しなやかに、したたかに、無責任に・・・西中眞二郎雑記帳

2010-04-29 題詠100首選歌集(その23)

          選歌集・その23

019:押(104〜132)

さくら♪) 夜更けて痛みに震う声を聞くナースコールのボタンを押せり

(村木美月)ただひとつ聞きたい言葉聞けぬままわたしはワタシと押し問答する

(佐藤紀子) 押入れに閉じこもりたる五歳児がいつか寝息をたてゐる気配

あひる卒業は別れと門出巣立ちゆく子の背を押せよ三月の風

020:まぐれ(104〜131)

(月の魚) きまぐれな涙を百滴選り集め溶かして降らす三月の雨

(こゆり)みぎのてがふわふわ 春のせいにしてその指つかみたい夕まぐれ

(こなつ)移り気なココロを持てあましておりぬ 気まぐれ天使が囁く四月

黒崎聡美) ストールを何度も直すゆうまぐれ電車の音を聞いた気がした

(佐藤紀子) 桜花白く浮き立つ夕まぐれ孫誕生の知らせが入る

(ふうせん)気まぐれをはんぶんこしてお互いにそっぽを向いていい日曜日

(村木美月) 夕まぐれため息ひとつ溶けていく茜の空はかなしみの色

あひる) 気まぐれに過ごせるひと日欲しつつ回遊魚のごと日々泳ぎいぬ

(五十嵐きよみ) 運命といえばたちまち悲恋めく話もまぐれと呼べば喜劇

(チッピッピ)「まぐれだよ」微笑みながら言ってみたい10万馬券ひらひらさせて

023:魂(80〜104)

(揚巻)澱のごと我がことだまの底に棲む鬼から鬼へ帰(き)す鎮魂歌

(南野耕平)日当たりのいいベランダで魂をときどき干していたよね僕ら

(B子) 日曜に洗濯をした魂が生乾きなので、ブルーマンデー

031:SF(51〜76)

原田 町)SFの世界のやうな壊滅が起こるかもしれぬ四月一日

(斉藤そよ) パーキングエリアは濃霧 SFの扉のごとくひかる自販機

(虫武一俊)SFの表紙のように傾いた構造物の過去の確かさ

新井蜜)会議中夢から覚めた SFのやうに無人の暗い部屋にて

039:怠(28〜52)

(わたつみいさな) 親指が怠けてるのでどの音も君に響かぬドレミファソラシ

(理阿弥) 野良猫桃井かおりの気怠さで惚気話を受流しをり

(如月綾) 肉食の獣の午睡 気怠げな顔を浮かべてあなたは眠る

梅田啓子)すべきこと何も無ければわがひと日怠るはなし 水雲(もづく)をすする

野州)あめゆきの混じれる降れる春の朝は怠け癖まで愛してしまふ

(いさご) ねえなんで午後は気怠くなるのだろう、つくつくほうしは耳元でなく

040:レンズ(28〜52)

(周凍) 心こそあやなきレンズと思ひ分く結べる思ひのそのうつろさに

(氷吹郎女)コンタクトレンズの人が意外にも多いと知った林間学校

(藻上旅人汽車の窓レンズのごとく歪みおりひとり旅での涙をながす

中村成志)海辺走るはサラアのひとか独峰にのたれるごとくレンズ雲浮く

080:夜(1〜26)

アンタレス)ふつふつと娘等に書きおく事湧きて夜半に起き出で文書き綴る

(陸王)白昼に蝋燭を消す誕生日夜は独りでサザエさん観る

083:孤独(1〜25)

(松木秀)東京二十三区に陽は落ちて孤独という名のひとつエリア

(映子)指で突く オンザロックのひとり言   孤独のお供に 如何でしょうか

(庭鳥) 友達がいないんじゃないわたくしの肩に寄り添う孤独と過ごす

アンタレス沈黙は金にはあらず一言も言葉無き日の孤独は寂し

菅野さやか) ぶんぶんと冷蔵庫らの愚痴のなか眠る冷凍ご飯の孤独

(リンダ)カラスさえ孤独の森をさまよえずネオンきらめく街中に住む

梅田啓子)それぞれの部屋に籠れる夫とわれ ほどよき孤独に本を読みをり

(龍庵)筋ひとつ残すことなく剥くみかん春のこたつのような孤独

084:千(1〜25)

(みずき) 千の風吹かれて消ゆる笹舟の過ぎし川面に浮かぶ たまゆら

(船坂圭之介)亡妻(つま)の声あらずか千の風のなか遠鳴る音の懐かしきかな

梅田啓子)忘れたき記憶のふいに浮かびきて千切り大根多めにきざむ

085:訛(1〜25)

