熱い気持ちをチャージ 〜 書評、国際貢献のウソ

国際貢献をするNGOについて知りたい、と思って偶然手にとった新書。著者の伊勢崎さんは、プラン・インターナショナルという国際NGOに身を置き、シオラレオネなどの紛争国に行って、現地の人を登用しながら仕事を進めていく。NGOや国際機関に限らず、外資系で仕事をする人にとっても、仕事という側面で触れてみて良い本ではないか。

僕は、国連を含めた国際組織や、民間で国際貢献に関わる組織、そして援助を受ける当時国など、いずれの現場を経験した人の話を聞くのは始めてだったので、とても面白かった。当然、立場や経験が違えば、異なった意見や見方も出てくるだろうから、素人の僕が「この本はすごい」と言うには、もっと勉強しなければならないのですが、少なくとも報道が一つの側面だとしたら、この本が別の側面を示してくれるので、考える題材にもってこいだと思います。本のタイトルから主張が強すぎはしないかという懸念がありましたが、内容の方は、著者の体験と知識を踏まえて建設的に意見が述べられています。

僕らが個人で行える寄付のレベルから、国連が派遣するPKOのレベルまで、国際貢献の意味をどう捉えるかは、その道に詳しい方の書評を参考にされたいのですが、僕でも分かる問題の1つに、日本の省庁が、実績を作りたいために無理な宣伝をし、偏ったイメージを作り上げる、という指摘がありました。

経済・金融の視点になってしまいますが、日本の現状は、相当苦しいとは言っても世界的には経済大国で、それに見合った役割と資金の使い方が重要なのですが、それらが出来ていないと聞かされるのは大変残念です。しかもその資金は私たちの税金。国の財政と国際貢献の大きさの話はここではしませんが、現実として寄付する側の「国益」も無視できない以上、省庁の皆様にあたっては、日本の将来を思って慎重かつ大胆に行動して頂きたいです。

ここでは政府や官僚に対して不信を募るだけにとどめず、僕らが何をすべきかについて考えたいのですが、僕の知識と経験が浅すぎて、具体的な意見はまだありません。伊勢崎さんも、本書では何かの行動を促すというよりは、まず「考え方」や「捉え方」について見つめ直して欲しいというスタンスで筆を進めたようです。それくらい、実際目にする報道は偏っているか、断片しか伝えられていない。そういう意味で、まずはこうした本に触れてみることが、第一歩なのだと思います。

話は変わりますが、本書は、著者の仕事に対する「使命感」を感じるのに良い本です。産業再生に携わった冨山和彦さんの本以来の衝撃でしょうか。伊勢崎さんの熱い仕事ぶりは、コチラのサイトでも伝わってきます。よかったら見てください。

本書が扱うテーマは、国際貢献、国際NGO、日本のNGO、国連、国連に付属する国際機関(ユニセフなど)、JICAなどの国の機関、外務省、ODA自衛隊アメリカ、現地の事情(特に東ティモール、シオラレオネ、アフガニスタンの例)、など多岐にわたります。経済に関する部分では、国益と世界益(世界全体の利益)という話題が興味深いです。特に、国連常任理事国の拒否権が絶大(1国でも否認または棄権すれば部隊を派遣できない等)で、その意思決定には国益が大きく絡むという点が、現実として横たわっています。

国際貢献のウソ (ちくまプリマー新書)

国際貢献のウソ (ちくまプリマー新書)




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