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2014年-12月-18日

琉球新報「犠牲強要を拒む意思表示 『見ぬふり』の壁に穴を」〜「『オール沖縄』全勝」の沖縄2紙社説

 少し時間がたってしまいましたが、12月14日の衆院選結果やその後についての沖縄の新聞2紙の社説を紹介し、一部を引用して書き留めておきます。

 この選挙で沖縄では、四つある小選挙区のすべてで非自民党の候補が当選を決めました。うち一つは共産党の公認候補です。自民党の公認候補もみな比例区復活当選するのですが、小選挙区での沖縄の民意の集約という観点から見れば、自民党が獲得議席数で圧勝した本土とは際立った違いがあります。要因としては、各小選挙区で非自民の有力候補が一本化したこと、米軍普天間飛行場の沖縄県内移設(名護市辺野古地区に代替基地を建設するとの日米両政府の合意)を是とするかどうかという明確な争点があったこと、11月16日の県知事選では県内移設に反対を掲げた翁長雄志氏が保革を超えた支援体制で圧勝していたこと、などが挙げられると思います。沖縄で今何が起きているのかを知るための一助として、沖縄のマスメディアを通じてこの選挙結果の意味を知ることには、本土に住む日本人にとっても大きな意義があると思います。沖縄から発せられている問いは、日本政府政権を成り立たしめている、日本国の主権者が受け止めるべき問題であると考えるからです。

沖縄タイムス

・12月15日付「[移設反対派全勝]揺るがぬ民意を示した」

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=94760

 2010年の知事選で仲井真弘多氏が「県外移設」の公約を掲げて再選を果たしたとき、作家の大城立裕さんは、選挙後に一文を草し、こう指摘している。

 「日米安全保障のための基地なら、全国で共同責任をもつべきなのに、なぜ沖縄だけの負担なのか、という単純素朴な不平が消えないのである」

 大城さんは、住民意識の変化に注目する。

 「(沖縄は)『祖国』に絶望しかけている。民族の危機とはいえまいか」

 この不公平感と政府への不信感、「自分たちの未来を自分たちで決める」という自己決定権への渇望が、知事選に次ぐ衆院選での圧勝をもたらしたのである。

 この期に及んで民意を無視し、辺野古移設を強行するようなことがあれば、嘉手納基地を含む米軍基地の一大撤去運動が起こり、政府と沖縄の関係は、大城さんが指摘するような危機的状況に陥るだろう。

 (中略)

 知事選で仲井真氏が約10万票の大差で敗れ、今回、衆院選の選挙区自民候補がそろって敗れたのは、端的に言えば、公約を翻し、辺野古移設を認めたからだ。

 「辺野古ノー」の沖縄の民意は、政府が考えるよりもはるかに根強い。見たい現実だけを見て、沖縄の滔々(とうとう)たる世論に目をつぶることは、もはや許されない。

・12月18日付「[『辺野古』新局面]確かに山が動き始めた」

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=95243

 翁長雄志新知事は、就任後初めての県議会で「辺野古に新基地を造らせないということを私の県政運営の柱にしていく」と語った。

 現行案に対してこれほど明確に拒否の姿勢を示した知事はいない。沖縄選挙区で当選した4人の議員国会で知事を支える。この構図ができたのも初めてだ。

 安倍晋三首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼務する菅義偉官房長官は衆院選期間中、一度も沖縄に入らなかった。9月の所信表明で「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」といいながら、選挙応援にも入れなかったのである。

 共同通信社が衆院選後の15、16両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、辺野古移設について「計画をいったん停止」と答えた人が35・0%、「白紙に戻す」が28・7%だった。

 移設賛成が反対を大きく上回っていた昨年12月の調査に比べ、世論に変化が生じていることがうかがえる。

 対日政策に影響力を持つジョセフ・ナイ米国次官補は今月初め、朝日新聞の取材に答え、次のように語っている。

 「沖縄の人々が辺野古への移設を支持するなら私も支持するが、支持しないなら我々は再考しなければならない」(8日付朝日新聞)。この踏み込んだ発言が、知事選後だという点に注目したい。

 米国は民意に敏感である。普段、民主主義の大切さを説いているだけでなく、敵意に囲まれた基地は機能しない、ということを経験で知っているからだ。

 ナイ氏は、中国弾道ミサイル能力が向上したことで沖縄の基地がぜい弱になり、基地を沖縄に集中させることがリスクになりつつある、との見方を示したという。

 東アジアの安全保障環境も沖縄の民意も全国世論も、大きく変わってきているのである。

 選挙で翁長陣営と争った県議会野党も、初心に帰ってこの変化に正面から向き合ってもらいたい。

 この期に及んで辺野古移設を強硬に進めようとすれば、民意の猛反発は避けられず、島ぐるみの反対運動に発展するのは確実だ。辺野古埋め立てを強行するよりも計画を見直すほうが、普天間の危険性除去は早まる。


▼琉球新報

・12月15日付「安倍政権に信任 平和憲法が危機に オール沖縄の民意尊重を」

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-235932-storytopic-11.html

 県民は「沖縄のことは沖縄が決める」と自己決定権を行使し、政府与党に辺野古移設拒否をあらためて突き付けたことになる。知事選に続き「オール沖縄」で反新基地の民意が示されたといえる。

 政権公約に地元が三度(みたび)反対を明確に打ち出したこと、さらには衆院選沖縄選挙区で自民党公認が全敗したという現実を安倍政権は重く受け止め、移設を断念すべきだ。地元の民意をこれ以上無視することは民主主義国家として許されない。

