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2011-04-22
つくば市の件について、ちょっと
えっと、これですね。↓
東京電力福島第1原発の事故後に福島県から避難し、茨城県つくば市に転入しようとした人に対し、市が放射線の影響を調べるスクリーニングを受けることを求めたり、受けたことを証明する書類の提出を求めていたことが19日、分かった。
中日新聞:ページが見つかりませんでした(CHUNICHI Web)
これの何が問題か。
放射能のスクリーニング検査はあくまでも被曝した当人の安心のために行なわれるものであって、他人が「証明書」を要求するたぐいのものではありません。証明書を要求すること自体、被曝の意味をまったく理解していないのだし、差別ですよ。
放射能差別を許してはならないのだから(4/21 わりと重要な追記あり)
ま、そうでしょうね。
で、問題は、つくば市がこれを組織的に(市ぐるみで)行ったのか、それとも、市の命令系統のどこかで行き違いや齟齬があってこういう結果になってしまったのか、ということ。つまり、そもそもの市の方針に問題があったのか、現場(窓口)での運用の問題なのか、と。これは、どちらにせよ問題であることには変わりないと言えばそうですが、批判するベクトルが大きく変わることだと考えるわけです。
それで、結論を先に書いておくと、他の報道やつくば市の説明などにも目を通してみた結果としては、これは後者なんじゃないの、というのが俺の感触です。つまり、つくば市の説明を疑う理由はあんまりないなー、と。
では、各紙の報道内容を比較してみましょう。
つくば市によると、検査を要請した文書は市民課が作成し、転入者を受け付ける「窓口センター」に課長名で3月17日に通達された。福島県から避難して市に転入する人について「(県内の)土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく。検査終了後問題がなければ、通常の手続き」と明記している。
中日新聞:ページが見つかりませんでした(CHUNICHI Web)
はい、中日新聞(共同通信から買った記事らしいですが)のこの記事を読むと、つくば市が市民課の課長名での通知を3月17日に出して、その中に「(県内の)土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく。検査終了後問題がなければ、通常の手続き」とあった、としか読めません。これは、大問題だ。これが本当なら「市ぐるみ」の問題だ、ということになります。
他の報道も見ます。
つくば市の説明によると、3月17日、市民課長名で「転入手続きについて」と題する通知を各窓口に配布。この中で、福島県からの転入者について「保健所で放射線に関する検査をしていただく。検査終了後、問題がなければ通常の手続き」と指示していた。
放射能検査問題、配慮足りなかった…つくば市長 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということで、読売新聞も中日新聞と同様。
つくば市が、福島県からの転入者に対して東京電力福島第1原発事故の影響を懸念し、放射線量検査(スクリーニング)を求めた問題で、担当課長は3月17日付の文書でこうした方針を職員に通知していた。通知から1カ月余過ぎて事実を知った災害対策本部長を兼務する市原健一市長は19日、会見し「本部と担当で考え方に若干ずれがあった」と釈明した。
会見で市原市長は「スクリーニングは義務や強制ではなく、市民や本人の安心を考慮し、お願いしていた。差別につながるとの意識はまったくなかった」と強調。一方、「担当者が文書を作って配布したとの報告は当時はなかった」と組織として対応に問題があったとの認識を示した。
この問題は、仙台市から転入手続きをした男性が今月11日、同市大穂窓口センターを訪れ、職員から線量証明書の提示を求められ抗議したのが発端。福島県以外からの転入は、通常の手続きを取る規定だったが、市市民課によると、職員が勘違いしたという。
内部文書には、福島県からの転入者手続きについて「被災後であれば土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく」と記載されていた。抗議を受け検査を求める方針を全面撤回した。
毎日jp(毎日新聞)
毎日新聞のこの記事はちょっと慎重に見ましょう。
