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2015年-08月-26日

「謝罪の宿命背負わせてはならない」に共感63%〜戦後70年談話の朝日新聞世論調査 ※追記・内閣支持率は再逆転しているのか

 安倍晋三首相が8月14日に発表した戦後70年談話についての世論調査結果がさらに2件報じられました。朝日新聞が22、23両日に実施した調査では、談話を「評価する」40%、「評価しない」31%でした。「その他・答えない」も29%あり、朝日は記事で「判断がつかない人も多かったようだ」としています。

 ※朝日新聞デジタル「安倍談話、『評価』40% 朝日新聞世論調査」2015年8月25日

  http://www.asahi.com/articles/ASH8S53H7H8SUZPS003.html

 関連する設問では、談話が「戦争には何ら関わりのない世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と主張していることを挙げて、共感するかどうかを尋ねたところ「共感する」63%、「共感しない」21%と大きな差が付きました。以前の記事でも書いたように、わたしはこの談話の中でもっとも安倍氏の本心が表れているのはこの部分だろうと感じています。つまり「談話を出す以上は戦後50年の村山元首相談話を否定できないし、村山談話継承すると表明することで『おわび』の気持ちを持ち続けていることも表明する。しかし、謝罪という行為は自分はしたくないし、今後はするべきではない」―ということです。共感がこれほど多数に上り、「共感しない」とこれほどにも差がつくとは、ちょっと意外な気もします。ただ、「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とは、「もはや謝罪に区切りをつける、終わりにする」という解釈のほかに「宿命を背負わせないように自分たちの世代で解決に努める」と言っているように受け取れなくもありません。そう受け取っての「共感する」と答えた人も少なくないのではないかと推察します。

 内閣支持率は、「支持」38%で前回比1ポイント増、「不支持」は41%で前回比5ポイント減でした。

 

 もう1件はANN系列がやはり22、23両日実施した調査です。戦後70年談話を評価するか尋ねたところ、「評価する」36%、「評価しない」33%、「分からない・答えない」31%でした。

 ※「2015年8月15日」

  http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201508/index.html

 内閣支持率は「支持」42・4%で前回比6・3ポイント増、「不支持」37・4% (前回比9・6ポイント減)、「わからない、答えない」20・2% (前回比3・3ポイント増)でした。支持の回復、不支持の減少が顕著だと言えるように思います。


 参院で審議中の安全保障関連法案に対しては、両調査とも以下のように依然として反対が賛成を大幅に上回り、今国会で成立させるべきかどうかも、否定的な回答が多数です。

 ▽安保関連法案への賛否

  朝日新聞調査 賛成30% 反対51%

  ANN調査 賛成22% 反対55%

 ▽朝日新聞調査:今国会で成立させる必要があると思うか

  必要がある20% 必要はない65%

 ▽ANN調査:国会審議への考えは

  いまの国会で成立させることでよい11% いまの国会にこだわらず時間をかけて審議するべきだ64% 廃案にするべきだ22% わからない、答えない3%


 これまでの他社の調査結果とともにまとめておきます。

【戦後70年談話】

共同通信 「評価する」44・2%「評価しない」37・0%

読売新聞 「評価する」48%「評価しない」34%

産経新聞・FNN 「評価する」57・3%「評価しない」31・1%

▼朝日新聞 「評価する」40%「評価しない」31%「その他・答えない」29%

▼ANN 「評価する」36%「評価しない」33%「分からない・答えない」31%


【内閣支持率】

▼共同通信 6月20、21日実施 支持47・4%(2・5ポイント減) 不支持 43・0%(5・0ポイント増)

▼朝日新聞 6月20、21日実施 支持39%(6ポイント減) 不支持 37%(5ポイント増)

▼産経新聞・FNN 6月27、28日実施 支持46・1%(7・6ポイント減) 不支持 42・4%(7・9ポイント増)

▼読売新聞 7月3〜5日実施 支持49%(4ポイント減) 不支持 40%(4ポイント増)

毎日新聞 7月4、5日実施 支持42%(3ポイント減) 不支持 43%(7ポイント増)

▼NNN 7月10〜12日実施 支持39・7%(1・4ポイント減) 不支持 41・0%(1・7ポイント増)

▼NHK 7月10〜12日実施 支持41%(7ポイント減) 不支持 43%(9ポイント増)

▼朝日新聞 7月11、12日実施 支持39%(変わらず) 不支持 42%(5ポイント増)

▼共同通信 7月17、18日実施 支持37・7%(9・7ポイント減)不支持51・6%(8・6ポイント増)

▼毎日新聞 7月17、18日実施 支持35%(7ポイント減)不支持51%(8ポイント増)

▼朝日新聞 7月18、19日実施 支持37%(2ポイント減)不支持46%(4ポイント増)

▼読売新聞 7月24〜26日実施 支持43%(6ポイント減)不支持49%(10ポイント増)

日経新聞 7月24〜26日実施 支持38%(9ポイント減)不支持50%(10ポイント増)

▼NNN 8月7〜9日実施 支持37・8%(1・9ポイント減)不支持46・7%(5・7ポイント増)

▼NHK 8月7〜9日実施 支持37%(4ポイント減) 不支持46%(3ポイント増)

▼毎日新聞 8月8、9日実施 支持32%(3ポイント減)不支持49%(2ポイント減)

▼共同通信 8月14、15日実施 支持43・2%(5・5ポイント増)不支持46・4%(5・2ポイント減)

▼読売新聞 8月15、16日実施 支持45%(2ポイント増)不支持45%(4ポイント減)

▼産経新聞・FNN 8月15、16日実施 支持43・1%(3・8ポイント増)不支持45・0%(7・6ポイント減)

▼朝日新聞 8月22、23日実施 支持38%(1ポイント増)不支持41%(5ポイント減)

