発声練習

2009-11-19

[] 異分野の成果があなたの分野の発展に役立った事例はありますか?

事業番号13:競争的資金(若手研究育成)についての仕分け人の疑問行政刷新会議事業仕分け対象事業に対してのパブリックコメントを書こう!参加記(2):明日から始める情報発信に関連して。

日本国民の大半が「科学、スポーツ、芸術などは余裕があるときに行うことであり、不況で余裕がない現在はこれらをやる必要がない」と考えていると仮定したとき、「科学研究は科学技術立国のために必要不可欠だ」という主張は、何かしらの共感や理屈付けが伴っていない限りまったく届かない主張になってしまう。

子ども手当てや高校の授業料無償化は、明らかに科学研究やスポーツ・芸術振興と同じような投資なのだけれども、「未来を担う子ども達に選択の可能性を増やそう」という多くの人が納得する(全ての人ではないところに注意!)物語を持っているため、支持率が高い。

これを真似て、基礎研究や応用研究の必要性をアピールするためには、今まで無駄と思われていた研究成果が*年後に〜に使うという用途が提案されて**の分野の基礎的技術/ホットトピックになっているというエピソードが有用だと思う(こういう利益を説くアプローチは、当然、副作用があるけれども現在の状況ではもっともアピールできると思う)。

この不況下においても基礎研究の灯をともし続けるべきだと思う人は、ぜひ、この3連休中に「今まで無駄と思われていた研究成果が*年後に〜に使うという用途が提案されて**の分野の基礎的技術/ホットトピックになっている」というエピソードをブログや自分のWebページにアップして欲しい。自分で書くのが難しい人は、そのようなエピソードが書かれている本の書評は紹介をしたり、それが書いてあるWebページを紹介して欲しい。

「今まで無駄に思われていたもの」という点とは違うけど、基礎研究の有用性を示したエピソードの例としては以下のエントリーが参考になる。

有機化学の分野で、エノラートの化学と呼ばれるものがあります。C=O結合の隣で炭素-炭素結合を作る反応で、まず最も基本的な合成反応といえるものです。この基礎研究が与えた影響がどのくらいか、調べてみたことがあります。

とりあえずこの反応を使って作られた医薬のうち、手近な資料に載っていたものだけで、総売り上げは楽に2兆円を超えていました。抗生物質、スタチン剤など主要な医薬も多く含まれますから、命を救われた人、病苦から解放された人は数知れずでしょう。

情報はリンクしあっていたほうが良いので、可能ならばこのエントリーにトラックバックを打っていただけると嬉しい(Web上にあるだけで、検索には引っかかるので「基礎研究 役に立つ」あたりのキーワードを入れてもらうだけでもOK)。

私の知っている事例:素因数分解Amazonでのショッピング

私が感動したのは、RSA暗号のエピソード。数学整数論という分野において、ある数字Xが与えられたとき、それは何の素数(1と自分自身以外では割り切れない数字)を掛け合わせて作られた数なのかを見つける方法(素因数分解)が研究されており、誰が行っても必ず同じ結果がでる方法(機械的な手法)を考えると、既に分かっている素数を使って小さい順にその数字Xを割っていくしかないということが分かった。この方法だと、数字Xの桁数を変えることで、最新のスーパーコンピューターでも素因数分解するのに1時間〜数億年かかるように調整できることが分かった。(この部分は不正確な記述があります。Marriage Theoremさんが訂正してくださいました。こちらどうぞ)