3月17日につくば市が(おそらく市民課課長の)通知を出したということは、他紙と同じ。しかし、「被災後であれば土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく」と記載されていたのは、「内部文書」だという。これは、結構重要なポイントです。
課長の通知というのは、公文書です。公文書というのは、対外的にも公開されうるものだ、ということです。だから、俺は上で「大問題だ」と書きました。通知の中に「被災後であれば土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく」というように書いてあれば、市の公式の見解として、差別的な取り扱いをするという方針を出した、ということになるからです。
しかし、毎日のこの記事だけでは分かりにくいのですが、これは通知ではなく内部文書に記載されていた、しかも、市長は「担当者が文書を作って配布したとの報告は当時はなかった」と言っている。そもそも「スクリーニングは義務や強制ではなく、市民や本人の安心を考慮し、お願いしていた。差別につながるとの意識はまったくなかった」とも言っている。つまり、市としてスクリーニングを強制しようとしたのではなく、通知の意図するところが窓口の担当者にうまく伝わらず、誤解されたまま、おそらく窓口の業務に当たる際のマニュアルのようなものとして「内部文書」が作成され、誤った運用がされた、という可能性がある、ということです。
さらに毎日新聞の別の記事に、その内部文書の写真が掲載されています。
この写真を見ると、分かる人は分かると思うのですが、少なくとも公文書としての通知の体裁ではありません。公文書であれば、普通は冒頭に、誰に宛てたものであるか、誰が書いたものか、いつ書かれたものかといったことが明記されているはずです。俺はこの写真を見て、「これは市が正式に出した通知ではなく、現場で作成したマニュアルっぽく見える」と思いました。もし、この写真の文書を「課長名の通知」であるとして報道されたのなら、そりゃ限りなく誤報に近いそれだな、とも思います。
さらに、
同市では、福島第一原発で大規模な水素爆発があった3月14日以降、福島県などから一時は約600人が避難してきた。避難所に入る際には任意でスクリーニングを受けるよう呼びかけ、受けた人には、異常がないことを示す証明書を配布した。転入希望者についても17日、健康確認のため保健所で任意で検査を受けるよう呼びかけることを市民課が5カ所の窓口センターに文書で通知した。
検査の実施や異状の有無は転入者の受け入れと一切関係ないが、市の説明によると、窓口センターの一部の職員が証明書を転入の条件と勘違いし、転入者に提示を求めたという。今月11日に仙台市から転入を希望した男性から抗議を受け、発覚。男性の転入届も受け付けたという。
茨城県は3月17日、県内の市町村長に対して、県外からの避難者へのスクリーニングは不要との通知を出している。
同市の市原健一市長は4月19日の会見で、「避難者や市民に不安を抱かせないために検査を紹介したが、一部の対応が誤解を生んだことは心から申し訳なく思う」と陳謝。市内の公務員宿舎などを被災者に提供する計画もあるため、「今後も最大限、被災者を受け入れたいと思っている」と話した。
asahi.com(朝日新聞社):転入者に放射線検査の証明要求 「勘違い」つくば市謝罪 - 社会
最後は朝日新聞ですが、俺の感触ではこれが一番穏当というか、事実に近いのではないか、と。
つまり、スクリーニングはあくまでも避難者に「任意」で受けてもらおうとしたものであり、「検査を要請」とか「スクリーニング検査を受けた証明書の提示を求めて」とか「放射線量検査(スクリーニング)を求めた」とか、そういったことをつくば市として組織的に行おうとしたものではなく、通知の内容を誤解したために起こった現場の運用により、不当な取り扱いが発生してしまった、ということなんではないかと。
また、3月17日に、茨城県が「県内の市町村長に対して、県外からの避難者へのスクリーニングは不要」という通知を出してるそうですが、科学的な合理性はない(ので、そこは批判の対象となりうる)としても、この時点で「任意」での検査を呼びかけること自体は、自治体の行政上の判断としてはそんなに責められるもんかな、という気はします。
それで、つくば市がこの件に関する謝罪と説明を「福島県からの避難者への放射線検査について」と題して、市長名で市の公式サイトに掲載してるのですが、
