埋め立て工事の再開を見据え「一歩前進」(外務省筋)との受け止め方がある。ただ、翁長氏が知事に当選した2014年以降の国の対応には問題もあったのではないか。知事選での翁長氏の公約が「辺野古移設反対」であり、同氏のこれまでの行動はすべてこの公約の延長上にあるということを国があえて無視してきたように映る。

 翁長氏に対して国が「辺野古が唯一の解決策」と迫るのは「公約の破棄」を求めるに等しい。民主主義の基盤である選挙そのものを軽視するような行為と言っても過言ではない。外交や防衛が国の所管事項だとしても、首長もまた住民の生命を守る責任を負っているのだ。

 翁長知事は国との協議そのものには前向きな姿勢を示しており、稲田朋美防衛相も判決後、協議継続の考えを述べた。ただし、国がこれまで通りの硬直的な姿勢を取る限り溝が埋まることはない。埋め立て計画をいったん凍結するほどの柔軟さが求められているのではないだろうか。


▼新潟日報「辺野古移設判決 対話路線へ転換すべきだ」

 http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20160917280208.html

 忘れてならないのは、第三者機関の国地方係争処理委員会が6月、「国と県が真摯(しんし)に協議し、納得できる結果を導く」よう求めたことである。

 県が話し合いを要請したにもかかわらず、国は提訴に踏み切った。国は係争委の提言を改めて重く受け止めるべきだ。

 日米両政府が1996年4月に普天間返還に合意してから20年が経過した。

 今なお返還が実現しない理由は、両政府が沖縄県の民意を無視して辺野古移設にこだわっているからにほかならない。

 県民の多くが辺野古移設に反対しているのは、知事選や衆参両院の選挙、県議選で反対派が勝利したことから明らかである。

 普天間の危険性を早期に除去したいならば、辺野古移設以外の選択肢を模索するしかない。


▼京都新聞「辺野古訴訟判決  司法で決着する問題か」

 http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20160917_4.html

 国は司法のお墨付きを得たら、移設を加速させるだろうが、そもそも裁判で決着をつける問題ではあるまい。

 法廷で問われた翁長知事は「確定判決に従う」と述べたが、徹底抗戦の構えは変えていない。選挙で示された民意を背景に「あらゆる方策」を検討しているという。

 安倍政権は県北部の米軍訓練場ヘリコプター離着陸帯の建設工事を強行、さらに沖縄県振興予算を辺野古移設に結びつけ露骨に揺さぶりをかけている。

 沖縄以外では関心が高まらないことが、安倍政権を強気にさせているのかもしれない。

 翁長知事は意見陳述で、国の主張は地方自治をないがしろにしており、「沖縄県だけにとどまらない問題」と訴えた。日米安保を享受しながら、沖縄に基地を押しつけている現状に目を向けなければならない。


▼愛媛新聞「辺野古訴訟で判決 誠実な協議しか真の解決はない」

 http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201609177439.html

 まずは国が、頑迷な姿勢を改め、普天間と辺野古を切り離して打開策を考えるべきだ。返還の合意から20年放置されてきた「普天間の危険除去」は喫緊の課題だが、「県内から県内」では沖縄の負担軽減には全くならない。撤去や縮小、県外・国外移設など、あらゆる可能性を探るそぶりさえ見せず、自国民たる沖縄県民の意思と人権を無視して抑え込む。そんな暴挙は、およそ政治や民主主義、地方分権の名には値しない。

 国が県を訴え、強硬な本音を隠そうともせず「攻撃」する。そんな信じられない事態が、参院選を境に露骨に進む。米軍専用施設「北部訓練場」の工事強行。沖縄振興予算を基地返還と関連付ける「リンク」論の公言と減額。そして辺野古訴訟…。

 7月の全国知事会で、翁長氏は基地問題を「わがこととして真剣に考えてほしい」と呼び掛けたが、積極的に呼応する意見表明は埼玉滋賀など少数にとどまった。しかし、全国の地方や国民にとって、決して人ごとではない。安全保障は誰のためにあるのか。日本が初めて、自ら沖縄に恒久的基地を建設することを黙認していいのか。判決を機に、一人一人が考えねばならない。わがこととして。


