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2014年-07月-16日

琉球新報「闇から闇に葬るつもりか」〜備忘・沖縄密約訴訟の最高裁判決

 1972年の沖縄返還をめぐる日米間の密約文書の開示を元毎日新聞記者の西山太吉さんらが求めた訴訟で最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)が7月14日、判決を言い渡しました。一審の開示命令を取り消した二審東京高裁判決を支持する内容で、西山さんらの敗訴が確定です。その中で第2小法廷は、行政機関が「存在しない」としている文書の開示を求めるには、開示を求める側がその存在を証明しなければならないとする判断を示しました。あまりにも行政機関=公権力に寄った判断です。

※47news=共同通信「沖縄『密約文書』不開示が確定 西山元記者らの上告棄却」2014年7月14日

http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014071401001593.html

 1972年の沖縄返還をめぐる日米間の密約文書の開示を元毎日新聞記者西山太吉さん(82)らが求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は14日、一審の開示命令を取り消した二審東京高裁判決を支持し、原告側の上告を棄却した。西山さんらの敗訴が確定した。

 最高裁は、密約文書が破棄された可能性を認めた二審の判断を維持した上で、行政機関が「存在しない」とする文書は、開示を請求する側がその存在を証明しない限り公にできない、との初判断を示した。

 文書公開を求める市民の側に重い立証責任を課し、情報を管理する行政側の裁量を広く認める判断。

【写真説明】最高裁判決を1面トップで報じた15日付の琉球新報紙面

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 判決を耳にしてすぐに思ったのは、特定秘密保護法との関連です。同法をめぐって指摘され続けていることの一つは、何が特定秘密か、それ自体が秘密にされる恐れです。公文書の開示を求めようとすれば、その存在をまず立証しなければならないとする今回の最高裁の判断は、国家による秘密の壁を一層厚くする方向にしか作用しなくなるのではないかとの危惧を覚えます。

 すでに多くの新聞が社説などでこの最高裁の判断を批判しています。ここでは、密約の舞台となった沖縄の沖縄タイムスと琉球新報の社説の一部を引用して書き留めておきます。

※沖縄タイムス社説「[密約『不開示』確定]文書破棄を認めるのか」2014年7月15日

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=76614

 一、二審では「開示請求する側が過去の文書作成を証明した場合は、行政側が廃棄を立証しない限り、文書は保管されていたと考えられる」としていた。最高裁の判断は、行政が文書を破棄することを容認したものである。

 都合の悪い情報を伏せる政府の不当性を追及し、責任の所在を明らかにするのが、筋ではないか。公開を求める市民の側に重い立証責任を課すことは本末転倒と言わざるを得ない。

(中略)

 そもそもこれらの密約文書は、琉球大学我部政明教授が米国立公文書館で発見し存在が証明されている。加えて密約を認めた吉野文六元外務省アメリカ局長が法廷で証言もしている。

 一審では、これらの事実を基に国が1969〜71年に文書を作成し保有していたと認定し「探したが見つからなかった」とする国側主張に対し、調査の不十分さを指摘。「国民の知る権利をないがしろにする対応は不誠実」とし、保有が失われた事実は認められないと結論づけていた。正論である。

 一、二審ともに密約文書が「第一級の歴史的価値を有する極めて重要なもの」との認識を示している。公文書管理法は「公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とうたっている。

 これに逆行するのが年内にも施行される特定秘密保護法である。「外交上、不利益を及ぼす恐れがある機密」などとされ、秘密指定されれば半永久的に公開されない可能性もある。

 最高裁が無責任きわまる理屈で、外交文書を闇に葬るつもりなら、歴史に対する冒涜(ぼうとく)である。

※琉球新報社説「密約文書不開示 闇から闇に葬るつもりか」2014年7月16日

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-228605-storytopic-11.html

 判決は、密約文書の存在を立証する責任を、機密文書に自由に接することができない原告側に負わせた。全く理解できない。本来なら文書の存在を容易に確認できる国側が明らかにすべきだ。国にとって都合の悪い文書を闇から闇に葬ることに司法が手を貸したに等しい。

(中略)

 今回の訴訟で情報公開請求の対象となったような外交文書は、年内にも施行予定の特定秘密保護法で秘密指定されるとみられる。この法律は組織的な情報隠しを禁じる条項がないから、秘密がますます拡大する可能性がある。