(松木秀) 置き薬のセールスマンが時おりに聞かせてくれる青森訛り

(夏実麦太朗)越前の百貨店にて越前の訛りでわれは呼び出されたり

(tafots)二十年栃木に住みて誰よりも偽者くさく訛りたる父

(翔子) 不意に出る北の訛りについ黙す変わることなき距離の深さよ

梅田啓子) 兄弟に会ふや訛の戻りきて甲高き声に夫はしやべる

(龍庵)そを聴きに行く訛りなどないがゆえ睡蓮のごと漂っている

[] 22:52  を含むブックマーク

台所のキフジン台所のキフジン 2010/05/15 21:20 ありがとうございます^^v
見ていてくださる ・・ と思うと
生きる勇気 オーバーですか?? が 沸いてきます^^v

台所のキフジン 様 西中台所のキフジン 様 西中 2010/05/15 22:57 コメントありがとうございます。至って勝手気ままな選歌ですが、お喜び頂ければ幸甚です。ところで、「台所のキフジン」様は、一体どなたなのでしょうか。

台所のキフジン台所のキフジン 2010/05/16 11:06 失礼いたしました^^v
オッチョコチョイ と 早とちりが出てしまったようで
名前を入れるのを 忘れてしまいました ^^v 映子のブログ で
題詠に参加させていただいた 映子 です  どうぞよろしくお願い申し上げます

映子様 西中映子様 西中 2010/05/16 14:11 ご返事ありがとうございました。随分早くご完走されたのですね。まだ最後の方の作品は拝見していませんので、これから読ませて頂くのを楽しみにしております。

2010-04-25 NHK /BSの「短歌日和」

 今日のNHK/BSで、恒例の春秋2回の「短歌日和」という番組があった。出された3題(事前に2題、当日に1題)に投稿するというシステムなのだが、例によって半ば野次馬気分で7首投稿してみたところ、3首ばかり採って頂けた。もっとも、前回と違って最終予選18首の段階までは届かなかったが・・・。

 まず、歌の講評を受けた作品は、

    こんなお店あったかしらと妻が言うかつて住みたる町歩みつつ(題・歩く)

 そこまでは行かなかったが、第一次予選通過作品として表示されたものは、   

    日の当たる露地に寝そべる黒猫は夢見ているか耳の動きぬ(題・耳)

    耳順従心過ぎし身なれど青臭き棘ある心捨てるもならず(題・耳)

以上、都合3首である。

 5時間以上の長丁場の番組なので、頭の方だけナマで見て、後はビデオに任せたのだが、実は大失敗をして、前半の方はビデオに撮り損ねてしまった。このため、前半の部の後半は目にしていないので、ひょっとしたらそこで紹介された作品もあったのかも知れない。もっとも3首入っていれば御の字ではあるが・・・。(万が一これ以外の私の作品を目にされた方がおありならお教え下さい。)

 私の作品のことはさておき、それ以上に印象が深かったのは、私も参加し、このブログで勝手な選歌もしている題詠100首というネット短歌の会の常連メンバーの方々のお名前を、10人近く目にしたことだ。しかも、準々決勝に選ばれた9首のうち、4首がその会でお馴染みの方の作品であることに驚いた。それだけ、題詠100首のレベルが高いのだろうと思い、ひとごとながら(?)嬉しくなったところだ。いよいよ私の勝手な選歌にも身が入るというものだ。

[] 19:30 を含むブックマーク

    

今泉洋子今泉洋子 2010/04/25 23:23 「黒き雲低く流れる魚市場境港に風の音する」がアーサービナードさんの選評つきでまっ先に読み上げられました。「黒き雲」と「風の音する」が響きあって雰囲気で選ばれたとの選評でした。私は、「境港」は水木しげると反応して、黒き雲と風の音は妖怪の
気配がして、しゃれたお歌だと思いました。

今泉洋子様 西中今泉洋子様 西中 2010/04/26 00:01  ご親切なお知らせありがとうございまいた。この歌は、今回の応募の中では、一番気に入っている歌です。妖怪タウンのことは知っていましたが、この歌では全く意識しておらず、単なる叙景です。なお、第4句は、「境港は・・」です。
 今泉さんの作品も、選評1首、予選通過2首拝見しました。そのほかにも私の「境港」同様、ビデオに撮り損ねて見落としたものがあるかも知れません。
 どうもありがとうございました。

2010-04-22 題詠100首選歌集(その22)

         選歌集・その22


004:疑(195〜219)

