5/4 Hey!Say!JUMP ASIA FIRST TOUR 2012 @横浜アリーナ/アリーナという空間とアイドルの身体

Hey!Say!JUMPのコンサートに行ってきた。約一年ぶり、前回のJUMPコンがジャニーズとしては初参加のコンサートで、3月のSexy Zoneのコンサートが2回目、そして今回のJUMPコンが3回目。まだまだジャニーズ初心者である。
ちなみに初参加したJUMPコンでの感想ツイートをまとめたTogetterがこれ。

ジャニーズ初心者のハロヲタ男子が行くHey!Say!JUMPコンサート初参加感想
http://togetter.com/li/86021

ハロヲタ男子」などという恥ずかしすぎる呼称を使ってしまった件に関しては深く反省して、今回の感想を。

そもそも自分はHey!Say!JUMPに関してはメンバーの顔と名前がぎりぎり一致する程度で、お気に入りの山田涼介君と八乙女光君を除くとその他のメンバーのパーソナリティは殆ど知らないという状態だ。楽曲は馬飼野康二氏が関わるシングル曲は非常に好きで、特に「真夜中のシャドーボーイ」と最新シングルの「SUPER DELICATE」がお気に入りである。前回のJUMPコンの参加動機は真夜中のシャドーボーイを生で見たかったというものであり、今回の参加動機は歌番組で見たSUPER DELICATEのJUMPメンが縦一列に並び最前の山田君の残像のように時間差で動くダンスの素晴らしさをこの目で生で見てみたいというものだった。

全体的な感想を先に言うと、前半は微妙だったが、後半はかなり楽むことができた。「Ultra Music Power」「情熱JUMP」「Dreams come true」「SUPER DELICATE」という人気のシングルを中心としたスタートダッシュは勢いがあったが、その先から中盤が非常に中だるみしていたように感じられた。そして真夜中のシャドーボーイでそれまでの(あれ、こんなもんか)という失望は吹き飛び一気にボルテージは最高潮、幸せな気分で終演を迎えることができた。

中盤に中だるみしたように感じられたのはいくつかの理由にまとめることができるかもしれない。ゴンドラに乗って移動したりワイヤーで空を飛んだり、イリュージョンをしてみたり楽器を演奏したりと様々な試みが次々と登場するのだが、それに対して新鮮な驚きと喜びを感じるかというとそうではなかった。SUPER DELICATEや後半の曲で気づいたのだが、自分はHey!Say!JUMPが全員で踊っていることに対してどうやら一番魅力を感じるようだ。ジャニーズのユニットの中でも(現状)9人組という大所帯で、その特徴を生かした統率のとれたフォーメーションダンスの輝き。たしかにSMAPや嵐、Sexy Zoneといった5〜6人組メンバーの方が各メンバーのキャラクターも覚えやすいしバランスがいいのだが、Hey!Say!JUMPに関してはメンバーのキャラクターがわからなくてもJUMP全体、一体としての魅力を感じることができる。特定の担当(推し)メンバーがいるファンであればそのメンバーを目で追いかけ、外周ステージをまわって自分の近くに来た時にアピールをするという楽しみ方があるが、自分の場合はそれがないために外周にメンバーが散り散りになることはおろか、Hey! Say! 7とHey! Say! BESTの2グループに別れるだけでも魅力が薄れるように感じてしまうのが残念だった。