 秘密指定すれば永久に解除されないような事態を招いてはならない。今後、重要な外交文書の保全と公開のルールを厳密に定めなければならない。

 民主主義が機能不全を起こすとき、最初に犠牲になるのは真実だ。知る権利や言論の自由を狭めてはならない。国は国民の知る権利にきちんと応じる責務があることを肝に銘じるべきだ。

2014年-07月-13日

続・伊丹万作「戦争責任者の問題」

 このところ、昨年5月にこのブログに書いた過去記事がぽつぽつと読まれているようです。戦前に活躍し1946年9月に亡くなった映画監督脚本家の伊丹万作が、46年8月に発表した「戦争責任者の問題」という文章のことを書いた記事です。伊丹は、やはり映画監督や俳優として活躍した伊丹十三さんの父親です。

※伊丹万作「戦争責任者の問題」と憲法96条〜「だまされる罪」と立憲主義(2013年5月7日)

http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130507/1367881891

 「戦争責任者の問題」は著作権保護期間を過ぎた作品を集めたネット上の図書館青空文庫」に収録されていて、だれでも自由にアクセスできます。全文で7000字ほどです。

※伊丹万作「戦争責任者の問題」

http://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html


 「戦争責任者の問題」で伊丹は、日本の敗戦後に多くの人が「今度の戦争でだまされていた」と言っていることを挙げ、「多くの人はだましたものとだまされたものとの区別は、はつきりしていると思つているようであるが、それが実は錯覚らしいのである」と指摘します。「一人の人間がだれかにだまされると、次の瞬間には、もうその男が別のだれかをつかまえてだますというようなことを際限なくくりかえしていたので、つまり日本人全体が夢中になつて互にだましたりだまされたりしていたのだろうと思う」というわけです。そして以下のように指摘しています。

 だまされたということは、不正者による被害を意味するが、しかしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはないのである。だまされたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。

 しかも、だまされたもの必ずしも正しくないことを指摘するだけにとどまらず、私はさらに進んで、「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。

 敗戦から1年の時点で伊丹は「つまりだますものだけでは戦争は起らない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起らないということになると、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)当然両方にあるものと考えるほかはないのである」と看破していました。

 それから今年は68年。7月1日に安倍晋三政権が、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更を閣議決定しました。その後のマスメディア各社の世論調査で、内閣支持率は下落の傾向がみられましたが、それでも40%台の半ばから後半という支持率は、わたしには依然として高い支持が続いているように思えます。

 昨年5月に伊丹の「戦争責任者の問題」のことを書いた当時は、憲法96条で定められた憲法改正の発議要件の改正が論議されていました。批判が強かったためか、安倍首相は96条改正のことはその後、口にしなくなり、代わって憲法解釈の変更が前面に出てきました。そしてあれよあれよという間に閣議決定に進みました。昨年5月と状況は変わりましたが、伊丹が遺した「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」という言葉は、考えようによってはかえって現在の状況への直接的な警句のように思えます。「戦争責任者の問題」への関心がわずかずつでも増えていることは、伊丹の警句が今日的な命脈を持ち始めたことを示しているのかもしれない―そんなことも考えています。

2014年-07月-07日

集団的自衛権の行使容認、評価せずが多数〜閣議決定後の世論調査

 集団的自衛権の行使容認へ憲法解釈を変更した7月1日の安倍晋三内閣の閣議決定後に行われた共同通信読売新聞朝日新聞の世論調査の結果が報じられています。各調査それぞれに設問のたてかた、設問の文言も異なるのですが、それでも大きな共通点として、内閣支持率が過半数を割り、集団的自衛権の行使容認を決めたことに対しても、評価しないとの趣旨の回答が半数以上を占めています。

 備忘を兼ねて記録しておきます。

【内閣支持率】

▽共同通信(7月1〜2日実施)支持47・8% 不支持40・6%

※前回(6月21〜22日)から支持は4・3ポイント下がり、不支持は7・6ポイント上昇

▽読売新聞(7月2〜3日実施)支持48%   不支持40%

※前回(5月30日〜6月1日)から支持は9ポイント下がり、不支持は9ポイント上昇

▽朝日新聞(7月4〜5日実施)支持44%   不支持33%

※前回(6月21〜22日)から支持は1ポイント上昇、不支持は変わらず

【集団的自衛権の行使容認】

▽共同通信:「賛成」34・6%、「反対」54・4%

※質問:日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本が攻撃されたとみなして一緒に反撃する「集団的自衛権」について、政府はこれまで「憲法解釈上、行使できない」としてきましたが、安倍内閣は憲法解釈を変更して行使を容認する閣議決定をしました。あなたは、この行使容認に賛成ですか、反対ですか。