▼ANN 8月22、23日実施 支持42・4%(6・3ポイント増)不支持37・4% (9・6ポイント減)「わからない、答えない」20・2% (3・3ポイント増)


【追記】2015年8月27日7時55分

 ANNの調査では、内閣支持率が「支持」が「不支持」を上回りました。再逆転です。しかし、戦後70年談話の評価は、「評価する」「評価しない」「分からない」がおおむね拮抗しています。戦後70年談話が評価されて、支持率の回復に結び付いたとの分析は控えたいと思います。内閣支持率の再逆転が定着するのか、後続の調査結果を待ちたいと思います。

2015年-08月-24日

戦後70年安倍首相談話に消極評価目立つ地方紙・ブロック紙

 時間がたってしまいましたが、備忘を兼ねて書きとめておきます。

 安倍晋三首相が8月14日に閣議決定を経て発表した戦後70年談話(以下、便宜的に「安倍談話」と表記します)に対して、地方紙・ブロック紙が社説でどのように取り上げたのか、ネット上で読んでみました。新聞社のサイトで社説の内容を読むことができたのは29紙でした。いずれも8月15日付です。うち、安倍談話を全体として明確に肯定的に評価したのは北國新聞(本社・石川県金沢市)と佐賀新聞の2紙でした。

 ほかの27紙は、批判的であったり肯定的には評価できないとのニュアンスを示している地方紙が多数派のように感じました。中には、「侵略」や「植民地支配」、「痛切な反省」や「心からのおわび」などの用語を曲がりなりにも記述したことなどに対して、一定程度の評価をしている新聞もあります。当初は、批判的な新聞と区別してカウントしようと考えたのですが、一定の評価は見せながらも、これで十分だろうかと懸念も示したり、あらためて安倍氏が自らを主語してさらに明言するよう求めたり、あるいは、さらなる行動を求めたりしている新聞が多いので、厳密な区分けは控えることにしました。テーマとして力点は「戦後70年」に置き、その一環として安倍談話に評価を明確にしないで触れた新聞もあります。

 すべての新聞を網羅した調査ではありませんし、あくまでも私の個人的な印象ですが、安倍談話に対する地方紙、ブロック紙の社説の大まかな傾向としては、肯定的な評価よりも消極的な評価が目立つように感じました。


 以下に、北國新聞と佐賀新聞の社説の一部を引用します。

 ▼北國新聞「戦後70年談話 『不戦の誓い』が伝わった」

 村山談話などと比べて格段に長く、格調があり、よく練られている。抑制気味ながらも安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の理念を押し出し、訴える力もあった。

 先の大戦について「わが国は痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と指摘したうえで、「こうした歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と述べたことで、平和国家日本の「不戦の誓い」は国際社会にも十分伝わったはずである。多くの国民の胸にも響いたのではないか。

(中略)

 70年続いた平和を維持し、守っていくために、同盟国との関係を深め、備えを厚くしていく必要がある。国会で論議中の安保関連法案の成立を急ぎ、平和の裏付けとなる抑止力の強化を急ぎたい。


 ▼佐賀新聞「安倍首相の70年談話」

 先の大戦では300万人の国民の命が失われたほか、アジアの多くの人々が犠牲になったことを挙げ、「計り知れない損害と苦痛を与えた」「断腸の念を禁じ得ない」と言葉を尽くした。先の大戦の反省、教訓としては想像以上の言及である。

 さらに歴代内閣が「痛切な反省と心からのおわび」を表明し、アジアの平和と繁栄のために尽力してきたことを挙げて、「こうした歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と強調した。中国韓国にとどまらず、世界を視野に置いた言葉だろう。

 戦後は西欧や東南アジアとの和解を成し遂げ、70年にわたり平和を守ったのは疑いようもない事実だ。この成果を未来に引き継ぎ、積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献する決意を表明した。

 (中略)

 談話は歴史、外交研究者などの有識者による半年にわたる議論を踏まえている。それだけに総体としては国内外の評価に耐えるものだろう。歴史観は国民一人一人が持つもので多数決でも国が決めるものでもないが、国民的に共有できる部分も多いと思われる。

 また、英語に翻訳して世界に発信された。国際的な理解を得る努力として評価したい。私たちは戦後の日本の歩みに誇りと自信を持ち、国際的な評価を得ていることを確信している。それが中韓との関係を未来志向に切り替える力となるべきだ。


