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―にとべさん―

 

風通しのよい物語

柴崎友香『待ち遠しい』(毎日文庫)


柴崎友香『待ち遠しい』(毎日文庫)


夫を亡くしたばかりの63歳の女性の、「夫婦」というものについて語る下記のセリフが物語の序盤にある。

「そういうことじゃないのよ。好きとか、好きじゃないとか、それとはもっと違う ……。なんて言ったらいいのかな、夫婦って、恋愛ドラマみたいに盛り上がってるわけじゃなくて、ずっとこの人がいっしょにいるんだからやってくしかない、そのうちに、やっていくことが前提でなんでも考えるようになって…....…」

これを読んだ瞬間に、めちゃくちゃ強く共感し、一気にこの物語に入り込んでいけた。


柴崎さんが紡ぎだす物語は、どれも風通しがよく、読んでいて心地よい。

おすすめです!

新しい宝物

津村記久子『水車小屋のネネ』

津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞社)

とてもあたたかい物語だった。
167頁にある藤沢先生の言葉に、そのたった2行の言葉に感動し、この482頁の物語は傑作に違わないと確信する。
読み終えたとき、本がつぶれてしまうほどの力で、ぎゅっと抱きしめたくなる愛おしい物語だった。

津村さんの作品では、今まで『ポースケ』がいちばん好きだったけれど、ネネはそれを越える大切なものになった。
自分にとっての宝物がまたひとつ増えた。うれしい。

津村記久子『水車小屋のネネ』

久しぶりの一乗寺

出町柳で飲むまえに一乗寺まで足をのばして恵文社一乗寺店へ。
ずっと気になっていた『思い出す、書き残す―山田稔黒川創トークイベント記録』(恵文社一乗寺店発行)と、「十七時退勤社」という魅力的な名前の個人出版レーベルが発行する『製本と編集者』の冊子2冊を買う。
 久しぶりに行った恵文社の店内は、何冊もの本を大切そうに抱えた若い人がいっぱい居て、本が売れないと巷間で云われていることが、まるで嘘のように思えてしまうほどの盛況ぶり。
ぼくも書棚の間を回遊していたら、あっという間に2時間が経っていた。恐るべし恵文社
 

恵文社一乗寺店

『思い出す、書き残す』山田稔/黒川創

『製本と編集者』

平民金子

平民金子『ごろごろ、神戸。』


たまに平民金子の文章をむしょうに読みたくなる。

ありえたかもしれない人生について想像する時は甘美な光景ばかりが浮かぶのに、実際にあった日々の中には痛みだけがあった。「クソみたい」そうつぶやいた私の胸に抱かれて、子供はいつの間にかおだやかに眠っている。(「私の東京」より)


平民金子は物事の本質を柔らかな文章で書きあらわし、それを読んでいると心地よく、心穏やかになる。「これは最早文学だ!」などと云うつもりは毛頭ないけれど、とても気持ちのよい文章だと思う。

ただ、ひとつ残念なのは平民金子の本が、まだ一冊しか出ていないこと。

平民金子さん、次の本を早く出してください!

2022年上半期ベスト5

2022年上半期ベスト5


早いもので、もう7月になってしまった。
そこで、2022年上半期に読んだ本の中からベスト5を選んでみました。なお、リストは読んだ順です。

1.『数学する身体』森田真生(新潮文庫
2.『プカプカ 西岡恭蔵伝』中部博(小学館
3.『銭湯断片日記』武藤良子(龜鳴屋)
4.『上岡龍太郎 話芸一代 増補新版』戸田学青土社)
5.『ゆるい生活』群ようこ朝日文庫


読書日記からピックアップしてみたら、これの倍ほどになったけれど、それでは締まりがないので無理やり5冊に絞り込みました。

下半期も良い本が読めたらいいな。

深緑野分『戦場のコックたち』(創元推理文庫)

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この類いの小説はあまり読まないが、この作品はとてもおもしろく読むことができた。

一般的にはミステリーに分類されるようだが、個人的にはその部分より、戦場で人間の精神が徐々に蝕まれていく描写を興味ふかく読んだ。


ただ片仮名を覚えるのは、やっぱり苦手じゃ~!