▼佐賀新聞「辺野古訴訟 これで民意に沿うだろうか」

 http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/356731

 一方で、国が主張するように日米同盟は日本の安全保障の要であり、その重要性は増すばかりである。海洋進出を目指す中国の台頭や、核実験弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威など、さらに緊迫しているのは間違いない。

 だが、日米もまた、対等なパートナーのはずだ。腫れ物に触るように「対米追従」に終始するのではなく、沖縄の民意を踏まえて、辺野古移転に代わる策を米側と協議すべきではないか。

 米軍関係者による犯罪が一向になくならない背景として、米軍関係者を優遇する「日米地位協定」の問題が指摘されているが、女性暴行殺害事件が起きても、日本政府は運用の改善にとどめ、米側に改定を求めさえしなかった。

 東アジア情勢をにらんで抑止力を維持しつつ、沖縄の負担も軽減していく。国防か、民意かの二者択一ではなく、双方が成り立つ新たな道を探るべきではないか。


 自宅で購読している琉球新報の17日付紙面が届きました。

 写真は1面、総合面、社会面です。

f:id:news-worker:20160920233354j:image

f:id:news-worker:20160920233417j:image

f:id:news-worker:20160920233437j:image


※追記 2016年9月21日8時30分

 「辺野古訴訟判決に地方紙社説は批判が圧倒」から改題しました。

 また本文中の「今回の高裁支部判決に対しても、やはり批判的な論調が圧倒しています」の部分に加筆し、「今回の高裁支部判決と、判決を受けて日本政府が強硬姿勢を緩めないであろうと予想されることに対しても、やはり批判的な論調が圧倒しています」に改めました。

 地方紙各紙の社説が批判しているのは、判決だけではなく、判決を受けて強硬姿勢を緩めるどころか、強めかねない日本政府に主として向けられていることを明確にするためです。

2016年-09月-20日

「異常な恫喝と決めつけ」「対等の精神ないがしろ」(沖縄タイムス)「知事は阻止策を尽くせ」(琉球新報)―辺野古訴訟判決を批判する沖縄2紙の社説

 以前の記事「『沖縄県敗訴』と『国勝訴』の違い―辺野古訴訟判決の在京紙の報道の記録」の続きです。

 米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古の埋め立て承認をめぐり、日本政府の主張を丸ごと認め、沖縄県敗訴とした福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)の判決に対して、沖縄の地元紙2紙は社説で厳しく批判しています。

 沖縄タイムスは17日付と18日付の2日連続で社説で取り上げ「バランスを欠いた独断的な判決」「もはや裁判の判決と言うよりも一方的な決めつけによる恫喝」などと、時に激しい言葉遣いも交え批判しています。琉球新報も17日付の社説で判決を批判するとともに、翁長雄志知事に対して「上告審での反論とともに、知事権限を駆使して新基地建設への反対を貫いてもらいたい」と求めています。

 それぞれの社説の一部を引用して書きとめておきます。

【沖縄タイムス】

▼17日付「[辺野古訴訟 県敗訴]異常な恫喝と決めつけ」

 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/62528

 戦後70年以上も続く過重な基地負担、基地維持を優先した復帰後も変わらぬ国策、地位協定の壁に阻まれ今なお自治権が大きな制約を受けている現実−こうした点が問題の核心部分であるにもかかわらず、判決はそのことに驚くほど冷淡だ。

 冷淡なだけではない。自身の信条に基づいて沖縄の状況を一方的に裁断し、沖縄の民意を勝手に解釈し、一方的に評価する。県敗訴は当初から予想されてはいたが、これほどバランスを欠いた独断的な判決が出るとは驚きだ。

 司法の独立がほんとうに維持されているのかという根源的な疑いさえ抱かせる判決である。とうてい承服できるものではない。

(中略)