 以下はほかの27紙の社説の見出しです。

北海道新聞「終戦から70年 不戦の誓い、未来に継承を」/和解の意図伝わらぬ/個人より国家なのか/被爆者の声聞かねば

河北新報「戦後70年談話/戦略的意図を読み取れぬ」

東奥日報「間接的でない明言必要だ/戦後70年談話」

デーリー東北「戦後70年談話 妥協により中途半端に」

岩手日報「70年談話 言葉は尽くしたけれど」

秋田魁新報「[戦後70年]安倍首相談話 分かりやすさに欠ける」

福島民報「【戦後70年首相談話】民意重んじ誓いを形に」

福島民友「首相70年談話/未来へ向かい確かな針路を」

信濃毎日「戦後70年に 安倍首相談話 言葉の裏を見極めたい」/キーワードを巧妙に/改憲への地ならし/戦後の価値が空洞化

新潟日報終戦の日 不戦の誓い忘れてならぬ」/「対話」を進めてこそ/憲法の理念が揺らぐ/平和の尊さ再確認を

中日新聞東京新聞「戦後70年首相談話 真の和解とするために」/村山、小泉談話は継承/侵略主体、明確でなく/負の歴史に向き合う

福井新聞「安倍談話と終戦の日 平和国家の道 確かなのか」

京都新聞「終戦から70年  日常に根付く不戦の心こそ」/曖昧だった首相談話/「愚俗の信」の平和論/新たな民主主義の芽

神戸新聞「終戦の日/『平和主義の最先進国』に」/埋まらぬ溝/歴史の逆説/この国はどこへ向かうのか。

山陽新聞終戦記念日 あの戦争をもっと知ろう」

中国新聞「安倍談話 肝心な部分曖昧すぎる」

山陰中央新報「戦後70年談話/『歴史認識』は丁寧な説明を」

愛媛新聞「戦後70年首相談話 周辺諸国の不安は取り除けない」

徳島新聞「首相70年談話 『おわび』の心伝わるか」

高知新聞「【戦後70年談話】歴史を直視しているか」/態度と行動で示せ

西日本新聞「戦後70年談話 真の和解へ首相は行動を」/「負の歴史」認める/「内向き」採用せず/被害者に届くよう

大分合同新聞「戦後70年談話 さらなる明言が必要だ」

熊本日日新聞「戦後70年と安倍談話 『力』より『協調』の未来へ」

宮崎日日新聞「戦後70年談話 行動こそが平和を構築する」/慎重表現や言い回し/子や孫のため友好を

南日本新聞「[安倍首相談話] 戦後70年・さらなる明言が必要だ」

沖縄タイムス「[戦後70年談話]主語漂流 真意はどこに」

琉球新報「戦後70年終戦記念日 不戦の誓いを新たに 評価できない首相談話」/直接の謝罪避ける/軍隊は住民を守らない


 批判的ないしは厳しい評価の例として、河北新報、信濃毎日新聞、高知新聞、琉球新報の社説の一部をそれぞれ引用し、紹介します。

▼河北新報「戦後70年談話/戦略的意図を読み取れぬ」

 似て非なる物。そんな印象を拭えず、多くの国民はもとより国際社会、わけても先の戦争で大きな被害を与えたアジア諸国の十分な理解と共感を得られるかどうか危ういと言わざるを得ない。

 安倍晋三首相がきのう、発表した「戦後70年談話(安倍談話)」である。

 (中略)

 避けてきた「侵略」「おわび」に触れ、先の談話のキーワードを全て盛ったものの、国際的原則や過去の談話に沿わせるなど、自らの真意を覆い隠すかのようだ。

 侵略やおわびの主体の不透明さも否めず、姑息(こそく)と受け取られかねない。説明は回りくどく、自身の認識を回避した格好で、歴史修正主義者との疑念を払拭(ふっしょく)できまい。

 (中略)

 女性の名誉、尊厳に言及、慰安婦問題を抱える韓国への配慮をにじませるが、談話は直接的な表現による反省と謝罪の明示を基本に据えるべきだった。そうした歴史観と慎み深い戦後評価で、和解の道筋をたぐり寄せ平和の基盤を強固にしてこそ、心に響く確かな未来を語れたろう。

 分量が多い割に内容は薄く、安倍談話は「個人の見解」を完全には超えられず、戦略性の乏しい内容にとどまった。よりよい形で「上書き」されるには至らず、あえて発表した意義が問われよう。


▼信濃毎日「戦後70年に 安倍首相談話 言葉の裏を見極めたい」/キーワードを巧妙に/改憲への地ならし/戦後の価値が空洞化

 安倍晋三首相がこだわり続ける「戦後レジーム体制)からの脱却」への布石と考えるべきだろう。

 政府がきのう閣議決定した戦後70年の首相談話である。

 (中略)

 言葉の使い方は巧妙だ。「進むべき針路を誤り」との言い方で、かつての日本の行為を否定的に捉える一方で、侵略戦争や植民地支配が続いてきた世界の歴史に言及している。言い訳と受け取られかねない表現だ。

 反省や謝罪も過去の取り組みとして紹介する形で、安倍首相自身の言葉にはなっていない。歴代内閣の立場を継承すると言いながら、ぼやかした感が否めない。

 本音ものぞく。将来の世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とし、区切りとしたい思いをにじませた。

 首相自身の歴史認識が中国や韓国から問題視され、関係改善が進んでいないのに、おざなりな印象が拭えない。

 このような形にしたのは過去の談話の継承を求める公明党への配慮や、批判が強まる安全保障関連法案に影響が及ぶことを回避する狙いが透ける。

 (中略)

 安倍首相は談話で自由と民主主義、人権といった価値を堅持すると訴えたけれど、足元の日本はどうなのか。国家の利益やメンツを重視し、国民をおろそかにしているのではないか。疑問が残る。

 戦後70年の節目を迎え、首相は民意を顧みずに国の針路を変えようとしている。日本が曲がりなりにも「平和国家」と名乗れたのは私たち国民が強く望んできたからだ。首相が描く将来像は、その大切な取り組みを崩す。


▼高知新聞「【戦後70年談話】歴史を直視しているか」/態度と行動で示せ

 さらに国会で審議中の安全保障関連法案の問題も絡む。自衛隊の海外での武力行使に道を開く法案が、談話の「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」との文言とどう整合性が取れるのか。

 首相の「抑止力が高まることで紛争を未然に防げる」という説明は、国民の理解を得るには至っていない。談話を出したことによって、さらなる説明を重ねる必要がある。強引に成立を図るのは言語道断だ。

 首相はもともと、歴代内閣の「おわび」などの表現を引き継ぐ必要はないというのが持論だった。それが曲折を経て、体裁だけは整えた感が否めない。談話にどう魂を入れていくか、首相が問われるのはこれからだ。


▼琉球新報「戦後70年終戦記念日 不戦の誓いを新たに 評価できない首相談話」/直接の謝罪避ける/軍隊は住民を守らない

 一方で「戦争に関わりのない世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べた。これは「歴史に真正面から向き合う」姿勢と矛盾しないのか。それとも謝罪はもう十分ということなのか。

 首相は過去の国会答弁で「侵略という定義は学問的も国際的にも定まっていない」と述べて物議を醸した。14日の会見でも「どのような行為が侵略に当たるかは歴史家の議論に委ねるべきだ」などと述べている。

