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2016年-05月-26日

「オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず 地位協定改定も否定」(琉球新報)「具体性に欠け心に響かず」(沖縄タイムス社説)

 沖縄県うるま市で4月から行方不明だった20歳の女性が遺体で見つかった事件は、容疑者の元海兵隊員で米軍属の男が19日に逮捕されてから26日で1週間です。

 前日の25日には、伊勢志摩サミットのため来日したオバマ米大統領安倍晋三首相が会談し、この事件に対しては、安倍首相が厳重抗議したと発表されたようですが、沖縄県の翁長雄志知事が求めたオバマ氏との直接会談は実現せず、また日米地位協定の改定も、会談では話し合われなかったようです。ネットで見る限りですが、琉球新報は「オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず」との見出しで、この会談のことを伝えています。

◇琉球新報「オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず 地位協定改定も否定」

 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-286140.html

三重県で仲村良太】安倍晋三首相は25日夜、オバマ米大統領と三重県志摩市で会談し、共同記者会見に臨んだ。沖縄県内で起きた米軍属による女性死体遺棄事件についてオバマ氏は被害女性に対する遺憾の意を表したが、謝罪はしなかった。「再発防止にできることは全てやる」と述べたが、具体的な対策は示さなかった。日米地位協定改定について「日本の司法制度の下で正義の追及を阻むものではない」と述べ、改定の意思がないことを示した。安倍首相は「地位協定は一つ一つの問題を改善し、結果を積み上げる」と述べ、大統領に地位協定改定は求めなかった。翁長雄志知事が求めたオバマ氏との面談にも触れなかった。

◇沖縄タイムス「翁長知事、日米首脳会談に失望感 『中身まったく無い』」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169957

 翁長雄志知事は25日夜、日米首脳会談で日米地位協定の改定に言及がなかったことに「大変、残念だ」と述べた。両首脳の共同記者会見には「中身がまったく無い。運用改善では限界があることは明らかだ」と強い失望感を示した。沖縄県庁で記者団の質問に答えた。


 この日は日中、事件の容疑者の職場があるという米軍嘉手納基地のゲート前で緊急県民集会が開かれ、主催者発表で約4千人が集まりました。

◇琉球新報「4000人、基地なき島訴え 嘉手納ゲート県民集会」

 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-286139.html

 米軍属女性死体遺棄事件に抗議する「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍の撤退を求める緊急県民集会」(辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議主催)が25日、北谷町の米空軍嘉手納基地第1ゲート(通称・砂辺ゲート)前で開かれた。平日の日中にもかかわらず約4千人(主催者発表)が参加し、沖縄からの基地撤去などを訴えた。

 集会の冒頭、犠牲者の冥福を祈って参加者全員で黙とうをささげた。参加者は(1)米軍基地の大幅な整理縮小(2)日米地位協定の抜本的な改定(3)普天間飛行場の閉鎖・撤去(4)オスプレイの配備の撤回(5)辺野古新基地建設断念−を日米両政府へ求める抗議決議を拍手で採択した。

 事件に関連した沖縄2紙の26日付の社説は次の通りです。一部を引用します。

【5月26日】

◇沖縄タイムス「[日米首脳会談]具体性欠け心に響かず」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169958

 会談後の共同記者会見では、翁長雄志知事が求めた日米地位協定の抜本的な見直しについては両首脳とも、具体的回答を避け、否定的な姿勢を示した。

 安倍首相とオバマ氏は今回の凶悪事件の発生について「強い憤り」(安倍首相)と「非常にショック」(オバマ氏)を受けていることを明らかにしたが、共同記者会見では最も重要な点が触れられていなかった。

 両首脳は今回の事件のことは語っているが、このような凶悪犯罪沖縄戦の最中から現在まで繰り返し繰り返し起きている事実に対して、どれだけ深刻に感じているのか、会見からはまったく伝わってこなかった。

 米軍関係者による凶悪な性犯罪が発生するたびに、沖縄県民は日米両政府から同じような言葉を何度も聞かされてきた。具体的な政策が示されない限り、沖縄の人々の怒りや悲しみ、両政府に対する不信感が解消されることはないだろう。沖縄との溝は深まるばかりである。

◇琉球新報「県議選あす告示 問われる米軍基地の存在」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-286160.html