ひぐらしひなつ)一片の疑惑溶かしてまろやかの極みを垂れよクラムチャウダー

(ふうせん) 疑問などどうでもよいときょうもまた偏西風は蛇行するのみ

小高まり)晴れたならあらゆる帽子をかけましょう 疑問符はもうさかさまにして

008:南北(161〜185)

小高まり)水玉のリボンまっすぐむすんだら南北の空渡れ 春分

022:カレンダー(76〜101)

酒井景二朗) 五年間貼りつ放しのカレンダー あの約束も果たせぬままに

中村梨々)春の陽は長く伸びてて蝶々が折り返してる野のカレンダー

029:利用(56〜80)

(虫武一俊)都合よく有効利用できるなどと思うな 耳に風の入り来る

(天野ねい)冷え切った耳や手足をあたためるためにあなたを利用している

030:秤(51〜76)

綾瀬美沙緒)いつだって あたしのほうが ちょっとだけ 浮いてるみたい 君の天秤

野州谷中銀座のメンチ肴に飲む酒の恋と食欲秤にかけて

木下奏)天秤にかけるつもりがシーソーで上がり下がりを繰り返す恋

(橘 みちよ)きみのためやく焼き菓子よ秤には砂糖小麦粉歌声まぜて

076:スーパー(1〜26)

(松木秀)スーパーマンを変身させぬ方針か電話ボックスつぎつぎ消えて

(シホ)スーパーの タイムバーゲン 間に合うか 仕事帰りに 満月ぽかり

(間宮彩音スーパーのカゴに次々入れられるタイムセールさんま三匹

077:対(1〜25)

(夏実麦太朗)集合の多対多対応語るとき数学教師はややも華やぐ

(tafots)「誰も彼も対なるべし」の妄想に牙むく夜の肌の冷たさ

(みずき)谷崎の墓石は「寂」の一(ひと)もんじ 対峙する樹の櫻降りつむ

(庭鳥) 対岸の火事を眺める心地して上司の喧嘩笑ってみてる

梅田啓子)無意識の顔をさらして皿あらふ対面式のキッチンなれば

078:指紋(1〜25)

(夏実麦太朗) 不自然に消えた指紋をいぶかしむ刑事コロンボの右目ひだり

(tafots)妹の鏡面加工のケータイに指紋でウサギ描いてゆく夜

(間宮彩音)電源を切った画面に映るのは指紋の跡とうつろな顔と

081:シェフ(1〜25)

(夏実麦太朗) いつからかシェフと呼ばれているひとの変わらぬ味のクリームコロッケ

082:弾(1〜25)

(みずき) 悔いてなほ外せぬ指輪あはあはとゆるぶ晩夏を激しく弾きぬ

(翔子)一人旅オーシャンビューの窓からは夕陽と波のうねる連弾

[] 17:54 を含むブックマーク

2010-04-17 題詠100首選歌集(その21)

また冬が来た。昨夜から今朝にかけて雪。朝起きたら、北向きの屋根などにうっすらと雪が積もっている。東京は41年ぶりの遅い雪タイ記録とか。41年前にはとっくに東京にいたわけだが、こんなに遅く雪が降った記憶は残っていない。記憶というのもいい加減なものだ。今日も寒い一日だった。



     選歌集・その21

009:菜(159〜183)

ひぐらしひなつ) 菜園にあなたをさがす はつなつの遠きカイトを泳がせながら

(羽根弥生)狂騒と狂騒の間(ま)の白き時 水菜噛む音さくさく響く

(イノユキエ) カラオケ中森明菜を選ぶとき昭和の尻尾が生温かい

011:青(138〜162)

ワンコ山田) くるくるとまわって筒になっていく青焼きされて読めない未来

(末松) 焼かれるがままに焼かれて青魚 目を閉じないでみる夢がある

(豆野ふく) もう少し二人の時間が欲しいのに 沈む夕日に縋る群青

黒崎聡美ステンドグラス床に湛えたそのなかの青い光につまさき浸す

017:最近(138〜162)

(村木美月)絵空事ばかり最近増えていく夢想の恋は無限大です

(末松) 最近はあまり気にしてないと書く彼女の手紙の強い筆圧

(月の魚)一夜おきに「最近」の色を塗り重ね 明日の私の髪は何色?