 選挙区で落選し、比例で復活した自民党の4氏は政府与党と歩調を合わせた辺野古移設の公約が有権者から支持を得られなかった事実を真摯(しんし)に受け止めてほしい。

 「普天間の危険性除去」の一方で、辺野古に新たな危険をもたらす移設を沖縄の政治家が推進していいのか。「一日も早い危険性除去」なら普天間飛行場の即時閉鎖しかない。

 沖縄の代表として、過重な米軍基地負担を沖縄だけに押し付ける差別政策を今後も認めていいのかを、いま一度考えてもらいたい。

・12月16日付「『オール沖縄』全勝 犠牲強要を拒む意思表示 『見ぬふり』の壁に穴を」

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-235975-storytopic-11.html

 安倍晋三首相は開票当日、「説明をしっかりしながら進めていきたい」と、なお新基地建設を強行する考えを示した。翌日には菅義偉官房長官も、沖縄の自民党候補全敗について「真摯(しんし)に受け止めるが、法令に基づき(移設を)淡々と進めていきたい」と述べた。

 まるで沖縄には彼らが相手にする民意など存在しないかのようだ。米軍基地を置く領土だけがあればいい、住民の意思など邪魔だとでも言うのだろうか。中国政府がウイグル自治区チベットでしてきたこと、最近の香港で行ったことと何が変わるのか。

 問題は、この沖縄への犠牲の強要が、安倍政権の体質に由来するだけではないという点だ。

 世論調査をすると、沖縄では辺野古移設への反対が常に7〜8割を占めるのに対し、全国では賛成が反対を上回ることもある。

 海兵隊の適地は沖縄のみ、という考えが背景にあるが、思い込みにすぎない。移動手段を考えれば北部九州に置く方が合理的だ。事実、沖縄の基地問題が浮上した1996年にも、2005年の米軍再編協議でも、当の米国が海兵隊の本土移転を打診している。だが日本側が拒んだというのが実態だ。

 尖閣問題を抱え、海兵隊が必要というのも誤りだ。日米の外務・防衛閣僚が交わした正式文書は島嶼(とうしょ)防衛を米軍でなく日本のみで対処する分野と定める。米軍が対処するなどあり得ないのだ。

 こうした事実は全国ではほとんど報じられない。報道機関の責任もあるが、結局のところ、国民は「見たくない真実」から目をそらしている。日本全体が、米軍が身近にあるのは困る、置くなら沖縄で、と無意識に考えていることの反映と言えば言い過ぎだろうか。

 だから政府の辺野古移設強行に国民の反発は少ない。沖縄への犠牲の強要は、安倍政権だけでなく日本全体の「見て見ぬふり」に由来すると考えられるのである。

【写真説明】琉球新報の15日付紙面1面(手前)と16日付社説

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2014年-12月-15日

毎日新聞1面社説「『冷めた信任』を自覚せよ」〜衆院選の結果を伝える在京各紙紙面の記録 ※追記・改題しました

 第47回衆院選は12月14日に投開票の結果、与党自民党290議席公明党35議席で計325議席を獲得し、定数475議席の3分の2超を維持しました。ほかの政党別議席数民主党73、維新の党41、共産党21、社民党2、次世代の党2、生活の党2、無所属9です(共同通信集計による)。

※47news=共同通信「自公325、安倍政権継続 3分の2議席維持、共産倍増」2014年12月15日

 http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014121401001708.html

 第47回衆院選は14日に投票、即日開票され、15日未明に全475議席が確定した。自民公明両党は定数の3分の2(317)を上回って計325議席となり、安倍政権の継続が決まった。自民党は単独で290議席を獲得したが、公示前の295には及ばなかった。安倍晋三首相(自民党総裁)は24日に特別国会で第97代首相に指名され、第3次安倍内閣が発足する運びだ。民主党は公示前の62議席から73に上積みした。維新の党は1減の41議席だった。8議席の共産党は倍以上の21となった。

 以下の写真は、15日付の東京発行の新聞各紙朝刊の1面です。

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 各紙の1面、社説、政治部長論説委員ら編集幹部の署名評論の主な見出しを以下に書き出してみます。これだけでも各紙ごとの論調の違いがある程度うかがえるのではないかと思います。

朝日新聞

1面トップ「自公大勝 3分の2維持」「安倍政権の基盤強固に」「『アベノミクス』継続へ」「投票率52%前後、戦後最低」「海江田氏落選 民主代表選へ」

1面「首相、改憲論議の推進表明」

社説「自公大勝で政権継続 分断を埋める『この道』に」選択肢はあったか/格差是正こそ急務/投票日の翌日から

署名評論「安倍政治の先 問い続ける」長典俊ゼネラルエディター(1面)

署名評論・座標軸「ゲームで終わらせないために」大野博人論説主幹(20面=最終面)

▼毎日新聞

1面トップ「自民微減 291議席」「衆院選 自公3分の2維持」「民主微増 共産は倍増」「海江田氏落選 代表辞任へ」

1面「安倍首相 主要閣僚再任へ」「特別国会24日召集、組閣」/「投票率は戦後最低」

社説・1面「『冷めた信任』を自覚せよ」

読売新聞

1面トップ「自公圧勝 320超」「議席の2/3上回る」「投票率最低52%前後」「民主伸びず、維新苦戦」「海江田代表落選、辞任不可避」

1面「第3次内閣 全閣僚辞任へ」

社説「衆院選自公圧勝 重い信任を政策遂行に生かせ」「謙虚で丁寧な政権運営が必要だ」奏功した「電撃解散」/野党は受け皿となれず/1票の格差是正が急務

署名評論「目指す道筋 明確にせよ」田中隆之政治部長(1面)

産経新聞

1面トップ「自公3分の2超 圧勝」「首相 長期政権地固め」「海江田氏落選、代表辞任へ」「共産躍進、20議席獲得」

1面「閣僚と党幹部 続投」「補正・来年度予算を急ぐ」

社説(「主張」)「自公圧勝 安倍路線継承への支持だ」「規制緩和と再稼働で成長促せ」野党は受け皿再構築を/与党で憲法協議進めよ

署名評論「手にした『推進力』で難題突破を」有元隆志政治部長(1面)

日経新聞

1面トップ「自公勝利 3分の2維持」「アベノミクスを継続」「民主伸び悩み 維新横ばい」

1面「第3次内閣 24日発足へ」「主要閣僚再任 年内に税制大綱」/「海江田氏が落選」「民主党代表 辞任へ」/「投票率最低 52%前後に」

社説「『多弱』による勝利に慢心は許されぬ」最低投票率深刻な事態/成長戦略実現に注力を

署名評論「この民意くみとる『道』を」池内新太郎政治部長(1面)