 沖縄の将来を占う第12回県議会議員選挙が27日告示される。

 今回の県議選は、元米海兵隊員で米軍属の女性死体遺棄事件によって米軍の存在そのものが主要な争点に浮上した。米軍普天間飛行場の返還名護市辺野古への新基地建設の是非、日米地位協定の改定など、施政権返還から44年たっても変わらない基地問題に対する姿勢が鋭く問われる。

 今回は、13選挙区(定数48)に70人が立候補を予定している。前回より7人多い。既に各選挙区で激しい前哨戦が展開されている。立候補予定者には、有権者が政策を十分理解し、投票できるよう、明確に主張してもらいたい。

 翁長雄志知事が就任してから1年半の県政運営が問われる選挙でもある。

 翁長知事は仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認を検証した結果、2015年10月に承認を取り消した。それを受け国は代執行訴訟を起こし、3月に和解が成立した。政府にとって選挙結果は、県民意識を測る材料となる。県政与党安定多数を維持するかどうか注目が集まる。


 26日付の東京発行各紙朝刊の1面をツイートしてみました。

 各紙とも、オバマ大統領が「遺憾」の意を表明したことを見出しに取っている中で、東京新聞の「地位協定改定求めず」の見出しが目を引きます。嘉手納基地前の緊急集会を1面に入れたのも、同紙だけです。 

2016年-05月-25日

「民意として基地はいらないと示すことが問題解決策」琉球新報―沖縄2紙の社説・5月25日

 沖縄2紙の社説の記録です。沖縄タイムス台湾蔡英文総統就任を受けた「沖台関係の進展に期待」でした。

 琉球新報は元海兵隊員の米軍属の男が逮捕された女性遺棄事件のほか、米軍基地の土壌汚染問題も取り上げました。こちらも、不平等な地位協定の問題が根底にあることがよく分かります。

 

【5月25日】

◇琉球新報「6・19県民大会 真の解決策を示す場に」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-285450.html

 国土面積の0・6%の沖縄に全国の74%の米軍専用施設が集中する。イラクアフガンの戦争では兵士は沖縄から最前線に送られ、「太平洋戦争で血であがなって得た占領地沖縄」に戻る。住民と基地はフェンス一枚隔てるだけだ。軍隊という暴力装置で訓練を受けた彼らが、暴力を平穏に暮らす人々に向けるのを完全に止めることはできない。それは沖縄の戦後の歴史が証明している。

 米軍人・軍属による事件事故を防ぐには、根源である基地をなくすことしかない。沖縄の民意として、もう基地はいらないと示すことが本当の問題解決策なのではないか。県民大会は党派を超え、真の解決策を示す場にすべきだ。

◇琉球新報「基地土壌汚染 沖縄の安全は二の次か」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-285449.html

 キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の跡地の土壌から最大で基準値の21倍を超える鉛が検出されていた。基準値以上のヒ素も見つかり、発がん性が指摘されるジクロロメタンすらあった。

 基地の跡地に土壌汚染が見つかるのは、もはや定例行事だ。隠されているのが当たり前、汚染がなかったら奇跡と言っていいほどである。

 返還地を政府が徹底的に調べ、汚染を完全に除去すべきなのは言うまでもない。問題は、返還後になって見つかるという例が繰り返されることにある。

 米軍は、米本国の基地では、物質の使用履歴や汚染の有無、地点などを厳密に記録する。その使用履歴がない場合、退役軍人の聞き取り調査まで実施して補完する。

 だが沖縄では「土地の使用履歴がない」と言い放つだけだ。紛れもない二重基準である。米本国の人の安全は守るが、沖縄の安全は二の次で、どうでもいいということか。そう問われて答えられまい。

 (中略)

 翁長雄志知事安倍晋三首相との面談で「日米地位協定の下では日本国の独立は神話だ」と述べた。その実例の、これも一つである。

 政府は直ちに地位協定の抜本的改定を求めるべきだ。米国も、本国と同様の対策を実施しなければ差別主義者と呼ばれても仕方ない。

2016年-05月-24日

「沖縄の犠牲を前提にした差別的政策」(沖縄タイムス)「沖縄に犠牲強いるのは日本政府」(琉球新報)―沖縄2紙の社説・5月24日

 沖縄2紙の社説の記録です。それぞれ一部を引用します。

【5月24日】

◇沖縄タイムス「[オバマ氏との面談]政府の責任で実現図れ」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169592