そのようなわがままな初心者ファンの自分を喜ばせてくれたのは、やはりSUPER DELICATEだった。アリーナ中央のセンターステージにメンバー全員が集まりフォーメーションチェンジを繰り返しながらキレのあるダンスを繰り出していく。JUMPの集団ダンスは「静と動」の使い方が非常に上手だ。普段自分が見ている女性アイドルのダンスが主にしなやかさやダイナミックさといった側面をアピールするのに対し、彼らは手や首や身体の角度とシルエットを重視しているように思える。運良くサブステージに近い立ち見席だったので、メンバーが一直線に並び山田君の残像となって時間差で動いていく様子を正面に近い位置からみることができた。SUPER DELICATEでのJUMPはまるでひとつの生命体のようだ。山田涼介という絶対的なエースの影に徹しながらも、細かく自己主張するメンバーたち。山田涼介すなわちHey!Say!JUMPと錯覚しそうであるが、少し考えればどう見てもこのダンスの肝は影たる他の8人の動きだ。自分が思うHey!Say!JUMPという存在そのものを表現しているSUPER DELICATEはほんとうに素晴らしい。
とりわけ凄かったのが、間奏Cメロ明けのラストサビ。山田涼介と中島裕翔が見つめ合ったまま動かない。SUPER DELICATEは「君にしか見せられない顔がある」と繰り返すが、この「君」は我々観客だと思っていたら中島裕翔だった。この裏切りに会場は騒然とし、悲鳴が反響する。ジャニーズのコンサートではこのようなホモセクシャルな関係を匂わすファンサービスがMCや曲中にたびたび挿入されるのは「お約束」なのだろうが、自分はこの手のお約束はあまり好きではなかった。しかし、この時の二人の見つめ合いは「お約束」「ホモセクシャル」といった切り取り方をする前に直接その凄みが自分に突き刺さってきて、身体が震えた。
言い方が難しい。自分がホモセクシャルに目覚めたとかジャニーズのお約束に対応したとか、おそらくそういうことではなかったのだ。このようにメンバー同士が見つめ合う姿に観客が反応するというパターンは、例えば落ちサビなどで特定のメンバーに注目が集まり(真夜中のシャドーボーイだったら「shadow...」、Sexy Zoneだったら「Sexy Rose...」などがわかりやすい)観客の期待を一心に背負った上で行う事が多い。女性アイドルファンだったら最近の曲だと東京女子流の「Liar」で山邊未夢と庄司芽生がキスをする振り付けを思い出してもらいたい。しかしSUPER DELICATEでの見つめ合いはラストの大サビで、センターステージの真ん中で、他のメンバーは踊りだしている中で行われていた。今までの歌番組で披露してきたこの顔の寄せ合いは、カメラ=我々の視線に対して目を向けながら行われていた。しかし、今回は360度全方位から15000人のファンの視線を浴びながら、二人は目を向け合い続ける。他のメンバーと我々は最後のサビでラストに向けて走りだしているのに、まるで二人だけ時が止まったようだ。その見つめ合いは息が詰まるほどに長く感じられ、「もうやめて!」なのか「もっと!もっと!」なのかは僕にはわからなかったが、横浜アリーナは凄まじい悲鳴で覆われる。その悲鳴をあざ笑うかのように、いや、2人は我々のことなどまるで全く気にかけていないかのように(テレビカメラの視線に対してアピールするのとは対照的である)見つめ合い続ける。山田・中島と我々は同じ空間にいながらも完全に断絶していた。わざわざ全国から会いに来たのに、やっと同じ空間で相対することができたのに、すべての視線を受けながらも2人はそのすべての視線に応えようとしなかったのだ。ここで我々は二人の前では皆平等だった。決して交わることのない、不可侵な領域。自分は二人のホモセクシャル的な関係性よりも、アイドル-ファンという関係性の中で、アイドルという不可侵な領域がステージに立ち現れていたことに衝撃を受けていたのだろう。
それにしても山田涼介という存在の凄みを改めて感じた。この男は、自分がJUMPの中でどういう存在であり、ファンからどういう役割・虚像を求められているのかをほぼ理解していて、そこから逃げるでもなく、「お約束」としておざなりに済ませてしまうあるいはネタや笑いにしてしまうのでもなく、正面からその欲望に向きあって、こちらの想像以上のものを投げ返してくれる。なんて格好良いのだろうか。


さて、SUPER DELICATEの素晴らしさはこれくらいにして、中盤以降の話へ。様々な試みに挑戦していたもののどれもあまり心に響かなかったことは既に書いたが、その試みの中で一番自分が好きだったのは、和太鼓だった。広いメインステージにまっすぐ横一列に等間隔に並べられた9つの和太鼓。太鼓の腹の部分は様々な色が発光するようになっており、JUMPのイメージにはあまりむすびつかない和太鼓のパフォーマンスで、シンプルな力強さと光によるエンターテインメント性を兼ね備えたものに仕上がっていた。
ここでよかったのは、メインステージに9人が横並びになってどっしりと構えている点である。今回のコンサートでは、メインステージを使うときは9人がこのように横並びでステージいっぱいに広がることが多かった。特に目を引いたのが、ステージの背面にある巨大スクリーンに流れる映像とJUMPメンバーの動きを組み合わせた演出である。KAGEMUというライブパフォーマンスユニットが得意とする演出方法であり、昨年2011年紅白歌合戦において先輩ユニット嵐がチームラボとコラボレーションしこのような演出を用いたことでも有名である。

