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2013年-12月-08日

備忘・秘密保護法成立の各紙紙面〜安倍政権・与党への姿勢の違いは紙面にどう表れたのか

 特定秘密保護法が6日夜、参院採決強行、可決され成立したことに対し、わたしが身を置く関西で新聞各紙がどのように報じたか、朝日、毎日、読売産経日経全国紙5紙(いずれも大阪本社発行の最終版)と京都新聞の7日付朝刊紙面を点検しました。各面の記事の掲載と主な見出しは後段に書き留めておきます。日経を除いて各紙とも本記は1面トップの扱い。総合面、社会面にも関連記事を豊富に掲載しました。

 これまでの報道で、既に各紙はこの法律が今国会で成立することへの賛否を明らかにしていました。この日の紙面でも傾向は変わらず、朝日、毎日、日経、京都は法自体の内容と国会審議の拙速さ、与党による採決強行を批判しています。一方、読売、産経は同法の成立を支持しています。

 1面の本記見出し2本ずつと、社説の見出しを並べると以下の通りです。4紙のうち朝日、毎日、京都は2本目の見出しに「強行」を取っています。通常、社説は1日に2本掲載されますが、日経以外はこのニュース1本に絞りました。

 ▽1面本記の見出し

 朝日「秘密保護法が成立」「自公強行 参院で可決」

 毎日「秘密保護法 成立」「自公が強行採決

 読売「秘密保護法 成立」「参院本会議 み・維退席」

 産経「秘密保護法 成立」「不信任否決、深夜の採決」

 日経「秘密保護法が成立」「機密情報、他国と共有」

 京都「秘密保護法 成立」「与党が採決強行」


 ▽社説

 朝日「秘密保護法成立 憲法を骨抜きにする愚挙」「外される歯止め/権力集中の危うさ/国会と国民の決意を」

 毎日「特定秘密保護法成立 民主主義を後退させぬ」「息苦しい監視社会に/民意を問うべきだ」

 読売「秘密保護法成立 国家安保戦略の深化につなげよ」「統一的なルール明確に/知る権利とのバランス/『原則公開』も問われる」

 産経「秘密保護法成立 適正運用で国の安全保て 知る権利との両立忘れるな」「国民のためにある秘密/NSCが機能する前提」

 日経「『知る権利』揺るがす秘密保護法成立を憂う」

 京都「秘密保護法成立 国民の『知る権利』手放せぬ」「自民の右傾斜を憂慮/第三者の目が要る/ひるまず声上げたい」


 今回のような大きなニュースでは、全国紙は編集幹部の署名入りの論評を掲載します。政局では各社の政治部長というように、執筆者のランクはおおむね各紙同じになるのですが、今回はいつもと違いバラバラでした。

 ▽署名の論評

 朝日・1面「法の危険性 伝え続ける」杉浦信之・ゼネラルエディター兼東京本社編成局長

 毎日・1面「ひるまず役割果たす」伊藤芳明主筆

 読売・第2社会面「『知る権利』に応え続ける」藤田和之・社会部長(東京)

 日経・3面「これで幕引きでいいのか」西田睦美・編集委員

 各紙の紙面を比べながら感じたことをいくつか書き留めておきます。

  • 法の成立を激しく批判する朝日、毎日は1面で編成局長、主筆が覚悟を披瀝しています。注文を付けながらも同法成立を支持する読売は、1面ではなく第2社会面に、主筆や編集局長のような編集責任者ではなく下位の社会部長が書いています。同法へのスタンスだけでなく、新聞として読者に向き合う姿勢も対照的だと感じています。
  • 産経には署名の論評が見当たりませんが、他紙にはないものとして安倍晋三首相の長文のインタビューがあります。取材・執筆は産経新聞社発行の別媒体である夕刊フジのようですが、安倍首相自らが秘密保護法の意義を語り、野党メディアへの批判も口にしています。このインタビュー記事の掲載には驚きましたが、産経の社説(「主張」)に「国民のためにある秘密」との小見出しがあることにも、少なからず驚きました。
  • 朝日、毎日、日経、京都は、採決強行に対し抗議する市民の記事や写真を掲載しています。朝日と毎日は社会面に写真もふんだんに掲載して、全国各地に抗議する人たちがいることを伝えています。読売と産経には、市民の反応の記事はほとんど見当たりません。同様に、識者や専門家のほか、固有の体験を持つ人らが実名で意見を明らかにしている記事が朝日や毎日、京都にはありますが、読売、産経にはあってもわずかです。

