高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』

高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』

    21世紀の日本美術の最前線の画家、写真家36人の作品を、西欧美術史の高階氏が躍動する創造活動として紹介している。21世紀の日本美術の創造は、若い創作者によって、世界的な作品を生み出し、多様・多彩な絵画が創造されている。この画集的本では、一作品ずつを取り上げ、高階氏の的確な評論が付けられているから、現代日本の画家たちが、なにを目指しているかもわかる。絵や写真作品をみるだけでも、楽しい。
     色彩の流動性が、絢爛と生命的エネルギーを溢れさせる。濱田樹里氏の「流・転・生Ⅰ」は、高さ2m幅11mの大作で、花植物の鮮烈な赤色、金、白、黒の流動で、高階氏は「自然の生命エネルギーの壮麗な交響」と述べている。私は、岡本太郎を感じた。岩田壮平氏の「花泥棒」も、燃えるような朱色の花を中央に置き、自転車で盗んだ花と共に疾走する新鮮な日本画という。
     傍嶋崇氏の「オモイオモイオモウ」は、的確なデッサンと鮮明な色彩の調和、流麻二果氏の「絶壁頭」は、純粋色に近い黄色、赤、緑、青、紫、の風景画だが「色の持つどこか底しれぬ神秘的表現力」という。高木彩氏「Bloom」鈴木紗也香氏「あの日の眠りは確かに熱を帯びていた」なども取り上げられている。
      生命力溢れる作品では、谷保玲奈「出るために見る夢Ⅰ」、天明屋尚「獏図」、柏原由佳「カッパドキア」などが上げられている。私は柏原氏の作品に魅力を感じた。岩が生命体ほようだ。また、白の雪景色を描いた中岡真珠美「FloatingFeeling」は、詩情をたたえた白の生命力の凄い作品である。
  構図の独創性のある作品も多くある。高階氏が賞賛している佐藤翠氏の「Rflekutionns of a closeted」は確かに凄い。洋服や靴を収納するクローゼットを描くが、その構図が独創的でほのかな官能性がある。
     佐々木真士氏の「祈りびと」鈴木星亜氏「絵が見る世界11 03」、橋爪彩氏、浅井祐介氏、小池真奈美氏、坂本夏子氏、浅見貴子氏、上田暁子氏、遠山香苗氏の作品にも目を奪われた。(講談社