自分が初めてテレビ番組でKAGEMUのパフォーマンスを見たとき、近い将来アイドルコンサートの演出でもこれは流行するだろうなと思っていたら嵐が早速紅白歌合戦で取り入れており、今回JUMPコンサートで初めてこれに近い演出を生でみることができた。メインステージの横いっぱいにJUMPメンバーが広がり、メインスクリーンの映像と共に踊る姿はほぼ真反対のサブステージ側から見ても非常に見応えがあった。これは大人数のJUMPならではの演出だったと思うし、メインステージいっぱいに広がることでフォーメーションチェンジができなくても、個々のメンバーに順番に光を当てたり、メインステージにメンバーの分身を投影して実際の身体と組み合わせることで、斬新でスペクタクルなステージが成立していた。
特にこの映像と身体を組み合わせた演出が光っていたのは、後半頭についにやってきた「真夜中のシャドーボーイ」だった。真夜中のシャドーボーイではメインステージの手前に光を半透過する布を張っており、そこにも映像を投影することで、メインスクリーン/ステージ上のメンバー/前面の即席巨大スクリーンという3層のレイヤーがメインステージ上に出現した。基本的に暗いステージで、上下のセットも使って大きく広がった9人のメンバー。ソロパートごとに個別のメンバーにスポットライトを当てて身体がステージに浮かび上がり、同時にメインスクリーンではそのメンバーの分身が投影され、さらに前面の半透過スクリーンでは例えるならスーパーロボット大戦の戦闘シーンのカットインのように超巨大なメンバーの顔のアップが重ねられるという演出が登場したのだった。

参考:スーパーロボット大戦のカットイン
ロボットのレイヤーの上に、人物のレイヤーがカットインする様子


メンバー紹介のPV映像のようでもあり、ゲームのようでもある。現実の身体が拡張され、物体と情報の間でアイドルの身体が揺らいでいく。これまでもアイドルコンサートでは後方の観客のためにメインスクリーンやサブスクリーンにメンバーの顔のアップを映すことは行われてきたが、メンバー及びステージの前面のレイヤーに顔のアップを投影するという映像体験は初めてであり、メンバーの背面に映し出されるのとは全く印象が異なる。メインステージはアイドルの身体と接続しアイドルの生身の身体が拡張されたものが映し出されており、その前面に突如として巨大な顔のアップという生身の身体からは切り離されたものが挿入されたときの興奮をどう表現すればいいのかわからない。山田涼介の「shadow...」という台詞部分やラストの「傷つけずに愛したい」というパートで彼の顔が映しだされたときは興奮のあまり倒れるかと思ってしまった。

真夜中のシャドーボーイの後もBEAT LINEやOVERといった格好良い曲が続き、「Thank you〜僕たちから君へ〜」から「ありがとう〜世界のどこにいても〜」というありがとう繋ぎもばっちり決め、アンコールを3曲歌ってコンサートは終わった。

「SUPER DELICATE」「真夜中のシャドーボーイ」という自分が大好きな二曲でこのような素晴らしい演出を体験することができて本当に楽しいコンサートだった。今回のJUMPコンサートでは、改めてジャニーズの飛び抜けた演出力を見ることができた。イリュージョンやワイヤー飛翔など、「空間」を使う試みはまだまだなように思えたが(この部分に関してはDVD等で見る限りドーム級を経験している先輩ユニットが得意としているのだろう。JUMPの今後の課題なのかもしれない)、その反面「真夜中のシャドーボーイ」で登場した3層構造の演出は、客席に対してある意味「平面」であるメインステージ部分を使って、アイドルの身体を現実空間でどのように拡張表現していくのかという問題意識に対して刺激的で示唆的なものが提示されていた。そして「SUPER DELICATE」でもこれだけ多くのファンを背負ったアイドルがなお「アイドル」として成立しているその聖域の秘訣と秘めたる力の一部を思い知らされた。

正直なところ次はやっぱりSexy Zoneを見に行きたいかな、メンバーそれぞれのキャラが掴めてるし!とも思ったのだが、Hey!Say!JUMPもまた一年後くらいに見に行きたいと思う。その時も多分自分は山田くん以外のメンバーのキャラクターを知らないままだろうけれど、それでいい、それでも楽しませてくれるという信頼感がHey!Say!JUMPにはあるのだ。


SUMMARY 2011 in DOME

SUMMARY 2011 in DOME