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西野神社 社務日誌

2010-03-18 伊勢参りをする犬

神社に卸す各種授与品の謹製・販売等を行っている、三重県伊勢市に本社を構える某会社社員さんが、先日、当社に営業に来られたのですが、その際にその営業の方から、伊勢の神宮式年遷宮を記念して同社が作成した「お伊勢参り犬ストラップ」という可愛いストラップを頂きました。下の2枚の写真がそのストラップで、大きさの比較のため、2枚目の写真ではストラップの右側に五円玉を置いてみました。

お伊勢参り犬ストラップ

お伊勢参り犬ストラップ

江戸時代には、「おかげ参り」という、伊勢神宮への全国的な集団参詣運動(爆発的な伊勢参詣ブーム)が定期的に起こり、時期によっては、当時の日本の総人口の5分の1に当る300万人もの人々がおかげ参りで伊勢に押し寄せました。しかし、病気やその他様々な都合により、伊勢に行きたくてもどうしても行けないという人もおり、そういった人達は、自分の代理として他の人に伊勢にお参り行って来て貰う事で、神宮に代参をしたのです。

そして、そのうちに、人間ではなく自分の犬に代参を託す人も出てくるようになり、近所でおかげ参りに行くという人に自分の犬を預けて連れて行って貰ったり、もしくは、道中の人々がその犬を伊勢へと案内してくれる事を期待して、犬一匹だけで送り出される事もあったようです。こういった犬のおかげ参りは江戸時代後期に流行り、おかげ参りをしている犬である事がすぐ判別できるよう、犬には御幣や注連縄が付けられ、また、犬の首には道中のお金などがくくりつけられて送り出されました。

伊勢へと通じる道々では、そうした犬が来ると皆で餌をあげたり泊めるなどして、その分のお金を少し貰ったりもするのですが、逆に「これはとても立派な犬だ」と言ってお金を足してあげる人も多く、犬の首に掛けられている袋のお金が増えてくると、袋が重くて犬が可愛そうだと一枚の銀貨に両替してくれる人までいたそうです。当時の人々はとても信心深かったので、おかげ参りをしている犬からお金を盗むような人はなく、こうして犬は人々の善意に支えられながら伊勢へと送り届けられていったのです。このストラップは、その「おかげ参り(お伊勢参り)をする犬」をモチーフとしたストラップです。

おかげ参り(お伊勢参り)をする犬

上の写真は、平成20年2月に伊勢参宮旅行をした際、内宮鳥居前町の「おはらい町」にある、江戸時代のおかげ参りを体験できる施設「おかげ座」で私が撮影してきた、2分の1スケールの模型で再現されていたおかげ参りをする犬です。

『御蔭参明和神異記』(おかげまいりめいわしんいき)という古文書にも、「おさん」という名の犬が伊勢へとおかげ参りをしたという記述が残っており、道行く人々は誰から頼まれなくてもリレー式に犬を連れて行き、そのような行為自体も「徳」になるとされていたのです。

http://www4.airnet.ne.jp/sakura/okage_inu.html

http://www.hyakugo.co.jp/mie/06/06/p05.html


(田頭)

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だいすけだいすけ 2010/03/18 16:28 田頭様

私の知る限りでは、香川の金刀比羅宮や長野の善光寺にも犬を身代わりに参拝させる習俗があったようです。

有名社寺の逸話は語り伝えられ易いですが、意外と江戸近辺の社寺でも急峻な山の上にある様な参拝し辛い社寺(例えば阿夫利神社など)では行われていたのかも知れませんね。

田頭田頭 2010/03/20 10:13 >だいすけ様

金刀比羅宮や善光寺にも犬に代参させる風習があったとは知りませんでした。
確かに、伊勢以外にもそういった風習があった可能性は高いですよね。

そういえば、何年か前に受講した、神社庁主催の「神道行法錬成研修会」で使われたテキストに、以下のような記述がありました。一部抜粋させて頂きます。
『江戸時代の伊勢参宮を見ると、神境に入る宮川の渡で代垢離といふことが行はれた。自分がみそぎをして神境に入る代り職業的なものがいくらか銭を得て垢離をとり、これでその人のみそぎを修したとしたのである。形式を強制するとこゝまで行くといふ注意にはなるが、これでは人のふんどしで角力をとるに外ならない。他人の寒さなら十年でも辛棒するに等しい。みそぎはこれを真剣にするもののみが、その信の力を味はひ得るとすべきである。手水をつかひ、塩湯をそゝぐ気持が形式的であってはならない所以である。』

上の文章は禊について述べたものですが、犬の代参にも、ほぼそのまま当てはまる文章だと思います。
本当に病気でお参りする事ができない、という事情があったとしても、人ではなく動物に代わりにお参りさせるというのは、動物が好きで実際に家で犬を飼っている私からみても、あまり感心できる事ではありません。
ただ、もし実際にそういう犬を見かけたとしたら、「何て健気で可愛い犬なんだろう!」とは思うでしょうが(笑)。