 一連の過程を振り返ると、国と司法が「あうんの呼吸」でことを進めてきたのではないか、という疑いを禁じ得ない。

 沖縄の地理的優位性や海兵隊の一体的運用などについても、判決は、ことごとく国側の考えを採用している。

 判決は、普天間飛行場の被害を除去するためには辺野古に新施設を建設するしかない。辺野古の新施設建設を止めれば普天間の被害を継続するしかない−とまで言ってのける。

 これはもはや裁判の判決と言うよりも一方的な決めつけによる恫喝というしかない。そのようなもの言いを前知事が「政治の堕落」だと批判していたことを裁判官は知っているのだろうか。

 これほど、得るところのない判決は、めずらしい。裁判官の知的誠実さも伝わってこない。

 北朝鮮の「ノドンの射程外となるのは我が国では沖縄などごく一部」だと指摘し、沖縄の地理的優位性を強調している判決文を読むと、ただただあきれるばかりである。

 県は最高裁に上告する考えを明らかにしている。高裁判決を丁寧に冷静に分析し、判決の問題点を明らかにしてほしい。

 モンスターと対峙しているために自分がモンスターにならないよう、常に「まっとうさ」を堅持し、あらゆる媒体を利用して現状の理不尽さをアピールしてもらいたい。


▼18日付「[辺野古判決と自治権]対等の精神ないがしろ」

 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/62646

 判決では「国が説明する国防・外交の必要性について、具体的に不合理な点がない限り、県は尊重すべきだ」と言い切っている。国が辺野古に新基地を建設するといえば、県はその考えに従え、と言っているのに等しい。

 国防・外交は国の専管事項という考えだ。だが、地方公共団体には住民の生命や人権、生活を守る責務がある。地域の意思を無視して米軍基地が建設されれば、地方自治民主主義の破壊である。

 1999年に地方自治法改正され、国と地方公共団体は「上下・主従」から「対等・協力」の関係に転換した。他ならぬ多見谷裁判長が今年1月に双方に提示した和解勧告文で言及したことである。政府と県との間で互いに訴訟が相次ぎ、沖縄対日本政府の対立という構図は、改正地方自治法の精神にも反すると指摘していた。

 多見谷裁判長は「オールジャパンで最善の解決策を合意して、米国にも協力を求めるべきである」と本来あるべき姿にも言及していたが、判決は地方自治の精神をないがしろにするものだ。同じ裁判長とは思えぬ豹変ぶりである。

 判決は国地方係争処理委員会の存在意義を否定している。地方自治の観点から、国と地方の紛争を解決する第三者機関としての在り方を問い返す必要がある。

 民意についても判決は奇妙な論理を展開している。

 普天間飛行場の移設は基地負担の軽減につながるとした上で、辺野古新基地は「建設に反対する民意には沿わないとしても、普天間その他の基地負担の軽減を求める民意に反するとはいえない」との見方を示している。何が言いたいのだろうか。

 前提が間違っている。新基地が普天間の半分以下だから負担軽減とするが、新基地には強襲揚陸艦が接岸する岸壁やオスプレイなどに弾薬を積み込む「弾薬搭載エリア」が設置される。周辺基地と一体化した軍事要塞化である。

 前知事が辺野古埋め立てを承認して以来、名護市長選、知事選衆院選の全4沖縄選挙区参院選沖縄選挙区のすべてにおいて辺野古新基地反対の候補勝利している。

 判決は選挙という民主的方法で示される民意を軽んじているとしかいいようがない。


【琉球新報】

▼17日付「辺野古訴訟県敗訴 地方分権に逆行 知事は阻止策を尽くせ」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-358566.html

 判決には大きな疑問点が二つある。まず公有水面埋め立ての環境保全措置を極めて緩やかに判断している点だ。

 判決は「現在の環境技術水準に照らし不合理な点があるか」という観点で、「審査基準に適合するとした前知事の判断に不合理はない」と軽々しく片づけている。

 果たしてそうだろうか。専門家公有水面埋立法について「環境保全が十分配慮されない事業には免許を与えてはならない」と指摘している。埋め立てを承認した前知事ですら、環境影響評価書について県内部の検討を踏まえ、「生活環境、自然環境の保全は不可能」と明言していた。