▽読売新聞:「評価する」36%、「評価しない」51%

※質問:日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして反撃する権利、「集団的自衛権」についてお聞きします。政府は、憲法解釈を見直して、国民の権利が根底からくつがえされる明白な危険がある場合に、集団的自衛権を必要最小限の範囲で使うことができると決めました。集団的自衛権を限定的に使えるようになったことを、評価しますか、評価しませんか。

▽朝日新聞:「よかった」30%、「よくなかった」50%

※質問:集団的自衛権についてうかがいます。集団的自衛権とは、アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきましたが、安倍政権は集団的自衛権を使えるようにしました。集団的自衛権を使えるようにしたことはよかったと思いますか。よくなかったと思いますか。


 ちなみに読売新聞は集団的自衛権については、前回(5月30日〜6月1日)と前々回(5月9日〜11日)の調査では回答の選択肢を「全面的に使えるようにすべきだ」「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」「使えるようにする必要はない」の三つ用意していました。結果は前回がそれぞれ11%、60%、24%、前々回は8%、63%、25%でした。前々回の調査結果を伝える当時の記事では前二者を合計して「行使容認71%」と位置付けていました。今回は「集団的自衛権を限定的に使えるようになったことを、評価しますか、評価しませんか」と尋ねた結果、「評価しない」が51%でした。

 今回の調査結果に対して共同通信の記事は簡潔に「安倍晋三首相が踏み切った行使容認に国民が納得していない実態が浮かんだ」と指摘しています。

※47news=共同通信「内閣支持率47%に下落 集団的自衛権反対54%」

 http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070201001999.html

 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受け、共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は47・8%で、前回6月から4・3ポイント下落した。不支持率は40・6%と第2次安倍政権としては初の40%台に上昇し、支持率との差は7・2ポイントにまで接近した。行使容認への反対は54・4%で半数を超え、賛成は34・6%だった。安倍晋三首相が踏み切った行使容認に国民が納得していない実態が浮かんだ。

 支持率50%割れは、特定秘密保護法立直後の昨年12月調査以来。6月調査の不支持率は33・0%だった。

【写真説明】共同通信の世論調査結果を伝える7月3日付の琉球新報

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2014年-07月-04日

ブロック紙、地方紙社説は批判が圧倒〜集団的自衛権容認の閣議決定の報道

 集団的自衛権の行使容認へ憲法解釈を変更した7月1日の安倍晋三内閣の閣議決定に対し、ブロック紙や地方紙が社説でどのように論評しているか、2日付紙面の掲載分を対象にネットで調べてみました。確認できた28紙のうち、閣議決定を批判する内容が26紙でした。ほかに見出しのみ確認できた新聞が2紙あります。見出しから察するに、閣議決定を批判する内容だと思います。閣議決定を支持する内容は2紙でした。ブロック紙、地方紙のすべてを網羅しているわけではなく、自社サイトで社説を公開している新聞だけに限った調査ですが、特定秘密保護法成立の際などと同じく批判が圧倒していると言っていいと思います。以下に、それぞれの見出しを書き留めておきます。