(香-キョウ-)吸収をしているからこそ思い出が色褪せるのだと最近思う

(A.I) 沈黙の cup of tea そういえば最近茶葉を新しくした

眞露)最近の若い者はという言葉口にするたびまた歳を食う

黒崎聡美) あたたかい牛乳のにおい パチンコに祖父は最近行かなくなった

(七十路ばば独り言)最近は牡蠣フライなど出ないねと夫がぼそり夕食に言う

018:京(105〜130)

(音波)ほんとうに空がないのか知るためにまた鉄橋を渡る東京

(すいこ) 青くても無限の夢を乗せられた二度と乗れない上京列車

ウクレレ京橋はええとこだっせと歌ったら続きはみんなでうた大阪

(末松) ミニチュアの南京錠つき日記帳 ひみつがあるから少女はそだつ

(村木美月)桜舞う京の河原の思い出を封印したき新しい春

(五十嵐きよみ)どうしても東京特許ときゃ局としか言えなくてまた笑われる

027:そわそわ(54〜78)

佐倉さき) そわそわと君の面影探しては秘密のあだ名思い出してる

木下奏) そわそわとしているあなた座らせて並べるチキントマト煮の皿

(詩月めぐ)そわそわと君が来るのを待っていた兼六坂の桜ひらひら

(青野ことり)心持ち定まらなくてそわそわと同じページを何度もなぞる

028:陰(54〜78)

梅田啓子) 花陰(はなかげ)のはぐれ蛙と目が合ひぬ初夏の陽射しにわれもひとりぞ

佐倉さき)もう泣いていいよ 陰ではたくさんの努力してきたこと知っている

(冥亭) かすみなす花見の頃は気鬱にて日陰木蔭にたんぽぽを踏む

073:弁(1〜25)

(船坂圭之介)弁舌の訥なればなほ聞き難く耳を片寄す古きテレヴィに

(間宮彩音)からっぽの弁当箱をつつきつつ明日の不安を忘れようとす

074:あとがき(1〜26)

(松木秀)春二月第二歌集のあとがきを屈託ありて書きなずむ夜

(映子) あとがき の ような私のこの頃も   母親であり 女房であり

(みずき)あとがきの行間触るる風五月儚き恋をそよと閉ぢたる

(シホ) あとがきを 読んでから買う 文庫本 積んどくだけで 増えゆくばかり

(船坂圭之介)生ける世に未練これありあとがきのごとく附けたし”勝手放題”

075:微(1〜25)

中村あけ海)顕微鏡調整するのが下手なふりして彼のことこっそり見てた

(シホ) あの日から とまどいながら 意識して 微妙な距離を はかりかねてる

079:第(1〜25)

(tafots) フィクションに直されたるを知るばかり 第二次世界大戦遠く

(船坂圭之介)唐突に影は消えたり呪詛のごとくわが立つ丘は次第に曇る

[] 23:29 を含むブックマーク

ワンコ山田ワンコ山田 2010/04/19 23:57 ご挨拶に寄せていただくのが少し遅くなりましたが、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
いろいろと今年も悩みながらぼちぼちと前進して完走をめざします。
今回は10首ごとにテーマを決めていこうとしています。
そのせいか一首ずつが少し希薄な歌になってしまっているような気がします。
これでいいのか…悩みつつも前進です。

遅い雪が降ったり、例年に無い天候不順ですのでどうぞご自愛くださいませ。

ワンコ山田様 西中ワンコ山田様 西中 2010/04/20 10:59  お久しぶりです。コメントありがとうございます。
 「縛り」には気づきませんでしたが、いろいろご苦労の多いことだと思います。今年もよろしくお願い致します。

2010-04-15 題詠100首選歌集(その20)

選歌集・その20


007:決(168〜193)

(蝉マル) カツカツと行くは女(おみな)の靴の音仇討ち決意したるごとくに

(みち。) そう決めた理由は訊ねられぬままわたしはじんわりと石になる

(David Lam)春雨といえど優しさ些かも薄着で逢うと決めていたのに 

012:穏(135〜163)

(揚巻)ほの白き障子に影の滲むごと言葉を宿す不穏な鎖骨

(佐藤紀子)穏やかな暮らしは性に合はぬらし波を立てつつ夫は老いゆく

(一夜)穏やかに眠る幼子撫でながら 春の足跡眺むる4月

(武藤里伽子)穏やかな肉食男子に騙された私の今日のパンツはピンク

014:接(120〜145)

(音波) 接吻はもう少し先いっせいにキンモクセイの花の咲くころ

(五十嵐きよみ) 純粋と世間知らずは紙一重 どう接しても疲れるばかり

(sh) 接点もないとつぶやく帰り道、電信柱を遠くから見る。

(七十路ばば独り言)接客の訓練する声漏れてくる開店前の美容院脇

015:ガール(114〜139)