 公明党や中韓両国など国際世論への配慮から渋々「おわび」したのではないか。そうした疑念はかえって深まった。率直に加害の過去を反省し、アジアにわびる言葉がなかった点など評価できない。


 一定の評価を示している例として、西日本新聞の社説を一部引用します。受け止めようによっては「肯定的な評価」としてもいいかもしれません。「もし本意が『解決への決意』であるとするならば、安倍首相には中韓との間に残る大きなしこりを解消するために、具体的な行動を取るよう求めたい」と注文も付けているので、そういう分類にはしませんでした。

▼西日本新聞「戦後70年談話 真の和解へ首相は行動を」/「負の歴史」認める/「内向き」採用せず/被害者に届くよう

 国内外の注目を集めたこの談話で、安倍首相は過去の首相談話の継承を明言するとともに、自らの言葉でも先の戦争をめぐる日本の誤りを認め、深い悔悟の念を表明した。

 「安倍談話」は、国内でも国際社会でも、一定の評価をもって受け止められそうだ。安倍首相に次に求められるのは、近隣諸国との和解のための行動である。

 (中略)

 安倍首相がもし今回、村山談話の基調から大きく離れ、「日本は悪くなかった」とか「悪いのは日本だけではなかった」といった歴史観を披歴していたら、村山談話を土台に築いてきた外交の安定を大きく損なうのは必至だった。米国などが抱いている「安倍首相は歴史修正主義者ではないか」との疑念も強まったに違いない。

 細かい文言では批判も可能だろうが、安倍首相が国内の保守層に根強い「内向きの歴史観」を離れ、国際社会に受け入れられる歴史認識を示したことは評価したい。有識者の議論や国内世論の主流を踏まえた歴史観だと言える。

 評価が分かれそうなのは「あの戦争には何の関わりもない私たちの子や孫、そしてその先の世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と述べた点だ。歴史認識問題をめぐって、日本が中国、韓国から批判を受け続けていることを踏まえている。

 「もう謝る必要はない」とする一部保守層の主張を代弁したようでもあるし、「歴史問題は自分たちの世代で解決しよう」という決意を示したとも受け取れる。

 もし本意が「解決への決意」であるとするならば、安倍首相には中韓との間に残る大きなしこりを解消するために、具体的な行動を取るよう求めたい。村山談話が評価されたのも、同時に政権として、さまざまな戦後処理の懸案に取り組んでいたからだ。

2015年-08月-20日

戦後70年の安倍首相談話、読売、産経・FNN調査も「評価」が上回る〜安保法案、産経・FNN調査では「必要」が急増 ※追記あり

 安倍晋三首相が8月14日に発表した戦後70年談話に対する世論調査が2件報じられました。読売新聞社が15、16日に実施した調査では、「評価する」48%、「評価しない」34%。同じ日程で産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した調査では「評価する」57・3%、「評価しない」31・1%でした。先行した共同通信社の調査も含めて、いずれも「評価する」が「評価しない」を上回っています。

読売新聞「70年談話を『評価する』48%…読売調査」=2015年8月18日

 http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000302/20150817-OYT1T50088.html

※産経ニュース「内閣支持率43%に回復 首相談話『評価57%』 安保法案『必要』58%」=2015年8月17日

 http://www.sankei.com/politics/news/150817/plt1508170004-n1.html

 まとめると以下の通りです。

共同通信 「評価する」44・2%「評価しない」37・0%

▼読売新聞 「評価する」48%「評価しない」34%

産経新聞・FNN 「評価する」57・3%「評価しない」31・1%

 「評価する」「評価しない」の差をみると、共同通信7・2ポイント、読売新聞14ポイント、産経新聞・FNN26・2ポイントと随分開きがあります。新聞紙面に掲載されている質問項目をみてみると、ある程度、その理由が推察できます。

 読売新聞の設問は次の通り。談話の内容には言及していません。

 安倍首相は、戦後70年を迎えるにあたり、談話を発表しました。あなたは、この戦後70年談話を、評価しますか、評価しませんか。

 産経新聞・FNNの設問は、まず首相が談話に「反省」「侵略」「植民地支配」「お詫び」という言葉を盛り込み、「歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と表明したことを説明してその姿勢について評価を尋ね(回答は「評価する」59・8%「評価しない」31・5%)、次に、談話が「戦争に関わりのない世代に、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」と表明したことへの評価を尋ね(「評価する」66・1%「評価しない」27・7%)、その上で次のように尋ねています。文体は要旨と思われます。

 70年談話は、積極的平和主義を訴え、国際社会で責任を果たしていく「未来志向」を打ち出している。談話全体について

 「未来志向」という言葉自体にマイナスイメージはないと思います。産経新聞・FNNの調査結果で、70年談話の全体の評価がほかの調査と比べて「評価する」が高く出ているのはそうしたことにもよると推察されます。考えようの違いかもしれませんが、回答を一定の方向に誘導する意図的な設問の組み方のようにも感じました。


 なお、内閣支持率は以下の通りです。カッコ内は前回比。「支持」が回復し、「不支持」が減る傾向にあります。

▼読売新聞 支持45%(2ポイント増) 不支持45%(4ポイント減)

▼産経新聞・FNN 支持43・1%(3・8ポイント増) 不支持45・0%(7・6ポイント減)


 国会で審議中の安全保障関連法案については、産経新聞・FNNの調査で法案が「必要」との回答が58%に上り、前回調査比で15・9ポイント増です。「必要ない」は33・1%で前回比16・6ポイント減。「必要」「必要ない」が逆転したのが目を引きます。

