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2017年-05月-24日

またも世論が押し切られた―「共謀罪」法案が衆院通過

 既にマスメディアでも大きく報道されている通り、かつての「共謀罪」と本質的には変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正法案が5月23日、衆院を通過しました。本会議自民公明両党に加え日本維新の会が賛成。民進、共産両党が反対し、自由社民両党は本会議を欠席しました。今後は参院で審議されます。採決そのものに民進、共産各党などが反対しましたが、与党が押し切りました。19日の衆院法務委員会に続いて、採決の強行が繰り返されました。

 ここでは、19日の委員会採決から23日の衆院本会議までの間の週末に実施された世論調査の中から、「共謀罪」法案に関連する結果を質問文とともに書きとめておきます。

 目に止まったのは毎日新聞社共同通信社日本テレビ、ANNがそれぞれ実施した計4件。質問の尋ね方は様々ですが、賛否を聞いた3件ではいずれも結果は賛否が拮抗しており、しかも賛成は多くても4割に達していません。ANN調査では、法案の理解度について「ある程度理解」「よく理解」を合わせて31%しかなく、「あまり」「まったく」を合わせて「理解していない」は65%に上っています。毎日新聞共同通信、日本テレビの調査では、今国会で成立させることを疑問視する回答が、成立を支持する回答を上回りました。19日の委員会採決についてのブログ記事で、私は「採決強行で押し切られたのは世論」と書きましたが、同じことが繰り返されたというほかないと感じています。

 以下は世論調査の結果の引用です。数字の単位はいずれも%です。

【毎日新聞】5月20、21日実施

 ▼「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が国会で審議されています。この法案について、あなたの考えはどれに近いですか。

 今国会で成立を図るべきだ 17

 今国会成立にこだわらず議論を続けるべきだ 52

 廃案にすべきだ 14

【共同通信】5月20、21日実施 ※丸かっこは前回

 ▼政府は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を、今国会で成立させる方針です。政府はテロ対策に不可欠としていますが、人権が侵害されかねないとの懸念もでています。あなたは、この法改正に賛成ですか、反対ですか。  

 賛成 39・9(41・6)

 反対 41・4(39・4)

 分からない・無回答 18・7(19・0)

 ▼与党はこの法案を19日の衆院法務委員会で野党が抗議する中で採決しました。あなたは、この採決についてどう思いますか。

 よかった 29・6

 よくなかった 54・4

 分からない・無回答 16・0

 ▼あなたは、この法案について政府が十分に説明していると思いますか。         

 十分だと思う 15・3

 十分だと思わない 77・2

 分からない・無回答 7・5

 ▼あなたは、この法案を今国会で成立させるべきだと思いますか。            

 成立させるべきだ 31・0

 成立させる必要はない 56・1

 分からない・無回答 12・9

【日本テレビ】5月19―21日実施

 ▼「共謀罪」の趣旨を含んだテロ等準備罪を新たにつくる、「組織犯罪処罰法改正案」の審議が、国会で行われています。政府・与党が、東京オリンピックパラリンピックの開催を控えてテロ対策などの面で必要だと主張しているのに対し、野党側は、一般市民の監視につながるなどと反対しています。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか?

 賛成 36・1

反対 35・8

わからない、答えない 28・1

 ▼あなたは、この法案を、いまの国会で成立させることでよいと思いますか、思いませんか?

 思う 34・3

 思わない 43・6

 わからない、答えない 22・1

【ANN=テレビ朝日系列】5月20、21日実施

 ▼安倍内閣が提出した、過去に廃案になった共謀罪の内容を改め、要件を変えた「テロ等準備罪」を設ける法案が、国会で審議されています。あなたは、この法案について、どの程度理解していますか?次の4つから1つを選んで下さい。

 よく理解している 3

 ある程度理解している 28

 あまり理解していない 46

 まったく理解していない 19

 わからない、答えない 4

 ▼この法案は、組織的な犯罪を計画し準備を始めた段階で、処罰することが柱です。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか?

 賛成 32

 反対 36

 わからない、答えない 32

 ▼この法案をめぐっては、犯罪の計画準備段階で処罰の対象となることから、人権侵害や捜査機関による乱用の恐れがあるとの指摘があります。あなたは、そう思いますか、思いませんか?

 思う 56

 思わない 21

 わからない、答えない 23


 2524日付けの東京発行新聞各紙の朝刊1面は以下の通りです。いずれも東京本社発行の最終版です。

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2017年-05月-22日

「共謀罪」報道、朝日、毎日、読売各紙の記事量に開き

 前回の記事の続きになります。

 かつての「共謀罪」と本質的には変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正違反法案について、東京発行の新聞各紙では反対ないし批判的な論調の朝日新聞毎日新聞東京新聞と、賛成・支持の読売新聞産経新聞とに大きく2極化しています。この2極化の傾向は、第2次安倍晋三政権が発足して以降、特定秘密保護法でも安全保障関連法でも、あるいは米軍普天間飛行場名護市辺野古への移設問題をはじめとした沖縄の基地集中の問題でも共通しているようです。その中で、どうやら政権の方策に反対、ないしは批判的な新聞の方が、政権を支持する新聞よりも記事本数が多い、すなわち情報量が多いのではないかと感じていました。