(橘 みちよ)空(くう)を飛びくび翻転し接吻するシャガールの男のやうなわが猫 

(村木美月シャガールの青がこちらに問いかける幸せですか泣きたいですか

酒井景二朗) いにしへのコールガールの廣告を汚い壁に貼れば春雷

(揚巻)おごそかに贄なる山羊を食卓に今宵ガールズトークは踊る

(香-キョウ-) コロコロと変化しながら盛り上がる ガールズトークは連想ゲーム

(五十嵐きよみ) 背の翼ふいに失うシャガールの絵の中にいる夢からさめて

黒崎聡美)わたしにはガールのときはあったのかファッション雑誌の売り場華やぐ

021:狐(78〜102)

(橘 みちよ)日照雨(そばえ)ふる山里の道傘さして前ゆく和装のひとか狐か

(さむえる) 祭囃子響く鎮守一角で狐の面は静かに哂(わら)う

(ふみまろ) 初恋はメンソレの味 教室に狐狗狸さんが棲みついていた

新井蜜)日溜まりでじやれ合ひながら子狐は旅立つ朝をひとり夢見る

(揚巻) じゅういちで狐は嫁に雨の夜にたいまつはゆく黄泉と知らずに

037:奥(26〜50)

(コバライチ*キコ) 引き出しの奥にひっそり眠りいし友の手紙と十五の春と

(行方祐美)奥小姓は忙しからむ春の日は雛の宴や端午の節会に

如月綾)引き出しの奥に隠したタイムマシン使って過去へ旅立つ夜更け

(氷吹郎女)昨日からつっかえている喉の奥あの人の名が思い出せない

梅田啓子) 月の出ぬ山奥の夜はさびしかろ山桜のころ逝きてふたとせ

野州) あけがたの本郷坂路地奥のあはれ井戸汲むいちえふ二十歳

(水絵) 孫に手を引かれて辿る奥の院 はるか石鎚霊峰の見ゆ

038:空耳(26〜50)

(じゅじゅ。) 春一番 迷子のきみを探してる 風の便りと空耳つれて

(リンダ)しんとした図書館で聞く空耳は見つけて欲しい本のささやき

(周凍) 山ぎはを雲の飛びゆく夕暮は鐘の音さへ空耳にきく

(アンダンテ)ゆびさきをふれた気がした真夜中の新着メールはたぶん空耳

069:島(1〜27)

中村あけ海) 事務机集まりあっていくつかの大陸かなたに部長の孤島

(シホ)いつかまた 会えるその日を 楽しみに 想いをはせる 君のいる島

(リンダ)懐かしのお国言葉島唄をうたう翁の皺は優しき

(船坂圭之介)こころすでに吾を離るる哀しさは告げず白薔薇咲く島を去る

070:白衣(1〜28)

(髭彦)駅前で義足義手つけひざまづく白衣のひとに児らは怯えき

アンタレスインドよりジーパン姿の便りあり白衣のみ知るわが医師の顔

(間宮彩音)病名を静かに告げた先生の皺ひとつない白衣が揺れる

072:コップ(1〜26)

(庭鳥)紙コップ電気ポットもトランクに入れて旅行の荷造り終える

(船坂圭之介)ねんごろにレモン輪切りに刻みつつコップにひそと満たす焼酎

(間宮彩音)球根を埋めたところに差し込んだスコップ今日も目印となる

(はこべ) 公園の幼がくれし鼓草(たんぽぽ)がコップにありてキッチンの春

梅田啓子)《落としても割れないコップ》の疎ましさドライジンジャーらっぱ飲みする

[] 12:18 を含むブックマーク

David LamDavid Lam 2010/04/17 06:15 西中様、ご無沙汰しております。私にとっては何年かぶりの題詠チャレンジ、拙歌をお拾いいただき、どうもありがとうございます。大変励みになります!
こちら長野は桜が満開になったと思ったら、今朝はまさかの積雪30cm…おかしなことになっております。西中様もどうかお身体壊したりなさいませぬよう。。

David Lam 様 西中David Lam 様 西中 2010/04/17 11:16 お久しぶりです。久々に御作を拝見できるのを楽しみにしております。東京も今暁は雪になり、今朝は車の上などにうっすらと積もっておりました。どうか御身ご大切にお過し下さい。

蝉マル蝉マル 2010/05/06 18:24 西中さま、私の歌取り上げてくださっている事に今日気がつきました。ありがとうございます。
この前の「日本全国短歌日和」でもお名前を発見して、あ、活躍されているなと嬉しく思いました。私は毎日一首を楽しんで投稿しています。早く終了することが出来たら私も鑑賞サイトを作ってみたいですが果たして間に合うかどうかです。