 ※産経ニュース「安保法案『必要』が16ポイントも上昇 女性に浸透 全世代で『必要』が多数」=2015年8月17日

  http://www.sankei.com/politics/news/150817/plt1508170012-n1.html

 産経新聞は以下のような分析を示しています。

 民主党など野党による「戦争法案」「徴兵制復活」といったレッテル貼りが一時的に盛り上がったが、浸透せず有権者の多くが冷静に判断するようになったためとみられる。

 後述のように、同時期の読売新聞の調査では法案への「反対」が「賛成」を大幅に上回っています。わたしは別の要因の可能性もあるのではないかと感じています。

 産経新聞・FNNの設問は「日本の安全と平和を維持するために、安保関連法案の成立は必要だと思うか」で、ここにも誘導を感じないわけではありませんが、前々回は同じ設問でやはり「必要」が「必要でない」を上回っていました。過去記事で書きとめているように、前回は設問の文章が分かりません。わたしが見落としている可能性もあるので、推測でしかありませんが、設問を変えたら「必要」との回答が減り、元に戻したら増えた、ということなのでしょうか。そうだとすれば、それはそれで世論調査のありようの観点からは興味深いと思います。前回7月調査の設問の文章を探してみたいと思います。ちなみに今回調査でも、法案を今国会で成立させることについては「賛成」34・3%(前回比5・3ポイント増)に対し「反対」56・4%(7ポイント減)です。

 安保法案の賛否を問う読売新聞の設問は、今回は前回のような誘導の色彩が薄まって、以下のようになっています。

 現在、参議院で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。あなたは、この法案に、賛成ですか、反対ですか。

 結果は「賛成」31%に対し「反対」55%です。

 前回と前々回の設問は以下の通りでした。

 現在、国会で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。

◇安全保障法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。

※参考過去記事

「読売、日経安倍内閣『不支持』が『支持』上回る〜誘導質問にも『安保法案反対』過半数」=2015年7月27日

 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20150727/1437953822


【追記】2015年8月20日22時35分

 産経新聞・FNNの前回7月の世論調査の設問を当たってみました。7月20日付の新聞紙面に載っていたのを見落としていました。それによると、安全保障関連法案への賛否を尋ねる設問は「日本の安全と平和を維持するために、安保関連法案の成立は必要だと思うか」で、前々回、および今回調査と同一でした。私が今回の記事本文で「設問を変えたら『必要』との回答が減り、元に戻したら増えた、ということなのでしょうか」と書いたのは考え過ぎだったようで、反省材料としたいと思います。

 ただ、産経新聞・FNNの今回と前回との調査結果を見比べていて、あらためて興味深く感じたこともあります。安保法案の理解度です。

 前回7月調査では「よく理解している」6・0%、「ある程度理解している」48・8%で「理解している」は計54・8%です。「あまり理解していない」は31・6%、「ほとんど理解していない」13・3%で「理解していない」は計44・9%になります。

 今回調査では「よく理解している」6・1%、「ある程度理解している」42・2%で「理解している」は計48・3%。。「あまり理解していない」38・3%、「ほとんど理解していない」は変わらず13・3%で「理解していない」は計51・6%になります。

 ちなみに前々回調査では「理解している」は計56・3%、「理解していない」は計43・0%でした。

 整理すると、「理解している」は56・3→54・8→48・3と下がり続けて今回は50%を切っています。これに対して「理解していない」は43・0→44・9→51・6と増え続けています。つまり、理解度は下がり続けているのに、法案への賛否の面では「必要」が急増しています。法案を理解しているかどうかと、法案の成立が必要と考えるかどうかに相関性はない、ということを示す実例なのでしょうか。興味深く感じます。


【追記2】2015年8月21日0時15分

 上記の【追記】に追加です。

 産経新聞・FNNの世論調査の中で、安保法案の理解度と賛否の変遷について再度整理し、法案の成立を「必要」とする回答の推移もあわせて書きとめておきます。

 「理解している」 56・3→54・8→48・3

 「理解していない」43・0→44・9→51・6

 法案の成立「必要」49・0→42・1→58・0

2015年-08月-18日

戦後70年の安倍首相談話に「積極的平和主義」が盛り込まれたことは軽視できない〜在京各紙の社説から感じたこと

 安倍晋三首相が8月14日に発表した戦後70年談話(以下、便宜的に「安倍談話」と表記します)についての、以前の記事(「安倍首相の本意は『謝罪の区切り』ではないか〜戦後70年談話の在京紙報道」)の続きになります。この談話に対して、東京発行の新聞各紙が翌15日付の社説でどう論評しているか、読み比べてみました。近年、特に安倍政権をめぐっては全国紙の論調は賛否や是非が二極化する傾向が顕著になっています。しかし、わたしの印象論ですが、この戦後70年の安倍談話に対しては各紙それぞれに違いがあり、各紙各様の受け止め方に分かれたように感じます。

 特に産経新聞の社説を読みながら感じたことですが、実は戦後50年の村山富市元首相の談話(以下「村山談話」と表記します)を引き継ぐとしたことに不本意なのは安倍首相自身ではないでしょうか。戦後70年に際して談話を出すことを打ち出した当初の狙いは、村山談話を自身の談話で上書きして、村山談話を実効のない存在にしてしまうことだったのではないかと思います。しかし、村山談話、それを継承した戦後60年の小泉純一郎元首相の談話の重みは無視できなくなりました。その代わりに、ということなのか、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」のひと言が安倍氏の本心として入ったように思います。

 談話を出す以上は村山談話を否定できないし、村山談話を継承すると表明することで「おわび」の気持ちを持ち続けていることも表明する。しかし、謝罪という行為は自分はしたくないし、今後はするべきではない―。安倍氏の本心はこんなところではないかと思いますし、談話が長く、村山談話を継承と言いながら主語や対象がはっきりとしない文法がやたらと目立つのも、こうした点からではないかと思います。