【閣議決定を批判】

北海道新聞「集団的自衛権の行使容認 日本を誤った方向に導く」結論だけを置き換え/集団安保にも道開く/駆け付け警護可能に

河北新報「集団的自衛権/重い選択、あまりに軽く」

東奥日報「国民に改正の是非を問え/憲法解釈変更」

デーリー東北「集団的自衛権閣議決定 専守防衛の国是揺らぐ」

秋田魁新報自衛権閣議決定 9条踏みにじる暴挙だ」

岩手日報「自衛権の解釈改憲 主権者の意思を顧みよ」

茨城新聞「集団的自衛権容認 国のありよう託せない」

神奈川新聞「集団的自衛権閣議決定 首相説明責任果たせ」

信濃毎日新聞「安保をただす 憲法解釈変更 政府の暴走を許すな」自衛と言いながら/安全に資するのか/法案に「待った」を

新潟日報「憲法解釈変更 平和国家の根幹が揺らぐ」行使の範囲が広がる/期限ありきの協議だ/中身よりも形を重視

中日新聞「9条破棄に等しい暴挙 集団的自衛権容認」軍事的な役割を拡大/現実感が乏しい議論/国会気概を見せよ ※東京新聞と同一の内容

福井新聞「集団的自衛権行使容認 戦う国がなぜ安全なのか」不戦の誓いどこに/つぎはぎの3要件/国民と乖離する国

京都新聞「自衛権閣議決定  9条空洞化の責任は重大だ」歯止めなき新3要件/安保条約の変質招く/「巻き込まれ」現実に

神戸新聞「集団的自衛権/憲法を骨抜きにする閣議決定」国民不在の解釈改憲/民主主義を取り戻す

山陽新聞「集団的自衛権 これで歯止めかかるのか」拡大解釈の懸念/拙速さ際立つ/国民に向き合え

中国新聞「集団的自衛権を容認 平和主義を踏みにじる」将来に禍根残す/むしろ緊張招く/「抑止力」に疑念

山陰中央新報「集団的自衛権容認/国民的議論尽くすべき」

愛媛新聞「集団的自衛権閣議決定 平和国家を危うくする暴挙」

徳島新聞「自衛権閣議決定(上) 将来に禍根を残す暴挙だ」※7月3日付に「自衛権閣議決定(下) 主権者軽視とは何事か」

高知新聞「【集団的自衛権 安倍政治を問う】『限定的容認』の危うさ」

西日本新聞「安倍政治を問う 試される民主主義の底力」開店休業状態の国会/健全な批判勢力こそ

宮崎日日新聞「集団的自衛権容認 急がず国民的議論が必要だ」「歯止め」はあいまい/専守防衛からの逸脱

佐賀新聞「集団的自衛権行使容認」

南日本新聞「[集団的自衛権] 禍根を残した国民不在」「[集団的自衛権] 憲政に汚点残さないか」

沖縄タイムス「[集団的自衛権容認]思慮欠いた政権の暴走」

琉球新報「解釈改憲閣議決定 日本が『悪魔の島』に 国民を危険にさらす暴挙」「限定」の偽装/テロの標的に

大分合同新聞「憲法解釈を変更 国ありよう託せない」※見出しのみ確認

熊本日日新聞「集団的自衛権 『9条』の信頼捨てるのか」※見出しのみ確認


【閣議決定を支持】

福島民友新聞「集団的自衛権/安保政策歴史的転換点だ」

北國新聞「集団的自衛権 法整備へ理解深めたい」


 以下に、印象に残った社説を書き留めておきます。

▼秋田魁新報「自衛権閣議決定 9条踏みにじる暴挙だ」

 そもそも今回の閣議決定は、憲法尊重擁護義務を定めた99条に反するのではないか。条文の内容は、主権者である国民が大臣ら公務員に憲法を守るように求めている。根底には国家権力の制御を目的とする立憲主義があり、9条を空文化する憲法解釈は立憲主義そのものを損なう。

 このような解釈がこのまま許されるのであれば、改憲という正当な手続きを経ずして、9条以外の条文も国家権力が都合よく書き換えることが事実上可能になる。

 憲法改正問題をめぐるマスメディアの報道でも、99条はあまり触れられてこなかったと感じますが、公務員に憲法尊重擁護の義務を課したこの条文は改憲問題の急所だと考えています。条文は「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と簡潔に規定しています。


▼京都新聞「自衛権閣議決定  9条空洞化の責任は重大だ」

 集団的自衛権にこだわる理由について安倍首相は、日米安全保障条約で米国が日本の防衛義務を負う一方、日本には米国を守る義務がないことを挙げ「米国民の理解を得られない」とした。しかし、日本が提供する基地と巨額の「思いやり予算」は、米国にとっても不可欠だ。現行の日米安保が片務的という見方は当たらない。

 集団的自衛権が行使できることで、日米同盟北大西洋条約機構(NATO)や、かつての共産圏のワルシャワ条約機構のような本格的な軍事同盟に変質することになる。その危うさは、集団的自衛権を大義名分とした過去の軍事介入を振り返れば明らかだ。