 被害者の父親が23日、事件後初めて、遺体が見つかった恩納村の現場を訪ねた。娘の魂を拾いに来たという。

 県道脇の雑木林の地面にひざをつき、花を手向け、ふり絞るような声で娘の名前を呼んだ。

 「お父さんだよ。みんなと一緒に帰るよ。おうちに帰ろう」

 かけがえのない一人娘をなくした父親の震える声が木立を包み、周りに響く。

 この日、東京では翁長雄志知事安倍晋三首相に会い、語気強く遺体遺棄事件の発生に抗議し、日米地位協定の見直しを求めた。

 「綱紀粛正とか再発防止とか、この数十年間、何百回も聞かされた」

 だが、安倍首相から返ってきた言葉は「実効性のある再発防止策」というお決まりの文句だった。

 沖縄の現実は、再発防止策で事態を取り繕うような段階をとうに過ぎている。再発防止策は完全に破綻したのだ。

 本土の多くの人たちは知らないかもしれないが、沖縄でサミットが開かれた2000年7月、クリントン大統領森喜朗首相と会談し、米兵による相次ぐ事件に謝罪。その日の夜、クリントン大統領は、キャンプ瑞慶覧に1万5千人の軍人・軍属とその家族を集め、「良き隣人たれ」と訓示した。

 16年前の構図が今も繰り返されているのである。

 (中略)

 翁長知事は、安倍首相との会談で、サミット参加のため訪日するオバマ大統領に面談する機会をつくってほしい、と要請した。

 クリントン氏の「約束」が実現できていない現実を踏まえ、政府はあらゆる手を尽くして翁長知事とオバマ大統領の面談の実現を図るべきである。

 (中略)

 米軍関係者による凶悪な性犯罪が、復帰後44年たった今も、繰り返されているのはなぜか。沖縄が世界的にもまれな、基地優先の「軍事化された地域」だからだ。

 日本政府がその現実を承認し性犯罪の発生に有効な手だてが打てない状況は主権国家として恥ずべきことである。政府の政策は、沖縄の犠牲を前提にした差別的政策というほかない。

 基地問題は今回の事件によってまったく新しい局面を迎えた。

 基地の撤去海兵隊の削減・撤退、地位協定の見直し、実効性のある再発防止策−これらの対策を組み合わせた抜本的な解決策が必要だ。

◇琉球新報「知事・首相会談 沖縄に犠牲強いるのは誰か」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-284753.html

 その冷淡ぶりに寒々しい思いを禁じ得ない。うるま市の女性会社員遺体遺棄事件を受け、翁長雄志知事は安倍晋三首相との会談でオバマ大統領と直接話す機会を与えてほしいと要請した。だが首相はこれに答えず、会談後に菅義偉官房長官は「外交中央政府間で協議すべきだ」と要望を一蹴した。

 1995年の事件の際、県内の日米地位協定改定要求の高まりに対し、当時の河野洋平外相は「議論が走り過ぎ」と、交渉すらあっさり拒否した。菅氏の発言は、あの時の冷淡さをまざまざと思い起こさせる。

 菅氏の言う「中央政府間の協議」では沖縄に犠牲を強要するだけだったから、大統領との面会を要望したのである。即座の却下は、その犠牲の構図を変えるつもりがないと言うに等しい。

 沖縄に犠牲を強いるのは誰か。米国との意見交換を仲介し、沖縄の民意が実現するよう動くべきはずなのに、仲介どころか積極的に阻んでいる日本政府ではないか。

 会談では、首相に対する発言としては極めて異例の、厳しい文言が並んだ。翁長知事はこう述べた。

 「安倍内閣は『できることは全てやる』と枕ことばのように言うが、『できないことは全てやらない』という意味にしか聞こえない」

 「基地問題に関して『県民に寄り添う』とも言うが、そばにいたとは一度も感じられない」

 しかしこの、かつて例のない発言が何の違和感もなく、言って当然の言葉に聞こえる。それが県民大多数の感覚だろう。

 広島に行く大統領と面会し、基地集中の是正を直接訴える貴重な機会すら、あっさり拒否される。知事は「今の地位協定の下では日本の独立は神話だ」と協定見直しも求めたが、それもゼロ回答だった。知事が言った通り、県民の思いはもはや「心の中に押し込められないくらい爆発状態」である。

