去年見てて、まとめてなかった見た映画。


デヴィッド・フィンチャーゴーン・ガール

観客みんなめっちゃ笑ってたな…。
何がびっくりしたって、エンドロールで、この映画はREDで撮ってプレミアで編集してると堂々と掲げてることです。
それと関わるかどうかわからないけど、冒頭、タイトルのやけに早いカットがわりから始まり1カットが短い。独特の呼吸がある。それから早朝と朝と日中の色味があからさまに違うのをそのままにしてる(これはわざとだろうけど)。駐車場に車が入ってくるのを柵越しにとらえてしまっていて、フラッシュのようになってしまう画を「あえて」使ってる(普通NGカットじゃなかろうか、これは)。
エイミーの「所業」の圧倒的テンポ感ある繋ぎ(まるで目にも留まらぬ速度で為されているかのよう)。対してもったりどたどたのそのそ動くニック(グラスを叩き割る動きも「助走」があるし結局自分で片付ける)。

テレビを見る女たち、というおもむきあるな。男たちは消すか、見ても消したくてうずうずしてる。というか、テレビ論であり、メディア論であり、演技論であるというか…。

クラシックやプルーストを語る男ではなく、ビデオゲームに勤しみリアリティ番組を教養とする男が生き残る。…のか?本当に「生き残っている」のか?エイミーに関わる3人の男、途中で演じられなくなった男、演じすぎた男、「ちょうどよかった」男(「私の愛するニック」「ニックのスマイルを見せて」)の、それぞれの末路…。

そして、ロザムンド・パイク、めちゃくちゃ上手いのだけど、それはカリカチュアの上手さだという感じ。無論それは作品が要請しているもの。「何か他にいうことあるだろ?ん?」の時の横顔とか。
その要請しているものとは、最初と最後、2つのエイミーの顔の見せ方が変わるときの、前者はほぼ逆さになることで把握しにくくし、後者はカメラを(スクリーンを)正対している、という、その推移自体が示すような「わかりやすさ」だ。あっけらかんとした感じ、の過剰さとどぎついカリカチュア、異常なテンション。
そして中盤以降の正気の沙汰じゃない展開で途方も無いほど遠くへ連れて行ってくれる。しかしどこまで原作通りなのか。中盤以降の狂ったようなカットバックによる展開、あの語り方、はどうなんだ。
ただ、物語としても、「犯人」が犯行に及んだ引き金の出来事とその後の「心変わり」は「凡庸」(という言い方は少し違うかも。うまく単語で表現できないけど…テレビで語るニックを見つめるエイミーの「眼を見開いた」感じ)であり、それは『ドラゴン・タトゥーの女』に通じてるという意味でこれらは二部作かもしれない、と思った。

失踪がエンターテインさせるものだということ。それは劇中の人々に対しても(繰り返し流されるワイドショー、「祈りの夜」)映画の観客に対しても(灯される無数の懐中電灯の不気味な美しさ)そうだ。
そして、懐中電灯もの、の側面ある(そういう意味で『ゾディアック』を横に並べてもいいのかも)。廃墟のショッピングモールで照らされゾンビのように逃げ行く浮浪者。

マーゴ役の方、非常にすばらしかった。キャリー・クーンという女優さん。まだまだこういう人がぼろぼろ出てくる感じ、底が知れない
フィンチャー定番の、不穏さを漂わせるだけのシーンは今回もある(夫婦が同じ行為をする、網戸と扉の開閉)。
モンスターズに出てた、スクート・マクネイリーが出てておっ、となったので調べたら、モンスターズで共演してた女優と結婚してたの知って無になってる。
とりあえず、トレント・レズナーのサントラ聴きたい。


山崎貴寄生獣

染谷くんかわいいとしかいいようがない…。岡田准一ばりに愛でたい気持ち。
とまぁ、ビジュアル面ではなくて、例えば、校舎での錯乱状態から平静を取り戻すところなんて、戦慄が走るほどのリアリティを表現していた。
にしても今作は…。統一された色彩イメージの用い方の素晴らしさ。水族館、魚市場の照明、廃ビルの屋上の背後に広がる晴天、の青は、全編にわたって映像の表面の質感を支配している。田宮玲子の洋服と、寄生生物たちの静謐な隠れ家、の白(しかしそのすぐそばには水面がある…)。見ていてわくわくさせられる。
その画面の構築の一貫性に強い意志が感じられ、最高だ。
そして、完結編の予告で、後藤の事務所カチコミとか、田宮玲子の赤ん坊とか、森林での対決とかやるのを見てさらにぶち上がった。しかもピエール瀧の三木って…あれですよね…同一人物ですよね確か…。
しかもエンドのバンプ、オートチューンや打ち込みが、エンドロールのCGとも非常に合っていたのがうれしかった。


ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ『ベイマックス

はっきりいって、大長編ドラえもんの最高なテイストを踏襲している。なんというか、上手いこと言えないのだけど、演出というか呼吸というか、が、かなり日本のアニメに近いように感じた。…ほんとうまいこといえてないけど。
びっくりしたのは、金属と着ぐるみの差、離島の草木、の質感がはっきりわかるCGのクオリティの高さ。
それでいて、冒頭は当然のごとく海側からの街の空撮から始まる(舞台はシスコなので)。し、カーチェイス(電車との並行移動)、飛行シーン、と、入れなければいけないものは全て入ってる。
なんと、終盤の展開は『インターステラー』になってしまうのだった。あそこで死者すら呼び起こせないのは弱い、けど、その前にきっちり対面してるからまぁいいか。終盤の瞬き、手と手をあわせる行為の反復まである。
にしても、キャスおばさんだよな…なんなんだあのキャラは…誰対象なのか。