『しまなみ誰そ彼』の、<二つの境界>という幻。
これから書く。
放浪息子、いつまでも。
- 作者: 志村貴子
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2013/08/28
- メディア: コミック
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ぼくたちの、きせき。
書店によってみるのはただまっすぐ帰るのが億劫だったからなだけ。毎日ほんの少しずつたまって重くなった疲れに足をひきずり、書店によってはみるけどお金がないから特に何も買わない。ここは雑誌が読めるから。そこで出会ったのが「放浪息子の連載開始」と表紙に描かれたコミックビームという聞いたことのないコミック雑誌。ためしに開くと、ああ、と読みすすめた。
「少しレトロなチェック柄が好き」、そんな感じの主人公のフレーズにそうそうそう!と思わず頷き、嬉し恥ずかしお姉ちゃんのコートを盗み着た少年に胸を高鳴らせ、「出会った」と思えた作品だった。毎月雑誌の発売日に覗きにいくのが習慣になった。ある時は立ち読み防止のためか紐で縛られ読めなくなっていた。それに不満を覚えて久しい頃にはその書店によることはなくなり、一年に一冊25日あたりを目安に単行本を買い求めるようになった現在。
この子たちの物語が高校時代を終えようというときまで私はリアルタイムにかれらの時間を追ってきた。
どうも4巻あたりまでは誰かに貸したのか見当たらなくなったのでずっと読み返せてない。当時はコミックスに透明のカバーをつけてなどいなかったので、いつか帯びつきで保存版が買えたらなと思うのだけどさてはて。
たくさんの思い入れがあるのだろうか、上手くはいえない。けれど少しのことだけ何か書けたらと思ってノートを久しぶりにこうして開く。
続きを読む2011年マイベストBLコミックスcl。
・・・あ、もう年末なんですか?へぇ、、、全然そんな気分じゃないんですけど、引くわー。
という訳で何だか納得できない気分のまま今年もベストBLコミックスをセレクトさせていただきます。そして今年も更新がママならず申し訳ありませんでした。
そうですねぇ、なんか一年分読んだ気にもなってないので総括して云々できないのですが、今年も小粒な年だったような。振り返ってみると「ああ、コレも今年の作品だったのか」とようやくベスト作品を思いつくくらいなんですが、毎回その中から自分がはっきり根拠を持ってベストだと言い張れるものを選出するのに苦労するのです。選んだあとから「やっぱりアレも変な意地張らないでベストで発表してけばよかったじゃん!」て後悔するのが結局なオチでして。
なので今年はもういっそ「なんとなーく印象には残ってる」と思えるなら景気よくドレでも気ままに載せて行く方針で発表してゆきます!
あくまでなんとなーく覚えてるやつの列挙ですんで気合の入れ具合が若干ほかの年と違うかもしれませんがヨロシクお願いしますm(_ _)m
では、今年も例年通り発売月日順の列挙です。
☆〜ネ†タ♭バ#レ♪〜★
- 作者: 鹿乃しうこ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2011/02/10
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私は私の中の15の浩太を引きずったままだけど、やっぱり牧と一緒の浩太が好きだからさ。
だいがくせいにっき (IDコミックス gateauコミックス)
- 作者: 松木加斎
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2011/03/15
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前のコミックス『流れ星ミュージアム』のスピンオフ。同人すり直しということで背景とかgdgdなところあるけど、同情の余地なし的な受けの抱える孤独な悲しみが、情熱以外は何も持ってない攻めに溶かされるラストのカタルシスといい、私の最高シチュ盛りだくさんなお話でした。受け様の格好もフェミ男子って感じで素晴らしいわ!
