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西尾泰和のはてなダイアリー

2013-10-21

「キャリア戦略論 - 人・生き方・働き方の多様性」講義資料を公開しました

10月19日に灘校土曜講義にて、キャリア戦略に関して多様性にフォーカスして1時間半の講義をしました。講義資料を一部公開します。

参加者のみなさんがアンケートに書いてくれた感想は、全部目を通しました。一点、僕がうまく伝えられてなかったらしきところがあるのでここで補足します。


マジック・ザ・ギャザリング」と「プログラミング」のどちらがよいか

「マジック・ザ・ギャザリングに時間をさくよりプログラミングを学ぶべきという趣旨か?」という質問がありました。いいえ、違います。

中学高校時代の時間を投資する対象として「マジック・ザ・ギャザリング」(MtG)が「プログラミング」よりも劣ると主張したようなとらえられ方をしてしまったようですが、そう主張したいわけではありません。僕がプログラミングに時間を投資したのは「将来役に立つ」とおもったからではなく、単にそれが楽しかったからです。MtGに投資している人も、楽しいから投資しているんですよね。だからこの点では両者は同じです。

次に「役に立つかどうか」ですが、どちらでも具体的な知識は応用が効きません。プログラミングでも、特定の言語の具体的な言語仕様だとか関数の名前だとかは応用が効きません。数学で、具体的な問題の答えではなく、それを抽象化した解き方を学ぶ必要があるのと同じです。プログラミングとMtGを比べてプログラミングの方が応用が効きそうに思うのは、プログラミングという言葉の方がMtGより抽象度が高いからです。同じぐらいに揃えると例えば「Flashで密室脱出ゲームを作る」あたりでしょうか。応用の難しさにたいした違いはありません。

逆にMtGの側を抽象化すると「運の要素が取り除けない状況で他人に勝つことを目指す行動」となるでしょう。その状況でどうすればよりよい成果が出せるかに関して考えることは、同じく運の要素が取り除けない社会の中で成果を目指して行動していく際にも応用が効くはずです。「ドローがうまく行った時には凄いことになるデッキ」を作ったところで、大掛かりな仕掛けにすればするほどドローが理想的に進む確率は下がるし、仕掛けが揃うまでの時間も掛かるし、テレビのヒーロー物と違って相手は必殺技の準備が整うまで待ってくれないし、ということを身をもって体験できるんですよね。その経験を一段抽象化して理解していれば、実社会の「たくさん時間を掛けて『成功した時には凄いことになるアプリ』を作る」という行為も似たようなものだとアナロジーで理解できるはずです。「ドローの回転率をあげるカード」は実社会だと何に相当するのかな?ドローがうまく行かないリスクを恐れすぎて小粒ばかりにしてしまうと、ブレは少なくなったもののダメージソースが少なすぎてコンスタントに負ける事態になってしまうかな?やはり適度にリスクを取ること、中庸が大事、と。

MtGは全然経験がないので見当違いなことを書いているかもしれません。なので囲碁の話をしましょう。僕は囲碁部に遊びに行ってちょっと教えてもらった程度なのであまり強くありませんが、いままでの人生で囲碁が役に立ったことが何度かあります。囲碁は2人が交互に石を打っていき、囲われた地の量を競うゲームです。つまり、石を効率よく使った方が勝つことになります。「限られたリソースをいかに効率よく運用するかで競う行動」です。石をつなぐ必要がある時でも、しっかりつなぐことだけを目的とした手を打つのではなく、つながりを少し弱めてでも他の効果を持たせようとします。なるべく四方八方に良い影響を与える手が打てないか?すでに打ってある石をなんとかして今目指していることに有効活用できないか?自分の強みに手を入れて更に強くするよりも、強みを活かして広く囲ったほうが良いのではないか?

講義資料p.106でも紹介しましたが、油断しているとついつい「Xを学んだほうがいいよ」などと括弧付きの『正解』を語ってしまいがちです。でも、それは正しくありません。「MtGじゃなくてプログラミングを学ぶといいよ(自分はそうしたから)」は、自分にとって良かったことがあなたにとっても良いとは限りません。「MtGじゃなくてプログラミングを学ぶといいよ(自分はMtGやらずにプログラミングだけしたけど、もしかしてMtGやっておいたほうが幸せだったのでは…いやいや、そんなことはあるまい、やっぱりプログラミングを学ぶことが大事なんだ…と思いたい)」は、自分の過去の選択を正当化しようとしているだけです。あなたのためのアドバイスになりません。「MtGじゃなくてプログラミングを学ぶといいよ(僕の本を買ってね!)」は、『正解』を語ることで利益を得ようとしているだけです。『正解』を語る方が圧倒的に楽なんですよ。それに誰かに正解を教えてもらいたいと思っている聴衆には『正解』を与えたほうがウケが良いですし。でも僕はこれは真摯な態度だとは思えないんです。


アウフヘーベン

@kuenishi いいはなし。X or Y?でアウフヘーベンって言葉を久しぶりに思い出した

正解!このスライドを書きながら「ヘーゲル弁証法」と入れるかどうか少し悩みました。でも「いいとこどり」って言葉を「アウフヘーベン」に置き換えたところで、理解の助けにはならないどころか、むしろ煙に巻かれた感がUPするかなと思って割愛しました。

多くの人が「抽象化した方が応用範囲が広くなる」という考え方には同意してくれたようですが、それをさらに進めると「哲学がもっとも応用範囲が広い」になるはずですよね。だけどもこちらはあまり同意する人が多くない。それはなぜなのか?僕なりの答えが「経験に根ざした知識でなければ応用できない」なわけです。


どうやってこの講義資料を作ったのか

この質問は正直予想していなかったので「あとで〜を読んでください」と口頭で伝えました。それは

「チームワークのデザイン」講義資料」の「前振りと実録KJ法の流れ」です。どうして付箋に書いてからまとめる作業をしているのかという点に関しては「書いてから考えよう」や「KJ法の背景」を読むとよいでしょう。

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