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西野神社 社務日誌

2016-02-01 まったく近頃の若い者は! …という歴史的伝統文句について

叱る

前回の記事では、「若年層よりむしろ中・高年の不作法が目立つ」という意見について少し触れさせて頂きましたが、この件に関連して私が思っている事を補足すると、そのように不作法が目立つと指摘されている中年・高齢層の方々のほうは、逆に、若年層の不作法を非難する傾向があります。
もっとも、年長者が年少者の不作法を「まったく近頃の若い者は!」と非難するのは、何も最近に限った話ではなく、“古来から脈々と続く伝統”と言っても差し支えない程、昔からの事ではありますが。

しかし、主に年長者が年少者を侮蔑する時に用いられる、この「近頃の若い者は」という言葉には、実はその語自体に大きな矛盾があります。
インターネット百科事典ウィキペディアパロディサイトとして知られる「アンサイクロペディア」の、「近頃の若い者は」という言葉についてのページでは、その矛盾について、以下のように解説されています。100%全てに同意出来るとまでは言えないものの、これはこれで、確かに一理あると思います。

年長者たちは近頃の若者たちの振る舞いや行動に関して苦言を呈しているのだが、彼らの言う「人としてなっていない」若者たちとはまさに彼ら自身の子供たちでもあり、それを育ててきた、もしくはそういった若者が増えるような社会を作り上げてきたのは紛れもなく批判をしている年長者自身であるという事実が恣意的に無視されている。
このことから、本来ならば年長者が「近頃の若いものは」という批判をするときは若者にではなく、そのような若者を育ててきた自分たちに対して非難していることになる。しかし年長者たちはもし誰かにそういった指摘を受けたとしても、「これだから近頃の若いものは」といって結局聞く耳を持たないことがほとんどである


近年は、若年層の中でも特に「ゆとり世代」と称される、特定の世代の若者達に対して、不作法である、常識が無い、礼儀がなっていない、などと声高に非難する人が多いように感じられます。
ゆとり世代というのは、広義では、小中学校に於いて平成14年度以降、高等学校に於いては平成15年度の入学生以降に施行された学習指導要領(所謂ゆとり教育)で育った世代(昭和62年4月から平成16年3月生まれ)の事で、具体的には、平成28年現在、12〜29歳に当たる世代の事をいい、狭義では、ゆとり教育を受けた世代のうち特に一定の共通した特徴を持つと云われている世代(昭和62年4月から平成8年3月生まれ)、具体的には、平成28年現在、20〜29歳に当たる世代の事をいいます。

ゆとり世代に対しての批判は、何も私の身近に限った話ではなく、テレビ雑誌ネットなどいろいろなメディアでも広範囲に行われおり、社会人となったゆとり世代の特徴として特によく指摘されるのは、以下のような評価です。

指示した事しかやらない、もしくは指示した事しか出来ない
すぐに言い訳をする
敬語が使えない
自分で考える事をしない
根拠もなく自信満々であるが実践には弱い
軽く叱っただけで仕事を休んだり辞めたいと言ったりする
手が空いていてもオフィスにかかってきた電話に出ない
自分からコミュニケーションをとりたがらない
上司とのお酒をキッパリ断る
欠勤や遅刻の連絡をLINE(もしくはメール)でしてくる
仕事よりもプライベートを重視する


実は私も、以前はこういった評価と同じように、ゆとり世代に対しては批判的な思いを抱いていました。まったく近頃の若い者は!特にゆとり世代は! …と。 しかし、数年前からは、そういうふうに考えたり言ったりするのはやめました。
以下の画像を御覧下さい。これはネットで拾った写真(ある本の一部を写したもの)です。

若者への批判

根性がない
仕事をしようとしない
義理人情がない
公私共に計画性がない
意欲がない
他人に思いやりがない
我慢しようとしない
口のききようを知らない
礼儀を知らない
敬語が使えない
社会的常識がない
規則や規定を守ろうとしない
団体生活のルールを知らない
物おじしない
慎み(嗜み)がない
質実剛健の気魄がない
男らしさ(女らしさ)がない
日本人としての矜持がない
だらしない

…との事ですが、実はこの本は昭和48年に発行された本で、これは、その当時(今から43年前)の“現代の若者”の特徴として書かれているものです。今の若者が言われている事と、ほとんど全く同じですね(笑)。
つまり、今、「まったく近頃の若い者は!」とか「これだからゆとり世代は!」と言っている御高齢の皆様方も、若かりし頃は、当時の大人達からほぼ同じ事を言われていた(もしくは思われていた)という事です。


次に、以下の文章を御一読下さい。これも数年前にたまたまネットで拾った文章なのですが、その一部をそのまま転載します。

今年96歳になる祖父とジェネレーションギャップの話になりました。
「おじいちゃんが若い頃、“今の若い者は”って言われたことある?」と聞いたら「そらぁあるよあるよ。兵隊やってた頃、皆で柵に座りながらミカン食べたり、歩きながらコーヒー飲んだりしていたら“今の若い者に日本は任せられん!”って言われたり、家から家へ屋根を飛び移ったりして遊んだりしていたら、“今の若い者は飛んで跳ねてばかりで”なんて言われたよ。寺で塔婆を使ってケンカをしたりしたな。でも、おじいちゃんが特別ヤンチャなわけじゃなく他の連中もやってるやつ多かったよ」なんて言っていました。
また祖父は公務員で師範学校を出て中学の体育教師をやっていましたが22か3歳の頃仲間内と店の食べ歩きをしていたら“豪遊している”と通報されたらしくその時も“今の若い者が学校の教師なんて世も末だ”とも言われたそうです