ネガティブ君とポジティブ君 (IDコミックス gateauコミックス)
- 作者: 秀良子
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2011/03/15
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狼さん、そろそろ準備はいいですか (Canna Comics)
- 作者: 山田2丁目
- 出版社/メーカー: フランス書院
- 発売日: 2011/03/25
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- 作者: えすとえむ
- 出版社/メーカー: リブレ
- 発売日: 2011/04/09
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- 作者: ねこ田米蔵
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2011/05/02
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- 作者: 日高ショーコ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/05/25
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- 作者: 桜城 やや
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/01
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- 作者: 砂河深紅
- 出版社/メーカー: 心交社
- 発売日: 2011/06/30
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他人が描く漫画を多く読んでて何がいいって、自分では考えも着かないキャラを読むことで自分の中の眠ってたときめきツボを発掘してもらえることよね。私、こゆ外見でこゆ紳士な攻めたまが好きだったのねー、て。
ゆっくりもったり恋をしてゆく手順と言うか、うぶい大人の恋ってなんで胸躍るんでしょうね。お話にちょっぴり添えるアイテムがあると楽しくなるよね、私は苦手だけど胡桃使ったパンと珈琲食べながら読みました。心に優しいまったり系が好きな私としては好みでありつつ、何か少しズレてる気もしたけど(俺だけのものにしてって辺りかなぁ?)、う〜ん言葉には出来ていない。ともあれ、あなたを好きになれてよかったと思い合えるパートナーシップは最高のご馳走です。美味しゅうございました。
ちなみにこの二人の最初のエピソードはコミックス『瑕だらけの男たち』に収録。
やさしいエピローグ (バーズコミックス ルチルコレクション)
- 作者: モチメ子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2011/07/23
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この作家さん初期作品が微妙だったので苦手意識持ってたけど、面白いじゃん!ちょっとヤクザあがりの攻めと進路迷い中の受けがほっこり励まし支えあって築きあがる擬似家族っぽい風景が楽しかった。キャラクタの相関関係が若干『恋するバラ色店長』と似通ってたけど、攻め受け以外にあゆ世話役がいるのもいいかもねー。
- 作者: 楢崎壮太
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2011/07/25
- メディア: コミック
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ああでもまだまだ食いたりねー!植田くんももっと読みたいー!て感じに皆に愛着を持ちながら読み終えましたよ♪
そして他の読者さんも同様だったみたいだけど、最後ユリ子さんのお話に泣いた。すべて彼女に持ってかれたね。最高の花嫁姿だよ、お母ちゃん。亡くなった旦那ともどもコレからも家族で幸せになっていって欲しいです。
えんどうくんの観察日記 (ミリオンコミックス Hertz Series 110)
- 作者: ハヤカワノジコ
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2011/10/01
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- 作者: 鈴木ツタ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2011/10/08
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- 作者: はにわ
- 出版社/メーカー: シリカ編集部
- 発売日: 2011/11/01
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・・・なんだろう、変に人情話にしたかったあまりに演出過剰だった部分が否めないと思う。イカニモ同人気質だったり心象風景での独特な世界感・構成とか相変わらず面白いのだけど、お話全体に突き抜けるものが足りなかったような・・・と不満をこぼしてしまうのも、すっごいこの作家さんが好きだからなんだわな。
ともあれキャラクターが魅力的で、この美オヤジははにわサンならではのオヤジだと思うし、この作家さんのオリジナリティーも今後見せていって欲しいなぁ。
から回りのディンプル(仮) (POE BACKS) (POE BACKS Babyコミックス)
- 作者: 和稀そうと
- 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
- 発売日: 2011/11/24
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- 作者: 鹿乃しうこ
- 出版社/メーカー: ジュネット
- 発売日: 2011/11/30
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孤独なままで終わりそうな終わり無さそうな香りのする受けたんが好きです。
ブサメン男子♂〜イケメン彼氏の作り方〜 (アプレコミックス)
- 作者: 野々宮ちよ子
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2011/12/20
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配信漫画として人気だったらしいけど、『秋山くん』同様ステキなエロ本だよね、コレ。二人のカッコいい幼馴染の攻めに攻め立てられる時の受けが素晴らしくかわゆくってムハ〜v セックスそのものに様々なシチュあってこそだんだん盛り上がるエロチシズムが感じられて、貴重な作家さんだなぁと。
- 作者: 高岡七六
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 2011/12/22
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ていうか何故か受けの胸筋・腹筋のほうがよく映えるBLだったな。狸少年の場合は野球好きだからかもしれないけど、七六さんの受けは結構お肉が締まってて見惚れるw
狸一族の跡取りっていうネックはさして大事な要素じゃなかったらしく割りとぞんざいに片付けられててよい感じ。
- 作者: ウノハナ
- 出版社/メーカー: プランタン出版
- 発売日: 2011/12/27
- メディア: コミック
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ただひとつ言わせてもらうと、方向音痴の受けがいつも道案内してくれる攻めのことずーっと「ナビ」と呼んでたのが、ちょっと・・・w
ほら、↑の作品のあとがきでもさ、最初受けの花介をまんまポン太だのなんだの付けようとしてたけど、担当さんから「Hのときもソレだと色気がない」みたく言ってて止めたじゃない?やっぱ、まあいいんだけど、ちょっと本名呼ぶところ欲しかったような・・・どうなんだろ、アレはアレでよかったのかしら?