茨城県は,震災後,福島原発事故の避難所2か所をつくば市内に開設し,福島県からの避難者の受け入れを行いました。その後,つくば市が同2か所の避難所の運営を行うこととなりました。その際,茨城県が既に保健所で実施していたスクリーニングを継続して実施することといたしました。しかし,対象者が多く,土浦保健所での対応が困難であることから,つくば市消防本部のほか,産業技術総合研究所,高エネルギー加速器研究機構,筑波大学の協力を得て,避難所でのスクリーニングを実施いたしました。
この当時は,福島原発事故後まもなく,放射線や放射性物質に関する公式な情報が少ない中で,放射能に対し誰もが不安を感じていました。このような状況で,避難所への避難者だけでなく,福島県からの一般転入者に対してもスクリーニングを受けていただくようお願いすることにいたしました。
市民課窓口及び各窓口センターにおいても,3月17日に転入者に対し,スクリーニングをお願いすることといたしました。その後,各地の放射線量に関する公式な情報が公表されるようになり,市民課窓口では,3月24日に,福島原発20キロメートル圏内の方についてのみスクリーニングをお願いすることといたしました。
しかし,この取扱いの変更が各窓口センターに周知されず,加えて,本件報道の宮城県からの転入者の方については,窓口センター職員の錯誤により,転入案内の対応の際に,配慮を欠いたものとなってしまいました。
しかしながら,スクリーニングを実施されなかった方に関しても,つくば市が転入届を受理しなかったというような事実はございません。つくば市としては,もとより被曝は伝染するなどという認識は持っておりませんし,まして福島県の方々を差別する意図がなかったことを御理解いただきたく存じます。
no title
俺の主観では、朝日の記事と大きな矛盾点は感じませんが、どうでしょうね。この文章の中の「お願い」というのが、「任意」ではなく「事実上の強制」ではないか、という声もあるようですが、そこの判断はちょっと難しいですね。
何しろ、いちばん肝心の「3月17日付の市民課課長名の通知」の原文の内容が分からないので、そのような批判が妥当なのかどうか判断できないと思うのですね。その原文の内容が分かれば、俺のこれまで書いてきてきた「感触」が全然違うよ、という結果になる可能性もあります。
また、3月24日に「福島原発20キロメートル圏内の方についてのみスクリーニングをお願いすることといたしました」とあるのも、それに科学的な合理性があるのかと言えば、まー、ないんだろうなという気はしますが、繰り返しになりますが、自治体の行政上の判断として著しくおかしいとまで言い切れるのかは微妙な気はします。科学的な合理性を公共に適用する、その過程での避けがたい(本当は避けた方がいい)摩擦のようなものがここでおきているのかな、と。*2
もう一度まとめると、俺はこの問題については、「3月17日付の市民課課長名の通知」の原文の内容が分からないという点について留保つきではあるけれど、基本的には、つくば市の市ぐるみの組織的な差別行為ではなく、誤解に基づく現場での運用から生じた問題である、と考えています。
さて、そうなると、つくば市の何が問題で、何を批判すべきなのか。
俺の推測通りであるならば、通知を「誤解」したまま、問題のある「内部文書」を作成した職員がいて、それを現場の責任者もチェックをしているはずなのに、それがそのまま通ってしまった。また、それをさらに「勘違い」して不適当な運用をした職員がいた。それらをきちんとチェックしきれなかった、という意味において、つくば市の組織的な問題や落ち度は批判の対象になると思います。
しかし、じゃあ、具体的に誰が誤解したり勘違いしたりしたんだということを追求し始めたら、それはある個人を晒し上げすることにしかならないんじゃないか。それこそ内部では何らかの処分が行われているんじゃないかと推測しますので、それ以上はそこを突くのは悪趣味の類かな、と。*3
俺としては、差別云々の文脈を外して、不適当な運用にならないように行政のチェック機能を強化するよう求めていく、というのが落とし所かな、と思いますね。
*1:「毎日jp(毎日新聞)」からの引用。
*2:つまり、「スクリーニングは不要」という科学的に合理性のある判断がある一方で、「原発の近くに行った人はスクリーニングを受けてるじゃん」(例えば「放射線量検査スクリーニングの基礎知識 / 浪江町取材の記者は1.5kcpm」の記事のように)ということがあるわけで、そこの関係をどう市民が納得のできる着地点に持っていくか、そこで起きてしまった摩擦なのかな、と。そこを批判するのは容易いのですが、少なくとも、それって差別の問題と言っちゃっていいのかな、という疑問は湧きます。