 

 このブログの前回の記事にも少し書きましたが、10月に法案が閣議決定され国会提出されて後、課題を指摘しながらも終始一貫、安倍政権と与党に理解を示し続け、法が成立することを支持し続けたマスメディアがあったことの意味は、やはり小さくなかったのだろうと思います。

 1945年に日本の敗戦で終わったあの戦争には、戦火拡大をめぐって新聞の論調が割れ、やがて戦争支持の1本の流れに統合されていった前史がありました。なぜ抗い続けることができなかったのか、その教訓は戦後のマスメディア界に受け継がれていたのか。今からでも遅くはない、今一度、歴史に学ばなければならないと考えています。

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※12月7日付の各紙朝刊の主な記事と見出し。朝日、毎日、読売、産経、日経は大阪本社最終版

朝日新聞

▼1面

・トップ「秘密保護法が成立」「自公強行 参院で可決」「知る権利 損なう恐れ」写真2枚「特定秘密保護法の成立反対を訴え、日比谷野外音楽堂に集まった人たち」「参院本会議で特定秘密保護法が可決成立。散会後、拍手する与党議員たち」

・「法の危険性 伝え続ける」杉浦信之・ゼネラルエディター兼東京本社編成局長

▼総合面

見開き見出し・2面「数の力 強行突破」3面「与党拙速 維・み迷走」

・2面「拍手と怒号 深夜の成立」/「『第三者機関』土壇場の乱造」表・乱立する「新組織」

・2面「知る権利どうなる」/「疑われたジャーナリスト」/「逮捕の不安 警察官も萎縮」条文解説ここが問題・22条「知る権利、報道、取材の自由への配慮」

・3面「与党の国会運営批判」

・4面「強権的、政治に不信」政治学者・杉田敦さん:ワッペン「異議あり特定秘密保護法」/「議事録さえ作れぬ政治」「怒号飛び交う欠陥審議」担当記者はこう見た(2本)

▼社会面

見開き見出し・1社「民の目ふさぐな」2社「やまぬ怒り」

・1社「抗議続行『法廃止に持ち込む』」「『数の暴走』各地でデモ」写真4枚「国会前で抗議」「名古屋・中心街デモ」「大阪・自民党府連前で抗議」「広島原爆ドーム前で抗議集会」