この数学者だけしか楽しめないような事実を基にして、公開鍵暗号の典型例であるRSA暗号という画期的な暗号方式が提案された。このRSA暗号は、発展をとげて、今のインターネット上の買い物を支える基本的な技術となっている。数学の整数論において素因数分解について研究がされていなければ、Amazonやe-Bay、Yahoo Auctionなどは存在しなかった(あるいは、発生が遅れた)ぐらいの技術。

wikipedia.jaなどでRSA暗号の部分を読んでもあまりわかりやすくないし、ドラマチックでもないので、以下の本がオススメ(私はこれを読んで感動した)。

ハードカバーで暗号自体の歴史をじっくり読みたいならば以下の本がオススメ。

人類の科学がグネグネしながらも、知見をあつめて発展してきた歴史を知りたいならばこちらが面白い。この本を読むと科学というのは天才だけのオペラなのではなく、たまにはバトンを落としてしまうような人間たちによるリレーなのだということが良く分かる。アインシュタインがいなくても相対性理論は生まれただろうけど、誰かがその研究をしていなければ、その研究は生まれなかった。世界規模で多様なテーマにそれぞれがそれぞれのやり方でタックルし続けていくことが重要なのだとわかる。

CoCo 2009/11/21 03:02 今回の記事にトラックバックさせていただきました。
大した記事がないようなブログですが、少しでもお力になれたら幸いです。

私自身も、しがない自然科学系院生の身ですが、何か良いネタがないか探してみます。

next49next49 2009/11/21 12:00 >Coさん

ありがとうございます。ぜひ、お願い致します。

薬作り職人薬作り職人 2009/11/22 23:41 今回の記事に賛同し、基礎研究の応用例についての記事を書かせていただきました。
新薬開発の立場からの記事です。お力になれたら幸いです。

mrknmrkn 2009/11/22 23:57 GPS なんて一番良い例だと思ってます。GPS が運用できるのは我々が一般相対性理論を知っているからです。一般相対性理論は、その理論より前にリーマンが考えだし、多くの数学者が発展させた数学を利用して記述されてます。

next49next49 2009/11/23 01:43 >薬作り職人 さん

おもしろい事例の提供ありがとうございます。
当時は重要でないと思われていた観察結果でも、ちゃんと研究の手順に
従い科学的な記録を残していたおかげで、新薬の開発につながったのですね。

まさに、名も知れぬ基礎研究の成果が私たちの生活に関連していることが
よくわかる事例だと思います。

ありがとうございました。

next49next49 2009/11/23 01:45 >mrknさん

事例の提供ありがとうございます。

MarriageTheoremMarriageTheorem 2009/11/23 22:07 記事中のRSA暗号に関する記載について思うところがありまして当方のブログで反応させていただきました。

なお、記事自体のご趣旨には賛同させていただきます。私からも何か事例を提供したいと思っています(が、まだ書けていません・・・)。

next49next49 2009/11/23 23:06 >MarriageTheoremさん

前回の記事といい不正確な事を書いてしまいすみません。
指摘ありがとうございます。

やまやま 2009/11/24 16:20 はじめまして。やまと申します。
よろしくお願いします。

「当初は無駄と思われていた」という制限を無くせば、
基礎研究が実益をもたらした例はたくさん有ります。

純粋数学であるクルト・ゲーデルによる「不完全性定理」から
アラン・チューリングによる「チューリング・マシン」が生まれ、
現代につながる実用的計算機が開発された例などどうでしょう?
要した期間はわずか十数年。驚異的な速さです。

核分裂の発見と原子爆弾の開発もそうですね。

未だに実用化はされていませんが、
量子力学と量子コンピューターの例も有ります。

最近は基礎と応用が接近しているので、
基礎研究が応用に直結する例が増えていると思います。
私はダメダメ博士課程院生に過ぎませんが、
有名な例を指折り数え上げると、
細胞の分化とiPS細胞と再生医学、
細胞の老化とテロメアと抗がん剤、
RNAiとRNAi医薬品
等、枚挙に暇が有りません。

探せば他にもたくさん有ると思います。

next49next49 2009/11/25 01:19 >やまさん

コメントありがとうございます。
「当初は無駄だと思われていた」という縛りは特に無くてもよいのですが、
エピソードは重要なので、ご自身の分野において何かそういう例があれば
ぜひ、エントリーにあげていただけると幸いです。

