しなやかに、したたかに、無責任に・・・西中眞二郎雑記帳

2006-05-06 題詠百首選歌集・その21

  ゴールデンウィークも終わりが近付いた。皆様お疲れ様でした。また、これからのお仕事ご苦労様です。「硬派」にひと区切りを付けて、選歌集その21をお届けします。


      選歌集・その21

008:親(175〜199)

  (長沼直子) 抱きしめるすべをなくして親指と薬指だけマニキュアはあか

  (小早川忠義)鈍色の疲れに親しむ真夜なればストレートティー喉になじます

  (黄菜子)うつしみの親子一世の契り終え吾が子二十歳の骨のちひさき

011:からっぽ(156〜181)

  (矢野結里子)帰宅してビールのみつつテレビ見て いつしか寝てる きょうもからっぽ

   (内田誠) からっぽになったわたしのぬけがらが空を塞いだ自意識に舞う

  (寒竹茄子夫) からつぽの繭と思(も)ひしが糸をはき睡るかひこのいくひやくの夢

017:医(126〜151)

  (中村うさこ) 休日を街に会ひたるわが主治医子と手をつなぎ顔のほころぶ

  (寺田 ゆたか)・そのかみの口べたの友 海碧き岬の町で医を業とせり

  (村上きわみ)峠ふたつ越えし町より群青の影つれてくる馬医とその妻

018:スカート(121〜147) 

  (里坂季夜) とりどりにおもわせぶりをひるがえすスカート咲いて街は花冷え

  (睡蓮。) スカートお久しぶりにはいた日はやせる思いの脚に春風

  (飛鳥川いるか)なせばなると信じてゐましたスカートの折り目正しき小娘でした

  (寺田 ゆたか)・軽やかに白きスカートひるがえし駆けよるひとに花ふりかかる

  (中村うさこ)よちよちの娘(こ)にはじめてのスカートを着せしかの夏 夢多かりき

019:雨(118〜134)

  (にしまき)声高に季節知らせる交差点眩しく香る雨上がりの朝

   (萱野芙蓉) 北向きの窓をうつ雨こまぎれの文字がことばに成らぬかなしさ

  (寺田 ゆたか)・すきとほる柿の若葉のうすみどり はつかに濡らしこぬか雨ふる

  (中村うさこ)踏切の警報近く鳴る夕べ東風冷え冷えと雨になるらし

024:牛乳(96〜121)

  (まゆねこ牛乳を飲まずに消えたあの日からノラの行方を風も知らない

  (里坂季夜)ひいやりとぼくのまんなか降りてゆく牛乳 たぶんここまでは白

  (睡蓮。)ひざかかえ牛乳びんの底にいて見上げるフタのような満月

025:とんぼ(90〜114)

  (飛鳥川いるか) 易々ととんぼがへりする少年の秋草のやうな腋毛みてゐる

  (まゆねこ)[赤とんぼ]歌い終わりて会場に夕焼け色のこころ溢れる

   (空色ぴりか) 殻を抜け羽化したばかりのとんぼにも降りそそぐらむ夏至の太陽

  (佐田やよい) 点々と星をつないだ虫かごにとんぼをいれて夏と別れる

026:垂(93〜119)

  (まゆねこ)紫の花の枝垂れて結界を分かつ如くに藤の夕暮れ

  (田丸まひる)これ以上だれをゆるすの 垂直にふる五月雨にまで責められる

   (寺田 ゆたか) ・雨垂れは軒端を伝い落ちてくる 鬱 閉じ込めし小さき水滴

  (きじとら猫)華やかなときは短く夏空に枝垂れ柳の未練が残る

034:シャンプー(57〜82)

  (斉藤そよ)ハミングもされなくなってひとり湯に忘れられゆくシャンプーの歌

  (秋野道子)シャンプーの終わったあとの濡れ猫はあっけらかんと痩せ細ってる

  (濱屋桔梗)吊るし売るシャンプーハットに蘇る父と入りし団地の風呂場

  (新野みどり) 君の吸う煙草の残り香消したくていつもの2倍のシャンプー使う

035:株(58〜82)

  (野良ゆうき) ケータイで株価をチェックする君のとなりで海をみていた九月

  (紫峯)伐り株のあらわになりし斜面より四月の空の青立ち上がる

  (みあ)合併でどこへ行くのか町の名がまた遠くなる雨の切り株

  (飛鳥川いるか)匹よりも株がふさはし明星(あかぼし)の悪魔かぞふるときの助数詞

052:舞(26〜50)

  (かっぱ)舞うはずの粉雪を待つジャケットをわざと忘れて会う日曜日

   (愛観) 大銀杏ひかり散らして春は逝き がらんと風が抜ける舞殿

  (濱屋桔梗)蒸し暑いスタッカートに揺られゆく排気混じりの風舞う列車

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[題詠百首]