蝉マル 様 西中蝉マル 様 西中 2010/05/06 19:03 コメントありがとうございます。至って恣意的な、何の権威もない選歌ですが、よろしくお願い致します。「短歌日和」につきましては、4月25日のブログにも書きましたが、題詠100首でお馴染みの方のお名前が多いのにびっくりしました。1

佐藤紀子佐藤紀子 2010/06/23 00:59 西中さま
お久しぶりです。私の歌をとりあげてくださって、ありがとうございます。
あちこちに波風をたてる夫といると、短歌の種に不自由しません(???)
何しろ、亭主関白ならぬ「亭主腕白」なものですから。

佐藤紀子様 西中佐藤紀子様 西中 2010/06/23 14:27 コメントありがとうございます。腕白坊やを手玉に取る奥様・・・微笑ましい夫婦像かと存じます。

2010-04-13 題詠100首選歌集(その19)

 このところ寒暖の差が激しい。昨日と今日の東京の最高気温は15度違うとか。明日はまた冷え込むらしい。三寒四温どころの話ではなく、単なるお天気というより、「地球」のことが気になって来る。      

選歌集・その19


001.春(213〜237)

(ひいらぎ)ときめいた気持ち抱えて桜咲くいつもと違う春の訪れ

(佐藤紀子) 常よりもひと月早く春の来て二月の桜はにかみて咲く

(末松)好きだった歌手が消えてたことにさえ気づかないまま春をむかえる

(武藤里佳子) 何もかもあの日のままの春がきて 繋いでた手はさまよっている

(湯山昌樹) 富士山に降りかつ溶ける雪の底 小富士過ぎたらもう春近し

002:暇(202〜229) 

(ふうせん)ああ四月。こころの隙間から暇を覗き見してる土曜の夕べ

眞露)窓際で暇な時間を持て余し時に追われし日々懐かしむ

005:乗(181〜205)

(末松)使うはずなかった乗車券でした約束なんて最初からない

田中まこ) 唇に残ったあなたのさよならを乗り換え駅で確かめている

(David Lam) 春は馬車に乗つては来ずに手の痺れ・首の痛みが和らぎ四月 

(美木)反対の電車に飛び乗り後悔し戻る時間も入れ家を出る

(遥遥) 乗換えを間違えたのは二千年前のことだとあなたが笑う

(星和佐方)ホームまで見送るための乗車券さびしき春の秘色(ひそく)を手にす

眞露)乗る人のない助手席の窓を開け流るる髪の残像を追う

006:サイン(170〜199)

星川郁乃)ただ日々が忘れることを許すでしょうサインコサインあの子の噂

(ラヴェンダの風) 「謹呈」とサインの残る歌集買ふ吾に縁の一冊として

013:元気(124〜128)

(揚巻)元気かと問えば元気に元気だと答える元気レベルの元気

(あおり)「君といれば元気になれる」といわれたら二度と泣けないあなたの前で

(佐藤紀子) 娘へのメールにいつも書き添へる「元気でね」とは挨拶ならず

(フワコ) 本当に聞きたいことは書けなくて「元気ですか?」を絵文字で飾る

016:館(108〜132)

(村木美月)柔らかな日差しを浴びて図書館の背もたれ椅子と戯れる午後

(音波)図書館にそれぞれ夢を持ち込んで閉架の奥に眠る八月

(佐藤紀子)図書館にMANGAの棚が設けられ英訳された漫画が並ぶ

(片秀)図書館の静けさがふと怖くなりペンをばら撒く夏真っ盛り

(南雲流水)鎌倉文学館の隧道の古いインクのにほいをぬける

025:環(52〜76)

梅田啓子) 環八のうへに首都高はしる街に子は暮らしゐき独り離れて

(六六鱗)環座して歌詠み交わす直会の央に神在り月夜見の宮

中村成志) 土枯れし桜はなびら環を描き袋小路の風に舞うのみ

(ひじり純子)おそろいの指環の代わりのストラップ逢えば並べてそれも嬉しい

(揚巻)運命のチャクラはめぐり君と見る金環蝕のゆびわのゆくえ

026:丸(54〜78)

野州) 旅に出る予定はなくて歌誌を読みながら舐めてる丸いのど飴

中村成志) みぞれ降る街の空地の窪みには丸く動かぬ黒猫ひとつ

(橘 みちよ) 桜咲く岸辺をぬひて丸木舟にこの身横たへながれゆきたし

036:正義(26〜51)