 大量の土砂投入は海域の自然を決定的に破壊する。保全不能な保全策は、保全の名に値しない。

 辺野古周辺海域はジュゴンアオサンゴなど絶滅が危惧される多様な生物種が生息する。県の環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」に指定され、世界自然遺産に値する海域として国際自然保護連合(IUCN)が、日本政府に対し4度にわたり環境保全を勧告している。

 判決は公有水面埋立法の理念に反し、海域の保全を求める国際世論にも背を向けるものと断じざるを得ない。

 判決はまた、「普天間飛行場の被害をなくすには同飛行場を閉鎖する必要がある」、だが「海兵隊を海外に移転することは困難とする国の判断を尊重する必要がある」「県内ほかの移転先が見当たらない以上、本件新施設を建設するしかない」という論法で辺野古新基地建設を合理的とする判断を示した。

 普天間飛行場の移設先を「沖縄の地理的優位性」を根拠に「辺野古が唯一」とする国の主張通りの判断であり、米国、米軍関係者の中にも「地理的優位性」を否定する見解があるとする翁長知事の主張は一顧だにされなかった。

 判決は国の主張をほぼ全面的に採用する内容だ。裁判で翁長知事は辺野古新基地により「将来にわたって米軍基地が固定化される」と指摘した。その上で「県知事としての公益性判断を尊重してほしい」と訴えたが、判決は県民の公益性よりも辺野古新基地建設による国益を優先する判断に偏った。

 「国と地方の関係は対等」と位置付けた1999年の地方自治法改正の流れにも逆行する判決と言わざるを得ない。

2016年-09月-19日

蓮舫新代表「期待」56・9%、二重国籍の説明「問題ない」66・5%(共同通信)―産経新聞調査は「期待」56・8%、二重国籍「納得できる説明と思わない」48・0%

 共同通信が17、18両日実施した世論調査の結果が報じられています。安倍晋三内閣支持率は55・7%で、前回8月から2・8ポイント上昇しました。不支持率は30・0%。前週の朝日新聞読売新聞、NHKに続いて、上昇傾向が続いているようです。また15日に選出された民進党の蓮舫新代表に対しては「期待する」56・9%、「期待しない」38・4%で、共同通信の記事は「旧民主党時代を通じて女性の党首は初めてで、期待感が広がった形」としています。一方で、蓮舫氏が自身の日本と台湾の「二重国籍」問題で説明が変わったことに対しては、「問題ではない」が66・5%でした。

 ほかにも備忘を兼ねて書きとめておきます。

ロシアプーチン大統領が12月に来日して日ロ首脳会談を行う際、交渉を通じて北方領土問題が解決に向かうかどうか

「期待しない」59・5% 「期待する」37・5%

▼民進党と共産党などとの共闘路線について

「続けた方がいいと思う」32・9% 「続けた方がいいと思わない」51・3%

東京築地市場豊洲市場への移転延期が2020年東京五輪の計画

「影響を与えてもやむを得ない」74・5% 「影響を与えるべきでない」20・3%


 9〜11日実施の読売新聞の調査と、10、11日実施の朝日新聞の調査についても、いくつか書きとめておきます。

内閣支持率

 読売新聞 支持62%(前回比8ポイント増) 不支持29%(1ポイント減)

 朝日新聞 支持52%(前回比4ポイント増) 不支持29%(±ゼロ)