 もう一つ思うのは、この安倍談話には歴史認識の問題のほかにもう一つ、将来の日本の国家像の問題があり、そこに「積極的平和主義」が盛り込まれたことの意味です。談話の終わり近く、その当該部分を引用します。

 私たちは、国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、自由、民主主義人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。

 終戦八十年、九十年、さらには百年に向けて、そのような日本を、国民の皆様と共に創り上げていく。その決意であります。

 村山談話を継承するのかどうかや、「侵略」「植民地支配」「反省」「おわび」「謝罪」などの用語に関心が集まったためか、社説の中で「積極的平和主義」に言及したのは読売新聞と産経新聞で、当然ながら両紙とも従来からの社論に沿うため肯定的評価しています。しかし、安倍氏が掲げる「積極的平和主義」は明らかに自衛隊という軍事力の付随を志向する内容です。現在、参院で審議中の安保法制法案は自衛隊の海外展開を飛躍的に拡大させるためのものであり、安倍氏の「積極的平和主義」を具体化させる方策の一つです。そして、この法案には憲法違反との批判が付きまとっています。安倍談話が非戦を誓いつつ、一方で「積極的平和主義」を盛り込んでいることをマスメディアは軽視してはいけないと思います。この談話は閣議決定を経ています。


 それぞれの社説の見出しは、小見出しも含めて以下の通りです。各紙ごとに感じたことなどを、備忘を兼ねて書きとめておきます。

朝日新聞「戦後70年の安倍談話 何のために出したのか」/「村山」以前に後退/目を疑う迷走ぶり/政治の本末転倒

毎日新聞「戦後70年談話 歴史の修正から決別を」/曖昧さ残した侵略/プラスに転化させよ

・読売新聞「戦後70年談話 歴史の教訓胸に未来を拓こう 反省とお詫びの気持ち示した」/「侵略」明確化は妥当だ/女性の人権を尊重せよ/次世代の謝罪避けたい

日経新聞「70年談話を踏まえ何をするかだ」/キーワード盛り込む/未来志向の外交

・産経新聞「戦後70年談話 世界貢献こそ日本の道だ 謝罪外交の連鎖を断ち切れ」/積極的平和主義を貫け/「歴史戦」に備える時だ

東京新聞・中日新聞「戦後70年首相談話 真の和解とするために」/村山、小泉談話は継承/侵略主体、明確でなく/負の歴史に向き合う


 ▼朝日新聞は批判をはっきり打ち出しました。冒頭の一部を引用します。

 いったい何のための、誰のための談話なのか。

 安倍首相の談話は、戦後70年の歴史総括として、極めて不十分な内容だった。

 侵略や植民地支配。反省とおわび。安倍談話には確かに、国際的にも注目されたいくつかのキーワードは盛り込まれた。

 しかし、日本が侵略し、植民地支配をしたという主語はぼかされた。反省やおわびは歴代内閣が表明したとして間接的に触れられた。

 この談話は出す必要がなかった。いや、出すべきではなかった。改めて強くそう思う。

 談話全体を通じて感じられるのは、自らや支持者の歴史観と、事実の重みとの折り合いに苦心した妥協の産物であるということだ。

 安倍談話のうち、「侵略」や「おわび」をめぐる表現に対して批判し、次に談話の扱いをめぐって、閣議決定から個人的談話、再び閣議決定へと揺れたことを批判し、最後に以下のように安倍政治を「本末転倒」と批判しています。

 首相は未来志向を強調してきたが、現在と未来をより良く生きるためには過去のけじめは欠かせない。その意味で、解決が迫られているのに、いまだ残された問題はまだまだある。

 最たるものは靖国神社と戦没者追悼の問題である。安倍首相が13年末以来参拝していないため外交的な摩擦は落ち着いているが、首相が再び参拝すれば、たちまち再燃する。それなのに、この問題に何らかの解決策を見いだそうという政治の動きは極めて乏しい。

 慰安婦問題は解決に向けた政治的合意が得られず、国交がない北朝鮮による拉致問題も進展しない。ロシアとの北方領土問題も暗礁に乗り上げている。

 出す必要のない談話に労力を費やしたあげく、戦争の惨禍を体験した日本国民近隣諸国民が高齢化するなかで解決が急がれる問題は足踏みが続く。

 いったい何のための、誰のための政治なのか。本末転倒も極まれりである。

 その責めは、首相自身が負わねばならない。

 安倍政権に対してはこれまでも批判的だった朝日新聞の社説の中でも、今回は際立って批判が強いように感じます。


 ▼毎日新聞は以下のような書き出しです。

 日本を滅亡の際に追いやり、アジア諸国でおびただしい数の人命を奪った戦争の終結から70年を迎えた。

 安倍晋三首相はきのう、戦後70年談話を閣議決定し、発表した。

 歴史の節目にあたって、国政の最高責任者の発する言葉が担う責務とは何であろうか。私たちは、近現代史について国民の共通理解を促し、かつ、いまだに道半ばである近隣国との和解に資することだと考える。

 安倍首相は「深い悔悟の念」や「断腸の念」を談話に盛り込んだ。だが、その歴史認識や和解への意欲は、必ずしも十分だとは言えない。

 その「必ずしも十分だとは言えない」理由を以下のように書きます。批判だとしても、朝日新聞ほどの激しさは感じられません。

 全体に村山談話の骨格をオブラートに包んだような表現になっているのは、首相が自らの支持基盤である右派勢力に配慮しつつ、米国中国などの批判を招かないよう修辞に工夫を凝らしたためであろう。

 しかし、その結果として、安倍談話は、誰に向けて、何を目指して出されたのか、その性格が不明確になった。歴代内閣の取り組みを引用しての「半身の言葉」では、メッセージ力も乏しい。

 村山談話は、日本が担うべき道義的責任を包括的に表明したものだ。歴史認識の振れを抑える目的と同時に、近隣諸国との長期的な和解政策の一つと位置づけられた。

(中略)