(砂乃) 戦争の終わったあの日ぼんやりと勝田正義うなだれて居り

(行方祐美 )正義との名を持つ家族も友達もわれにはをらずつづく春雨

(斉藤そよ)ただならぬ痛々しさを突き抜けて正義を語るひとの遠さよ

068:怒(1〜26)

(みずき)怒濤なす海を見つめて逸れゆきし運命を思ふこゑ亡き父と

アンタレス)堪え難き怒りを持ちつ耐え居れば諭すが如く春雷響く

(髭彦) やはやはと薄くなりたるわが髪の怒髪となりて天を衝かざる

(コバライチ*キコ) 阿修羅像怒りのお顔麗しく千年経るもすくと立ちおり

[] 23:38 を含むブックマーク

湯山昌樹湯山昌樹 2010/04/15 20:15 今年はPCが不調で、走り始めが遅れました。やっと走り出したところで、いきなり一番歌を拾っていただき、ありがとうございます。時季外れですが、今年もよろしくお願いします。

湯山昌樹様 西中湯山昌樹様 西中 2010/04/15 23:42 コメントありがとうございます。今年もよろしくお願い致します。私のパソコンも寿命が来てしまい、先日買い換えたところです。幸いそれまでのドキュメントは何とか生かすことができて助かりました。

2010-04-09 家・屋・手・者(スペース・マガジン4月号)

 例によって、スペース・マガジン日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。


[愚想管見] 家・屋・手・者                   西中眞二郎


 「師」と「士」の使い分けについて、以前に書いたことがある。今回は、呼称のことをもう少し広げて書いてみたい。公式の呼称としては、「師」と「士」がその典型だろうが、世間一般で使われている呼称は、まだまだある。

 まず「家」である。専門家、作家画家、評論家、政治家等々、いわば世間的にある程度評価されている「専門家」という印象なのだろう。もっとも、偉い人だけではなく、「発展家」、「漁色家」、「空想家」など、どちらかと言えばマイナス・イメージのものもあるが、これとてもその道では出色の人という語感はあるのかも知れない。

 これが「屋」になると随分変わって来る。言うまでもなく、「屋」は、八百屋魚屋といった商売から派生した言葉なのだろうが、そこから「それを飯の種にしている人」というところに広がって来たような気がする。「政治屋」と言えばいわば堕落した政治家で、政治で飯を食っているというイメージが強いだろう。「土建屋」、「英語屋」、「法律屋」等々、やや軽蔑や謙遜のニュアンスを含む言い方とも言えそうだ。更には、「しまり屋」、「何でも屋」まである。

 「手」はどうだろう。運転手、選手騎手、砲手など、いわば「肉体技能者」というイメージになるのだろうか。助手、技手は専門家の一歩手前には違いないが、やはりまだ「技術者」までは行かない「技能者」という感覚があるのだろう。なお、技手はどういうわけか「ぎて」と読み、「技師」の一段階下の職種として、以前は公式な呼称としても使われていたものである。

 そのようなイメージを避けるためか、「運転手」については、最近は公式には「運転士」と呼ばれているようで、電車やタクシーの氏名表示では「運転士」と記載されている場合が多い。「騎手」が「騎士」に変わると、競馬騎手から中世ナイトにがらっと変貌する。

 「者」はどうか。「犯罪者」があれば「受賞者」もある。「被害者」も「加害者」もいる。いわば価値判断のない無色透明な呼び名ということになるのだろう。私がマイカーを運転しているときには、「運転手」ではなく「運転者」ということになりそうだ。法令の上でも、「第一種主任技術者」といった類の公式の呼称にも用いられるようになったが、これは最近の社会の複雑化に応じ単純な呼称では間に合わなくなり、「技術者」という既存の言葉を借用してそれに箔を付けたものとでも言えるのだろうか。

 話を戻すと、「作者」には誰でもなれるが、「作家」や「芸術家」になることは容易ではない。もっとも、これには例外もありそうだ。学者、医者、役者、芸者、易者など、ピンからキリまであるにせよ、「無色透明」ではない立派な「専門家」と言えそうである。専門家だからと言って、いまさら学者を「学家」と言い換えるわけにも行かないだろうが・・・。

 言葉に馴染んでしまったわれわれの場合、それほど判断に迷うこともないが、これも日本語のむずかしさの一つとも言えそうだ。英語なら、多くの場合「er」か「ist」を付ければ済むのだろうと思う。(スペース・マガジン4月号所収)

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2010-04-05 題詠100首選歌集(その18)

      選歌集・その18


003:公園(176〜202)