 そこで試しに「共謀罪」法案の報道について、記事本数を数えてみました。

 期間は法案の実質審理が衆院法務委員会で始まった4月19日の当日付け朝刊から、5月21日(日)付けの朝刊まで。条件をそろえるために、在京紙6紙のうち経済専門紙の色彩が強い日経新聞、夕刊を発行していない産経新聞、ブロック紙の東京新聞は除外し、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3紙で比べてみることにしました。

 結果は朝日93本、毎日63本、読売29本となりました。ほかに国会審議を質問と答弁の1問1答式にまとめた質疑の詳報や参考人の陳述要旨が朝日5回、毎日2回、読売1回、社説が朝日3本、毎日4本、読売2本でした。

 記事のレイアウトや見出し次第では別の数え方もあるかもしれませんが、記事の本数としては大まかに朝日と読売では3倍、毎日と読売でも2倍の違いがあると言っていいと思います。記事1本あたりの情報量ももちろん均一ではありませんが、朝日と読売の間には情報量に相当の差があるのは間違いがありません。

 別の観点からの比較では、朝刊であれ夕刊であれ、その日の紙面に「共謀罪」法案関連の記事が見当たらなかった日数を数えると、朝日5日、毎日8日、読売13日でした。

 これほどの差が出る主な要因は、識者や当事者らの意見や考え方を紹介するか否かです。朝日新聞も毎日新聞も「問う『共謀罪』」(朝日)や「『共謀罪』私はこう思う」(毎日)といった欄を社会面に設け、不定期ながら各界の人たちの意見を紹介しており、その中には法案に賛成だったり、「共謀罪」を必要とする意見も含めています。しかし読売新聞にはそういった多様な意見を紹介するような記事はほとんど見当たらず、「共謀罪」への反対意見としては国会での野党主張ぐらいでした。

 この「共謀罪」法案のように賛否が割れる報道テーマでは、国会審議などの生の動きを伝えるほかに、多様な意見やものの見方、考え方を読者に提供していくことも、本来はマスメディアの役割の一つだと思います。その観点からは、ある程度は感じていたこととはいえ、賛否の論調が異なる新聞の間で、ここまで情報量に開きがあることには驚きました。

2017年-05月-21日

「共謀罪」採決強行で押し切られたのは世論―賛否は拮抗、「政府の説明十分ではない」8割近く

 かつての「共謀罪」の構成要件を変えたとしながら、犯罪を広く準備段階で罰し、人間の内心に踏み込む本質には変わりがない「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の採決が19日、衆院法務委員会で行われ、自民公明与党に、野党から日本維新の会が加わり、賛成多数で可決しました。与党は23日にも衆院本会議での可決を図る構えだと報じられています。民進、共産などの野党は採決に反対でした。重要法案であることに争いはなく、世論調査では法案に対する賛否は拮抗し、少なくとも賛成意見が反対意見を大きく上回るという状況とは認めがたい中で、与党と維新による採決の強行と呼ぶほかないと感じます。審議が尽くされたとは到底思えません。

 かつての共謀罪法案は過去3回、国会に提案され、いずれも廃案になりました。今回の法案もこれまでの国会での審議などを見る限り、対象の犯罪は676から277に減ったとされるものの、それ以外には本質的な変更はなく、内心の自由表現の自由を侵害する恐れなどの危険性は変わりがないと私は考えています。安倍晋三政権は「テロ等準備罪」の呼称を新たに持ち出して、かつての共謀罪とはまったく違うものだと強調しますが、「テロ対策」というだれも反対できないニュアンスを前面に出した、それこそ印象操作であるように感じますし、「共謀罪」の呼称を変える必要はないように思います。

 この「共謀罪」法案について、世論調査では質問の文章の違いによって、賛否の結果が少なからず変わる疑いがあることを、このブログの以前の記事で書きました。

 ※「尋ね方で賛否変わる「共謀罪」・政府呼称「テロ等準備罪」―一般の理解は深まっていない」=2017年4月22日

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20170422/1492861686

 法務委員会採決の直近の週末、5月13、14日に朝日新聞社が実施した世論調査では以下のような結果になっていました(丸かっこ内は前回の結果)。

◆政府は、犯罪を実行しなくても、計画の段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ、組織的犯罪処罰法の改正案の成立を目指しています。この法案に賛成ですか。反対ですか。

 賛成38%(35)▽反対38%(33)

◆組織的犯罪処罰法の改正案の内容をどの程度知っていますか。(択一

 よく知っている2%▽ある程度知っている35%▽あまり知らない47%▽まったく知らない16%

◆政府・与党は組織的犯罪処罰法の改正案を、6月18日まで予定されている今の国会で成立させる方針です。この法案を今の国会で成立させる必要があると思いますか。

 今の国会で成立させる必要がある18%▽今の国会で成立させる必要はない64%

◆組織的犯罪処罰法の改正案についての政府の説明は、十分だと思いますか。

 十分だ7%▽十分ではない78%

 また、12―14日の3日間にNHKが実施した世論調査では、賛否は「賛成」25%、「反対」24%、「どちらとも言えない」が42%だったと報じられています。NHKの質問の正確な文章は分かりませんが、NHKは報道に際しては「テロ等準備罪」の用語を使っています。