東京新聞

1面トップ「自公3分の2維持」「共産倍増、民主 議席増」「投票率最低52%台 推計」

1面「2人に1人棄権 民主主義の危機」/「有権者戸惑い」川上和久・明治学院大教授/「論戦 広がらず」岩崎正洋・日大教授

1面「海江田代表落選、辞任へ」

1面「小選挙区 自民 沖縄で全敗」

社説「安倍政権継続へ 『1強』ゆえに謙虚たれ」絶対得票は30%未満/主要政策、世論と乖離/誤りなきを期すには

署名評論「全有権者の声に耳を」金井辰樹政治部長(1面)


 1面トップの見出しでは、多くが「自公」でそろったのに対して、毎日新聞だけは「自民微減 291議席」と独自色が出ています。紙面ではその下に社説が掲載されており、その見出しは「『冷めた信任』を自覚せよ」。この2本の見出しを視覚的にアピールしようとしたのでしょうか。紙面の構成に工夫があると思いました。

 今回の選挙結果をどう見るか、ポイントはいくつかあると思いますが「戦後最低の投票率」はその最たるものだと思います。在京紙各紙の社説を読んでみると、この投票率の見方、読み解き方に、それぞれの新聞の安倍晋三首相や政権への距離感が反映されているようです。以下に、安倍政権支持が鮮明な読売新聞と産経新聞の社説(産経は「主張」)のうち、投票率に言及した部分を引用します。

▼読売新聞

 一方、首相は、自民党が突出する「1強多弱」体制を維持しても手放しで喜べる状況ではない。野党の失策に加え、戦後最低に落ち込んだ投票率が、固い組織票を持つ与党に有利に働いたからだ。

 与党に対する国民の支持は、積極的ではなく、「野党よりまし」という消極的な面が強いことを、きちんと自覚する必要がある。

▼産経新聞

 今回の解散総選挙を野党側は大義がないと批判した。だが、有権者の関心度が高まらず低投票率を招いたのは野党側の要因も大きい。とくに政権交代を掲げず、過半数に届かぬ候補者しか擁立できなかった民主党の責任は重い。

 維新も第三極勢力として踏みとどまったものの、存在感の低下は否めない。

 野党側は巨大与党の「暴走」にストップをかけると唱え、アベノミクスの副作用を強調したが、具体的な代替案を示して有権者の心をつかむことができなかった。これでは自公連立政権の受け皿と認知されるのは難しい。

 一方、安倍首相と政権に批判的な朝日新聞と毎日新聞は以下のように社説で触れています。

▼朝日新聞

 この選挙で際立ったのは戦後最低レベルの低投票率だ。意義がつかみにくい解散、野党が選択肢を示せなかったことに対する有権者の冷めた感情があったことは想像に難くない。

 だが、政治と有権者との間のこうした距離を放置することは、日本の将来にプラスになることは決してない。

 株価を上げ、円安誘導を図る安倍政権への政治献金が、その恩恵を受ける大企業からを中心に去年は4割も増えた事実を思い起こそう。ここで市井の有権者が声を上げなければ、格差はますます拡大し、社会の分断線はさらに増えかねない。

 自分の立場を嘆き、分断線の内側にこもって不満を言い募るだけでは、社会も政治も変わることはない。

 日本より大きな格差社会である米国のありように警鐘を鳴らす元米労働長官のロバート・ライシュ・カリフォルニア大教授は、近著「格差と民主主義」で次のように説いている。

 政治を中間層に振り返らせ、格差を減らしていく。その具体的政策に取り組むよう、一人ひとりが当選した政治家に働きかけていくべきだと。そしてこう呼びかけるのだ。

 「投票日の翌日こそが、本当の始まりである」

▼毎日新聞

 だからこそ、首相は何もかも授権されたかのように民意をはきちがえてはならない。有権者の約半数しか投票に参加しない選挙であり、国会での優位が続くとはいえ自民党は公示前の勢力よりわずかに数を減らした。

 小選挙区は実際の得票率以上に多数派への議席集中を起こす制度だ。勝者にはいたずらに「数」を用いぬ節度が求められる。首相の悲願である憲法改正公約の約300項目のひとつに含めたからといって、国民の賛意の表れとみなすことはできない。決め手を欠く成長戦略や財政の健全化に、今度こそ結果を出すことが、第3次内閣に課せられた使命であろう。

 日経新聞の社説は低投票率を小見出しにも取って、以下のように記述しています。

▼日経新聞

 投票率は過去最低だった前回2012年の59.32%を大幅に下回り、選挙そのものに有権者からの疑問符が突きつけられた格好だ。深刻な事態である。野党のあり方を含めて日本政治の問い直しが迫られている。

 東京新聞は先に書き出したように、1面に「2人に1人棄権 民主主義の危機」の見出しを取って、識者2人の談話を掲載。社説でも以下のように指摘し、選挙報道にも触れています。

▼東京新聞

 衆院で三分の二以上という議席数は圧倒的だ。参院で否決された法案も、衆院で再可決すれば成立させられる。それほど強い政治力を、自民、公明両党は引き続き持つことになる。

 しかし、その足元は、強固とは言い難い。

 投票率は史上最低の52%台にとどまる見通しだ。与党の得票率が40%程度だとしても、全有権者数に占める得票数の割合「絶対的得票率」は30%にも満たない。

 それが選挙制度だと言ってしまえば、それまでだが、安倍政権の側はまず、全有権者の三割に満たない支持しか得られていないことを自覚しなければならない。

 有権者の側も、政権への支持が全有権者の三割に満たなくても、憲法改正を発議できる議席を与えてしまう事実に、もっと関心を払う必要があるだろう。

 「国のかたち」でもある憲法の発議を、国民の大多数が望むのならともかく、少数の手で進めてしまっていいわけがない。

 半数近くの有権者が投票所に足を運ばなかった理由は多々あるだろう。まずは、首相が解散に踏み切った理由への疑問だ。

 税は民主主義の根幹だが、今回の衆院選で問われたのは消費税増税ではなく、再増税先送りの是非だ。有権者の戸惑いは最後まで消えなかったのではないか。

 民主党が今回、定数の半分に満たない候補者しか擁立せず、政権選択の衆院選だった過去二回とは趣が異なった。安倍政権の「信任投票」では、有権者の足が投票所から遠ざかっても無理はない。