・2社「おごり 忘れない」作家・高村薫さん/「やれることある」神戸学院法科大学院教授・上脇博之さん

・2社「戦中派の警鐘」/「軍へ反対『スパイ扱い』」沖縄戦生存者・知念忠二さん/「監視しあう社会 怖い」ジャーナリストむのたけじさん

▼社説

「秘密保護法成立 憲法を骨抜きにする愚挙」「外される歯止め/権力集中の危うさ/国会と国民の決意を」


毎日新聞

▼1面

・トップ「秘密保護法 成立」「自公が強行採決」「衆院本会議 維・み 退席」写真「特定秘密保護法案が参院本会議で可決・成立し、国会前で抗議の声を上げる人たち」

・「ひるまず役割果たす」伊藤芳明主筆

▼総合面

見開き見出し・2面「与党 数頼みに強権」3面「監視社会招く恐れ」

・2面「公明 抑止力出せず」/「野党 足並み乱れ」表・特定秘密保護法の重大な欠陥、表・特定秘密保護法・内閣不信任決議案への各党の対応

・2面「ドキュメント12・6」/「不信任案に造反 民主・松本氏退席」

・3面・クローズアップ「『適性』照会に回答義務」「地方警官、民間人も対象」/「現行の特管秘42万件」

・3面「日本の情報公開度は?」「先進国では遅れた制度 『不開示』多く黒塗り文書も」質問なるほドリ

・5面「『ひどい男』批判は我慢」「秘密保護法成立 首相の長い一日」/「一時退席 蓮舫氏『そんな話、聞いていない』」

・5面「監察室 補佐的役割」「第三者機関にほど遠く」図解・情報保全監察室の位置付け

▼社会面

見開き見出し・1社「秘密国家 開いた扉」2社「奪われた 市民の権利」

・1社「政府強行 列島怒り」「『民主主義が崩れる』」/「『国会の職務放棄だ』」/「『知る権利』損なわれる 新聞協会」

・1社「子孫の未来 暗くなる」(市民の声:広島・原爆ドーム前、高松市デモ行進、京都駅前集会、奈良駅前集会、自民党大阪府連前)

・1社「参院議員 私の考え」(近畿選出)表・参院議員の一言(11人)

・2社「歴史も痛みも忘れたか」「88歳 被爆詩人訴え」(広島・丸屋博さん)

・2社「国是壊れ 独裁へ下地」ノンフィクション作家 保坂正康さん(73):ワッペン「特定秘密保護法に言いたい」/「『保護法は国際標準逸脱』米財団が表明」

※写真10枚「可決後の国会前」「広島・原爆ドーム前」「北九州市・紫川河畔噴水広場」「JR鳥取駅前」「高知市役所前」「自民党大阪府連前」「和歌山城付近」「JR京都駅前」「神戸三宮」「仙台の商店街」「札幌大通公園

▼社説

「特定秘密保護法成立 民主主義を後退させぬ」「息苦しい監視社会に/民意を問うべきだ」


【読売新聞】

▼1面

トップ「秘密保護法 成立」「参院本会議 み・維退席」「内閣不信任案は否決」表・特定秘密保護法のポイント

▼総合面

見開き見出し・2面「運用 課題残す」3面「国会 最後まで迷走」

・2面「指定基準・第三者監視」「何が特定秘密に?・チェック機関・公務員の委縮懸念」表・特定秘密の対象を列挙した「別表」/「知る権利の保障求める 新聞協会」

・3面・スキャナー「民主 退席後に戻る」「執行部に不満 不信任棄権も」表・野党が今国会に提出した主な不信任、問責、解任決議案/「牛歩や長時間演説 過去にも混乱」表・国会の会期末が混乱した主なケース

・4面(政治面)「与野党 緊迫の攻防劇」「森消費者相『誠実に答弁』・海江田代表『全党一丸』」(ドキュメント)

・4面「与党幹部 必要性を強調」/「みんな 3人造反」

▼社会面

・1社トップ「騒然 深夜の成立」「与党議員『説明続ける』」「ハプニング/『情報保護』は当然/期待と注文と」

・2社「『知る権利』に応え続ける」藤田和之・社会部長(東京)

▼社説

「秘密保護法成立 国家安保戦略の深化につなげよ」「統一的なルール明確に/知る権利とのバランス/『原則公開』も問われる」


産経新聞

▼1面

・トップ「秘密保護法 成立」「不信任否決、深夜の採決」「情報漏洩、罰則を強化」表・参院本会議の特定秘密保護法投票結果、表・特定秘密保護法のポイント

▼総合面

見開き見出し・2面「制度設計が急務」3面「与党 誤算続き」

・2面「施行時期は 第三者機関の人選は」

・3面「秘密保護法 官邸とズレ」

・3面「野党混迷 造反・分裂含み」

・5面(政治面)「国民を、領土を、国益を守るための法律です」「単刀直言 安倍晋三首相 特定秘密保護を語る」「透明性はむしろ増す/NSCで情報を交換/秘密増えることない/戦争と結びつける癖/菅政権の致命的ミス」=夕刊フジ 矢野将史、杉本康士

・5面「秘密保護法成立 3連夜の国会攻防」表・会期末ドキュメント、表・参院本会議の4、5両日の議事経過/「秘密保護法採決、自民・二之湯氏が造反」

▼社会面

・準トップ「国会大荒れ、靴も飛ぶ」「秘密保護法 ぐったり成立」/「『知る権利』阻害防止を 新聞協会声明」

▼社説(「主張」)