 ※「安倍内閣 支持する51% 支持しない30% NHK世論調査」=2017年5月15日

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170515/k10010982331000.html

 委員会採決後のこの週末20−21日に共同通信社が実施した世論調査でも、やはり賛否は「賛成」39・9%、「反対」41・4%と拮抗。「政府の説明が十分だと思わない」との回答が77・2%に上り、前週の朝日新聞の調査と同じ結果でした。

 ※「『共謀罪』説明不十分77% 共同通信世論調査」=2017年5月21日

 https://this.kiji.is/238932773109055491?c=39546741839462401

 つまりは「テロ」の用語を一切持ち出していない朝日の調査でも、おそらくは「テロ等準備罪」として尋ねたNHKの調査でも、最近の調査結果は賛否が拮抗しており、しかもNHK調査では「分からない」が42%にも上っています。朝日の調査結果に至っては、法案の内容の理解度は「よく」と「ある程度」を合わせても「知っている」は37%にとどまっているのに対して、「知らない」は「あまり」「まったく」を合わせて63%にも上っています。世論調査で3分の2近くが「知らない」と答える状況で、また8割近くもの人が「政府の説明は十分ではない」と回答しているのに、それでも成立を急ぐ状況とは何でしょうか。これまでの国会審議では、「共謀罪」がなかったために防ぐことができなかったテロや組織犯罪の具体例は何ら指摘されていない、つまり具体的な事例に基づく「共謀罪」の必要性が何ら説明されていないにもかかわらずです。

 「共謀罪」は国際組織犯罪防止条約の締結に必要だと説明されていますが、ほかのやり方もあるはずとの指摘は野党や識者からも上がっています。そうしたことも含めて、審議を尽くすべきだと思います。


 5月19日の衆院法務委員会での採決を、東京発行の新聞各紙は19日夕刊、20日付け朝刊で大きく扱いました(産経新聞は東京本社管内では夕刊を発行していません)。

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【写真】5月19日の東京発行各紙の夕刊


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【写真】5月20日付けの東京発行各紙の朝刊


 これまでの社説などの論調でみれば、朝日新聞、毎日新聞東京新聞はこの組織犯罪処罰法改正案には反対ないしは批判的であり、読売新聞、産経新聞は賛成、支持です。日経新聞は慎重姿勢といったところでしょうか。

 そうした違いを踏まえて委員会採決の報道を見たときに、特徴的だと思うのは以下の2点です。

  • 朝日新聞、毎日新聞、東京新聞はいずれも「採決強行」としているのに対し、読売新聞、産経新聞、日経新聞は「強行」を使っていない
  • 法の名称は見出しでは朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、日経新聞は「共謀罪」なのに対し、読売新聞、産経新聞は「テロ準備罪」

 大まかに言えば、法案に反対ないし批判的な朝日、毎日、東京の3紙は政府が使う「テロ等準備罪」は見出しに使わず、今回の採決も与党と維新の「強行」と伝えているのに対し、法案に賛成、支持の読売産経は政府呼称から「等」も省略して「テロ準備罪」とし、採決も「強行」との見解は取っていません。

 第2次安倍晋三政権が長期化するにつれ、重要な政治課題では政権に批判的な朝日、毎日、東京と、政権を支持する読売、産経とに東京発行各紙の論調は2極化してきました。特定秘密保護法安全保障関連法でもそうでしたし、普天間飛行場の移設問題など沖縄の基地集中の問題でも、そしてこの「共謀罪」法案も同じと言えるようです。安倍首相の前のめり姿勢がとみに顕著になってきている憲法改正も、同じようになるのだろうと思います。


 以下に、「共謀罪」法案の衆院法務委での可決を東京発行各紙がどのように伝えたか、主な記事の見出しを書きとめておきます(いずれも東京本社発行の最終版)。目を引くのは、読売新聞の記事の少なさです。

【朝日新聞】

・1面 トップ「『共謀罪』熟議なき可決 採決強行 異論を軽視 自公維、賛成多数 衆院委」写真・改正案が衆院法務委で可決され、与党議員と握手する金田勝年法相/「視点」石松恒・国会担当キャップ

・2面・時時刻刻「『共謀罪』疑問残し強行」「法相答弁 迷走のまま」/「維新後押し 強気の自民」図解・19日の衆院法務委で指摘された具体的な事例

・4面「与党『充実した審議』 野党『民主主義破壊』 『共謀罪』採決」/焦点採録・衆院 法務委員会「任意捜査の正当性の担保は 民進 最終的に裁判所が判断する 法相」

・社会面 トップ「審議 わずか30時間 『共謀罪』採決『煮詰まらないまま』 江川紹子さん衆院委を傍聴」/「国会前 夜もシュプレヒコール」/「国民理解できていないはず」衆院法務委員会で参考人として意見を述べた漫画家小林よしのり氏の話

・社説「『共謀罪』採決 国民置き去りの強行だ」

【毎日新聞】

・1面 トップ「審議尽くさず 『共謀罪』衆院委採決強行 与野党 攻防激化」・表「共謀罪」(テロ等準備罪)ポイント、写真・採決に抗議し委員長席に詰め寄る野党の議員ら

・3面・クローズアップ「治安・人権 折り合わず 政府 条約締結に『不可欠』 野党 『一般人へ適用』懸念 『共謀罪』採決強行」表・主な論点に対する発言/「高支持率 強気の国会運営」/「回り道でも丁寧に」佐藤千矢子・政治部長/質問なるほドリ「犯罪防止条約どう結ぶ? 国内で法律作り 国連で手続き」