 南ベトナム政府の要請で米国が介入したベトナム戦争(1965年)、「プラハの春」を終わらせた旧ソ連東欧軍によるチェコ介入(68年)、旧ソ連によるアフガニスタン侵攻(79年)、9・11テロに報復するアフガニスタン戦争(2001年)などだ。

 アフガニスタンには米国以外に約50カ国が派兵し、死者は千人を超える。もし自衛隊派遣されていたら、日本の若者が血を流したであろうことは想像に難くない。

 在日米軍基地と「思いやり予算」はそれはそれで問題を抱えていると考えていますが、それはさておき「現行の日米安保が片務的という見方は当たらない」との指摘は重要だと感じます。ベトナム戦争やチェコ介入などの前例は、ほかの社説も指摘しています。集団的自衛権がどのように行使されてきたか、近現代史を踏まえた視点は重要だと思います。


▼神戸新聞「集団的自衛権/憲法を骨抜きにする閣議決定」

 「批判を恐れず、平和への責任を行動に移す」と、首相は会見で胸を張った。首相が思い描くのは全てがトップダウンで決まる社会だと神戸女学院大の内田樹名誉教授はみる。「デモクラシーは邪魔だ、立法府はいらない」というのが本音だろうと首相の政治観を分析する。

 昨年末の特定秘密保護法の強行可決も、そうした認識の表れか。これからも数の力で国民が望まない政策を推し進めるのであれば、歯止めとなるのは民意しかない。

 安倍晋三首相の政治観、憲法観の問題は要因として小さくないと感じます。


▼沖縄タイムス「[集団的自衛権容認]思慮欠いた政権の暴走」

 集団的自衛権の容認を閣議決定したこの日、名護市辺野古では米軍普天間飛行場の移設に向けた工事が着手された。閣議決定を受けて米軍と自衛隊の役割を定めた防衛協力指針(ガイドライン)の年内改定に向けた作業も加速しそうだ。集団的自衛権の行使容認、ガイドライン見直し、辺野古移設の3点セットによって沖縄の軍事要塞(ようさい)化が進むのは間違いない。沖縄が標的になり、再び戦争に巻き込まれることがないか、県民の不安は高まるばかりである。

▼琉球新報「解釈改憲閣議決定 日本が『悪魔の島』に 国民を危険にさらす暴挙」

 ベトナム戦争当時、米軍の爆撃機は沖縄から飛び立ち、沖縄はベトナムの民から「悪魔の島」と呼ばれた。米軍占領下にあり、日本国憲法適用外だったからだ。

 米国の要請によりベトナム戦争に加わった韓国は、ベトナム国民から根深い怨嗟(えんさ)の的となった。当時、日本は憲法の歯止めがあったから参戦せずに済んだが、今後は日本中が「悪魔の島」になる。恨みを買えば東京が、原発が、ミサイルやテロの標的となろう。それで安全が高まると言えるのか。

 安倍晋三首相は「イラク戦争湾岸戦争に参加するようなことはない」と強調するが、日本は戦後ただの一度も米国の武力行使に反対したことはない。徹頭徹尾、対米従属だった国が、今後は突然、圧力をはねのけるようになるとは、まるで説得力を欠いている。

 運転手がどこへ行こうとしているかも分からず、口出しもできず、助手席に乗るようなものだ。

 他国からすれば無数の米軍基地が集中する沖縄は標的の一番手だろう。米軍基地が集中する危険性は、これで飛躍的に高まった。

 沖縄の新聞にはいつも学ぶことがたくさんあります。

【写真説明】琉球新報の2日付の紙面が自宅に届きました。琉球新報は閣議決定当日の1日には、輪転機で印刷した号外も配布しています。

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2014年-07月-03日

集団的自衛権容認を閣議決定、在京各紙の報道の記録〜朝日「9条崩す解釈改憲」、産経「『積極的平和』へ大転換」

 政府は7月1日の臨時閣議で、いわゆる集団的自衛権の行使を容認することを決めました。5月15日に安倍晋三首相憲法解釈を変更する方針を自ら表明して1カ月半。批判や異論が根強い中での強行と、わたしの目には映ります。

※47news=共同通信「集団的自衛権の行使容認 憲法解釈変更を閣議決定」2014年7月1日

http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070101001591.html

 政府は1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更し、自国が攻撃を受けていなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使を容認すると決定した。日本の存立が脅かされるなどの要件を満たせば、必要最小限度の武力行使は許されるとの内容だ。関連法が整備されれば、密接な関係がある国への攻撃を阻止する目的で、自衛隊は海外での戦争に参加可能となる。1954年の自衛隊発足以来堅持してきた専守防衛理念を逸脱しかねない安全保障政策の大転換といえる。

