「過剰歯ではありません。隣の歯がローテーション（回転）しただけです」
（？？？）
４０年前に問題の小臼歯は抜歯済み。いくら口中を探しても、現在、その姿は見られない。歯茎の内側に開いていた穴も数年で閉じた。昔の話をしたら、とんでもない方向に会話が展開。後から考えると、どういう訳か「志の輔」は、目の前の白髪頭が完全に揃っている小臼歯を過剰歯と思い込んでいる、との錯誤に陥ったようだ。つまり、過去の話題を提供したら、今も過剰歯の状態にあるとの誤解に至った訳。４本の抜歯が既に済んでいることが聞こえなかったか。歯の模型や外の患者の歯型を取り出すと、治療そっちのけで語り出した。
「不正（不正咬合）」
「シザーズ・バイト（鋏状咬合）」
「エッジトゥエッジ・バイト（鉗子状咬合）」
などの専門用語を総動員。得心した表情が得られないためか、３度も４度も同じ話を繰り返す。３０分近く延々と継続。１人しかいない看護師も何事が起きたか、心配気。それとなく様子を窺いに来る。らちが明かない。「志の輔」に今ある歯の数を尋ねてみた。
「２７本！」
（何言うてるねん！２９本やろッ！）
もちろん、口には出さない。看護師が当方の死角で目配せでもしたか。ややあって、
「訂正します。上が１４本、下が１５本で２９本です」
となった。だが、親不知が２本残っているという前提での返答。実際には親不知は１本しか残っていないから、いつまでもつじつまが合わない。３ヵ月通い、レントゲンも写真も２度ずつ撮影している。のみならず、現に口中を覗いてもいる。かなり「頼りがいのある」歯科医である。隊長の主治医であっても、事ここに至っては老害のレベルを免れない。
右眉に白髪五本の六十四
それでは、本日のシャッフルクイズ。
『齢秘して学理（ヨワイヒシテガクリ）』
今度会ったら、答えを言ってね。
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