ちょっと古いですが「知ってるつもり」「漫画はじめて物語」「そのとき歴史が動いた」
みたいに物語があるほうがアピール度が高いと思いますので。

今考えると私の子どもの頃は「漫画はじめて物語」シリーズで毎週土曜日に
いろいろと科学関連の話を目にすることができたんですね。最近では「所さんのメが点」
ぐらいですかねぇ。

wd0wd0 2009/11/25 17:30 素数が無限にあることのFürstenbergによる証明とかはどうでしょう。Zにうまい位相を入れるだけで素数の無限性を証明してしまうところで、初等整数論の基本定理を一般位相空間論で一刀両断してしまうことの意外さです。

それなりの予備知識がないと意外性が理解できないので、一般受けしないのが難点ですが。

next49next49 2009/11/25 19:07 >wd0さん

コメントありがとうございます。
ただ、ご提示の例は非研究者の日常まで届いていませんので
説得力は薄いと思います。今回の私のエントリーの趣旨にしたがうならば
「素数が無限にあること」が分かることがなぜ重要なのかを説明する必要があります。

ちなみに私には「素数が無限にあること」の重要性はわかりません。

MarriageTheoremMarriageTheorem 2009/11/27 09:29 >next49さん

>「素数が無限にあること」の重要性

例えばnext49さんが文中で挙げられているRSA暗号一つとってみても、

>数字Xの桁数を変えることで、最新のスーパーコンピューターでも素因数分解するのに1時間〜数億年かかるように調整できる

ことが実際に保証されるためには、いくらでも大きな素数が存在する必要があります。さもないと、RSA暗号の強度(鍵サイズ)をある一定水準以上に上げられないことになるので、その上限の強度を持つ暗号を破れるスーパーコンピューターが出現した時点で(RSA暗号のアルゴリズム自体に欠陥がなくても)RSA暗号自体の終焉となります。
ある日突然「これ以上暗号の強度を上げられません」なんて事態になったら大騒ぎなわけで、「素数が無限に存在する」という数学的事実がRSA暗号を実用に供する上で一つの保証と安心感を与えてくれています。
もっと言えば、素数が無限に存在したとしてもその分布があまりにスカスカだったらやはり使い辛い(暗号の強度を飛び飛びにしか上げられなくなる)ので、素数定理をはじめとする素数分布に関する研究成果もRSA暗号の実用化の重要な背景として挙げられるのではないかと個人的には思います。

MarriageTheoremMarriageTheorem 2009/11/27 09:37 >やまさん

>未だに実用化はされていませんが、
>量子力学と量子コンピューターの例も有ります。

同じく量子力学を応用した情報技術としては、量子コンピューターよりも量子暗号(量子鍵配送)の方が実用化が早そうですね。
既に実際の光ファイバーを用いた実験(確か、数十km〜100km程度の通信距離)も複数の研究機関が行っていますし、最近では衛星光通信を量子鍵配送に応用するための実験( http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h21/091123/091123.html )なども行われているようです。

next49next49 2009/11/27 18:21 >MarriageTheoremさん

なるほど、私は実用上、素数の数が十分に多ければ(桁数も大きければ)それで良いと
考えていましたので、素数が無限にあることの重要性はそれほど感じていませんでした。

> その上限の強度を持つ暗号を破れるスーパーコンピューターが出現した時点で
> (RSA暗号のアルゴリズム自体に欠陥がなくても)RSA暗号自体の終焉となります。

これについては、これまでいろいろな暗号が破られ、終焉を迎えてきていますので
特に問題ないかなと思っていました。

> もっと言えば、素数が無限に存在したとしてもその分布があまりにスカスカだったらやはり使い辛い
> (暗号の強度を飛び飛びにしか上げられなくなる)ので、素数定理をはじめとする素数分布に関する
> 研究成果もRSA暗号の実用化の重要な背景として挙げられるのではないかと個人的には思います。

なるほど。そうですね。

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