ともあれ時代物やらバリエーションに富んだ1stコミックスでした。
・・・。ああ、実は『悪人を泣かせる方法』とか『花は咲くか』とかベストに上がるかもしれない作品を読めてないのよ!こんなこと一度もなかったのに大失態だわ。なので何から何まで半端なベストclだけど、今日はもう時間がないからとりあえずコレで上げさせていただきます!来年はどうぞヨロシク!
『コクリコ坂から』を観て来ました。
ところでローソンのコロッケうまいっすね。二人を真似て帰りに食ってきました♪(関東期間限定のコクリコ仕様の包み紙ではありませんが)
…恥ずかしいけど合計3回見に行きましたw
一回目はみんなが嫌いな吾郎タンが監督だと聞きめったに映画へ行かない私にも好印象だったのと、好きな歌い手さんが再び主題歌等を担当されてしかもニコ生で曲を実際聞いたらかなり素敵だったので、8月ごろにはジワジワと気になりだし「これは観に行かんとどうにもならん!」と思い、行きました。
- アーティスト: 手嶌葵
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 発売日: 2011/07/06
- メディア: CD
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ちなみに第一印象は漫画の『少年ノート』っぽいカワユス!キャラクタの雰囲気が私なんだか久しく好感触だったわ。
二回目はなんか知らんけど良かったのでもう一度ちゃんと味わいつくすつもりでした、が、割安料金の場所を選んでたら雨のなか歩き通す羽目になった上に、クリーナーを忘れて曇っためがねで観たせいか消化不良。
だったので三回目は今日行って来ました。…関係ないけど慣れない10cmヒールはいてったらエスカレベーターの速度が速すぎて乗り込めず上映の待ち時間をウロウロ出来ませんでした。(箱のほうのエスカレベーターは密閉されるのがキライなので敬遠)(罠)(でも帰りは前のひとに合わせて踏み出したら乗れました)(罠回避)
で、3度観たらそれまでアレコレつけてた注文もといケチを言う気がせず、演出がしっくりきた感じで、まあ本当に私が集中しきれたかどうか分からないけどようやっと満足です。
コマ数が多くテンポが早い構成だった割にゆったりと味わえて、しみじみ楽しめる一品でした。
- 作者: スタジオジブリ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/07/27
- メディア: ムック
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「真夜中クロニクル」を読んだ。
デスクPCが故障して脱ネット中でしたがその分読書に時間が回り久しぶりに胸熱な力作小説を読んだので、超重たいノートを引っ張り出して更新します。
重たいのでいつフリーズするか心配ながら書くので余計に衝動のみの文章になりますがいつものことだとしてご愛嬌。
だけど拍手くださった方に感謝の意だけはお粗末ながら言わせてもらいますね^^
ありがとう。
- 作者: 凪良ゆう,小山田あみ
- 出版社/メーカー: 大誠社
- 発売日: 2011/04/12
- メディア: 文庫
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- あらすじ。
太陽の下に出られない病気を持つニーナは、気難しくて偏屈だ。そんなニーナが、夜の公園で7つも年下の陽光と出会う。どんなに険悪にしても無邪気に寄ってくる陽光を煩わしく感じるが、ニーナは次第に心を許していく。そんな二人がすべてから逃れるため、星降る夜に飛び出した―――。温かな恋心でニーナを包み込む陽光と、寄せられる思いに戸惑って踏み出すことができないニーナ。時を経て変化に呑まれながらも、成長していく二人がたどり着いた先とは?
BLレビュー。
なんというか、著者自身があとがきで「百%精一杯を文字にした今の自分にないものはない書きたいもの」と明かしたように、等身大な作品だと感じました。それに凪良さんも言ってたけど小山田さんのイラストも良かった。表紙カバーが世界観をうまく凝縮してると同時に、イメージにハマるキャラ造形と、成長した攻めの外見の違いもうまく描き分けつつ、「あー、この子ホンマこんな姿に成長してそう」と納得させられる細やかさでした。
どうやら書きたいものをすべて詰め込むため多少無理なさったらしく値段を上げないため行数増やしたそうだけど、その分読み応え十分な文庫本。手にとってよかったわ。
何がイイって、そうだなぁ。やっぱり文章全体から伝わるほのぼのなだけじゃない深く苦しくも温かな物語性で、詩的なリトリックがすんなり入ってくる重厚であどけない恋心がかな。
構成が大まかに分けると3部に分かれるんだけど、1章の子供ながらロマンチックな台詞を純朴に語る攻めの「少し鼻にかかっててアーモンドキャラメルみたいに甘くてでもどこか悲しそうな歌声」という表現が違和感なく、ジュブナイル小説的雰囲気とあいまって自然にトキめくしね。ところで銀河鉄道の夜の猫アニメ、俺ソレ昔見てた!