 琉球新報はこの日、2本目の社説も米軍の関連でした。

◇琉球新報「在沖米軍の規律 人権感覚欠如は構造的だ」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-284752.html

 在沖米軍に規律を順守させることは限りなく不可能に近くないか。そんな疑念が付きまとう。

 米軍属による女性死体遺棄事件に対し、全県で怒りが強まる中、米海軍3等兵曹が22日未明、酒気帯び運転の現行犯で逮捕された。

 基準値の約2・5倍のアルコールが検知された容疑者は、米兵の深夜外出や飲酒を規制する「リバティー制度」に違反していた。容疑者の階級なら午前1時以降の外出禁止が課されている。それを破った上で酒を飲み車を運転していた。

 「綱紀粛正」「再発防止」という言葉が空虚に響くばかりだ。

 緩み切っている、空念仏、規律の機能不全、県民は恐怖の連続−。県内政党代表が発した強い怒りは、県民の命が危険にさらされている危機感を反映していよう。

 (中略)

 3月に那覇市内のホテルに泊まっていた米兵が起こした女性暴行事件の後、米軍人の事件・事故防止を協議する日米会合は、それまでの制度運用に欠陥があったかについて検証はなされなかった。

 米軍側の「努力」を喧伝(けんでん)する場になってしまい、再発防止に向けた厳密な検証が素通りされることが、何度も繰り返されてきた。

 日本政府側の弱腰がそれを許容している。日米双方の無責任体質が、米兵犯罪の横行を招いているのである。

 女性死体遺棄事件が殺人事件に発展する可能性が高くなる中、平然と酒気帯び運転できる米兵が出ることにあきれ果てる。二万数千人を擁する在沖米軍の規律と人権感覚の欠如はもはや構造化されている。在沖米軍は「良き隣人」を名乗ることをやめた方がいい。


 本土紙では毎日新聞の社説が印象に残りました。一部を引用します。

◇毎日新聞「沖縄元米兵事件 怒りの本質見つめたい」

 http://mainichi.jp/articles/20160524/ddm/005/070/023000c

 問われているのは、今回の事件だけにとどまらない。

 復帰から44年たってなお、沖縄に過重な基地負担が押しつけられ、住民は基地があるがゆえの不安を感じている。そういう重荷を本土は共有しようとせず、沖縄だけが背負わされ続けている。この不公平で理不尽な状況をどう解決すればいいのか。それが問題の本質ではないか。

 解決のためには、まず基地を縮小することが不可欠だ。とりわけ基地負担の象徴である普天間飛行場の一日も早い返還を実現する必要がある。ただ、それは、県民の多くが拒否する基地の県内たらい回しであってはならない。現在の辺野古への移設計画は見直すべきだ。

 もう一つは、日米地位協定の改定に向けて、日米両政府で議論を始めるべきではないか。

 今回の事件は、男の公務外で起き、県警が身柄を拘束したため、地位協定は障害にならなかった。ただ、もし米軍が先に身柄を拘束していたら、引き渡しを拒否されたり、時間がかかったりした可能性もある。

 事件が絶えない背景として、米軍人や軍属の間に、いざとなれば基地に逃げ込めば地位協定に守られる、という甘えがあるのではないか、と疑わざるを得ない。

 公務外の犯罪で、米側が先に身柄を拘束した場合でも、起訴前に日本側が身柄拘束できるよう、運用改善でなく明文化すれば、犯罪の抑止効果も期待できる。

沖縄タイムス「沖縄の怒り、見誤るな」、琉球新報「大人の責任果たせていない」―沖縄2紙の社説・5月23日

 沖縄タイムス、琉球新報両紙の23日付の社説です。

 ともに一部を引用して紹介します。沖縄県外(ヤマト)の日本人に読んでほしいと思います。

【5月23日】

◇沖縄タイムス:社説「[無言の意思表示]沖縄の怒り、見誤るな」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169432

 大音量のシュプレヒコールもなければ、高く突き上げるこぶしもない。参加者は黒や白の服に身を包み、プラカードを掲げて、フェンス沿いを無言で行進する。

 米軍属の男による女性遺体遺棄事件を受け、女性団体の呼び掛けで開かれた22日の集会は、これまでとまったく違っていた。沈黙の中に悲しみがあふれ、怒りがたぎる。

 北中城村石平キャンプ瑞慶覧ゲート前で、参加者が手にしていたのは、亡くなった人の魂が宿るといわれるチョウの絵。わずか20歳で命を奪われた被害者の苦しみを思い、決して忘れないという気持ちを込め、15分置きに基地に向かってチョウをかざした。