・5面「攻めあぐねる野党 狙いは法相、『加計』 政権揺さぶりに懸命 『共謀罪』採決強行」/「政府・与党 会期延長含み」/「プラカードの抗議を見送り 民進」/「国連報告者 懸念を表明」

※社会面見開き見出し「採決強行『共謀』 最後は数の力」

・社会面 トップ「自公維 5分で淡々」/「適用 募る不安 各地で抗議」北海道・東京・沖縄

・第2社会面「野党『失言』狙い/法相歯切れ悪く」/ミニ視点「対象線引き あやふや弁護士・山下幸夫氏「条約の批准に不可欠」弁護士・木村圭二郎氏「政府答弁 本質答えず」立命館大法務研究科教授 松宮孝明氏「事前抑止 世界の常識」元外交官・宮家邦彦氏

・社説「『共謀罪』法案委員会で可決 懸念残しての強行劇だ」

【読売新聞】

・1面 準トップ「テロ準備罪 衆院通過へ 23日にも 自公維、法務委で可決」写真・野党議員らが委員長席に詰め寄る中、採決が行われた衆院法務委

・2面「テロ準備罪 議論平行線 衆院委可決 『一般人』定義巡り」表・テロ準備罪法案を巡る衆院での議論のポイント

・第2社会面「テロ準備罪 安堵と抗議 衆院委可決」/「組織犯罪対策に不可欠 一般人に適用ありえぬ 国松元警察庁長官に聞く」

【日経新聞】

・1面「『共謀罪』法案 今国会成立へ 衆院委で可決 会期延長を検討」写真・「共謀罪」法案が可決され、発言する金田法相

・5面「悩ましい?会期延長幅 小幅だと…都議選で日程窮屈 大幅だと…『加計』追及 長期に 『共謀罪』法案 今国会成立へ」

・第2社会面「『議論尽くされず』 『共謀罪』法案 衆院委で可決 国会前でデモ」/「『企業活動を萎縮』弁護士ら声明」

【産経新聞】

・1面 トップ「テロ準備罪 衆院委否決 23日通過へ 自公と維新賛成」写真・採決を前に自民党理事に詰め寄る民進党の理事ら、表・「テロ等準備罪」規定のポイント

・3面「現行法の空白カバー 航空機 乗っ取り防止強化 偽造旅券 未発見でも対処 テロ準備罪」表・テロ等準備罪に規定される厳しい条件/「『日本は怠慢』厳しい視線 国連加盟94%が条約締結」

・5面「最後まで…民進茶番劇場 議事妨害、棚上げ批判、罵声 他党の苦言に『自民に入れ』」

・25面(第3社会)・「テロ準備罪」対象となる277の罪

・社会面 トップ「キノコ狩りダメ? 一般人対象なの? テロ準備罪 極論で不安あおる野党」/「現場歓迎『捜査の幅広がる』」/「国会前 反対派が終結」/「野党が進行妨害 おなじみの光景」/「『情報収集の環境整備必要』元警察官僚の沢井康生弁護士の話」/「『刑事法原則を完全に覆す』元東京高裁部総括判事の門野博弁護士の話」/「『党利党略で反対論が勢い』外交評論家の岡本行夫氏の話」

・社説(「主張」)「テロ等準備罪 国民の生活を守るために」

【東京新聞】

・1面 トップ「『共謀罪』採決強行 衆院委で可決」写真・改正案が可決され、起立する金田法相、表・『共謀罪』規定のポイント/「『恣意的運用』国際視点から警告 プライバシー権の国連特別報告者 首相書簡送る」/「テーマ、国ごとに人権状況を監視 国連特別報告者」※用語説明/「『戦争させない。自由にものが言える。この二つを守らなくては」声・国会前

※総合面(2―3面)見開き見出し「国民監視 ぶれる答弁 『共謀罪』捜査 既に横行」

・2面・核心「法制化なら お墨付き 集会で拍手→『賛同』 日程の説明→『競技』 山城議長ケース」/解説「『テロ対策』疑念深く」/「維新の与党化鮮明 『共謀罪』に賛成」

・3面「審議深まらぬまま 法相 知り合い対象認める」表・5月19日衆院法務委でのやり取り

・7面・衆院法務委論戦のポイント

・24−25面(特報面)「笑えない『共謀罪』審議 声に出して読めば…迷言・珍言次から次へ 演じた市民『法相 国民を愚弄している』」「『国会軽視どころか崩壊』 野党議員追及にも 政府は『意味不明の答弁』 参院でも でたらめ許すな」

※社会面見開き見出し「『廃案まで抗議する』 また あの時代に…」

・社会面「国会周辺 怒りの声やまず 『取り返しつかないことに』『審議延長を』」

・第2社会面「日常を描いて逮捕 『反抗的な思想』…特高有罪判決 北海道の松本五郎さん(96)」/「『企業も共謀罪の対象に』法務弁護士の会が廃案求め声明」

社説「『共謀罪』採決 懸念は残されたままだ」

2017年-05月-16日

沖縄の復帰45年の日、在京紙朝刊の記録―読売はコラムのみ

 今年5月15日は、1972年に沖縄が日本に復帰してから45年の日でした。沖縄の基地集中の問題は現在、宜野湾市米軍普天間飛行場移設を巡って、新基地を県内の名護市辺野古に建設して移転させようとする日本政府と、県外移設を求める翁長雄志知事沖縄県とが全面的対立しています。法廷闘争に進んで、いったんは和解したものの、日本政府には沖縄県との対話の意思は見られず、新基地建設工事を力ずくで進めていくようです。