*3:ぶっちゃけ、3月・4月は人事異動の季節なので、現場に不慣れな職員とか新人さんも居て、いろいろ大変なんじゃねーの、と思ったりはします。
2011-03-09
痴漢と痴漢冤罪を無くす(減らす)にはどうしたらいいのか、ちょっと考えてみる。
更新を大分さぼっていたら、3月にして2011年初めてのエントリに。ま、今後もこんな感じで気まぐれにしか更新しないんじゃないかなー。こんなんでも読んでくれる人がいるなら嬉しい限りです。
で、なんでこのエントリを書こうかと思ったかと言うと、TwitterでこんなツイートがRTされてきたのが目に入ったから。↓
女の人達が痴漢いやだね、いなくなりゃいいのにって話してる時に「痴漢冤罪も怖いぞ!」って男の人がキレ気味にやってくる場面を時折見かけるんだけど、痴漢がいなくなりゃ痴漢冤罪もなくなるんだから、痴漢撲滅を一緒に考えてくれたらいいのにと思う。
http://twitter.com/junko39/status/44570066880180225
あー、もっともな意見だよなー、と思って。
んじゃ、痴漢(と痴漢冤罪)を無くすにはどうしたらいいんだろうってことを考えようか、と。
先に断っとくと、俺は、この問題はフェミニズムとかミソジニーとかそういう思想の問題にしなくても、社会的に合意が得られて、技術的に解決できる(解決に近付ける)方法があるんじゃないかな、という気がしてるんですね。それは具体的に何かってことを下記に書いてみようと。
1.まずは、痴漢の発生状況についてググってみた。
Google先生に「痴漢 発生場所」で尋ねてみたら*1、警視庁のサイトが引っかかって、そこから、平成22年度中の「都内における痴漢犯罪の検挙状況」というページにたどり着きました。ここ。*2→http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu8.htm#06
それを見ると、痴漢の発生時間(時間別検挙状況)、発生場所(場所別検挙状況)、被害者の年齢層(年齢別検挙状況)が分かります。警視庁なんで、東京都内限定だし、「検挙状況」がそのまま痴漢の発生状況とイコールで結べるかどうかについては慎重になるべきでしょうが、今回はとりあえずの対策案の提示にすぎない、ってことで、そのあたりには目をつぶります。つぶってください。
以下にグラフを引用します。↓
1.時間別検挙状況
はい、明らかに通勤・通学時間帯に偏ってますね。「通勤・通学時間帯である午前7時から午前10時までが最も多く、約4割がこの時間帯に集中しています」というのが警視庁の分析。
2.場所別検挙状況
電車が65.9%、駅構内が11.9%ということで、鉄道関係だけで77.8%を占めている、と。「通勤・通学・帰宅時の混雑時の電車や駅で、痴漢被害が最も多くなっています」という警視庁の分析。
3.年齢別検挙状況
10代が35.5%、20代が45.4%、とこれだけで8割以上。圧倒的に若い女性が被害に遭っているのが分かります。
とまあ、これらはだいたい実感とそう違わない結果ではないかと思います。
2.そして、痴漢が起きやすい「状況」について考えた。
で、俺が思ったのは、「これって、通勤ラッシュが、もっといえば満員電車が悪いんじゃね?」ということ。だいたい、痴漢が起きやすい要因の一つに満員電車に代表される混雑した場所の「死角の多さ」があるんじゃないかと。(で、この死角の多さが痴漢冤罪の起こる要因でもあるのでは、と。)
見知らぬ人同士が、閉鎖的な空間であれだけ体を密着させなければならない状況というのは、考えてみれば異常なことで、ラッシュ時の電車内以外ではまずありえないんじゃないでしょうか。
全然関係ない話ですが、インフルエンザが流行した時など、予防には人混みをさけるべし、なんてことを言われたりするんですが、そのたびに「満員電車で移動しとったらそんなことできんがや」と思うんですよね…。
逆に、ガラガラの電車内を想像すれば、そこで痴漢をしようとする人がいれば不自然に体を密着させようとすることになるので、それは目立つだろうから、行動にうつすのを躊躇するだろうし、行動にうつしたとしても第3者に見とがめられる可能性が高い、と考えるのが普通ではないかな、と。そして、そのような不自然な行動をとらなければ痴漢冤罪に巻き込まれる可能性も減るのでは、と。
個人で痴漢(や痴漢冤罪)に遭わないようにできることは、たかが知れていると思うんですよ。上記のグラフを見れば、「満員電車を避ける」というのが最善策に見えるんですが、それに乗らないと通勤・通学ができないとなれば、もう乗らざるを得ないわけです。