一番幼いころのエピソードがとても印象的でしたし、可愛らしかった。
大人気なく年下にゲンコツをお見舞いする18歳のニーナと、めげずに熱烈アタックする11歳の陽光がドタバタじゃれまわってるのがツボ〜。1章だけで完成された話だったから「BLだからって大人になって性愛関係描ける年齢まで書かなくてもイイのに」とちゃんと読む前は思ったけど、二人が社会と向き合う中で成長しあう過程を書いてこそ二人の物語だと得心しました。
あとラスト読んでるとき聴いてた、鬼のニューアルバム剣と楓に収録された『EVER AFTER』の歌詞と見事リンクして嬉しかったー!鬼風に言うとこういう事はよくあるから驚かないケド。これからも続いてゆく二人の精一杯な物語を感じられるさわやかなエンドマークでした♪
昼間ではない夜の優しい明かりが<闇>の色を甘いキャンパスに変えていく感動が思い起こされたよ。
あーしかし基本俺はなぜか肌ネタに弱い。目を背けられがちな肌をこそ美しいと断言するその力強さを見たら、どうしても目頭が熱くなる・・・。言っとくが私は深刻な疾患はないよ。昔通りすがりの男に突然「早くアトピー治るといーな」と言い去られたけど。ていうかニキビだし。アトピーに苦しむ人の話を聞かせてもらった後だからアレはムカついたな。いや、ここらへん俺にはすごく大切な話なんだけど今回置いといて。
― ネ タ バ レ 危 険 。―
2月の蝶のオススメ帳。
こんにちはからおはようまで、こんばんははまたあした。のだだです。
いやぁ、perfumeって最高ですね。夢の舞台で踊り歌う彼女たちがひたすらに眩しいです。次は自分もライブ行きてぇな。
ところで『Puppy love』のサビ歌詞ってさ、「一方的な表現のツンデレーション、君が好きばかり、ミフネー」て聞こえない?
さて。前回の更新は少々やさぐれていたので読者様への愛想もへったくれもない記事で申し訳なかったのだけど(この場を借りてごめんなさい)、それはまた別の機会に挽回させて頂くとして、今回はお世話になったとある方宛ての記事になります。紫のバラの人宛てとでも言いましょうか、私がその方に読んでもらいたいなぁというBLコミックスのオススメリストです。
とは言ったものの、集めてみるとなんだかやけにコミュニケーションスキルにまつわるお話ばかりで…。もし私がコレをいっぺんにオススメされたら多分読まない(爆)
だからドレかひとつでもセンサーに引っかかる物があればお読み頂きたいな、という気持ちで書きますね。
ではでは、トップバッターはこちらにしますかね。
- 作者: 藤たまき
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2008/05/30
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遊覧船乗り場の売店でバイトをする日和は、物書きの間宮のことが気になっていた。間宮は何故か大変気前がよく、日和に事あるごとに高額な駄賃をくれる。それはふたりが初めて寝た日もそうだった。日和は激怒するが、実は間宮はお金でしか愛を得る術を知らない人で……。表題シリーズ四篇を収録。日和と間宮のプレシャス・デイズ!