 基地問題は沖縄という個別の地方の固有の問題ではなく、安全保障という日本全国の問題であることは、このブログであらためて指摘するまでのこともありません。沖縄の人たちばかりでなく、日本本土に住むすべての日本人が、沖縄の基地集中の問題を今後どうすればよいのか、考えるのにいいタイミングの一つだと思います。

 特に普天間飛行場の県外移設を公約に掲げた現知事の翁長氏は就任後、機会あるごとに沖縄の戦後史を踏まえて基地の問題を語ってきました。敗戦後、日本から切り離された沖縄では、米統治下で「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的な方法で土地が基地に変えられていったこと、米統治のトップだった高等弁務官は「沖縄住民による自治神話に過ぎない」と言い放っていたこと、今まで沖縄は一度も自ら基地を提供したことはないことなどです。そうした歴史を踏まえて、その沖縄で今、進んでいる普天間飛行場の辺野古移設を見るならば、米軍だけでなく、日本もそこに加わって沖縄に新基地の提供を強要しているに等しいと映るでしょうし、わたしもそう思います。

 1972年の沖縄の日本復帰とは、平和憲法への復帰のはずだったと、かつて労働組合活動の中で何度も沖縄を訪ねる中で教えられ、実感してきました。「5月15日」とは、日本本土に住む日本人こそが、日本国の主権者の一人として、沖縄の歩んだ現代史を学び、今後を考える日だろうと思います。

 そうした観点から、15日付けの東京発行新聞各紙の朝刊(東京本社発行の最終版)が、この「沖縄復帰45年」をどのように報じたか、主な記事の見出しを記録しておきます。

 驚いたのは、経済専門紙の色彩が強い日経新聞はともかくとして、読売新聞に関連の記事がまったく見当たらなかったことです。わずかに1面のコラム「編集手帳」が、薩摩藩琉球支配を肯定的にとらえていた「蔡温」という政治家琉球王国にいたとして「沖縄はきょう本土復帰45年を迎えた。この間、米軍基地問題という制約に苦悩してきた。他方、基地をなくすことはできないのも現実である。抑止力をにらみつつ、着実に負担減と振興を図るしかあるまい」などと書いているのみです(琉球王国時代の故事を、日本本土の側から現代の沖縄に説くかのようなこのコラムに、わたしは違和感を覚えました)。

 東京発行の読売新聞は15日夕刊と16日付け朝刊では記事を掲載するのですが、一方で朝日新聞毎日新聞は15日付け朝刊で、メインの記事(本記)を1面に載せた上、沖縄の現代史と今日の状況を1ページや2ページを割いた特集記事で詳しく紹介しています。東京新聞は本記が1面トップ。敗戦直後の1945年12月の帝国議会で、沖縄県選出の漢那憲和氏が、米軍占領下となった沖縄県の人々の選挙権が停止されようとしていたことに異議を唱えていたことを紹介して、沖縄の現代史をつづっています。

 東京発行各紙の論調は、特に第2次安倍政権発足後は2極化が進み、普天間移設に代表される沖縄の基地集中の問題も、安倍政権支持と安倍政権に批判的・懐疑的との2極化が進んでいるように感じています。その中で、「5月15日」をニュースとしてどう報じるか、取り上げ方や記事の書き方に各紙の間で差が出ることは当然でしょう。しかし、「5月15日」をその当日の朝刊で報じないとの読売新聞の判断は、私には少なからず驚きでした。

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 各紙の主な記事と見出しは次の通りです(各紙とも東京本社発行の最終版より)。

▼朝日新聞

1面「沖縄復帰 きょう45年」写真・名護市で開かれた基地移設に反対する集会

8面(1ページ特集)「沸く観光 変わらぬ基地」沖縄復帰45年「876万人来県、年収は低いまま/子の貧困率 全国最悪」「動かぬ地位協定 やまぬ事件/日米政府 重なる思惑」「『豊か』の陰で別次元のひずみ/基地の街で暮らす作家・崎山多美さん」/図解・米軍関係の事件事故/グラフ・観光客数 県民総所得に占める割合(観光収入と軍関係収入)

社会面トップ「沖縄45年 広がる分断」「『辺野古』賛否で対立」「ネットのうそ 踊らされた」「衝突 暮らしも混乱」

▼毎日新聞

1面「本土復帰45年 溝深く」「根の故意説強行 沖縄反発」「問われる政府 姿勢」/「2200人が怒りの声」写真・名護市の県民大会の参加者のシュプレヒコール

14・15面(2ページ特集)「動かぬ基地 つづく苦世(にがゆ)」(見開き見出し)「復帰45年 沖縄の声届かず」「辺野古移設 突き進む政府」/「耐えがたい痛み」比屋根照夫・琉球大名誉教授/「同盟強化 示す政府」/「県民所得 全国最低」/表・普天間飛行場を巡る歴代首相・知事の発言/年表・基地を巡る日米・沖縄の動き