 さらに、一票を投じても政治は変わらないという諦めが有権者側にあったのなら見過ごせない。

 序盤から終盤まで一貫して、自民党の優勢が伝えられた。あくまで調査に基づく選挙情勢の報道ではあるが、有権者に先入観を与えることはなかったか。報道の側にも自戒が必要だろう。

 この投票率の低さは、安倍首相と政権に対し、日本国民の総意として白紙委任まで容認するものではない、ということは言えるのだろうと思います。

 このほかにも今回の選挙ではいくつか留意すべきことがあると考えています。沖縄の小選挙区で自民党候補が全敗したこと、共産党が倍増以上に躍進したこと、日本維新の会の流れを汲む維新の党が大阪の小選挙区で不振だったこと、などなどです。個人的には、得票の比以上に議席数に差がついてしまう小選挙区制の問題もあいまって、社会のどの意思をだれがどういう形で代表するのか、という民主主義の根本にかかわる問題があると考えています。


※追記・改題しました 2014年12月15日20時10分

 当初の『毎日新聞1面「自民微増」「『冷めた信任』を自覚せよ」〜衆院選の結果を伝える在京各紙紙面の記録』から改題しました。当初アップした際にわたしの手元にあった毎日新聞の15日付朝刊は東京本社発行の「14B版」でしたが、その後さらに新しい版(追い版)を印刷したようです。「14D版」では、1面トップの見出しは「自民横ばい 291議席」に差し替わっていました。このブログ記事のタイトルも改題することにしました。

 公示前の自民党の議席は295議席。公認候補が獲得した議席290、当選後の追加公認を含めて291は「微減」ですが、今回の選挙は定数も5減っていました。自民党の獲得議席の評価は、そうしたことも考慮して考える必要があるかもしれません。

 毎日新聞の見出しが差し替わっていることは、この記事をアップ後にツイッターでご教示いただきました。Boさま(@agrinews_watch)ありがとうございました。

【写真説明】毎日新聞東京本社発行の15日付朝刊14D版の1面

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速報・沖縄の全4選挙区で自民党候補が敗北

 12月14日に投開票が行われた衆院選で、沖縄の小選挙区では全4選挙区で自民党候補が敗北しました。

琉球新報「【電子号外】1、4区は赤嶺、仲里氏 自民、沖縄で選挙区全敗」

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-235909-storytopic-125.html

沖縄タイムス「【動画】翁長知事『沖縄の民意示された』全4区勝利で」

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=94725

2014年-12月-14日

自己決定権が封じられているのはだれのせいか:(備忘)「衆院選と基地、沖縄」の本土紙社説

 衆院選はきょう12月14日、投開票日を迎えました。12月2日の公示直後、マスメディア各社の世論調査をもとにした序盤情勢で安倍晋三首相自民野党を圧倒の勢いと報じられて以降も、自民党は勢いを失わず、終盤に入っても単独で全議席の3分の2をうかがう勢いと伝えられています。

 この選挙で個人的に注目していることの一つは、沖縄の米軍基地の過剰負担の問題ですが、結局のところは沖縄県外、日本本土ではほとんど争点にならなかったと感じます。選挙期間中の5日、知事退任を目前にした仲井真弘多氏が、米軍普天間飛行場の移転先とされる名護市辺野古地区での工法変更を承認する出来事がありました。10日には、普天間飛行場の県内移設反対を掲げて知事選で圧勝した翁長雄志氏が就任。基地問題は沖縄で新たな位相に入っているのですが、本土ではどこまでそのことが意識されているでしょうか。

 衆院選が急浮上した当初から、わたしは安倍首相と自民党が「勝った」と言える結果を収めた場合に、沖縄県知事選で翁長氏圧勝に表れた沖縄の民意を、全国の民意が上書きしたと言わんばかりに「全国の国民の支持を得た」と強弁して、安倍首相と政権が辺野古移設を強行することを危惧しています。(参考過去記事:11月16日「沖縄知事選と衆院解散・総選挙 ※追記:辺野古移設反対の翁長氏が当選確実」

 仮に、地域の民意は繰り返し明らかになっているのに、中央政府がそれを認めず国策をゴリ押しに押してくる、というような例が日本の沖縄以外の地域にあるのかどうか。沖縄では知事選も保革を超えた対決構図で翁長氏が圧勝し、衆院選もまた非自民の候補が自民の候補と渡り合っています。基地をめぐって沖縄では社会が従来とは異なる位相に進んでいるのに、本土の側はそれに対応できていないと言うべきではないかとも感じています。それは政府政党だけのことではなく、日本国の主権者たる国民一人一人をも含めてです。命と生活にかかわる国策をめぐって地域の自己決定権が封じられている状況は、政府や政権の責任が大きいとしても、その政府や政権を成り立たせているのは主権者たる国民です。その意味では、どのような選挙結果になろうとも、沖縄で起きていることが本土の国民に知られることの重要さは変わらず、むしろ高まるのだと思います。

 ここでは、本土の新聞が掲載した衆院選と沖縄をめぐる社説の中で、目についたものをいくつか書き留め、一部を引用します。

▼12月9日 毎日新聞「衆院選 ここを問う 沖縄の基地」民意から目をそらすな

 衆院選で沖縄では4選挙区すべてで、自民党候補と、辺野古移設に反対する野党系候補が対決する。各種の世論調査では、接戦か野党系候補の優勢が伝えられている。

 自民党は公約に辺野古移設推進を掲げているが、安倍晋三首相は選挙演説で沖縄の問題にはほとんど触れない。安倍政権がどうしても移設を推進するというなら、少なくとも衆院選では堂々と議論すべきだ。