塔婆を使ってケンカ、というのはさすがに罰当たりにも程があるな、と思いましたが(笑)、それは兎も角、このおじいちゃんのお話から推察すると、「今の若い者は」という言い方は、実際には四十数年前どころではなく、少なくとも大正時代から言われ続けていたようです。
当時の中高年層からそのように言われていた若者達の一部は、ある一定以上の年齢に達すると、今度は、自分達が若い頃にそう言われていた事は忘れて、「今の若い者は!」と、言い出す傾向があるようです。

そもそも、現在、何かにつけて「これだからゆとり世代は!」と言われる若者達は、何も好き好んでゆとり世代として生まれたわけではありません。自分達から「私達にゆとり教育を受けさせろ!」「ゆとり教育を始めろ!」と主張した事も、多分一度も無いはずです。
当時の大人達がゆとり教育というものを始めて、子供達は他に選択の余地が無く、その教育を受けただけなのに、平成23年度から「脱ゆとり教育」が始まり、更に「ゆとり教育は失敗だった」という声が高まってくると、そのゆとり教育を始めた世代は、自分達がゆとり教育を実施・推進した事は棚に上げて、まるで責任転嫁の如く、ゆとり教育を実施された側に「これだからゆとりは!」と言っているのです。

ゆとり世代を一律に“困ったちゃん”扱いする人もいますが、そもそも、若いか高齢かには関係なく、所謂“困ったちゃん”というのは、どの世代にも確実に一定数います。
10代や20代の若年層には、世間知らずで自分勝手でワガママな人も少なくはないかもしれませんが、しかしそれを言うのであれば、世間知らずで自分勝手でワガママな人というのは、何も10代・20代に限った事ではなく、30代にも40代にも、もっと高齢の世代にも、どの年代にもほぼ間違いなく均等にいます。
70代以上のお爺さん・お婆さん達の中にも、心から尊敬に値する、誰からも敬愛され、誰からも実に良く出来た人だなと思われる人がいる反面、残念ながら、全くもって本当にカワイクナイ、誰からも嫌われるような人だっていますし。


昨今特に顕著な、ゆとり世代への風当たりの強さは、マスコミの影響も大きいでしょうね。
俳優・タレント・歌手などとして活躍されている、平成28年1月現在30歳のウエンツ瑛士さんは、本年元日に放送されたテレビ番組の中で、以下のような発言をされていました(要約です)。

選挙や政治を扱う番組で、年配の人の代表は政治に詳しい人が呼ばれるのに、若者の代表は詳しくない人が呼ばれ、若者は政治に無知なのが標準、というイメージ付けが行われ、それを見た若者が安心してしまうのは良くない。
テレビ番組も、若者はバカでも良いではなく、若者が政治を知らないのは辛い事だと思わせるような構成にするべきだ

これは私も「その通りだな」と思いました。10代や20代の若者達の中にも、政治・経済・法律・国際情勢・社会問題などに関心を持っている人や詳しい人は沢山いるはずなのに、そういった、意識の高い20代の若者がテレビ番組等に呼ばれる機会は多くなく、実際に番組に出演する20代の若者達は、なぜかそういった事には無関心な人が多く、そして、その無関心や無知を他の出演者達が呆れたりあげつらう、といった演出が多いのが実態です。
そういったマスコミの偏った姿勢も、「まったく近頃の若い者は!」「これだからゆとり世代は!」といったマイナス評価に至らしめる大きな要因のひとつにはなっているでしょう。

ちなみに、昭和63年生まれの田中将大さん(野球)・福原愛さん(卓球)・内田篤人さん(サッカー)、平成元年生まれの錦織圭さん(テニス)・内村航平さん(体操)・田児賢一さん(バドミントン)、平成2年生まれの浅田真央さん(フィギュアスケート)、平成3年生まれの石川遼さん(ゴルフ)、平成4年生まれの松山英樹さん(ゴルフ)、平成6年生まれの羽生結弦さん(フィギュア)といったアスリートの方々は、いずれもゆとり世代です。
特にスポーツ界で活躍している人が目立ち、このように、日の丸を背負って世界舞台に活躍する、極めて優秀なゆとり世代の若者達も、沢山いるのです。


昭和18年にソロモン諸島ブーゲンビル島上空にて戦死した、連合艦隊司令長官山本五十六海軍元帥は、多くの名言を遺していますが、最後に、その名言のひとつを以下に紹介させて頂きます。

実年者は、今どきの若い者などということを絶対に言うな。 なぜなら、われわれ実年者が若かった時に同じことを言われたはずだ。 今どきの若者は全くしょうがない、年長者に対して礼儀を知らぬ、道で会っても挨拶もしない、いったい日本はどうなるのだ、などと言われたものだ。 その若者が、こうして年を取ったまでだ。 だから、実年者は若者が何をしたか、などと言うな。 何ができるか、とその可能性を発見してやってくれ

確かに、現在の10代後半や20代の若者達の中には、私達の世代や更にその上の世代の高齢者から見ると、理解し難い所がある人も少なくはないので、そういった現状を踏まえるとなかなか難しい面がある事もあるのですが、それでも理想としては、山本元帥のような事が言える、度量の大きな大人でありたいものです。


(田頭)

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