 「命」と書かれたむしろ旗や「怒」の文字など、意思表示の言葉はそれぞれだが、目立ったのは「全基地撤去」を求めるプラカードだ。

 今回の事件で、1995年の少女暴行事件を思い返した人が多い。95年の事件の際は、55年の「由美子ちゃん事件」が語られた。

 21年前、あれだけ声を上げて「基地がもたらす人権侵害」を訴えたのに、ちょうどその年に生まれた女性の命を守ることができなかった。その怒りや無念さが、米軍の撤退を求める以外に解決策はない、との声に集約されてきている。

 約2千人(主催者発表)の無言の行進は、声を張り上げる以上に沖縄の強い意志を感じさせた。同時に基地問題で沈黙し続ける多くの日本人に「あなたたちはどうするつもりなのか」と問い返す行動でもあった。

◇琉球新報:社説「米軍属女性遺棄 大人の責任果たせていない」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-284070.html

 1995年10月、少女乱暴事件に抗議する県民大会で、大田昌秀知事(当時)は「行政を預かる者として、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と述べた。少女の人権を私たち大人は守れなかった。集まった約8万5千人の人たちはつらい涙を流し、二度と犠牲者を出さないことが大人の責任だと考えた。

 あれから20年がたって、若い命が犠牲になってしまった。胸がふさがる。あのとき誓った大人の責任を私たちは果たせていない。

 被害女性の両親は「一人娘は、私たち夫婦にとってかけがえのない宝物でした」と告別式の参列者に宛てた礼状に記した。「にこっと笑ったあの表情を見ることもできません。今はいつ癒えるのかも分からない悲しみとやり場のない憤りで胸が張り裂けんばかりに痛んでいます」。あまりにも悲しい。

 容疑者の元海兵隊員である米軍属は被害者と接点がなく「2〜3時間、車で走り、乱暴する相手を探した」と供述している。女性は偶然、ウオーキングに出掛けただけで残忍な凶行の犠牲になったのだ。

 軍隊という極限の暴力装置に、あまりにも近くで暮らさざるを得ないこの沖縄。事件は沖縄の誰の身にも起こり得る。被害者は自分だったかもしれない。家族の悲しみ、痛みは私たちのものだ。

2016年-05月-23日

「地位協定見直し」「基地の整理縮小」目立つ地方紙・ブロック紙―沖縄の女性遺体遺棄事件の本土紙社説

 沖縄県うるま市で行方不明になっていた20歳の女性が遺体で発見され、元海兵隊員で米軍属の32歳の男が逮捕された事件について、本土(沖縄県外)の新聞各紙も21日以降、社説で取り上げています。米兵や米軍基地関係者による犯罪が繰り返されていること、そのたびに米軍が綱紀粛正を約束してきたものの、効果が疑問視されることを踏まえながら、再発防止を訴える点は各紙とも変わりありません。しかし、沖縄の住民世論の間に強い基地の整理縮小に対しては、論調に違いがあります。地方紙、ブロック紙では、米軍の綱紀粛正を中心にしたこれまでの再発防止策は限界であり、犯罪抑止策として日米地位協定を見直すことや、さらには抜本的な対策として、基地の県外移転を含めて整理縮小を進めることが必要と訴えるものが目立っています。

 全国紙5紙はいずれも21日付で関連の社説を掲載。見出しは以下の通りです。

 ▼朝日新聞「米兵逮捕 基地を減らすしかない」

 ▼毎日新聞「沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え」

 ▼読売新聞「沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ」

 ▼日経新聞「米軍絡みの犯罪防止に全力を」

 ▼産経新聞「元米兵の凶行 怒りを悲劇根絶につなげ」

 朝日は見出しにもある通り、沖縄の基地の整理・縮小を前面に出しています。毎日は、米軍絡みの犯罪への抑止効果の観点から、日米地位協定の改定を議論するよう求めています。朝日、毎日は、もはや綱紀の粛正を図るだけでは限界があるとの認識が前提にあることが共通しているようです。