 普天間問題の争点化を避け、自民党が全国的に勝てば、辺野古移設も含めて信任されたと言おうとしているなら、納得できない。

 政権内の一部からは「衆院選で勝てば沖縄知事選の敗北を帳消しにできる」という声も聞こえてくる。民意をないがしろにしてはならない。

▼12月11日 読売新聞日米同盟 辺野古移設の実現が重要だ」

 自民党は、辺野古移設の推進を明記した。公明党民主党は、辺野古移設には触れず、普天間飛行場を含む米軍施設の返還計画の日米合意などの「着実な実施」に取り組む方針を示している。

 公明党は、沖縄県本部が辺野古移設に反対のため、先月の県知事選では仲井真弘多知事の推薦を見送ったが、衆院選小選挙区では自民党の4候補を推薦している。

 辺野古移設は、安倍政権が昨年末、知事の埋め立ての承認を取り付けたことで、重要な前進があった。仲井真氏は知事選で反対派の新人に敗れたが、先週、防衛省の埋め立て工事の一部変更を承認し、当面は工事が進む方向だ。

 普天間飛行場の危険な現状の長期固定化を避け、海兵隊のグアム移転などの沖縄の基地負担軽減を実現する。そのためには、辺野古移設が最も現実的な近道だ。

 それが、日米同盟の実効性を高めることにもつながろう。

▼12月12日 朝日新聞「(衆院選)沖縄の基地―終わった事ではない」

 沖縄では衆院選の4選挙区すべてで、知事選と同様、移設容認派VS.移設反対派の構図となっている。土壇場の承認は、移設反対派の怒りに油を注いだ。

 一方、本土で辺野古移設は「沖縄の基地問題」として、遠くの見えない場所に置きざりにされている。

 海兵隊を沖縄に常駐させる軍事的メリットに、米国内からさえ疑問の声が上がり始めている。それでも移設推進を公約に掲げる自民党なら、せめて「辺野古移設が唯一の解決策」という自らの主張を全国民に問い、議論するべきではないか。

 亡くなる直前に沖縄を訪れた俳優の菅原文太さんは辺野古移設を批判してこう語った。

 「沖縄の風土も、本土の風土も、海も、山も、空気も、風も、すべて国家のものではありません。そこに住んでいる人たちのものです」

 「そこに住んでいる人たち」の切実な民意と全国に広がる無関心――。そこをつなぐのが国政選挙の役割でもあろう。

 これから私たちが選ぶ政権が、地元民意と誠実に向き合えるのか。それとも、本土の無関心に乗じて「国防、安保政策は政府が決めること」と無視するのか。今回の衆院選には、そんな選択も含まれなければならないはずである。


 以下はブロック紙地方紙です。

▼12月10日  信濃毎日新聞「12・14衆院選 沖縄基地問題 政党の覚悟が問われる」

 今度の総選挙について、沖縄では「辺野古隠し選挙」との見方があるという。地元紙の沖縄タイムスが伝えている。

 11月に行われた知事選で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志氏が、移転容認の現職仲井真弘多氏を破って当選した。約10万票の大差だった。移設を進めてきた政府には打撃となった。

 総選挙にはそのショックを和らげる狙いがあるというのだ。

 これまでとは様相の違う知事選だった。翁長氏には旧来の保革の枠組みを超えて支持が集まった。選挙は移設を押しつけてくる本土政府に対し、沖縄ぐるみで立ち向かう色彩も帯びた。

 翁長氏は当選の翌日「知事権限を行使する。埋め立て承認の撤回を視野に動く」と述べている。仲井間氏が昨年12月に決定した辺野古沖埋め立て申請の承認を、取り消す可能性を示唆した。

 こうした経緯を踏まえた上で、沖縄基地問題についての各党の公約にあらためて目を通す。

(中略)

 政府は今も移設への作業をやめていない。このまま既成事実の積み上げを続けるようだと、沖縄との溝はますます深くなる。

 沖縄の基地問題は日本の安全保障問題そのものだ。避けて通ったり曖昧な姿勢を取ったりするようでは政党の役割は果たせない。

 普天間飛行場の固定化をどう回避するか。沖縄の基地負担を軽減するために米国政府とどう交渉するか。困難な課題に正面から向き合う責任が各党に重い。

▼12月11日 神戸新聞「沖縄と基地/負担軽減をどう実現する」

 先月の沖縄県知事選では、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する新人の翁長雄志(おながたけし)氏が、計画を容認する前知事の仲井真弘多(ひろかず)氏に10万票の大差をつけて当選した。

 あらためて「反対」の民意が明確に示されたといえる。沖縄の思いを誠実に受け止め、計画の再検討と基地負担の軽減に取り組む。それが国政の務めではないか。

 しかし、与党の自民党は計画を見直すつもりはなく、衆院選の公約でも「推進」を明記する。菅義偉官房長官らも「淡々と進める」などと語る。「知事選は基地問題の県民投票ではない」という理屈だ。

 きのう就任した翁長知事は、前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認について、外部有識者による委員会で経緯を検証する方針を示した。このままでは沖縄と国政の距離は開くばかりだ。

 自民、公明両党は「基地負担軽減」と「在日米軍再編」も公約に掲げるが、一方で沿岸部の海底調査などの工事を強行する構えも崩さない。聞こえのいい言葉を並べるだけでは県民の理解は得られないだろう。

 沖縄には米軍専用施設の74%が集中する。事故や犯罪などの危険と向き合う厳しい現実を忘れてはならない。負担軽減を口にするなら、各党は具体的な見通しを語るべきだ。

▼12月11日 西日本新聞「沖縄基地問題 本土の有権者も考えよう」

 今回衆院選で、沖縄では4小選挙区とも、自民党候補と辺野古移設反対派の候補が対決する構図だ。もし自民党が圧勝すれば、安倍政権は「沖縄の基地問題を含む政策に信任が得られた」として知事選で示された民意を無視して、移設をさらに強引に進めるのではないか‐。移設に反対する沖縄県民はこんな危機感を抱いている。