 この村山談話に否定的な態度を示してきたのが安倍首相である。

 村山談話に先立つ95年6月、衆院本会議で戦後50年決議が採択された際、当選1回の若手だった安倍氏は内容に反発して欠席している。

 また05年8月、当時の小泉純一郎首相が村山談話を踏襲して戦後60年談話を出した際、自民党幹事長代理だった安倍氏は「村山談話のコピペ(複写と貼り付け)ではないか」と周囲に不満を漏らしたという。

 その後、首相に返り咲いてからも「全体として引き継ぐ」と曖昧な態度をとり続けた。「侵略」「反省」「おわび」などの文言を引き継ぐかどうかを、必要以上に政治問題化させた責任は首相自身にある。

 一方で、これからの日本の課題を指摘して結んでいます。「安倍政権」とせずに「日本」の課題として記述しています。

 ただし、消極的ながらも安倍首相は村山談話の核心的なキーワードを自らの談話にちりばめた。「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を与えた」と加害性も認めた。その事実を戦後70年の日本はプラスに転化させる必要がある。

 すなわち、すでに定着した歴史の解釈に異を唱え、ストーリーを組み替えようとする歴史修正主義からきっぱりと決別することだ。


 ▼読売新聞は以下の書き出しのように、非常に肯定的です。

 先の大戦への反省を踏まえつつ、新たな日本の針路を明確に示したと前向きに評価できよう。

 戦後70年の安倍首相談話が閣議決定された。

 談話は、日本の行動を世界に発信する重要な意味を持つ。未来を語るうえで、歴史認識をきちんと提示することが、日本への国際社会の信頼と期待を高める。

 読売新聞は社論として、1945年8月に日本の敗戦で終結した戦争は「侵略」であったことを明確に打ち出しています。それまでの日本と戦後の日本は国家として別のものであり、もはや戦前のような戦争国家になることはないとの前提で、憲法9条の改正を社論に掲げ、安倍内閣が現在進めている安保法制の整備も支持しています。そうした立場から、これまでも安倍首相に対し「侵略」を明記するよう求める社説を掲載したりしていました。安倍談話が「侵略」を記述したことで、さぞかし安堵したのではないかとも思います。

 読売の社説は全体的に、安倍談話をどう読み取るべきか、饒舌とも思えるほどに説明しています。その上で、以下のように「『積極的平和主義』を掲げ、世界の平和と繁栄に貢献することが欠かせない」と課題を指摘しています。

 首相は記者会見で、談話について「できるだけ多くの国民と共有できることを心掛けた」と語った。歴史認識を巡る様々な考えは、今回の談話で国内的にはかなり整理、集約できたと言えよう。

 談話は、日本が今後進む方向性に関して、「国際秩序への挑戦者となってしまった過去」を胸に刻みつつ、自由、民主主義、人権といった価値を揺るぎないものとして堅持する、と誓った。

 「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と繁栄に貢献することが欠かせない。こうした日本の姿勢は、欧米や東南アジアの諸国から幅広く支持されている。

 「歴史の声」に耳を傾けつつ、日本の将来を切り拓ひらきたい。


 ▼日経新聞も以下の書き出しのように、好意的です。 

 「歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」。安倍晋三首相が戦後70年談話でこうした考えを明確にした。戦後50年の村山談話を大きく書き改める談話になるとの見方もあった。おおむね常識的な内容に落ち着いたことを評価したい。

 ただ全体としては、安倍談話の評価そのものよりも、これからの課題の方に紙幅を割いているように思います。そこでは以下のような指摘もあります。

 「できるだけ多くの国民と共有できる」というフレーズは70年談話にだけ当てはまることではない。安全保障関連法案への国民の理解はなぜ広がらないのか。安倍首相はこの機会にそうしたことにも思いを広げてほしい。

 首相は日本という国を代表する立場にある。国民の多数の意見を幅広くくみ取って政権運営に努めねばならない。



 ▼産経新聞の社説(主張)の書き出しは以下の通りです。本記もそうですが、「これで謝罪には区切りを付けたい」との、恐らくは安倍氏の本心を前面に出しています。

 70回目の終戦の日を前に、安倍晋三首相が戦後談話(安倍談話)を発表した。

 先の大戦の歴史をめぐり、日本が進むべき針路を誤ったとの見方と、おわびや深い悔悟の念を示した。そのうえで、戦後生まれの世代に「謝罪を続ける宿命」を背負わせてはならないと述べた。

 戦後生まれの国民は人口の8割を超える。過去の歴史を忘れてはならないとしても、謝罪を強いられ続けるべきではないとの考えを示したのは妥当である。

 ただ、全体としてこの談話を支持しているかとなると、どうもそうではないように感じます。例えば村山談話をめぐる以下の部分です。直接の明示はしていませんが、村山談話を引き継ぐ姿勢に対しては批判的なように思えます。

 一方で談話は、先の大戦について「痛切な反省とおわびの気持ちを表明してきた」歴代内閣の立場について「今後も、揺るぎないもの」とし、村山富市首相談話などを引き継ぐ姿勢を示した。

 村山談話は、過去の歴史を一方的に断罪し、度重なる謝罪や決着済みの補償請求の要因となるなど国益を損なってきた。

 首相はもともと、村山談話の問題点を指摘し、修正を志向していた。会見で「政治は歴史に対して謙虚であるべきだ」と述べたのは、村山談話に向けるべき言葉だったのではないか。

 また、「侵略」と「おわび」をめぐっては端的な言及にとどめ、その上で論点を「謝罪外交の断ち切り」へ移しています。

 首相は「国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と日本が誓ったこととして、「事変」「戦争」とともに、「侵略」を挙げた。

