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西野神社 社務日誌

2007-06-02 伝供(でんく)

伝供

昨日の記事では神饌の品目やその並べ方などについて詳しく解説させて頂きましたが、今日は、昨日のその記事の関連事項として、神饌や幣帛などを祭典で大前お供えする時に行なう「伝供」(でんく)という作法について解説をさせて頂きます。

神饌や幣帛などを神様の大前にお供えする際、神饌の載せられた三方(さんぽう)や高坏(たかつき)、あるいは幣帛の載せられた大角(だいかく)や折敷(おしき)などを、複数の祭員(神職)によって次々と手渡し(リレー)しながら大前に送り出していきますが、この手渡し(写真参照)の事を「伝供」といい、神職が1人や2人だけで奉仕する祭典では行なわれませんが、複数(2人でも出来ない事はないですが、現実的に考えると少なくとも3人は必要)の神職が奉仕する祭典では、よく伝供が行なわれます。

伝供にはかなり細かい作法があるのですが、今日の記事では、大まかな部分だけを簡単に解説させて頂きます(伝供はあくまでも祭典における神職の作法であり、家庭での神棚のおまつりとはほとんど関係のない作法で、また、家庭でのおまつりには流用もできない作法なので、詳細は省略し、概説を述べるに留めさせて頂きます)。


【持ち方】

伝供を行なうには、当然の事ながらまず伝供を行なう対象物を手で持たなければなりませんが、その持ち方にはいろいろと決まり事があり、ただ手で保持すれば良いというものではありません。

三方や大角の場合は、親指を左右の縁の外側に、他の四指を折敷の裏と胴とに配して掛け、左右の掌(てのひら)を胴に当てて全体の重さを受け止め、縁が目通の高さ(真っ直ぐ前を見たときの目線の位置)になるよう捧げ持ちます。折敷の場合は、親指を左右の縁の外側に、他の四指と掌とを裏に当てて、目通に捧げ持ちます。高坏の場合は、右手にて脚の中程を執り、左手は親指を折敷の縁の外側に、他の四指をその裏に当てて、目通に捧げ持ちます。

三方、大角、折敷、高坏、いずれの場合も目通の高さに捧げ持ちますが、これは、腰の高さや胸の高さで持つよりも頭の位置で捧げ持つようにした方がより恭しく見え、また、持っている者の鼻から吐き出される息が神聖な神饌(もしくは幣帛)にかかる事を防ぐためです。


【受け渡し方】

三方や大角を受けるには、左手、右手の順に手を掛けます。掌を胴に当てて三方の重さを受け止め、親指は縁の外側に当て、他の四指は揃え(指と指との間を離すのは見苦しいとされています)、指先を少し下に向けて、渡す者の手の甲を斜め下の方から覆うように掛けます。そして、渡す者が右、左の順に手を引くと同時に、四指の位置を折敷の裏と胴とに移しかえて捧げ持ちます。

折敷を受けるには、左手、右手の順に手を掛けます。親指は縁の外側に当て、他の四指は揃えて、渡す者の手の甲を下から交差する形で覆い、渡す者が右、左の順に手を引くと同時に、折敷の裏に掌を当てて捧げ持ちます。

高坏を受けるには、左手を折敷の部分に当て(親指は縁の外側に、他の四指は折敷の裏に当てます)、右手で脚の中程(持っている者の手の下の部分)を執り少し手をすり上げ、渡す者は、右、左の順に手を引きます。


【伝供の作法】

伝供道

伝供をする際の人数は決まっておりませんが(その神社の職員の数、社殿の広さ、当日の都合、その他の事情などにより適宜変わります)、もし、A・B・C・D・E・F(上位から下位の順)の6人の神職で神饌の伝供を行なう場合、上位(6人の中では最も序列が上の神職)のAが大前に神饌をお供えし、その次の序列に位置するBが、神饌所から神饌を送り出します。そして、残りのC・D・E・Fの4人が、AとBの間を繋いで神饌を次々と手渡ししていきます。

右の図がこの例を図示したもので(図をクリックすると拡大表示されます)、アルファベットの書かれてある円形が人を現し、その円形から伸びている短い線が、その人の前方を表しています(真上から見下ろした場合、この線が人の鼻に当たると考えると分かり易いです)。図の「正中」とは、その社殿内における中心線の事ですが、これは実際に目に見える形でこういった線が引かれている訳ではなく、そこに線があると仮定して作法を行なうという事です。つまりこの図では、(神饌を受け渡しする時は祭員達は当然お互いに向い合いますが)受け渡しをする前、もしくは終わった後は、A・C・D・Eの祭員達は正中に向って立つ、もしくは座るという事を示しています。