 安倍晋三首相は会見で「万全の備えが日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持っている」と述べた。

 翌2日付の新聞各紙もこのニュースを1面から総合面、政治面、社会面にかけて大きく扱っています。東京都内発行の6紙(朝日、毎日、読売日経、産経、東京)の社説では、朝日、毎日、東京がこの閣議決定に明確に反対、読売、産経は明確に支持を表明しています。日経は基本的に支持しながら、手続きの進め方が性急だったのではないかと指摘しています。マスメディアの論調は割れています。各紙がどのように報じたか、1面の本記のリード部をそれぞれ主な見出しとともに書き留めておきます。いずれも東京本社発行最終版の紙面です。

朝日新聞

1面トップ「9条崩す解釈改憲」「集団的自衛権 閣議決定」「海外で武力行使容認」「首相『新3要件、歯止め』」

 安倍内閣は1日夕の臨時閣議で、他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権の行使を認めるために、憲法解釈を変える閣議決定をした。歴代内閣は長年、憲法9条の解釈で集団的自衛権の行使を禁じてきた。安倍晋三首相は、その積み重ねを崩し、憲法の柱である平和主義を根本から覆す解釈改憲を行った。1日は自衛隊発足から60年。第2次世界大戦での多くの犠牲と反省の上に立ち、平和国家の歩みを続け、「専守防衛」に徹してきた日本が、直接攻撃されていなくても他国の戦争に加わることができる国に大きく転換した日となった。

毎日新聞

1面トップ「集団的自衛権 閣議決定」「9条解釈を変更」「戦後安保の大転換」

 政府は1日、臨時閣議を開き、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認すると決めた。集団的自衛権は自国が攻撃を受けていなくても、他国同士の戦争に参加し、一方の国を防衛する権利。政府は1981年の政府答弁書の「憲法上許されない」との見解を堅持してきたが、安全保障環境の変化を理由に容認に踏み切った。自国防衛以外の目的で武力行使が可能となり、戦後日本の安保政策は大きく転換する。

読売新聞

1面トップ「集団的自衛権 限定容認」「安保政策を転換」「憲法解釈 新見解 閣議決定」「首相『戦闘参加はない』」

 政府は1日夕、首相官邸で臨時閣議を開き、憲法解釈上できないとされてきた集団的自衛権の行使を、限定容認する新たな政府見解を決定した。国連平和維持活動(PKO)などで自衛隊の活動分野を広げ、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処能力も高める。安倍首相記者会見で、日本が再び戦争をする国になることはないと断言するとともに、中国の台頭など緊迫する東アジア情勢を踏まえ、抑止力の向上につながると強調した。新政府見解で、戦後日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えた。

日経新聞

1面トップ「集団的自衛権の行使容認」「憲法解釈変更を閣議決定」「戦後の安保政策転換」「首相『必要最小限で』」

 政府は1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるようにするため、憲法解釈の変更を決定した。行使を禁じてきた立場を転換し、関連法案成立後は日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようになる。「専守防衛」の基本理念のもとで自衛隊の海外活動を制限してきた戦後の安全保障政策は転換点を迎えた。

産経新聞

1面準トップ「『積極的平和』へ大転換」「集団的自衛権 閣議決定」「解釈変更 行使を容認」

※1面トップは「対北制裁一部解除へ」

 政府は1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。安倍晋三首相は閣議後に記者会見し、「国民の命、平和な暮らしを守るため、切れ目のない安全保障法制の整備が必要だ。世界の平和と安定に日本はこれまで以上に貢献する」と述べ、「積極的平和主義」に基づく安全保障政策の転換であることを強調した。

東京新聞

1面トップ「戦争の歯止め あいまい」「集団的自衛権 安倍内閣が決定」「『明白な危険』自公ズレ」

 安倍内閣は一日の臨時閣議で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を禁じてきた憲法解釈を変え、行使を認める新たな解釈を決定した。自衛権の発動を判断する新たな「武力行使の三要件」の表現は抽象的。解釈次第で海外で自衛隊が活動する範囲が拡大していく懸念があり、戦争への歯止めはあいまいだ。戦後六十九年にして、九条象徴される平和憲法は最大の危機を迎えた。

