嘉門達夫アルバムレビュー(コロムビア編)

せっかくシングル集のレビューをしたので、ここでアルバムのレビューもしてみたいと思います。
とは言え数も多いのでアルバムごとにざっくり書いて行きます。

お調子者で行こう

記念すべきファーストアルバム…なのですがいわくつきで再版するハメになった可哀想なアルバム。
僕はもう既にビクター移籍後にCDでこれを聴いたので、必然的に再発版になるわけですが
完全に「当時(1985年)の楽屋オチというコンセプト」で作られており正直聞いてて
ついて行けない部分もちらほら。特に頭3曲がまさに当時の「ギョーカイ」を歌った2曲
(「業界人間ベム」「涙のモデルはギザギザハート〜いかにも私はモデルです〜」)と
タイトルと歌詞と歌い方のコンセプトがバラバラの「天才でバカボンを」で、
これが良くも悪くもこのアルバムのイメージを決定づけてしまってるかな?と。


まぁメジャーデビュー曲「ゆけ!ゆけ!川口浩」が「水曜スペシャルの『ヤラセ』を歌にする」という
「楽屋オチ」なので、アルバムのコンセプトも必然的にこうなったんでしょうけど
じゃあなんで「ゆけ!ゆけ!川口浩」が入ってないんだって話で
川口浩」と最初に書いた「いわくつき」の1曲である「一発屋ブルース(下記動画)」にミソが付かなくて
この2曲が収録出来たら、まだアルバムとしての統一性は取れたのかな?という気はします。


ただそれに反して「アホが見るブタのケツ」や「あったらコワイセレナーデ2」
差し替え曲ではあるものの「お前らには負けへんで」は「いつもの嘉門達夫」が堪能出来て非常に安心感があります。
あとはベストアルバムにも入ってる「トキメキのオバンチュール」は完成度もピカイチで
バックにワイルドワンズを迎えて歌ってるのになぜこれをシングルで出さなかったのか?と
不思議に思える曲です。


日常 〜COM'ON! 超B級娯楽音楽(スーパースラップスティック・ミュージック)〜

2枚目のアルバム。本人曰く「シブいアルバムやでぇ〜」とのことですが
僕はむしろ、これこそが「THE 嘉門達夫」という感じで
嘉門達夫初心者にお勧めの1枚だと思います。


タイトルの通り「日常」を描いており、嘉門達夫楽曲の大きなコンセプトの一つである
あるあるネタ」で構成されているので、前作に比べ非常に聞きやすい。
もちろん当時の時代背景とかは考慮しないといけない部分ってのはあるんですが。


個人的に好きなのがベストアルバムとかには入ってないので
知名度は低いのですが「電光石火のスケベー」という曲で
今でいう「草食系男子が肉食系男子の節操のなさをロックに乗せて歌い上げる」という内容で
むしろ今こそこれをみんなに聴いて欲しいですね。
肉食系男子」を「スケベー」と言い現わしたのもいい表現だし
サビの部分もキャッチ―で、僕は「ユカイなモッコリ」よりも
こっちを先行シングルで出すべきだとぐらい思ってるんですが
時代が早すぎたんでしょうかね?
当時はむしろ「女イッとくの男の甲斐性」みたいに言われてましたし。


そしておすすめ曲がもう一つ、これもベストアルバムに入ってないのですが
「三食パックの謎」というタイトルでタイトルで、昔丸美屋が販売してた
「三食パック」という商品についての歌なのですが
「そんな細かい事をそない仰々しく歌わんでも」というコンセプトの代表曲のようなものです。
実は僕が子供の頃には既に「三食パック」は売られておらず、僕はこの商品の存在を知らなかったのですが
それでも三食パックの悲哀が充分すぎるほど伝わってきましたので、この歌はホンモノです。


他にも色々日常の風景を嘉門達夫なりに切り取った曲が満載なので
オススメの1枚なのですが、1曲だけ「シンキウソウホ」という曲がありまして
これは1stアルバムがいろいろいわくつきになってしまった事を受けて
作られた曲なのですが、前回のコンセプトを引き継いでるだけにこれだけが
いわゆる「楽屋オチ」で、この曲だけぽこんと浮いてしまってるんですね。
僕は「ユカイなモッコリ」ぼB面の「アホが見るブタのケツ2」と収録ソフトが逆の方が
良かったんじゃないか?と思うんですけどね。

エエトコドリ!