(しろうずいずみ) 公園のぶらんこ乗りが颯爽と春の彼方に消えていく夜

(揚巻)公園のベンチに溶けたジャイアントコーンがじっと夜を見ている

(フワコ)公園ミモザの枝からふるふると見えない音符が飛び立ってゆく

ひぐらしひなつ) 円形の墓地公園をめぐるとき降るものは美(は)し雨もひかり

ケンイチ)夕焼けを見送るふたりに潮のみち秋かぜに閉ず江の島公園

010:かけら(129〜153)

(海音莉羽)あふれだし ひかりを放ち 消えてゆく ガラスの色のことばのかけら

(あおり) 悲しみを時が癒していくように波は硝子のかけらを洗う

草野千秋幸福のかけら小さな赤い玉 二人初めてお揃いにした

星川郁乃) あのころの君のかけらのようなものあつめてつくるきれいなぱずる

(佐藤紀子)忘れゐし夢のかけらが輝けり子供の頃の家族写真に

019:押(79〜103)

高松紗都子)半押しのシャッターずっとそのままに見つめていたい風景がある

(オオタセイイチ) 「別れようか」と言ったのに待つ 押小路麩屋町の角いつもの時間

(橘 みちよ)髪を巻き娘(こ)は制服スカートを寝押しし眠る明日なにかある

中村梨々) 冬に背を押されるように3月はつまずきながら春を吐きだす

020:まぐれ(78〜103)

高松紗都子) 気まぐれを美徳としない君といてあぶり出されるこころのかたち

(マメ) 気まぐれに描いた夏の似顔絵を見つけて閉じるスケッチブック

草野千秋) 薄闇が表情隠す夕まぐれ 酔っちゃったのと腕につかまる

(揚巻)ビー玉の種は鴇色きまぐれに愛してるって告げて眠ろう

023:魂(55〜79)

梅田啓子)ひと夜さをさ迷ひてゐし魂がカップを置きてわれに入りくる

(天鈿女聖)魂が抜け出たような顔をした人であふれる終電の中

秋月あまね)死せる者への憧憬よ魂はたとえばFOMAカードのように

(駒沢直)あくる朝 悪魔に売った魂が裂ける音にも似た雨の音

(穂ノ木芽央)まづかたちありき白磁の花差しの花の代はりのやうに魂

024:相撲(57〜82)

(藻上旅人)閉ざされたドアの向こうの紙相撲風に飛ばされ見えなくなりぬ

(理阿弥)お相撲の香りをあとに亀戸で降車する日々こともなく晴れ

野州) 窓越しに相撲中継聞こえきてやよひゆふべの菊坂くだる

中村成志) のったりと雲の相撲を眺めいる草に背中の汗吸わせつつ

(ふみまろ)指相撲に負けて気づけりいつのまにわれより広き吾子のてのひら

高松紗都子)やわらかな拒絶ののちの微笑みにひとり相撲の結末をみる

061:奴(1〜25)

アンタレス)空高く操られつつ遊び居る奴凧にもペーソス有りや

(髭彦) 万葉にクソ鮒食めると歌はれし女奴いかに生きて死にけむ

(翔子)見上げればカイトに押され奴凧への字の口元凛々しさ哀し

(間宮彩音) 教室に行けばいつもの奴がいていつもの席でため息をつく

064:ふたご(1〜25)

(みずき)ふたご座二人静も春愁の匂ひを放つふたひらの夢

(リンダ) 検診のエコーに写る子宮腔ふたごのように筋腫いすわる

066:雛(1〜25)

(みずき)雛流す後は無聊の部屋ならむ問ひて沙汰なき三人官女

071:褪(1〜26)

(夏実麦太朗)大切な言葉ばかりが褪せてゆきそれはかなしみまたはおかしみ

(tafots) 思い入れは確かにあったブラウスも色褪せていて躊躇なく捨つ

(みずき)褪せてゆく春の心よ散り急ぐ櫻ひとひら舞ひて真白き

(庭鳥)色褪せるよりも輝き増して行き持て余してる過去の栄冠

(シホ)歳月の 流れとともに 色褪せて セピアの海で 漂う記憶

(リンダ)褪せるとは忘れることと違うらしまだら模様の心もてあます

(船坂圭之介)回転を止めたる観覧車のうへに赤の褪せたるごとき「月の出」

(間宮彩音)いつまでも褪せることない思い出は今も心の引き出しの中

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海音莉羽海音莉羽 2010/04/14 17:32 こんにちは。
拙歌をひろっていただきありごとうございました!
今年初参加でまだまだ未熟ですが、これからもよろしくお願いします。

海音莉羽様 西中海音莉羽様 西中 2010/04/15 13:11 ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。何の権威もない至って勝手気ままな選歌ですが、よろしくお願い致します。