 地方紙を中心に配信している共同通信の記事は、冒頭に引用した通りです。

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 各紙の社説の見出しは以下の通り。小見出しも書き留めておきます。毎日新聞は1面に社説を掲載しました。

▼朝日新聞「集団的自衛権の容認―この暴挙を超えて」解釈改憲そのもの/自衛隊送り出す覚悟/9条は死んでいない

▼毎日新聞「歯止めは国民がかける」

▼読売新聞「集団的自衛権 抑止力向上へ意義深い『容認』」「日米防衛指針に適切に反映せよ」「解釈改憲」は的外れだ/自衛隊恒久法の検討を/国民の理解を広げたい

▼日経新聞「助け合いで安全保障を固める道へ」衰える米国の警察力/行使基準もっと熟議を

▼産経新聞「集団的自衛権容認 『助け合えぬ国』に決別を」「日米指針と法整備へ対応急げ」抑止力が平和の手段だ/9条改正の必要は不変

▼東京新聞「9条破棄に等しい暴挙 集団的自衛権容認」軍事的な役割を拡大/現実感が乏しい議論/国会気概を見せよ


 各社の政治部長編集委員らの署名記事も載っています。

▼朝日新聞1面:三浦俊章編集委員「『強兵』への道 許されない」(ワッペン「日本はどこへ 集団的自衛権」1)

▼毎日新聞第2社会面:滝野隆浩編集委員「『軍隊』へ変容 始まる」

▼読売新聞1面:田中隆之政治部長「真に国民を守るとは」

▼日経新聞1面:池内新太郎政治部長「アジア安定の見取り図を」

▼産経新聞1面:有元隆志政治部長「21世紀の日本のかたち示す時」

▼東京新聞1面:山田哲夫論説主幹「戦後69年 憲法9条の危機」「闘いはこれからだ」/社会面:瀬口晴義社会部長「戦争への傾斜止めよう」


 各社ごとに論調が分かれるような政治テーマでは、社会面の報道にもその違いが反映される傾向があります。昨年秋以降の特定秘密保護法案をめぐる報道では、法案に反対の新聞は連日、社会面で各地の反対運動の動きを報じたのに対し、法案を支持、ないしは理解を示す新聞の社会面の関連記事は極めてわずかでした。その中で今回は、安倍政権の方針を支持している読売新聞が第1社会面で、首相官邸前の抗議行動を写真とともに伝えているのが目を引きました。産経新聞も第2社会面の記事で官邸前の抗議行動に触れています。

 各紙の社会面の主な記事の見出しを書き留めておきます。

▼朝日新聞

社会面見開き見出し「不戦 叫び続ける」「国民 守れるのか」

第1社会面「『戦争は遠い話』『びびってます』若い世代は(ドキュメント)」/「『限定的でも引きずりこまれる』元兵士らは」

第1社会面「列島 抗議のうねり」

第2社会面「『2世3世が語るしかない』」「沖縄戦で自決 大田中将の子孫」

第2社会面「最大の抑止 非戦のはず」加藤陽子東大教授(日本近現代史)/「行使判断、時の内閣任せ」小池政行日本看護大教授(国際人道法)

▼毎日新聞

社会面見開き見出し「自衛隊60年岐路」「戦い死ぬリアル」

第1社会面「『命令ならば行く』」

第1社会面「抗議の渦、熱く広く(官邸前)(各地で)」/「母と子の図また(首相会見)」

第1社会面「『戦争への意思表示だ』」「辺野古 移設着工に県民、憤り」

第1社会面「『安保 変化の節目』小野寺防衛相

第2社会面「世論割る決定の先」「『軍隊』へ変容 始まる」滝野隆浩編集委員

第2社会面「7・1ドキュメント」

▼読売新聞

社会面見開き見出し「自衛隊 気引締め」「国際社会存在感

第1社会面「『政府責任とてつもなく重い』」(創設60年の転機/新たな訓練も/在外邦人は歓迎)

第1社会面「『デメリット もっと説明を』街の声」

第2社会面「『創る』平和実現」「安全保障広い視野で」「憲法の存在無視」(明石康・元国連事務次長、村井友秀・防衛大教授、小林節慶応大名誉教授)