 米軍基地問題は、単に沖縄だけの政治テーマではない。政府は辺野古移設が完了するまでの間、普天間飛行場の基地機能を佐賀空港に暫定移駐する構想を検討した。米軍が難色を示したためこの案は頓挫したが、暫定移駐が可能なら「移設先は辺野古しかない」という政府の主張が揺らぐのではないか。衆院選を通じて、与党は基地問題をきちんと語るべきだ。

 反対派の候補や政党も、普天間飛行場の固定化を避けるためにどんなプランがあるのか、具体策を示してもらいたい。

 本土の有権者にとって、衆院選における基地問題の優先順位は高くないのが現実かもしれない。しかし、沖縄県民になったつもりで、米軍基地についてじっくり考えてほしい。「人ごとではない」と思えば、関心も深まるはずだ。

▼12月12日 北海道新聞「<2014衆院選>沖縄基地問題 民意を慎重に把握せよ」

 全国的に低調な選挙戦の中で、激しい戦いとなっているのが沖縄だ。米軍普天間基地を名護市辺野古に移設する計画の是非が大きな争点になっているからだ。

 先月の県知事選で反対派の翁長雄志(おながたけし)氏が当選したばかりだが、国は計画を変えようとしない。地元には怒りが充満している。

 遠くの出来事と見過ごすことはできない。政策を頭ごなしに地方に押しつける国の姿勢が問われている。選挙に表れる民意を慎重にすくい取る姿勢が求められる。

 (中略) 

 (安倍晋三政権は)かつて沖縄が米軍施政下にとどまることになった日を「主権回復の日」として祝った。自民党執行部は沖縄県選出の国会議員に普天間県外移設の公約を撤回させた。

 辺野古移設は反対論を退けて進めている。経済振興策というアメと負担増のムチを使い分け、地元を分断してきた。首相の「沖縄の人々の気持ちに寄り添う」との言葉は真意を疑わざるを得ない。

 沖縄の野党勢力はこんな安倍政治を厳しく批判する。四つの小選挙区では共産社民、生活など各党が従来の枠を超えた「オール沖縄」の協力態勢を築いている。「辺野古反対」の一点で結集した。

 与党は自民、公明両党の連携を軸に議席維持に必死だ。基地問題には深入りを避け、経済政策などを前面に訴える戦いだ。

 国はこの衆院選の結果を誠実に受け止めるべきだ。民意が分断される中、賛成論だけを採用し、反対論を排除してはならない。


※追記 2014年12月14日14時45分

 産経新聞は12月13日の社説(「主張」)で沖縄に触れています。一部を引用して書き留めておきます。

▼12月13日 産経新聞「あす衆院選 『安全保障』も選ぶ基準に」

 あす投開票を迎える衆院選で、有権者に考えてほしいことがある。

 経済政策が大きな争点になっているが、日本の平和と安全、国民の生命財産をどのように守っていくかである。

 これらの基盤となっているのは日米安保体制だ。日米同盟に基づく抑止力の整備が、今ほど求められているときはない。

 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増す一方である。日本の島々や海、空をどのように守っていくのか。これまで以上に真剣に取り組まなければならない時代に入っている。

 今年4月の日米首脳会談で、オバマ米大統領は、中国が力による奪取をねらう尖閣諸島(沖縄県石垣市)について「日米安全保障条約に基づき防衛義務を果たす」と表明した。大統領が、日米安保の適用対象だとわざわざ明言しなければならなくなっている。

 国の守りの最前線になっている沖縄では、米軍普天間飛行場の辺野古移設が改めて政治問題化している。

 就任したばかりの翁長(おなが)雄志沖縄県知事は12日、初の所信表明演説で、仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認について、瑕疵(かし)があれば取り消しを検討する考えを示した。

 だが、辺野古移設は日米合意に基づくものであり、すでに工事が始まっている。頓挫(とんざ)すれば同盟を傷つけ、抑止力の低下を招く。市街地にある普天間飛行場の危険性を除く上でも実現が急がれる。

2014年-12月-12日

やはり地方紙は反対や批判的論調が圧倒〜秘密保護法施行の社説

 特定秘密保護法が施行された12月10日前後に、全国のブロック紙、地方紙が社説でどのように取り上げているか、ネット上で調べてみました。対象は、ネット上の自社サイトで社説を公開している新聞です。9日から11日まで、見出しのみの新聞も含めて以下の28紙を確認できました。ブロック紙、地方紙のすべてを網羅的に調べたわけではありませんが、施行に反対の論調や、批判的、懐疑的な論調が圧倒しています。全国紙では、同様に懐疑的、批判的な朝日新聞毎日新聞と、同法の必要性を支持し施行に理解を示す読売新聞産経新聞とに論調は二分です。全国紙は論調二分、ブロック紙、地方紙は批判が圧倒―は、この法律が法案として国会で審理されていた昨年来、変わらない傾向です。