社会面トップ「『悲惨な事故 もう二度と』」「米軍訓練中止求め 読谷村で大会」/「基地引き取りへ連絡会」「東京など5都府県の団体」

▼読売新聞

※見当たらず 1面「編集手帳」に関連コラム

▼日経新聞

※見当たらず

産経新聞

2面「沖縄返還45年犖民大会 実態は反基地集会」/「失われた『祖国復帰の純粋な思い』」写真・名護市の集会

▼東京新聞

1面トップ「沖縄 今なお遠い憲法」「安保優位 続く米軍特権/本土復帰45年」「漢那憲和氏の発言」写真・1972年の沖縄返還記念式典、年表・沖縄と憲法に関する主な出来事/「『基地が発展を阻害』翁長知事コメント」写真・平和行進

第2社会面「辺野古 埋め立てさせない/力結集、強権に抵抗の歴史/沖縄復帰きょう45年」


 読売新聞は15日夕刊と16日付け朝刊では以下のような記事を載せています。

▼読売新聞15日夕刊

第2社会面「沖縄 本土復帰45年」「米軍施設なお7割集中 進む跡地開発」写真・返還された西普天間住宅地区跡地=2016年1月、宜野湾市

▼読売新聞16日付け朝刊

2面・ニュースQ+「沖縄の米軍基地 現状は?/全国施設の7割が集中」グラフ・沖縄県の米軍専用施設の面積と全国比の推移

3面・スキャナー「沖縄45年 光と影と」「観光好調 進む『脱基地依存』」「低い所得 高い非正規所得率」/「辺野古移設と負担減 並行 政府」年表・本土復帰以降の沖縄県を巡る動き、グラフ・沖縄の復帰当時と現在の比較(人口、1人当たり県民所得、経済の基地依存度)

2017年-05月-03日

朝日阪神支局事件から30年〜「反日朝日は五十年前にかえれ」の1937年と今日

 ここ数年、毎年のように書いていることですが、5月3日は憲法記念日であるのと同時に1987年、兵庫県西宮市朝日新聞阪神支局が襲撃された日です。事件では小尻知博記者=当時29歳=が殺害され、記者1人が重傷を負いました。今年は30年の節目になります。

 「赤報隊」を名乗る犯人は87年から90年にかけて、朝日新聞社に対して阪神支局のほか東京本社銃撃、名古屋本社社員寮襲撃、静岡支局爆破未遂と執拗に攻撃し、さらには中曽根康弘竹下登両元首相脅迫事件や江副浩正リクルート会長宅銃撃事件などを起こしました。犯人特定に至らず、2003年に全ての事件が公訴時効となりました。犯行声明で名乗った名称から「赤報隊事件」と呼ばれています。

 ※ウイキペディア「赤報隊事件」

 犯人は一連の事件の犯行声明の中で「反日朝日は五十年前にかえれ」と要求していました。当時から50年さかのぼった1937年とは、7月7日の盧溝橋事件日中戦争が勃発した年です。1931年の満州事変から1945年の敗戦まで「15年戦争」とも呼ばれる長い戦争がありました。戦争遂行に新聞が加担し、やがて異論を許さず社会が戦争遂行一色になっていく時代でした。赤報隊事件とは、「国益」を大義に戦争遂行のために新聞が筆を曲げ、異論が許されないモノトーンの社会に立ち返ることを、暴力をもって強いようとした愚行でした。

 折しもことしの5月3日は、核、ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮に対して、米国原子力空母朝鮮半島に向かわせて軍事圧力を強めている中で迎えました。空母艦隊には日本の自衛隊からも、合同演習の名目で護衛艦戦闘機が合流。5月2日には、憲法違反の指摘がある安全保障関連法に基づいて、米軍の補給艦を海上自衛隊で最大のヘリ搭載護衛艦「いずも」が防護する初の「米艦防護」が実施されるなど、米軍との一体化を進める日本は軍事的な緊張の高まりに当事者として加わっています。政治の世界では、北朝鮮に対する先制攻撃容認の主張すら聞こえてきます。

 国会では、過去3度廃案になった「共謀罪」の新設と本質的には変わらないとの批判が根強い組織犯罪処罰法改正案が審理され、自民公明与党が数をたのんで採決を強行するのでは、との危惧が高まっています。ネット上ではしばらく前から「反日」という言葉を目にすることが増え、同じようにしばらく前からヘイトスピーチ社会問題になっています。赤報隊が「反日朝日は五十年前にかえれ」と脅迫した1987年当時よりも、状況はずっと1930年代に近づいているように感じます。

 だからこそ、朝日新聞阪神支局襲撃事件は事件は決して忘れられてはならないと思います。語り継ぐのは、事件当時からマスメディアに身を置き、ジャーナリズムを仕事にしてきた者の責務と受け止めています。後続世代の若い記者たちにとっては、30年の節目は事件のことを深く知るいい機会だと思います。ぜひ、「記者」という仕事への考えを深め、さらに次の世代へ語り継いでいってほしいと思います。

※「米艦防護」は5月3日朝の時点で、政府からは正式の説明が一切ありません。安倍晋三首相が安全保障関連法について「国民に丁寧に説明する」と約束したにもかかわらずです。かつて第2次大戦時の日本では、敗色濃い戦況を隠蔽するため軍部が虚偽の内容を公表し、新聞にも検閲をかけていました。「大本営発表」です。そうしたことへの反省も含めて戦後、日本社会が選び取ったのが日本国憲法であり、不戦と戦力不保持を定めた第9条だったのでした。しかし今日、政治指導者が公然と国民をだましにかかっている、そう批判されても仕方がない状況に立ち至っています。いつか来た道です。この件に関しては一つ前の記事で別に書きました。合せてご覧ください。