多くの人が、これに乗ると痴漢に遭う(痴漢冤罪に巻き込まれる)リスクが高いと分かっていながら、その状況に甘んじているということが見えてきますね。
この状況を何とかしないといけないんじゃないでしょうか。
3.それじゃあ、満員電車を無くす方法を考えようぜ。
ということで、痴漢が起きにくい状況にしてしまえば、痴漢も痴漢冤罪も減るんじゃないか、と俺は考えるのですが、その推論が正しかったとして、どうやったらその状況を作れるか考えてみよう、と。
具体的に、満員電車を無くすにはどうしたらいいか。
俺が思いついたのは…
(1) 電車の本数や車両数を増やす。
(2) 通勤・通学時間をもっとフレキシブルにする。
結局そんなところ。あと、男女別の車両を増やすというのもありますが、満員電車を無くす対策とは言えないと思いますので、今回はこれは除いて考えます。
(1)については、結構今でも限界に近いような気もするんですが、仮にこれが可能だったとして、たとえば電車の本数を今の2倍にしたら、ある程度は満員状態が緩和されるのではないかとは思います。ただ鉄道会社にかかる負担は相当大きくなるだろうとも思われるので、運賃の値上げなどは避けられないと覚悟する必要はありそうです。
(2)については、まだまだいける余地があるんじゃないのかなと思うんですが、どうでしょう。企業にしても、学校にしても、始業時間を揃えるメリットもあるんでしょうが、フレキシブルにした場合のメリットとどちらを取るか、って話になるのかな、と。痴漢被害に遭う人のうち35%以上が10代というのは、通学中に被害に遭うケースがかなり多いと推測されるので、ここを改善するメリットはかなり大きいような気はしますが。手始めに官公庁や公立学校から試行してみたらどうでしょうかね。
俺の足りない頭ではこの程度の案しか思い浮かびませんが、他に妙案があれば、ブログでもTwitterでもその他の手段でもいいので、どんどんみんなが発信していって、議論を深めていけばいいと思います。最終的には社会が変わっていけばいいと思いますが、犯罪や冤罪を防ぐことで得られるメリットやデメリットを分析し、コストの負担をどう考えるか、そういった具体的な議論がまずは必要なんじゃないかな、と。
4.とはいえ…
満員電車を無くしたとしても、痴漢がすべて無くなるわけではないです。それは、上記のグラフからも明らかです。その他の性犯罪を含めて、どのように社会的にというか現実的に対応していくか、という議論もまだまだ必要でしょうね。
2010-12-29
たぶん今年最後の更新に、最近の読書と見た映画のメモ。
まずは読書メモから。
- 作者: 吉野裕子
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これは面白かったですね。蛇の生態の話から始まって、それが文化や慣習の中にどう溶け込んでいるのか、様々な角度から検証していくといった内容。「信仰」とタイトルにある通り、信仰の対象としての蛇について「これも蛇、あれも蛇」と指摘されていくのですが、ほんとにこれでいいのかと若干疑問に思いつつも、自分にとって未知の知見が示されていくのは、なかなか刺激的な読書体験でした。鏡の考察と諏訪神社のミシャグチ神の考察が特に興味深かったです。
- 作者: 本郷和人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/04
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同じ著者の『武士から王へ』に続けて読んだもの。正直、タイトルの「なぜ」の部分については食い足りなさが残りました。でも、「後醍醐天皇は言われる程傑出した人物じゃないんじゃね」とか「権威も剥ぎ取られた天皇」とか「情報と文化の王としての天皇」といった内容は面白かったですね。ただ、結構『武士から王へ』と内容が被ってて、それはテーマが近いこともあって仕方ないんでしょうが、ちょっと微妙ではありました。
個人的な興味の問題で言うと、この本で江戸時代より前、安土桃山時代くらいまでの天皇の存在がどういうものだったかはある程度つかめてきたかな、あとは、江戸期以降ももう少し見ておきたいな、と思ってます。