▼日ロ首脳会談と北方領土交渉

 読売新聞 「解決に向かう」22% 「そうは思わない」71%

 朝日新聞 「大いに期待する」10%「ある程度期待する」32%「あまり期待しない」40%「まったく期待しない」17%

安倍首相自民党総裁任期の延長

 読売新聞 賛成48% 反対43%

▼民進党が今後も共産党と選挙協力することに

 読売新聞 賛成40% 反対46%

天皇生前退位

 朝日新聞 賛成91% 反対4%

▼天皇の生前退位はどこまで

 朝日新聞 「今の天皇陛下だけが退位できるようにする」17%「今後のすべての天皇も退位できるようにする」76%※「生前退位に賛成」の人のみに質問

 読売新聞 「今の天皇陛下だけに認める」24%「今後のすべての天皇陛下に認める」67%「生前退位を認める必要はない」5%

皇室典範改正して女性も天皇になれるようにする方がよいと思うか

 朝日新聞 「皇室典範を改正して女性も天皇になれるようにする」72%「そうは思わない」21%


※ことし7月以降の内閣支持率の推移は、こちらにまとめています

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20160816/1471301488


◎追記:2016年9月19日14時

 産経新聞とFNNが17、18日に実施した世論調査の結果もアップされています。

 「蓮舫代表のもとで民進党が政権を担う政党になると思うか」の質問に対して、「思わない」75・8%、「思う」16・5%で、記事では「民進党への根強い不信感が改めて浮き彫りになった」としています。蓮舫氏に「期待する」と答えた人は56・8%、「期待しない」は40・2%で、おおむね共同通信の調査結果と同じようです。しかし二重国籍問題では「納得できる説明をしていると思わない」48・0%、「思う」41・9%でした。

 内閣支持率は56・6%で前回から1・2ポイント増。不支持率は33・3%で前回比0・2ポイント増でした。

※「蓮舫新代表『期待』56・9%、二重国籍の説明『問題ない』66・5%―内閣支持率は上昇傾向、共同通信調査」を改題しました

◎追記:2016年9月19日15時45分

 「蓮舫新代表『期待』56・9%、二重国籍の説明『問題ない』66・5%(共同通信)―産経新聞調査も『期待』56・8%」から、さらに改題しました。

2016年-09月-18日

「沖縄県敗訴」と「国勝訴」の違い―辺野古訴訟判決の在京紙の報道の記録

 沖縄県宜野湾市米軍普天間飛行場移設問題を巡って、日本政府と沖縄県が対立を深めている中で、移設先の名護市辺野古地区の埋め立て承認を沖縄県の翁長雄志知事が取り消したことの是非が争われた訴訟の判決が9月16日、福岡高裁那覇支部で言い渡されました。判決は国の主張を全面的に採用しており、沖縄県の完敗、国の全面勝訴と言っていい結果です。琉球新報の記事を引用して紹介します。

※琉球新報「承認取り消し『違法』 違法確認訴訟で県敗訴 知事、上告の方針表明 高裁支部『辺野古しかない』」=2016年9月17日

 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-358598.html

 沖縄県の翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る不作為の違法確認訴訟の判決が16日午後、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で言い渡された。判決は国の請求を認め、翁長知事による承認取り消しは「違法」だとした。県と国の間の辺野古新基地建設を巡る司法判断は初めて。県は同日、23日までに最高裁に上告することを決めた。判決は、同訴訟の審査対象は現知事の取り消しに関する裁量ではなく、前知事による埋め立て承認に裁量の逸脱・乱用があったかどうかだとした上で、「あるとは言えない」と判断したとした。そのため現知事に承認を取り消す権利はないとした。

 翁長知事は同日夕、県庁で会見し「地方自治制度を軽視し、県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断だ。政府の追認機関であることが明らかになり大変失望している」と述べ、判決内容を厳しく批判。最高裁に上告する考えを示した。

 判決は、沖縄に米海兵隊を置く「地理的優位性」など、国側が米軍普天間飛行場の辺野古移設の根拠とした主張をほぼ全面的に採用。「在沖縄米海兵隊を県外に移転できないという国の判断は戦後70年の経過や現在の世界、地域情勢から合理性があり、尊重すべきだ」とした。