 ※「政府の説明がない『米艦防護』―国民は簡単に戦争に向かうし『だまされることの罪』もあることを自覚しておきたい」=2017年5月3日

  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20170503/1493743247


 事件から30年の節目とあって、例年になく他紙も事件を取り上げています。ここでは東京発行各紙の社説を書きとめておきます。

毎日新聞 社説】「朝日新聞襲撃から30年 むしろ広がる異論封じ」5月1日

  https://mainichi.jp/articles/20170501/ddm/005/070/012000c

 戦後の日本は、国民の多大な犠牲のうえに「言論の自由」をうたう憲法を制定した。言論は多様な価値を認め合う民主主義の土台である。それを封殺するテロには屈しないと改めて誓いたい。

 だが、異論を封じる手段は有形の暴力とは限らない。赤報隊の使った「反日」という言葉は、今やインターネット上や雑誌にあふれかえる。

 自分の気に入らない意見を認めず、一方的にレッテルを貼って排除する。激しい非難や極論は相手を萎縮させ、沈黙をもたらす。

 異を唱えにくい時代へと時計が逆戻りしている。そんな心配が募る。

読売新聞 社説】「朝日襲撃30年 言論の自由を守る誓い忘れぬ」5月2日

  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170501-OYT1T50099.html

 言論の自由は、民主主義を支える根幹である。暴力には決して屈しない。言論には言論で応じる。この価値観を、社会全体で改めて確認する必要があろう。

 自由な言論を牽引けんいんする。それが報道機関の大切な役割だ。

 (略)

 多様な言論が存在することが、健全な社会の証しだ。自らとは異なる意見でも、それを主張する自由は保障する。民主主義の原則を国際社会で共有したい。

産経新聞「主張」】「朝日支局襲撃30年 暴力には言論で対決する」5月2日

  http://www.sankei.com/column/news/170502/clm1705020001-n1.html

 言論に対峙(たいじ)すべきは、言論である。卑劣な銃弾によって、ペンを曲げることはできない。

 30年前に向けられた銃口は、全ての言論・報道機関に向けられたものであり、民主主義そのものを標的とした。犠牲となった小尻記者を悼むとともに、改めてそう受け止め、怒りを新たにしたい。

 (略)

 産経新聞と朝日新聞は、往々にして異なる論調を展開し、対立する。ただし、これに対する暴力は共通の敵である。

 社が掲げる「産経信条」は、以下の一文で始まる。

 「われわれは民主主義と自由が国民の幸福の基盤であり、それを維持し発展させることが言論機関の最大の使命であると確信する。したがってこれを否定するいっさいの暴力と破壊に、言論の力で対決してゆく」

 決意は、揺るぎない。


 朝日新聞阪神支局には事件の資料室が設けられており、5月3日には一般にも開放しています。記者の仕事に就いている、とりわけ若い世代の人たちには、ぜひ見学してほしいと思います。

 朝日新聞社はウェブ上に事件の特集ページを開設しています。

 ※http://www.asahi.com/special/timeline/hanshin-shugeki/

【朝日新聞社説】「阪神支局襲撃30年 覚悟をもって喋る、明日も」5月2日

  http://www.asahi.com/articles/DA3S12919356.html?ref=editorial_backnumber

 自分好みの「情報」を信じ、既存メディアの情報を疑う傾向は、世界で強まっている。

 メディアが伝える事実とは別の「事実」があるとする「もう一つの事実」。昨年の米大統領選では「フェイク(偽)ニュース」が世論に影響を与えた。

 虚偽が現実の政治を動かす、極めて深刻な事態だ。

 報じる側が批判に向き合い、自らの責務と役割を問い直すしかない。事実を掘り起こし、権力監視の役割を果たしているか。多角的な見方を提示し、軸足を定めた視座で主張、提言をなしえているか。日々の積み重ねで信頼を得る必要がある。

 小尻記者が亡くなった後、朝日新聞は阪神支局に、詩人の故小山和郎さんの句を掲げた。

 「明日(あす)も喋(しゃべ)ろう 弔旗が風に鳴るように」

 自由にものをいい、聞くこと。その普遍的な価値を、社会と共有していきたい。


 わたし大阪に勤務していた2011年から13年の3年間、毎年この日は阪神支局を訪ね、小尻記者の遺影に手を合わせ、資料室を見学しました。その際のことを、このブログにも書いてきました。一読いただければ幸いです。

▼2013年5月4日「改憲志向高まる中で語り継ぐ意味〜朝日阪神支局事件から26年」

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130504/1367595842

▼2012年5月3日「語り継ぐ責務〜朝日阪神支局事件から25年」

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20120503/1336055101

▼2011年5月4日「『憲法記念日ペンを折られし息子の忌』〜朝日阪神支局事件から24年」

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20110504/1304439961

f:id:news-worker:20110503150419j:image:w640

【写真】「憲法記念日ペンを折られし息子の忌」―。朝日新聞阪神支局の事件の資料室には、故小尻記者のご遺族の句が、旧支局に小尻さんの遺影が飾られていた様子のパネル写真と並んで、壁にかけられていました=2011年5月3日