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いわゆる私小説ですね。作者の鴨志田穣氏は2007年に亡くなられています。一言で言ってしまえば、アルコール依存症の人が家庭や生活や健康といったものを失い、そしてそれらを少しずつ回復していく過程を淡々と綴った小説、ということになりますかね。俺は、鴨志田氏のことを鴨ちゃんと呼ぶくらいには親しみを感じていますが、それは彼の奥さんであった西原理恵子さんの漫画に負うところが大きいです。彼女の作品を通して何となく身近に感じていた鴨ちゃんが亡くなった時は結構ショックでした。そういえば、アルコール依存症について前にこのブログで書いたときにも、彼のことを引き合いに出しましたっけ。→http://d.hatena.ne.jp/nijuusannmiri/20080408
この小説について言えば、これを読んで、俺の中では鴨志田穣という作家の評価をだいぶ変えました。00年代で最も重要な作家だったのではないか、と。少なくとも、個人的には。
端から見ると深刻この上ない状況に見えるのに、それを描く筆致は淡々として、ときにユーモラスでさえある、こういうのが書ける人というのは得難いものだと思うんですよね。欲を言えば、もっとこの続きが読みたかったな、と。
続いて、映画鑑賞メモ。
まずは、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』。
特に何の事前情報もなく見てきました。見てからもう一月くらい経ってるので、結構忘れちゃってますが、わりと良かったんではないかな、と。若き日のジョン・レノン、ビートルズになる前のジョンを描くというのはなかなか勇気のいる挑戦だったと思いますが、俺から見ると、普通の良質な青春映画として成立していて、好感を持ちましたね。
ジョンという人は、特に日本ではかなり聖人君子的なイメージで消費されてるんじゃないかと思うのですが、俺がたしか小学生のときに読んだビートルズの伝記本にも、家庭生活の面ではかなり無茶苦茶だったというふうに書かれてて、表裏のギャップがかなりあったんだろうな、と思うんですよね。
この映画の中のジョンは、とんでもない不良で、まー、今の言葉でいえばDQN? そんな感じです。後のDV野郎の片鱗もちゃんとあって、彼の聖人君子イメージをぶっ壊してくれてて、そこはとてもよかった。ストーリーの重要部分は、ジョンとその実母と育ての親である伯母との間の複雑な人間模様、といったところ。こういうのをきっちり描いてくれる映画が俺は好きですね。ジョンの生い立ちがこの映画の通りだったと言えるかどうかは分かりませんが、1950年代の普通の若者を描いた作品として見て面白かったです。
印象に残ったのは、ジョンがニュース映画でエルビスの映像を見て前のめりになっっていくところと、彼が初めてギターを手に入れたときに自分の部屋にそれを飾って眺めるシーン。あー、誰でも同じことやるんだな、と。俺も初めてベース買ったとき、似たようなことやったな、と。あれですよ、アニメの『けいおん!』で唯が初めて買ったギターに名前を付けてうっとりするところがあったと思うんだけど、あれと基本的には同じ。そういうのが、リアル、かな。
ああ、あと、ミミ伯母さんは最高です。
最後は『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』の映画版。
上記の鴨ちゃんの小説の映画化ですね。
これはですね、もう予告編を見た段階で涙腺が危なくてですね、実際に見たらどうなっちゃうんだろうと思ってたのですが、案の定、後半は泣かされっぱなしでした。
欠点はないとは言いません。編集の問題なのか、若干時系列が分かりにくいかと。俺は原作を読んだばっかりだったので、その辺の問題は実際はなかったんだけれど、前後のつながりが1日後なのか数ヵ月後なのか1年後なのかちょっとつかみにくい気がしました。それはひょっとしたら意図された演出だったかもしれませんが。
しかし、そんなことは瑣末なことです。この映画で素晴らしかったのは、俳優さんたちの演技! 主演の浅野忠信さん始め、共演の永作博美さんも子役の子たちも、その他の脇を固めた方々もすごく良かったと思う。
なんというか、見ながら全然冷静でいられなかったので、「評価」という意味では自分に自信がありませんが見れてよかったな、と。
西原さんもちょっと出演しています。*1
さて、このあとには『毎日かあさん』の映画版というのが控えているわけですが、どう仕上がっているのか楽しみなような怖いような…。
2010-10-21
最近読んだ本(8月以降)
たんなるメモですよ、と。以下、だいたい読んだ順。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/08/31
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/08