タイトルの通りベストアルバムです。こういうタイトルの付け方は好きですね。
3枚目にして特にヒットソングもそんなになかったのにベストアルバムが出たわけですが
(1stの赤字回収のため?)1stから5曲、2ndから5曲、アルバム未収録のシングルが5曲の計15曲収録。
非常にバランスよくちりばめられており、特にシングルコレクションが出る前は
「ヤンキーの兄ちゃんの歌」と「ゆけ!ゆけ!川口浩」はこのアルバムが出るまで
聴けなかったので、そういう意味では貴重でした。
ただ今となってはいろんなCDと収録曲がかぶりすぎるので
存在意義がなくなってしまいましたが。

小市民宣言 LIVE

タイトル通りのライブアルバムですね。
ブックレットにもあるんですが、このライブで披露した曲は全て未発表曲。
つまりは「ウケるかどうかはイチかバチか」みたいな部分があって
「反抗期」「ヘビメッタ失礼しました〜デビルズ・ファイヤー〜」「小市民2」などは
お客さんの笑い声も聞こえ、こちら側も素直に面白く聴ける楽曲なのですが
「HERO」「何を言うとんねん(ぜいたく言うな)」「お前がせー!ブルース」などは
典型的な「言いたいことはわかるし、たぶん作ってる時にエエ感じになりそうだと踏んだけど
実際歌にしてみたらそうでもなかった」っていう感じの曲で
この辺ちょっと苦戦してるなぁというのが伺えます。
お客さんの笑い声も聞こえてませんし。


まぁ「何を言うとんねん(ぜいたく言うな)」は
後に「理想のタイプ(アルバム「図星でしょ」収録)」
として後ろの曲調をガラリと変えた事により成立したので、
それのプロトタイプだと思って聞くとマニアの方には面白いかもしれません。
他に「リゾート計画」に入ってる「映画の窓」のネタの元になってるトークがあったり
「天賦の才能」に入ってる「この中にひとり」がこの頃からすでにあったりと
そういう意味では楽しめる方がいるかも知れませんね。


あとショートソングも数曲メドレーで入ってますが「素直になーれ」は
数あるショートソングの中でも屈指の名作だと思います。

小市民大全集

「小市民」ヒット祈願で出されたミニアルバム。
テーマ別に「小市民○○編」と銘打って、アレンジもそれっぽく変えて
(「お酒編」は音頭、「結婚式編」は讃美歌といった具合に)
テーマに沿ったあるあるネタを歌って行くんですが
「小市民」という歌の汎用性に驚かされます。
「小市民」は今でもネタを変えてニューバージョンを
ずっと歌い続けているんですが、他の曲がどうしてもオリジナルを
越えられないのに対し、この「小市民」だけは毎回安定の完成度を誇りますからね。
ちょっと「小市民」という曲は別格なのかも知れません。
途中に入るドラマ「宇宙人が地球人を観察して結果を報告している」
というのも上手いと思います。


と、このアルバムを最後にビクターに移籍します。
こうやって見るといわゆるオリジナルアルバムは5枚中2枚だけなんですね(^_^;
本編でも書きましたがオススメは2ndアルバムの「日常」
これはゼヒ曲バラバラで聴くより、このアルバムを一つの作品として
聴いてほしいアルバムです。
では、次回「ビクター編」でお会いしましょう。

日常?COM’ON超B級娯楽音楽?

日常?COM’ON超B級娯楽音楽?