【追記】2017年5月3日20時25分

 「1937年」に触れたくだりに事実関係の誤りがありました。原文の「7月7日の盧溝橋事件で日中戦争が勃発し、1945年の敗戦まで『15年戦争』とも呼ばれる長い戦争が始まった年です。」を訂正しました。

政府の説明がない「米艦防護」―国民は簡単に戦争に向かうし「だまされることの罪」もあることを自覚しておきたい

 安全保障関連法に基づき、自衛隊米軍の武器や艦船を守る「艦船等防護」が5月1日、初めて実施されたと報じられています。報道によると、海上自衛隊で最大の護衛艦であるヘリ搭載型の「いずも」が、神奈川県横須賀基地を出港して米軍の補給艦と合流。1日午後に任務を開始しました。もっぱら米軍の艦船を守ることが想定されるため「米艦防護」とも呼ばれるこの任務は、憲法違反との指摘が根強くある安保関連法の成立に伴い、PKO派遣部隊のいわゆる「駆け付け警護」とともに新設されました。その任務が初めて実施されたわけで、安保関連法に批判的ないしは慎重姿勢のメディアにとっても、安保関連法を積極評価するメディアにとっても、ともに大きなニュースと判断すべき出来事です。そして、安保関連法へのスタンスいかんにかかわらず、各メディアに共通しているのは、今回の「米艦防護」には実質的な必要性を見出しがたく、目的は核実験やミサイル発射をやめようとしない北朝鮮に向けた日米一体の軍事的なけん制だろうとの見方です。

 以下に、東京発行の新聞6紙の2日付朝刊の主な見出しを書きとめておきます。

朝日新聞

1面トップ「海自、初の米艦防護」「房総沖で開始 安保法制の新任務」

3面「米艦防護 深まる一体化」「米軍が強く要請/実績づくり色濃く/『巻き込まれ』懸念」

毎日新聞

1面「海自、初の米艦防護」「『いずも』と補給艦合流」

3面・クローズアップ「日米一体を誇示」「北朝鮮に軍事圧力/安保法 実績作り」

社説「自衛隊が初めて米艦防護 実績作りを急いでないか」

読売新聞

1面トップ「米艦防護 海自が初実施」「『いずも』出港 米補給艦と合流」

3面・スキャナー「海自と米海軍 一体運用推進」「北を抑止 中国けん制も」/「日本 艦艇整備急ピッチ」

社説「海自『米艦防護』 双方向の協力で同盟を強固に」

日経新聞

1面「米艦防護 初の実施」「海自護衛艦 安保法を本格運用」

3面「日米同盟 新領域へ」「安保法で危機対応」「一体運用深化、高まるリスク

社説「北の脅威を見据えた米艦防護」

産経新聞

1面「日米同盟 新段階に」「海自、初の米艦防護実施」

東京新聞

1面トップ「安保法任務を初実施」「海自が米艦防護 説明ないまま」/解説「政府『実績作り』狙う」

2面・核心「米軍支援拡大 現実に」「兵士救助の準備も進む」

社会面「『危機あおって世論を誘導』」「市民らに不安広がる」

社説「初の米艦防護 本当に必要な任務か」

f:id:news-worker:20170503002953j:image:w640

 この「米艦防護」に対して私はいくつもの疑問、違和感を抱くのですが、その最大のものは、この記事を書いている3日未明に至るまで日本政府の公式発表も、首相や閣僚、政府高官の説明やコメントも一切出ていないことです。

 安全保障法制については、安倍晋三首相が国民の理解が深まっていないことを認め、丁寧に説明していくと表明した経緯があります。なのに、初のケースからいきなり秘密裏に、ということなのでしょうか。今後もメディアや国民の目の届かないところで実績だけを重ねていくつもりなのでしょうか。もしそうだとしたら、首相は国民をだましにかかっている、あるいは既にだましているも同然との批判は免れないように思います。そして、国民の目に見えないところで軍事的なものごとがどんどん進行する社会とは、まさにいつか来た道でしょう。

 今回の米艦防護で政府の説明が一切ないというのは極めて重大なことのはずですが、東京発行の新聞6紙の中で、そのことを見出しに取って強調したのは東京新聞だけでした。そのことも気にかかります。


 国民が政治指導者にだまされる、ということで思い出すのは、ドイツナチスの巨魁、ヘルマン・ゲーリングの言葉であり、敗戦直後に「だまされることの罪」を説いた映画監督脚本家伊丹万作の論考です。

 ゲーリングはドイツ敗北後のニュルンベルグ裁判で囚われの身になっていた折に、どうやれば国民を戦争に向かわせることができるかについて「われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよい」と語っていました。伊丹万作は戦後まもなくに発表した論考「戦争責任者の問題」で「だまされることの罪」を指摘しています。

 以下はブログでゲーリングの言葉を紹介した最初の過去記事です。関心があれば、お読みください。

※「ヘルマン・ゲーリングの言葉と伊丹万作の警句『だまされることの罪』〜今年1年、希望を見失わないために」=2016年1月1日

  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20160101/1451575528

 伊丹万作の論考は、以下の記事でも紹介しました。

※「伊丹万作『戦争責任者の問題』と憲法96条〜『だまされる罪』と立憲主義」=2013年5月7日

  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130507/1367881891