- メディア: 文庫
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- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/08
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北方先生の本を読んだのは『武王の門』が初めて。南北朝時代に九州をほぼ統一した、南朝方の懐良親王の物語。最近興味を持った人物を描いた作品だったこともあって、かなり面白かったです。で、続編の『陽炎の旗』にも手を出してみましたが、そちらは『武王の門』に比べるとだいぶ落ちるかな、と。ただ、北方先生の歴史小説はもう少し他の作品も追いかけてもいいかな、と思ってます。
- 作者: つかこうへい
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1998/04
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超面白いし、泣ける。ちょっと前に「10代で読むべき本」というネタがありましたけど、10代はこれ読むといいですよ。あと、30代で読んでもいろいろ感じるところがありました。奥付を見て、2010年(つか氏が亡くなったあと)にようやく第2刷とあって、驚きました。良書。
- 作者: 本郷和人
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 新書
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主に中世の王権についての考察。これも面白い。教育者としての本郷先生の情熱も感じられて、好感を持ちました。内容もかなり説得力があるし、武士政権の鎌倉→室町→江戸の流れも(個人的には)すっきり。
- 作者: 野内良三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/05/25
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これはいいですよ。人文系の論文書く人にはかなり使えると思う。あと、仕事で文章書かなくちゃいけない人(文筆業の人は除く)も。いちばん共感したのは「起承転結は実用文向きではない」というところ。むしろ「結論から書いて、その後に理由とか結論を補強する内容を書け」と。
- 作者: 岡田英弘
- 出版社/メーカー: ワック
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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中国(と中国人)を理解するための本。いわゆる嫌中とか反中の書を期待して読むと肩透かしかも。岡田先生の本を何冊も読んでると、繰り返しの部分も出てくるので、個人的にはあんまりおいしくなかったのですが、そうでない人は読んで損はないかと。岡田先生の説をそのまま丸呑みにしちゃうのもどうかと思いますが、非常に参考にはなります。
- 作者: 鈴木治
- 出版社/メーカー: 學生社
- 発売日: 1999/01
- メディア: 単行本
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これはね、衝撃の書ですよ。663年に白村江の戦いで唐と新羅の連合軍に破れたあとの日本で、壬申の乱によって政権を取った天武朝は、唐の傀儡政権だった!という内容。その後、紆余曲折がありながらも、唐の影響は遣唐使を廃止するまで続いた、と。一見奇抜な発想かとも思えますが、奈良の薬師寺の諸仏の様式から当時の事情を推測していくくだりなんかは、かなり説得されます。もともと昭和40年代(1972年)に書かれた本なので、内容的には古さを感じさせる部分や細部の表記の矛盾(誤植なのかも)は気になりますが、大筋として興味深いな、と。あと、大仏開眼あたりの話も面白かったですね。
でも、これ、岡田先生の日本の古代史観とは対立しちゃうんですけどね。その辺は本郷先生の言う「当為と実情」ということで処理できるのかな、どうかな、といったところ。ここら辺を説明しだすと大変なんで、読んでない人にはさっぱりだと思いますが、あしからず。
というわけで、どれも褒めてばかりでなんですが、外れを引かなくてよかったな、と。