「秘密保護法成立 適正運用で国の安全保て 知る権利との両立忘れるな」「国民のためにある秘密/NSCが機能する前提」


日経新聞

▼1面

・「秘密保護法が成立」「機密情報、他国と共有」表・特定秘密保護法の骨子

▼総合面

・3面「乱用排除 運用カギ」「日本版NSCを強化」/「情報管理の点検必要」「防衛関連の企業以外も対象」図解・特定秘密のチェック機関

・3面「これで幕引きでいいのか」西田睦美・編集委員

・4面(政治面)「批判拡大恐れ 成立急ぐ」「首相の意向反映」「秘密保護 会期末の攻防」/「民主は混乱 露呈」「採決を一時退席 不信任案など連発」/「不信任案、維新は反対」「31年ぶり起立採決」表・国会攻防ドキュメント

▼社会面

・トップ「深夜の攻防 議場騒然」「議論求める声なお」「懸念/原発米軍

▼社説

「『知る権利』揺るがす秘密保護法成立を憂う」


【京都新聞】

▼1面

トップ「秘密保護法 成立」「与党が採決強行」「知る権利に懸念」「参院本会議」写真・参院本会議場、表・投票結果、表・特定秘密保護法のポイント

・解説「一線を越えた政権

▼総合面

見開き見出し・2面「『強権』突っ切る」3面「首相 世論を黙殺」

・2面「審議わずか22時間 参院」/「法施行まで準備1年間」

・2面「『日本の後退』懸念 米財団」/「『知る権利』損なう恐れ 新聞協会が声明」/「国民の懸念 払拭されず 民放連

・2面「『強行、クーデターに近い』」市民団体全日本おばちゃん党代表代行の谷口真由美・大阪国際大准教授(国際人権法)

・3面・表層深層「『必ず通す』執着」「視線の先に改憲」「祖父の姿/戦術ぶれ」写真・国会前で気勢を上げる人たち

・3面「平成ファシズムの足音」「『集団的自衛権』警戒」ジャーナリスト鳥越俊太郎

・5面「野党批判『傲慢過ぎる』」「与党強調『ルール作る』」京滋国会議員の反応/「自民・二之湯氏 反対票投じる」/「『緻密な答弁』森担当相称え 首相」

▼社会面

見開き見出し・1社「『恥を知れ』怒り」2社「処罰の恐怖 重く」

・1社トップ「国会周辺『悔しさで涙』」/「抗議中に2人逮捕 公務執行妨害容疑」写真2枚・国会前で抗議する集会参加者、京都市で廃案を訴える労組関係者ら

・1社「納得できない/強引だ」「京滋でも不信募る」

・2社「情報隠し、プライバシー侵害」「市民生活どう影響」「核燃料輸送事故 説明もされず/元官僚の告白 質問の市民逮捕」/「『適正評価』で犯罪歴など調査」図解・特定秘密保護法の市民生活への影響

・2社「怒号とやじ 混乱の可決」写真「参院本会議で特定秘密保護法の採決を前に、抗議の靴を議場に投げ入れる傍聴者」/「拙速採決に抗議 京都弁護士会」

▼社説

「秘密保護法成立 国民の『知る権利』」手放せぬ」「自民の右傾斜を憂慮/第三者の目が要る/ひるまず声上げたい」


※追記 2013年12月8日9時30分

 「安倍政権・与党への姿勢の違いは紙面にどう表れたのか」の副題を付けました。

 きょうは1941年に日本陸軍がマレー半島に上陸、海軍はハワイ真珠湾を攻撃し、日本が対米英戦争に踏み切った日です。1931年から中国大陸で断続的に戦争を続けていた日本は、アジア諸地域と自国民におびただしい犠牲を強いて、45年8月に敗戦を受け入れました。この歴史と教訓は、わたしたちの社会の貴重な財産だと思います。何が戦争容認への道を開くのか、いくら敏感になってもなりすぎることはないと考えています。

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