▼日経新聞

第1社会面「国どう守る 思い交錯」「『世界の中で責任』」「『テロ標的を懸念』」(「法の番人」/自衛隊OB/国際NGO)

第1社会面「メリット曖昧・平和もたらす・投票で是非を」「集団的自衛権 街の声」

第2社会面「『戦争あり得ぬ』」「首相会見、何度も強調」

第2社会面「『憲法ひっくり返した』」「大江健三郎さんら会見」/「『容認は違憲日弁連が声明」

▼産経新聞

第2社会面「『やっと自立国家に…』」「『国民を危険にさらす』」(街の声)/「識者からも賛否」(古庄幸一・元海上幕僚長、「戦争をさせない1000人委員会」大江健三郎さん)

▼東京新聞

社会面見開き見出し「『反対』あきらめない」「平和な暮らし守れ」

第1社会面「若者も声『今日が出発点』」「首相会見わずか24分」

第1社会面「『改憲超えた壊憲だ』」「地方議員249人連携、抗議」

第1社会面「『平和憲法ひっくり返した』」「大江さんら批判」/「戦後最悪の暴挙 ジャーナリスト会議」/「日弁連会長『違憲』抗議」

第1社会面「戦争への傾斜止めよう」瀬口晴義社会部長

第2社会面「子育て 戦争のためじゃない 豊島の母親」「ここが攻撃されるかも 怒る沖縄」/「『武力行使さらに拡大も』 法制局元長官」/「『後方待機は詭弁』 自衛隊」/「『政治家分かっていない』 空襲体験者ら」

第2社会面「日本国憲法前文」「第9条」※条文を囲みで掲載


 ブロック紙、地方紙も同じく2日付の紙面で、今回の閣議決定を大きく報じています。ネット上の各紙サイトで公開されている社説をチェックし目にする限りでのことですが、やはりこれまでの傾向と同じく、ブロック紙、地方紙は批判的な論調が圧倒しています。後刻、このブログでも紹介しようと思います。


 なお、閣議決定の直前にマスメディアが行った世論調査の結果が2件、報じられていました。6月27〜28日の毎日新聞の調査では、集団的自衛権の行使に「賛成」32%、「反対」58%でした。日経新聞とテレビ東京が6月27〜29日に行った調査では、集団的自衛権を「使えるようにすべきだ」34%、「使えるようにすべきではない」50%でした。閣議決定当日の7月1日から翌2日にかけて共同通信が行った世論調査では、行使容認に「反対」54・4%、「賛成」34・6%です。

※47news=共同通信「内閣支持率47%に下落 集団的自衛権反対54%」

http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070201001999.html

 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受け、共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は47・8%で、前回6月から4・3ポイント下落した。不支持率は40・6%と第2次安倍政権としては初の40%台に上昇し、支持率との差は7・2ポイントにまで接近した。行使容認への反対は54・4%で半数を超え、賛成は34・6%だった。安倍晋三首相が踏み切った行使容認に国民が納得していない実態が浮かんだ。

 支持率50%割れは、特定秘密保護法立直後の昨年12月調査以来。6月調査の不支持率は33・0%だった。

 集団的自衛権の問題に関しては、安倍首相の方針に世論の支持があると言えるような状況では到底ありません。

 閣議決定を伝える全国紙各紙の報道を読み比べ、マスメディアのありようとして思うことがあります。政治家ならば、自らの政治信条に基づいて、世論の多数の支持を得ていない政策でも実行を図ることは、そのことの是非は別として選択肢としてはありうるかもしれません。しかし存立のよりどころを社会の人々の信頼に求めるべきマスメディアは、社会の中で十分に理解が進んでいるか、支持が広がっているかを見極め、政治の手続き面を監視するのも責務だと思います。仮に政策の目的は正しいと考えたとしても、だから手続き、手法は問わないということでいいはずがありません。その意味で、日経新聞の社説が集団的自衛権の行使容認自体には理解を示しつつ、手続き面に疑義を指摘していることが印象に残ります。

 集団的自衛権が現実的に行使可能になるまでは、関連法の改変など今後さらに多くの手続きを踏まなければなりません。閣議決定で終わりではなく、その一つ一つの手続きを厳格に重ねていっても、なお民意の理解が深まらず、支持が広がらないのだとしたら、マスメディアはその民意とどう向き合うのかが問われることになるのだと思います。