何度か話題にも出した作品で恐縮だけど、藤たまき作品で未だ一番好きな作品なの。ポエミーなモノローグとネーム(台詞回し)が自然と癖になる。
商船高校を休学中の日和(ひより)は旅館を営む実家の息子(ちなみに旅館は一番上の姉が継ぐみたい)で、学校のない今は遊覧船近くでバイトしています。
そこに現れるはやや正体不明なイケメン間宮さん。つり銭ばんばんくれます。て言うかバイトが受け取ってイイのかと思ったけどまあともかく、この方がとってもユニークで愉快なんですね。
お金が彼にとって信用の土台であり、人との繋がりに必要な「糧」なんですね。(誤解のないように、間宮さんが言うのは「金が愛」って意味ではなく、愛を営む上で何が糧になるか、なのよね。)
私は貧乏のくせにそういう人ってとても分かりやすくて好感を持てるのだけど、たしかに多額のお金や高価なプレゼントを貢がれると「自分に見合うんだろうか」と不安になる。ここらへん彼自身のあやふやな現在の進路ともリンクしていって、BLでありつつ青少年の成長物語にもなってる。人と人との出会い(恋愛含む)と進路と、そういう人生を描いたBL。
ともかく。
日和も間宮のポリシーをどこか間違った愛し方だと言いたげではある。けれどこの作品は愛し方について二人が理解し合う姿勢があります。日和にとって「異星人」の間宮さん“だから”間宮さんにとっては日和も異星人。
面白いのは日和の思う愛し方が、間宮さんの金ありきな愛し方へのアンチテーゼとしてしか言葉に出来ない点。愛に必要な糧が金でないなら何か?と問われて「身体」と応えたら「君ってスキモノで困るなぁ(>v<)」と返されちゃう。そしてじょじょに日和の言い方が変わるけど、実はコレ、愛の本質(普遍的な糧)がどこにもナイことの表れでないかな?
その二人の間のひずみを眺めることが、愛や人生という航路について考える材料になることは間違いない。
- 作者: シマダマサコ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2005/10/24
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- 作者: シマダマサコ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2008/03/24
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かつて彼らが揃うと必ず学級崩壊すると言われた温(あつし)と真音(まなと)。彼らに密かに憧れていた高坂は、嫌がられても負けずに仲良くなろうとする吉岡のおかげで温、真音と「友達」になる。温と超ブラコンな真音は幼馴染みでなにか秘密があるらしく・・・・・・!?
うーん、なるべく一冊完結のをセレクトしたかったんだけどお笑い要素も混ぜたかったのでw
犬語や猫語が話せた少年は、幼稚園でつまらなさそうにしてる少年に興味を抱く。少年たちは最初かみ合わなかったが今は無二の同胞。
そして遠くからこの二人に憧れていた別の少年がいた。彼が進学した高校、そこにいたのは正しく佐藤温と佐藤真音、その二人だった。どこか性の香りが漂うサイケデリックな佐藤温&真音が繰り広げるドタバタ学園ライフ。そこに毒々しさが混ざると言う珍味。
二人に憧れていた少年、高坂。彼に中学の頃から付きまとってくる同級生・吉岡。高坂は二人とコンタクトを取りたいけど中々踏み出せない。対照的に、無理やり二人の間に食い込む笑顔のターミネーター・吉岡。
彼ら4人組のマイペースコメディって感じかな。結構ルチルらしい作品と思う。(ルチルって割とあるよね、フラグ立てっぱなしできっちりカプへ回収するでもなく、ダラダラ続かせるようなさ)
高坂が小学ん時通っていた塾で話題にされる事と言えば、ゲームやテレビではなく、通称「佐藤A」「佐藤B」が「また教師を辞めさせた」とか「橋を燃やした」とか、そんなことばかり。
高坂は中学あたりで引きこもっていた時期に、ネットの掲示板に塾で聞いた「佐藤A・B」の話題を載せたのね。そのスレッド名が「69」だった。
スレッド名をもじって高坂は二人を「無垢(69)」と表現したが、二人はあっさり「そんなのは俺たちの事じゃないよ」と押し付けられた表象を拒絶する。
吉岡はといえば、「泣きたいのに泣けない迷子」「女の子みたい、性別を感じさせない」と表現したけど、どうだろ。二人は作中でやはり<幼さ>の象徴として語られている。(そして幼さと「女の子」が同列に置かれる)
でも言い方を変えれば、彼らから醸し出される自由な(不自由な)空気は<男の子>だからこそじゃないのかなぁ?