 以下に、ブロック紙、地方紙各紙の社説の見出しを書き留めておきます。

【9日】

河北新報「’14衆院選 外交安保/『抑止力』の本質を見極めよ」

秋田魁新報「[2014衆院選]秘密保護法施行 国家機密拡大する恐れ」

信濃毎日新聞「秘密法を追う あす施行 運用を厳しく監視しよう」軍機保護法の前例/知らしむべからず/情報公開法の強化を

山陽新聞「秘密保護法施行 民主主義の根幹が揺らぐ」

中国新聞「秘密保護法あす施行 安易な指定許されない」

高知新聞「【秘密保護法 14衆院選】懸念は全く消えていない」身内からも疑問符

沖縄タイムス「[秘密法あす施行]戦争と人権は相いれぬ」

【10日】

北海道新聞「特定秘密保護法施行 あらためて廃止を求める」民主主義を揺るがす/国会は役割を果たせ/情報公開の推進必要

東奥日報「粘り強く問題点見直しを/秘密保護法施行」

岩手日報「秘密保護法施行 国民の監視欠かすまい」

福島民報「【秘密保護法施行】運用厳しく見守ろう」

新潟日報「秘密法施行 法廃止への議論を始めよ」

中日新聞東京新聞「権力が暴走しないか 特定秘密保護法施行」立法の必要性は「弱い」/軍機保護法の過去が/国民を統制する道具

北日本新聞「秘密保護法施行/民主主義の後退招くな」

福井新聞「特定秘密保護法施行 情報統制の歯止め利かず」

神戸新聞「秘密保護法施行/国民の疑念は残ったまま」

山陰中央新報「秘密保護法施行/問題が置き去りのままだ」

愛媛新聞「【衆院選2014】特定秘密保護法施行 民主主義への姿勢が問われる」

徳島新聞「秘密保護法施行 市民も罪に問われかねぬ」

西日本新聞「秘密保護法施行 国民的な議論をもう一度」際限ない情報隠し/説明責任の徹底こそ

大分合同新聞「秘密保護法施行 粘り強く改正求め続けよう」

宮崎日日新聞「秘密保護法施行 問題点指摘し改正求めよう」都合悪い情報隠しも/内部告発を保護せよ

佐賀新聞「秘密保護法施行」

熊本日日新聞「秘密保護法施行 多くの問題残したままだ」

南日本新聞「[秘密保護法施行] 安易な指定許されない」

【11日】

デーリー東北「秘密保護法施行 抜本的な改正が必要」

京都新聞「秘密保護法施行  危険性は残ったままだ」

琉球新報「秘密保護法施行 やはり廃止しかない 民主主義の礎壊す悪法だ」暗黒時代再来/半永久的指定

 ブロック紙、地方紙各紙が指摘する問題点はおおむね共通しています。秘密指定の対象となる情報が広範かつ曖昧で、指定が適正かチェックする仕組みが弱いこと、政府が都合の悪い情報を恣意的に隠す可能性があること、いったん特定秘密に指定されると公開されないまま廃棄される恐れもあること、処罰対象は公務員にとどまらず、市民運動メディアの取材活動も違法となる恐れがあること、などなどです。

 目を引かれたのは、「外交や安全保障の面では秘密があるのは当然」とする特定秘密保護法の必要性自体を疑う視点を持った社説です。例えば沖縄タイムスは「『外交や防衛には秘密がつきものであり、秘密保護のために法制度を整備するのは当然』だという議論がある。この法律は、そういう一般論で片付けられるようなものではない」と明確に断じています。中日新聞・東京新聞も「国家の安全保障にかかわる重要情報は厳重に管理すべきだ−。そのように単純に考えてはならない」と指摘しています。ほかにも、内閣情報調査室民主党政権時代の2011年に素案をつくった際、内閣法制局が必要性を示す根拠が弱いと指摘していた事実を挙げた社説もいくつかあります。同法の将来の廃止を見据えるならば、同法の必要性そのものに立ち返って再検証し考える発想が必要だろうと感じます。

 ほかにも沖縄タイムスや琉球新報の社説には、本土の人間が忘れがちな視点、観点があります。特に沖縄タイムスの以下の指摘は心に刻み付けておきたいと思います。

 復帰後、沖縄適用された日米地位協定には公にされていない秘密の合意事項や取り決めが多く、事件事故が発生するたびに沖縄の人々は、知る権利を奪われた悲哀を味わい続けてきた。国内法で保障された権利すら行使できない「半主権状態」の沖縄に、新たに特定秘密保護法の網が被(かぶ)さってくるのである。

※沖縄タイムス社説12月9日「[秘密法あす施行]戦争と人権は相いれぬ」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=93844

※琉球新報社説12月11日「秘密保護法施行 やはり廃止しかない 民主主義の礎壊す悪法だ」

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-235684-storytopic-11.html


 全国紙5紙の社説の見出しも書き留めておきます。

▼朝日新聞 10日「衆院選 秘密法施行 『不特定』の危うさ」

▼毎日新聞 10日「秘密保護法 施行 息苦しい社会にするな」解除後には一律公開を/内部通報者を保護せよ

▼読売新聞 10日「秘密保護法施行 他国との情報共有に不可欠だ」

日経新聞 10日「民主主義の土台たる『知る権利』を守れ」

▼産経新聞 12日「秘密保護法施行 機密と知る権利の両立を」

 産経新聞は12日付です。「予定通りの施行は妥当」「『息苦しい社会』『戦争する国』をもたらすといった批判は的外れだ」としつつ、以下のような記述もあります。

 政府の運用基準は報道や取材の自由について「国民の知る権利を保障するものとして十分に配慮する」と定める。当然だが、「十分な配慮」には曖昧さが残る。取材行為に関する「著しく不当な方法によるものと認められないかぎり」という条件も不明確だ。

 恣意(しい)的運用を厳に慎むよう、知る権利や報道の自由の重視を求め続けねばならない。

※産経新聞【主張】12月12日「秘密保護法施行 機密と知る権利の両立を」

 http://www.sankei.com/column/news/141212/clm1412120004-n1.html

2014年-12月-11日

特定秘密保護法が施行、在京紙の報道の記録

 特定秘密保護法が12月10日午前零時、施行されました。「何が秘密か、それ自体が秘密」との指摘に代表される、批判の多い法律です。

 10日付の東京発行の新聞各紙朝刊は、扱いが分かれました。朝日新聞毎日新聞東京新聞は本記を1面トップで大きく扱いました。この日の朝刊の中でもっとも重要なニュースであるとの価値判断です。この3紙は昨年、同法が法案として国会で審理されていたころから、反対の論調を鮮明にしていました。これに対して、条件付きながらも同法公布を基本的に支持していた読売新聞は1面には置いたもののトップではなく、同じように同法を支持する産経新聞は2面でした。

 各紙の紙面を比べて思うのは、反対を鮮明にしている新聞ほど関連記事が多いことです。東京新聞は関連記事を7ページにわたって掲載しました。読売新聞は3ページですが、うち1ページは丸ごと特集を組んでおり、情報量は少なくないのかもしれません。ただ毎日新聞や東京新聞が様々な立場の人を紙面に登場させ、多様な観点を提供しようとしていることと比べると、やはり違いがあるように感じます。