 その上で「普天間飛行場の被害を除去するには本件新施設などを建設する以外にない。建設をやめるには普天間飛行場による被害を継続するしかない」と断定した。

 手元にある東京新聞が掲載している判決理由の要旨を読んで、あまりの国寄りの判断ぶりに驚きを禁じ得ませんでした。

 例えば「沖縄の地理的優位」について「沖縄と潜在的紛争地域とされる朝鮮半島台湾海峡との距離は、ソウルまでが約1260キロ、台北までが約630キロで、それぞれグアムからより近い」「北朝鮮弾道ミサイルノドン』の射程外は国内では沖縄などごく一部。沖縄に地理的優位性が認められるとの国の説明は不合理ではない」などとしています。朝鮮半島に近いということで言えば、日本本土の方が沖縄よりもずっと近いのであって、その辺の指摘に対して判決がどういう判断を示しているのか、全文を見てみたいところです。日本本土よりも地理的に優位であるということを言うために北朝鮮のミサイルまで持ち出したのだとしたら、北朝鮮が最近立て続けにミサイル発射を繰り返し、到達距離は米本土をもとらえつつあるという状況下では、何の意味もないでしょう。普天間飛行場の代替基地を置くのに沖縄が持つ優位性については、2012年12月に当時の森本敏防衛相が、地理的な要因や軍事的な事情ではなく、沖縄のほかには持って行き場がないという政治的な要因であることを明言しています。そうしたことを一顧だにすることなく「沖縄に地理的優位性が認められるとの国の説明は不合理ではない」との判断を示しているのだとすれば、まさに国を勝たせるための、ためにする判断ではないのかとの疑いを持ちます。

※参考 琉球新報「普天間移設先 森本防衛相『沖縄、政治的に最適』」=2016年12月26日

 http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-200735.html

 また翁長知事が、前任の仲井真弘多氏が行った埋め立て承認を取り消したことについて、判決は「普天間の移転は沖縄県の基地負担軽減に資するもので、新施設に反対する民意に沿わないとしても、負担軽減を求める民意に反するとは言えない。取り消すべき公益上の必要が、取り消すことによる不利益に比べて明らかに優越しているとまでは認められず、承認取り消しは許されない」との判断を示しています。仲井真氏が埋め立てを承認したのは2013年12月です。しかし、2014年11月の知事選で仲井真氏は翁長氏に敗れました。同年12月の衆院選では、沖縄県の小選挙区では四つすべてで自民党候補が敗れています。沖縄県の住民の民意は明らかに辺野古移設に反対で、埋め立て承認の取り消しは翁長氏にしてみれば選挙公約の実行です。そうした経緯があるにもかかわらず「負担軽減を求める民意に反するとは言えない」とまで言うとは、さすがに言い過ぎではないのかと感じます。

 この判決を日本本土のマスメディアはどう報じたのかの例として、東京発行の新聞6紙の17日付け朝刊の主な記事の見出しを書きとめておきます。いずれも東京本社発行の最終版です。

 1面の本記の主見出しは、東京新聞だけが「沖縄県敗訴」と「沖縄」を取りましたが、他の5紙は「国が勝訴」「国が全面勝訴」と「国」を取りました。判決が全面的に国の主張を認めた点を重視すれば「国」かもしれません。一方で、「県」が「国」と真っ向から裁判で争うケースは沖縄以外の日本本土では見当たらないことで、そのこと自体が沖縄の基地集中の問題の性格を表しています。ほかの地域では起こりえないことが沖縄では解消されないままになっている、ということは沖縄への差別的な扱いということです。その点を重視するなら、見出しはやはり「沖縄」だろうと思いました。

 社説で取り上げたのは朝日、毎日、読売日経の4紙。朝日、毎日、日経は話し合いを求めていますが、読売は翁長氏への批判に終始しているのが目を引きました。

f:id:news-worker:20160918000447j:image

朝日新聞

1面トップ「辺野古埋め立て 国勝訴」「承認取り消し『違法』」「基地負担の軽減 認定」「沖縄知事、上告へ」

2面・時時刻刻「完敗判決 沖縄『あぜん』」/「高裁支部『埋め立て必要性 極めて高い』」「翁長知事、徹底抗戦の構え」/「政権『主張認められた』」「来春にも工事再開目指す」/「鶴保沖縄相『早く片付けて』」