私はこの作品読んで、シマダマサコさんは猥雑な厨房男子の笑える掛け合いを描くのが巧いなぁと思った。
- 作者: 山中ヒコ
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2009/09/30
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武家の庶子である鈴は、本妻の目を恐れ男の身で女として育てられた。美しく成長した鈴はある日、町でならず者に絡まれたところを町人の新三郎に助けられる。以来、男というものへの憧れを育て始める鈴。だが父から借財のカタに嫁入りを命じられ……? 表題シリーズほか、年下攻リーマンシリーズ「新しい武器」を収録。
絵がね、結構雑く簡略化したものだったりするけど、ソレがまたワンホカ愛らしい。けれどこの方の作品も毒や刺が残る。モノローグが神の視点(?)というか、ナレーションみたいに随所に置かれてて、その淡々さが物語の鋭利さとよくマッチしてる。過去シーンとか、何かクル…。
山中さんってばドラマチックな心憎い演出で読ませるエンターテナー。
きせずしてこのコミックス、男性性がクローズアップされた作品だと思うわ。家の奥で乳母たちだけで暮らしてきた鈴がはじめて見蕩れた大人の男・新三郎。
「あれが あれが 男か」
そこから彼の中で強く男性アイデンティティが芽生える。と同時にソレがホモセクシュアルな情動と重ねられるのは、ある種古典的。更に、攻めからは「男でも女でもお前さんが欲しい」と情熱的に迫られる。
にもかかわらず描き下ろしを読むと、受けが「攻めに認められたい」と思う立場が<男>であるのに対し、女は…。
主に女性読者層のBLで描かれてる点含めどう評価するかよね。
ただ読んで欲しいのは、『新しい武器』の後日談というか、脇役・吉野視点のお話。「あのプロローグからそのエピローグに行きますか!」というね!これだから好きだわ、第三者視点。
しかし私このコミックス読んで、「BLって<初恋>を描いているジャンルなんだなぁ」という感慨を抱いたわ…。…なんかそれが、…うん。
- 作者: 野守美奈
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2011/01
- メディア: 文庫
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人嫌いだった祖母の訃報が届き、遺産をめぐるゲームに巻き込まれた槙村匡。彼女が唯一傍に置いたらしい美貌の青年・輝夜が、その鍵を握るという。気乗りしない匡だったが、憎まれ口ばかりたたく輝夜がふと見せる寂しげな瞳に、幼い日の記憶を揺り起こされ・・・?人造生命体〈輝夜〉たちのやさしい絆の連作集・・・単行本未収録、描き下ろしもあわせ完全文庫化。
Yahoo!ブックストア サービス終了のお知らせで試し読みできる臭い。
私基本的に作品は出された当時のコミックスを読んで、あとがき含めて楽しんで欲しいのだけど、せっかく文庫化されたので沢山の方に読んで欲しい一作。(そういえば単行本では絵で失敗したと仰っていたけど、今回も似たようなこと繰り返してますがw)
長編だからじっくり読めるよ。
近未来アンドロイドもの?のオムニバスストーリー。作中に「今時ヘテロオンリーってのもないだろ」って台詞が出てくるそんな時代。
本当に色んな輝夜とそのオーナーがいるんだけど、まずかれら「a-ライフ」通称「輝夜」について簡単に説明するけど、まあ一言で云うと愛玩用アンドロイドかな。かれらはオーナーを必要とする半有機生命体で、希望にそって成長速度が早くも遅くもなるし、オーナーの意思に従順に作られている。
更にオーナーが傍にいないと弱って死んでしまう!
それぞれ早く大人にさせる事情や幼いままゆっくり成長させたい事情など様々あり、面白い。
そしてもうひとつ、彼らは交接(セックス?)すると瞳が翠色に変わること。
しかしそんな輝夜たちにもイレギュラーがある。
それは人間であっても心にイレギュラーがあるように…、とでも言うべきか、結構揺らいでいる。
…設定だけ書くと何やらアレだけど、実は物語自体は輝夜の“主体性”こそを重く描いた様相。アンドロイドであるため、相手を愛する理由とか、何か確約した信頼の土台が無条件にあるようだけど、「ご主人様がいないと死んでしまう」といったDVの可能性等々を細やかに捌いている。数々のエピソードを丁寧に併読すると見えてくる「人間関係とは…?」があると思う。
たとえば機械的な仕組みがあるからこそ培える関係もあるけど、どんな人がソレを望みどんな人が拒むのか…関係性の中身をためつすがめつ読んでみるのもアリかもしれないね。
皆さんはコレを読んでどう思われただろうなぁ。たとえば「信頼」について。「自由」について。「恋」について。「生きること」について。
輝夜「だから」愛し合える?