 社説は、産経新聞を除く5紙が取り上げました。その中で「国家の安全保障にかかわる重要情報は厳重に管理すべきだ−。そのように単純に考えてはならない」と指摘し、特定秘密保護法の必要性に根拠がないことを主張する東京新聞の社説が強く印象に残りました。この法律に反対の新聞でも、安全保障の分野で秘密として保護しなければならない情報があること自体は多くの大半の新聞が容認しています。特定秘密保護法を廃止することを考えるのなら、まずはその考え方を疑うことが必要ではないかと、個人的には感じています。

※東京新聞・10日付社説「特定秘密保護法施行 権力が暴走しないか」

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014121002000126.html

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 以下に備忘を兼ねて、各紙の主な記事の見出しを書き留めておきます。いずれも東京本社発行の最終版です。

▼朝日新聞

1面トップ「特定秘密法が施行」「安全保障の機密もれに厳罰」

1面「情報隠しの懸念残る 記者の視点」

2面・時時刻刻「秘密法 消えない不安」/「施行準備 省庁手探り」「県警の情報も対象・取扱者決まらず」/「情報不足 戸惑う企業」「秘密線引き未定・運用基準あいまい」/「適正評価に批判」「『患者との信頼崩れる』

2面「乱用防ぐ仕組み弱い」曽我部真裕・京都大教授(憲法学

15面(オピニオン)「インタビュー 秘密法 密約事件の教訓」元検事総長 松尾邦弘さん「従来法で十分/真相に迫る行為/重罰にしていいか」

第3社会面「『国民の目と耳 塞ぐ』」「『知る権利 制約する』」「廃止求める声明相次ぐ」

社説「衆院選 秘密法施行 『不特定』の危うさ」

▼毎日新聞

1面トップ「秘密保護法 施行」「『知る権利』侵害の恐れ」

2面「市民からチェック 困難に」

26面・1ページ特集「秘密保護法 懸念なお」「きょう施行」/「1監視機関 弱い権限」「2秘密指定の範囲あいまい」「3内部通報者の保護不十分」「4国会の審査強制力欠く」/今こそ言いたい「『軍機保護法』と類似」荻野富士夫・小樽商科大教授(61)/「大切なのはこれからだ」杉田敦法政大教授(55)/「権力の網が空からじりじり」石丸次郎・アジアプレス共同代表(51)/「『適正評価』の選別は非現実的」富田三樹生・日本精神神経学会委員長(71)/「毎月6日、反対を『ヒョウ明』」谷口真由美・全日本おばちゃん党代表代行(39)

社会面トップ「『基地情報出なくなる』」「市民団体 公開請求文書 黒塗り」※沖縄厚木横須賀

社会面「適正評価の問題点は」「思想差別 つながるおそれ」なるほドリ/「『市民の圧力情報公開推進』専門家らシンポ」※情報公開クリアリングハウス主催

社説「秘密保護法 施行 息苦しい社会にするな」解除後には一律公開を/内部通報者を保護せよ

▼読売新聞

1面中「特定秘密保護法 施行」「適正運用へ監視ポスト」/法律の骨子

13面・1ページ特集「特定秘密保護法きょう施行」「Q特定秘密とは 安全保障に支障与える情報」/「Qなぜ必要か 脱『スパイ天国』へ法整備」/「Qどのように秘密守るか 明確に区別 厳重に管理」/「Q『知る権利』守られるか 正当な取材妨げず」/「Q一般人への処罰は 例外的な場合除き対象外」/特定秘密保護法の要旨・運用基準の要旨

第2社会面「特定秘密運用ルール 警察庁が訓令を発表」

社説「秘密保護法施行 他国との情報共有に不可欠だ」

日経新聞

3面「機密、知る権利と両立カギ」「特定秘密法施行 40万件超集約」「安保テロ阻止 国際連携に前進

3面「監視機関、権限弱く」「情報公開制度の拡充必要」

3面・きょうのことば「特定秘密保護法 機密漏洩の公務員らに厳罰」

社説「民主主義の土台たる『知る権利』を守れ」

▼産経新聞

2面「特定秘密保護法 施行」「『知る権利』保障」「防衛・テロ情報、関係国共有」

第2社会面「『諸外国並み態勢整う』」「運用チェックは不可欠」/「原子力規制委『指定しない』」/「毎年2回以上保護状況検査 警察庁が訓令」

※社説なし

▼東京新聞

1面トップ「外務・防衛6万件指定」「秘密保護法が施行」「『知る権利侵害』根強く」/「広すぎる対象範囲」

1面「戦争の最初の犠牲者は真実」瀬口晴義・社会部長

2面「情報公開は足踏み」「・黒塗り『一部開示』多数」「・1件300円かさむ手数料」

2面「公布から1年『施行』で効力」「『しこう』『せこう』読み方両方」

3面・核心「派兵根拠 見えぬ恐れ」「集団的自衛権と連動」「国会の監視にも壁」

28・29面(特報面)「公文書隠蔽 歴史逆戻り」「権力乱用にも懸念強く」「『情報公開求め続けることが大切』」

社会面トップ「『戦争も統制も嫌』」「秘密法施行 各地で抗議」/「官邸前『日本は学んだはず』沖縄出身学生・元山仁士郎さん」/「『次第に無関心…怖い』」情報公開推進NPO辻利夫さん/「『体が拒否反応示した』」「牧師の会」共同代表・朝岡勝さん

社会面「金沢弁護士会 反対活動中止」「埼玉ではデモ実施」

第2社会面「今こそ権力監視を」/「安全保障 集団的自衛権 判断奪う」シンクタンク事務局長 猿田佐世弁護士/「情報公開 秘密解除の仕組み 手薄」専修大 山田健太教授

第2社会面「国民の目と耳と口ふさぐ/表現の自由脅かす」「人権団体など抗議」

社説「特定秘密保護法施行 権力が暴走しないか」立法の必要性は「弱い」/軍機保護法の過去が/国民を統制する道具