 首相は侵略について、具体的な定義は歴史家に委ねるとしつつ、全体としてはこれらを認め、おわびに言及した。

 重要なのは、この談話を機会に謝罪外交を断ち切ることだ。


 ▼東京新聞・中日新聞の社説については、少し長くなりますが、前半部分を引用します。

 戦後日本の平和と繁栄は、国内外での膨大な尊い犠牲の上に、先人たちの努力で勝ち得てきたものだ。戦後七十年の節目に、あらためて胸に刻みたい。

 安倍晋三首相はきのう戦後七十年の首相談話を閣議決定し、自ら記者会見で発表した。

 戦後五十年の一九九五年の終戦記念日には村山富市首相が、六十年の二〇〇五年には小泉純一郎首相が談話を発表している。

 その根幹部分は「植民地支配と侵略」により、とりわけアジア諸国の人々に多くの損害と苦痛を与えた歴史の事実を謙虚に受け止め「痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明したことにある。

 ◆村山、小泉談話は継承

 安倍首相はこれまで、歴代内閣の立場を「全体として引き継ぐ」とは言いながらも、「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、安倍政権としてどう考えているのかという観点で出したい」と述べるなど、そのまま盛り込むことには否定的だった。

 戦後七十年の「安倍談話」で、「村山談話」「小泉談話」の立場はどこまで引き継がれたのか。

 安倍談話は「わが国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」として村山、小泉談話に言及し、「こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものだ」と受け継ぐことを言明した。

 この部分は評価するが、気になるのは個々の文言の使い方だ。

 首相が、七十年談話を出すに当たって参考となる意見を求めた有識者会議「二十一世紀構想懇談会」の報告書は「満州事変以後、大陸への侵略を拡大」と具体的に言及したが、安倍談話では「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」という部分だけだ。

 ◆侵略主体、明確でなく

 この表現だと、侵略の主体が日本なのか、国際社会一般のことなのか、明確にはなるまい。

 評価に値するのか、それとも批判されるべきなのか、一言ではなかなか語れない、という内容のように思いました。 

2015年-08月-16日

安倍首相の戦後70年談話「評価する」44%、内閣支持率43%に上昇

 安倍晋三首相が14日に発表した戦後70年談話に対し、共同通信が14、15日に実施した世論調査では「評価する」との回答が44・2%、「評価しない」は37・0%でした。世論に好意的に受け止められているとの見方が可能な一方で、7・2ポイントの差は評価が割れていると見ることも可能なようにも思えます。いずれ他社の世論調査結果も報じられ、いくつか揃ったところで、はっきりしてくるのではないかと思います。

 ※47news:共同通信「世論調査、安倍談話44%評価 安保の今国会成立反対62%」2015年8月15日

 http://www.47news.jp/CN/201508/CN2015081501001618.html

 共同通信社が14、15両日に実施した全国電話世論調査によると、戦後70年に当たって安倍晋三首相が発表した首相談話を「評価する」との回答は44・2%、「評価しない」は37・0%だった。参院で審議している安全保障関連法案の今国会成立に反対は62・4%、賛成は29・2%。

 内閣支持率は43・2%で、2012年12月の第2次安倍政権発足以降で最低だった前回7月の37・7%から5・5ポイント上昇した。不支持率は46・4%だった。

 新国立競技場の建設計画で総工費が膨らんだ問題について、安倍政権に「責任があると思う」は「ある程度」を含めて78・5%。

 内閣支持率は40%超に戻し、不支持率も50%を切りました。まだ「不支持」が「支持」を上回っているとはいえ、急速な回復のように思えます。戦後70年談話の受け止められ方が反映されている可能性もありますが、支持率低下の最大要因だった安保法制関連法案は、参院での審議がここ数日、お盆で中断していました。審議が再開され、その内容次第ではまた変動がありうるのではないかと思います。


 内閣支持率について、6月からの推移をあらためて列記しておきます。

▼共同通信 6月20、21日実施 支持47・4%(2・5ポイント減) 不支持 43・0%(5・0ポイント増)

朝日新聞 6月20、21日実施 支持39%(6ポイント減) 不支持 37%(5ポイント増)

産経新聞・FNN 6月27、28日実施 支持46・1%(7・6ポイント減) 不支持 42・4%(7・9ポイント増)

読売新聞 7月3〜5日実施 支持49%(4ポイント減) 不支持 40%(4ポイント増)

毎日新聞 7月4、5日実施 支持42%(3ポイント減) 不支持 43%(7ポイント増)

▼NNN 7月10〜12日実施 支持39・7%(1・4ポイント減) 不支持 41・0%(1・7ポイント増)

▼NHK 7月10〜12日実施 支持41%(7ポイント減) 不支持 43%(9ポイント増)

▼朝日新聞 7月11、12日実施 支持39%(変わらず) 不支持 42%(5ポイント増)

▼共同通信 7月17、18日実施 支持37・7%(9・7ポイント減)不支持51・6%(8・6ポイント増)

▼毎日新聞 7月17、18日実施 支持35%(7ポイント減)不支持51%(8ポイント増)

▼朝日新聞 7月18、19日実施 支持37%(2ポイント減)不支持46%(4ポイント増)

▼読売新聞 7月24〜26日実施 支持43%(6ポイント減)不支持49%(10ポイント増)

日経新聞 7月24〜26日実施 支持38%(9ポイント減)不支持50%(10ポイント増)

▼NNN 8月7〜9日実施 支持37・8%(1・9ポイント減)不支持46・7%(5・7ポイント増)

▼NHK 8月7〜9日実施 支持37%(4ポイント減) 不支持46%(3ポイント増)

▼毎日新聞 8月8、9日実施 支持32%(3ポイント減)不支持49%(2ポイント減)

▼共同通信 8月14、15日実施 支持43・2%(5・5ポイント増)不支持46・4%(5・2ポイント減)