もちろん心の水は人それぞれだと思う。けれど特定の恋愛感情が否定されたり若しくは推奨される中、「人それぞれ」の一言で恋愛の持つ社会的な偏り(なぜか性別が殊更重要視されるとか)をウヤムヤにして、「理由なんか分からない、ただ愛しただけなんだ!」と叫ぶのは私どうかと思うの。だけど、数々の<理由>もひっくるめて、真実なんて最初から追究すべきではないと主張するかのように、しかし現状すべてを己の人生のため捉え直すダイナミズムは、ちょっとイイかもしれない…。上手く言えないけど。
繊細で逞しく、はかなくも力強く。読んでるうちになんとはなしに心の中が翠の色に染まる、そんな世界観だった。
- 作者: 西田東
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2005/02/25
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外科医・中道の医局にやってきた調子のいい後輩・堤は、脳梗塞で倒れた院長の息子。その院長と付き合っていた中道は、居心地が悪い。そんな折、院長は他界する。父親を奪った相手として憎みながらも、中道を心配する堤は、彼に以前の笑顔を取り戻してほしくて……。描き下ろしも収録した、西田印、大人のビター、スイート・ラブ!!
病院内ですれ違った院長の息子と院長の愛人。一瞬見えたかすかな敵意は影に潜み同僚としての普通の生活が始まったかのようだけれど。そして愛人は夜の影にひそみ、病の床に着いた男にしなだれかかる。
愛人におさまる彼は影の立場なのか。沢山の別れを味わいつつ、いつも一人だけで立ち直る無力に健気な彼だから、その影は痛ましいのだ。そんな影に寄り添う光は何だろう?
私が最初に読んだ西田東漫画。昔はよくコレ読んで泣いてたな。単純に死ぬ話に弱いってことなのか、中道が「よほどの美形かマッチョ」ではなくパッとしないオッサンで親近感が湧いたからなのか。ただとてつもなく孤独の臭いがプンプンしたんだ。今はもうあまり泣くことがなくなったのは、私がその手の寂寥感を失ったからかもしれない。孤独を抱きしめて眠る大人、影にひそむ恋、光となって心を見透かし照らす父とその息子。影でひそんで一人グジグジしていたいのに、窓を開けたら差し込む光がまぶしくて、何故だか救われてしまう。そんな感じ。
- 作者: 田中鈴木
- 出版社/メーカー: 大都社
- 発売日: 2006/04/10
- メディア: コミック
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そばにいる幸せと、失う痛みと。君はすべてを教えてくれたからだ―――。
“小さくて細くて、でも目だけは大きくてすげーキレイ”な先輩・栗原良之(くりはら よしゆき)と友達になりたくて、楠木次郎(くすのき じろう)は陸上部に入部した。誰も寄せ付けないかのように、ひとりで走る栗原に次郎はなかなか追いつけない。だけど、やがてふたりの距離はゆっくりと近づいていき・・・。
表題作ほか、ハートエイクな短編3作を収録した傑作集。
きみがいるから気づける後悔もある。絶望のはざ間に自分自身と希望を見出し、それでもまた迷走する、そんなお話。
田中鈴木さん(この人の名前も↑と似て駄洒落だなぁ)の初期作品集。こちらも死をテーマにしてるお話が多い。
『めまい』(実は表紙の二人がコレ。表題作は別の人たちです、紛らわしい)とかもだけど、子供の頃見て忘れられなかった物語みたいに脳裏に刻まれる内容だった。『私立棘抜学園』もすげー荒削りなんだけど、あとがきに「もうこんなの描けないよね」とあるように、当時のパッションが生々しく伝わる作風。モブキャラの「だからどうという事はないんだけど」って古臭い物言いが何故かツボw
あと、『明日の約束』。もう「なんじゃこの終わり方は〜!(≧д≦)」て突っ込みたくなると思うんだけど、もう圧倒されちゃうんだよね。『SLOW STARTER』も泣き叫ぶ声が単純に素朴に胸が熱くなるし、名作揃いだと思うので一読あれ。
- 作者: 依田沙江美
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: コミック
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「星の君」なんて呼ばれて優等生のようだけれど、それはちょっと仮面だったりして。全寮制の男子高。星弥は最近、同級生の龍泉が気になって仕方がない。急速に親しくなりある夜、ついに告白してキス。 でもそこはお墓の前で、龍泉は極度の怖がり。抱きついてきても意味はない。それどころか、その後の反応は……!? ラブ・イン・ドミトリー!!
家が嫌で逃げるように全寮制の進学校に入ってみたら、ステージ台には仏壇が…!
