みることの沈黙

廣野由美子『視線は人を殺すか―小説論11講』 (ミネルヴァ書房) 読了。

視線は人を殺すか―小説論11講 (MINERVA歴史・文化ライブラリー)

視線は人を殺すか―小説論11講 (MINERVA歴史・文化ライブラリー)

 以前に同じ著者のこの本を読んで面白かったので、ただしこんどは図書館で借りて読んだ。
 小説で視線が果たすいろいろな役割を論じている。文字通りのまなざし・目つき、といったものから、目撃・見て気づいてしまうこと、いろいろな意味がそこには含まれるが、私がいちばん心惹かれるのは、『緋文字』『レベッカ』の二作をとりあげて「脅かす視線」と題した章である。目撃あるいは監視(見て知ってしまったぞ、ずっと見ているぞ)というかたちで相手を支配下に置きコントロールする。また、目つきに込めた侮蔑や憎悪といった感情によって相手をしだいに追い詰めていく。というような視線の権力・暴力が物語を動かしているという指摘にスリルを感じた。

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