 対して読売は、あくまでも綱紀粛正の問題だととらえています。過去の対策を検証し、その結果を踏まえて効果的な綱紀粛正策を実施しなければならないとし、さらには「事件を普天間飛行場辺野古移設と絡めて政治利用してはなるまい」と主張します。「基地の整理・縮小」という用語も出てきますが、朝日とはニュアンスが異なり、日米両政府間で合意している基地再編のことを指しているように思えます。

 日経も米軍の綱紀粛正のあり方に疑問を投げかけ「米軍内に沖縄は自分たちが戦争で勝ち取った場所という意識はない、といえるだろうか。同じ島で生活する仲間という気持ちがあれば、このような蛮行ができるはずはない」と指摘しています。

 産経は「沖縄は地政学的にも国の守りの要諦であり、米軍の駐留は抑止力として欠かせない。日米同盟にはいささかの揺るぎもあってはならない」としつつ、「事件に対する感情は別の問題である」「日本の国民が、残虐な事件の犠牲者となったのだ。当然の怒りを自制する必要はない。その感情は、悲劇の根絶に向けた取り組みにぶつけたい」としています。具体策としては、やはり綱紀粛正を強める方向になるのでしょう。

 ブロック紙・地方紙ではネット上で内容を読むことができた社説が19紙ありました。ほかに見出しのみ確認できた社説が2紙あります。

 日米地位協定を見直すことや、さらには米軍普天間飛行場の名護市辺野古地区への移設問題を含めて、基地の県外移転や整理縮小を進めることが必要と訴えるものが最多でした。沖縄の住民世論に近い内容と言ってもいいと思います。以下の14紙です。

 ▼北海道新聞「沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ」

 ▼デーリー東北「沖縄の米軍属逮捕 基地の縮小、移設進めよ」

 ▼信濃毎日新聞「元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ」

 ▼中日新聞東京新聞「元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に」

 ▼福井新聞「沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる」

 ▼京都新聞「沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな」

 ▼神戸新聞「米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に」

 ▼中国新聞「沖縄元米兵逮捕 『綱紀粛正』もはや限界」

 ▼愛媛新聞「沖縄の米軍属逮捕 基地負担の軽減は待ったなしだ」

 ▼徳島新聞「沖縄米軍属逮捕 過重な基地負担が問題だ」

 ▼高知新聞「【米軍属の逮捕】沖縄の悲劇防ぐ具体策を」

 ▼西日本新聞「米軍属逮捕 政府は沖縄とともに怒れ」※22日付

 ▼宮崎日日新聞「沖縄の元米兵逮捕 防止には基地縮小しかない」

 ▼熊本日日新聞「沖縄の米軍属逮捕 抜本対策は基地の縮小だ」※22日付

 以下の3紙は地位協定の見直しを求める内容でした。

 ▼新潟日報「米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇」

 ▼山陽新聞「米軍属の犯罪 沖縄で繰り返される悲劇」

 ▼佐賀新聞「沖縄女性殺害 日米地位協定の見直しを」

 以下の2紙も、再発防止の取り組みが必要と説いています。

 ▼北國新聞「沖縄の米軍属逮捕 積み上げた信頼が崩れる」

 ▼山陰中央新報「沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め」

 北國新聞は「日米両政府は負担軽減のため、嘉手納基地以南の米軍施設返還や米海兵隊のグアム移転を加速させる必要があろう」と、日米両政府間で合意している基地再編案を進めることが必要と指摘しています。また「事件の背景に米軍の治外法権意識の強さや、事件を起こした兵士の処分の甘さがないか。兵士の犯罪が続く根本的な原因を考えてもらいたい」としており、方向性としては一層の綱紀粛正を求めることになるのでしょうか。

 以下の2紙は見出しのみ確認できました。

 ▼秋田魁新報「沖縄・米軍属逮捕 地元の怒り受け止めよ」

 ▼神奈川新聞「沖縄・米軍属逮捕 同盟の根幹を揺るがす」

 沖縄の基地の整理縮小のためには、代替地が必要になってきます。その問題をどうするのか、今回目にした社説の中には具体的な案を挙げたものはありませんでしたが、本土では、沖縄の米軍基地を本土に引き取ろうとの運動も始まっています。本土の新聞、マスメディアはそうした動きもいっそう報じていくべきだろうと思います。