この例の場合、Aの所役を「陪膳」(はいぜん)、Bの所役を「膳部」(ぜんぶ)といい、C・D・E・Fの4人は「手長」(てなが)といい、手長は、上位の手長から「一の手長」「二の手長」「三の手長」と称されます。つまり献饌の場合(神饌をお供えする時)、神饌は、「B(膳部)→F(四の手長)→E(三の手長)→D(二の手長)→C(一の手長)→A(陪膳)」という順に大前に送り出されるという事です。この時の手長達の手の動き(作法)は、前項【受け渡し方】で述べた通りです(足の動きに関する作法は省略させて頂きます)。

そして、これとは逆に撤饌の場合(神饌を大前から神饌所に下げる時)は、「A(陪膳)→C(一の手長)→D(二の手長)→E(三の手長)→F(四の手長)→B(膳部)」という順に神饌は下げられていきます。


【立礼に於ける伝供】

青山祭

この写真(左)のように屋外で伝供を行なう場合、あるいは、屋内であっても座って作法を行なうより立って作法を行なった方が適している場合は、立った状態で伝供を行います。このように立った状態でに行なう作法の事を立礼(りゅうれい)といいます。

ちなみにこの写真は、私が学生時代に実習していた某八幡宮の頓宮前庭で執り行われた「青山祭」という祭典で行なわれている伝供の様子です。青山祭とは、斎場に設けた青芝垣に疫神を封じ疫病流行を防ぐための祭典で、古くは「道饗祭」や「疫神祭」とも称されていました。


【坐礼に於ける伝供】

護国神社

この写真(左)のように社殿の屋内で伝供を行なう場合は、大抵、祭員達は座った状態で伝供を行います。このように座った状態で行なう作法の事を坐礼(ざれい)といいます。

但し、手長同士の間隔が短い場合は移動も座った状態で行いますが(立ち膝に近い形で進みます)、手長同士の間隔が長い場合は、神饌の受け渡しだけを座った状態で行い、移動は立礼と同じように立ち上がって歩きます。

ちなみにこの写真は、私が昨年の夏助勤させて頂いた、某護國神社での宵宮祭の様子です。


【西野神社での幣帛の伝供】

西野神社除夜祭

この写真(左)は、総代幣帛の載った大角を伝供する様子を写したもので、当社で昨年大晦日に斎行された除夜祭の時に撮影されたものです。

左に立っている神職(私です)が、仮案に載せられていた総代幣帛を総代長(スーツを着ている人物)に手渡し、総代長はそれを中央に座っている神職に手渡し、中央の神職は、一番奥の大床(御扉のすぐ前の高床になっている部分)に座っている神職に手渡し、そして、その一番奥の神職が、幣帛を大前にお供え致します。

なお、【伝供の作法】の項で述べた序列に従うと、4人で伝供(献幣)をする時は、本来であれば「B→D→C→A」という順になりますが、この写真の例では、事情により「C→総代長→B→A」という形で伝供をしております。


(田頭)

田頭田頭 2007/06/03 21:02 参考までに、神職が神饌を準備する際や神饌を供する際に、特に気を付けている点を以下に列記しておきます。

※ 神饌を選んだり揃えるたりする時は、特に品質に留意して、新鮮なものを選ぶようにし、その取扱いには努めて清浄を保ち、一切の不浄を近付けないよう心がけます。

※ 特に伝供によって供される神饌の場合、多少の揺れに対しても崩れ落ちる事のないよう、注意しながら盛り付けます。

※ 神饌を三方などに盛り付けて準備を終えた後、献饌(大前にお供えする)まで多少時間のある時は、準備し終えた神饌に塵や埃などが付く事のないよう、それらの神饌には白布または白紙を掛けておきます。

※ 祭典時における修祓(お祓い)で神饌に対しての修祓が同時にできない場合や、伝供をせずに神饌を予め大前に供し置く場合は、祭典が始まる前に、それらの神饌は必ず修しておきます。

※ 神饌は、本殿の御扉を開ける場合は御扉の内側(外陣)に、御扉を開けない場合は御扉の外側(大抵は大床もしくは階下)に供します。

※ 神饌の台数が奇数の時は、まず正中(中央)に、次に向かって右に、次に向かって左の順に交互に供してきます。神饌の台数が偶数の時は、まず向かって右に、次に向かって左の順に交互に供していきます。

※ 神饌のうち魚や鳥など首や尾があるものは、正中または向かって左に供する場合は、頭を向かって右側に向けるようにし、逆に向かって右に供する場合は、頭を向かって左側に向けるようにします。また、魚の場合、腹部は神前に向けるようにします。

※ 祭典時に奏上する祝詞の中に記されている神饌と、その祭典で実際に供される神饌が、異なる事のないよう気を付けます。