2面「県民の反対運動 むしろ結束」仲地博・沖縄大学長(地方自治論)/「国と県は対等 観点が欠落」三好規正・山梨学院大法科大学院教授(行政法

第3社会面(33面)「沖縄憤り『不当判決』」「辺野古移設訴訟 県敗訴」/判決要旨

社説「辺野古判決 それでも対話しかない」


毎日新聞

1面「辺野古移設 国が勝訴」「『知事の承認取り消し違法』」「高裁那覇支部判決」「知事側が上告へ」※1面トップは「豊洲盛り土09〜10年撤回」

3面・クローズアップ2016「攻防激化 遠い決着」「県、徹底抗戦の構え」「国、工事再開に自信」

3面「沖縄県と国 なぜ裁判に?」「話し合い進展せず 国が提訴」質問なるほドリ

3面「地方自治を否定」武田真一郎・成蹊大法科大学院教授(行政法)/「妥当な判決だ」村田晃嗣同志社大教授(安全保障政策論)

社会面トップ「『民意は揺るがぬ』」「県敗訴 反対派、闘い継続」/「『早く片付けて』鶴保沖縄担当相」/判決要旨

社会面・解説「問題解決の制度にもろさ」

社説「辺野古で国勝訴 解決には対話しかない」


読売新聞

1面トップ「辺野古訴訟 国が勝訴」「埋め立て承認 取り消し『違法』」「沖縄県 上告の方針」「高裁那覇支部」

3面・スキャナー「移設実現へ追い風」「埋め立て なお難題」「年度内にも最高裁判決」/「沖縄県 徹底抗戦崩さず」「岩礁破砕許可 来年3月攻防か」

社会面準トップ「沖縄 安堵と反発」「翁長知事『偏った判断』」

社説「『辺野古』国勝訴 翁長知事の違法が認定された」


日経新聞

1面準トップ「辺野古移設 国が勝訴」「福岡高裁支部 知事の対応『違法』」「県は上告へ」※1面トップは「所得税、数年かけ改革

4面(政治面)「政府、来春の工事再開視野」「沖縄県知事 対抗策探る」

4面「公益性の比較踏み込み過ぎ」本多滝夫・龍谷大法科大学院教授(行政法)/「裁量権を認めず県に厳しい判決」三好規正・山梨学院大法科大学院教授(行政法)

社会面準トップ「辺野古移設に沖縄複雑」「『基地は必要』『早く決着を』」/「翁長知事『三権分立に禍根残す』」

社会面「『不合理なければ国の判断尊重』」「判決、知事の審査権は認める」

社説「『北風』で普天間移設できるか」


産経新聞

1面トップ「辺野古 国が全面勝訴」「翁長知事の対応『違法』」「高裁支部判決」

3面「翁長知事 最大の窮地」「移設反対 際立つ矛盾」/「負担軽減へ協議継続 政府」/「県、和解条項逃れ躍起」

3面「『敬意を表すべき判決』」沖縄県の仲井真弘多前知事


【東京新聞】

1面トップ「辺野古新基地 沖縄県敗訴」「福岡高裁支部判決 知事の対応『違法』」/「『普天間の危険除去 辺野古以外ない』『国防・外交は国の任務 尊重すべき』」

1面・解説「県民切り捨て国策追認 協議も軽視」(時事通信配信記事)

2面・核心「対話なく 対立続く」「安倍政権 建設工事再開へ加速」「翁長知事 別の知事権限で阻止」

2面「鶴保沖縄相『早く片付けて』」

3面・Q&A「和解、国提訴…溝深く」

3面「代執行訴訟で和解勧告も」「高裁那覇支部・多見谷裁判長」/「統治行為論で逃げ」大田昌秀元沖縄県知事

9面「裁判の中立性疑問」江上能義・早稲田大大学院教授(政治学)/「現行案 再考すべき」宮城大蔵・上智大教授(日本外交史)/判決要旨・争点表

社会面準トップ「『沖縄の気持ち踏みにじる』」「翁長知事 判決に憤り」/「『県外 本当に無理なのか』」


 共同通信が判決後の翁長雄志知事の記者会見の動画をyoutubeにアップしています。


※追記:2016年9月18日22時40分

 毎日新聞社の大阪本社発行紙面では、四国に届く12版では、1面トップの主見出しは「辺野古訴訟 沖縄県敗訴」と、「国勝訴」ではなく「沖縄県」を取っています。知人が教えてくれました。ありがとうございました。