2016年-05月-22日

沖縄タイムス「再発防止策は破綻」琉球新報「全基地撤去要求に向き合え」―女性犠牲、米軍属逮捕事件の沖縄2紙・22日社説(備忘)

 沖縄県うるま市で4月から行方不明になっていた20歳の女性が遺体で見つかり、死体遺棄容疑で元米海兵隊員の軍属の男が逮捕された事件について、沖縄タイムス、琉球新報両紙は22日も関連の社説を掲載しました。沖縄で米軍がらみの性犯罪が続くことに対して沖縄タイムスは「何度も再発防止策が講じられたにもかかわらず、被害が続いているのはその破綻を示すものだ」と説き、琉球新報も米軍人・軍属による事件について「日米両政府は何度も綱紀粛正と再発防止を誓ってきた。しかし事件は起き続けている」と指摘しています。繰り返し事件が起きるのは、再発防止策が緩いからではなく、どれだけ再発防止策を強めようとも米軍基地の密集それ自体が事件を引き起こす、と考えるべきではないかと感じます。

【5月22日】

◇沖縄タイムス:社説「[米軍属暴行殺害供述]再発防止策は破綻した」

 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169307

 沖縄戦で米軍が離島沖縄本島に上陸した直後の1945年3、4月からすでに各地の集落で女性が性的暴行に遭っていることがわかっている。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」などが掘り起こした事実である。

 復帰後、米兵による女性暴行事件は県警によると、昨年末までに129件に上る。「沈黙している」女性のことを考えると、氷山の一角であろう。

 米兵による少女暴行事件が起きた際、当時の米太平洋軍司令官が「(犯罪で使用した)レンタカーを借りる金で女を買えた」と発言して更迭された。軍隊が女性の人権をどう見ているかがあからさまだ。その延長線上に事件はあるのではないか。

 95年の県民総決起大会で決議したのは、米軍人の綱紀粛正と犯罪根絶、日米地位協定の見直し、基地の整理縮小−などだった。県民の要求はいまだ実現されていない。

 在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は3月の女性暴行事件で県庁を訪れ、「綱紀粛正」「再発防止」を約束した。あれから約2カ月。また謝罪である。

 米軍がらみの性犯罪でいったいどれだけの女性が犠牲になったのか。何度も再発防止策が講じられたにもかかわらず、被害が続いているのはその破綻を示すものだ。

 沖縄では基地が女性の人権を侵害する「暴力装置」のような存在になっている。「性暴力に脅かされないで当たり前に生きる権利」すら保障できないような政府はもはや政府とはいえない。

◇琉球新報:社悦「全基地撤去要求 日米政府は真剣に向き合え」

 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-283584.html

 米軍属女性死体遺棄事件の謝罪に訪れた在沖米四軍調整官に対して、安慶田光男副知事は「沖縄の基地全体について県民は反対する可能性が懸念される。事件に対する県民の気持ちは無視できない。注視していく」と述べ、県民の意思表示によっては全ての在沖米軍基地撤去を求める考えを示した。

 米軍人・軍属による事件が起きるたび、日米両政府は何度も綱紀粛正と再発防止を誓ってきた。しかし事件は起き続けている。今年3月にも観光客の女性が海軍兵に性的暴行を受ける事件が起きた。

 この時、謝罪に訪れた四軍調整官は「良き隣人であるため、良き市民であるため、できる限りのことをさせていただく」と述べ、再発防止を約束していた。それにもかかわらず再び犠牲者が出た。

 県内での米軍構成員による凶悪犯罪は日本復帰の1972年5月15日から2015年末までの約43年間で、574件発生し、741人が摘発されている。殺人が26件34人、強盗が394件548人、強姦(ごうかん)は129件147人、放火25件12人となっている。これらの犯罪は、沖縄に基地が存在していなければ起きていなかった。県民は基地あるが故の犯罪にさらされ続けているのだ。

 事件を受けて会見した女性団体の代表らは「基地がなければ事件はなかった」と涙ながらに訴え、沖縄から全ての基地・軍隊を撤退させるよう求める要求書を日米両政府に送ることを表明した。多くの県民の気持ちを代弁している。

 (中略)

 これ以上、言葉だけの再発防止策など聞きたくない。全基地撤去を求める声に、日米両政府は真剣に向き合うべきだ。