何となくソリの合わない二人だった。「やる気ないぜ」グループの急先鋒な龍泉、要領よく先生とも渡り合い周りからウケのいい星弥。対照的な彼らだけど、話してみたら案外ウマが合うみたい?なのに中々上手くいかないのは?
依田さんのコミックスどれをオススメしようかと思ったけど、やっぱりこの方なら学園モノ読んでもらいたいなぁとセレクト。細やかな人間管理能力を求められる寮長とか生徒会長キャラだから分かる依田テイスト。
理知的な策士家攻めとドコか抜けてる受けの掛け合い描写は相変わらず巧み。私、依田漫画ってゲイ(やクィア)を「ゲイキャラ」として出すんじゃなく、まず細かな物語舞台設定から入って行って、そこに自然とキャラを溶け込ませる、と同時にジャッジメンタルではない形で「マイノリティ」を淡々と冷静に描く手法が好き。
よく「人間の生々しさを描いた問題作!」とか触れ込みのお話あるじゃなあい?薬漬けとか、暴力沙汰とか描きつつ。でも私「人間味」ていうのは、たとえばこの攻めや受けやモブキャラたちのことを指すんじゃないのか?て思う。それくらい何か地味に(笑)、皮肉っぽかったり、人間味あふれてる。
「でもそうだね なんで君は宗教関係になるとそうリキむかなとは思うよ 誰も君を洗脳したりしないんだからいちいち犯されるみたいに騒がなくてもとは思うよ」
不覚にも笑うw
…しかし空気読めない俺としては細かな常識観念やそのズレで物語が展開してゆく感じが少し居たたまれないけど、KYだからこそ読んでて和むのよねぇ。分かるかしら、この気持ち。
あ、なんか御幣あるな。描いてる作家さんも頭よさそうだなって思うんだけどガチガチに常識的って意味じゃなくて。日常の細かな所作とかシキタリとかを立体的なエピソードで解説してくれるような面白さがあるんよね。そんな話の中で、人として冷血な自分どうよ、とか芯をエグる内容もあって、だからこれも結構叙情的な作風でもあるのよ。
「その時の泣きたいような気持ちをどう表現したらいいかわからない」
とモノローグも結構しんみり。
で、描き下ろしの『桃色妄想少年』は脇キャラ視点。だけどコレが気ン持ち悪いのよ〜〜〜!男同士で付き合ってる星弥と龍泉。同部屋仲間で「どっちが女役?」みたいな話をしていて、そこから龍泉を女と思い込んで止まないテル氏。
面白いのは、同性愛に擬似異性愛性を体現してるのが「同性愛者って異性になりたい人なんでしょ」と乱暴に括られてる側ではなく、龍泉を女だと勝手に見立ててるどノンケ自身という点。しかもその偏向が破綻してることをも如実に体現してしまっている。
風呂で裸を見てるにもかかわらず、「ああ、龍泉は女だから髪伸ばしたり男の星弥と付き合ったりするんだね」とかグロテスクな事を言えちゃうのはさすがに笑うしかないけど、ただ、実際笑うしかないほど世の中の恋愛定義はヘテロ色でイッパイなのかもね。
まあ、生身のシスジェンダー女子を見て妄想からさめてしまい、あらためて男子校の「汚さ」を確認する…というシークエンスは、ジェンダー構築面で保守的だけど。
…はぁ、ちょっと長くなりすぎた。ひとつ省いてこれで最後にしようかな。
**** ****
最後は私がすごく影響を受けたといった作家さんのコミックス。
以前腐男子系の同人誌に寄稿させて頂いたとき、BLについて「むしろ批判したいところの方が多いのに好き」と書いたけど、なんというか、私にとって「BL」と言えばこのひとなのだ。
からっぽだった頃、からっぽにしなきゃいけなかった時期を何かで塗装し直さなきゃならなくて。たまたまあったのが彼女のBLだった。
何かシンパシーという電流が走ったの。
絵柄も、エロスも、思考も。
持っている全部の作品読み返した時分かったわ、私がBLにおいて何故彼女を選んだのか。様々な渇きを代わりに描いてくれていた。困らされることもあるわ、でも寄り添うことが出来た。それをすべてここで書くことは出来ないけれど、これが私の第二の出発点だったんだね。
今他の人がレビューしてたのを見たんだけど、恋を描くというより恋を描くことでその人間の裏側まで暴いてしまうんだ。
- 作者: 門地かおり
- 出版社/メーカー: リブレ
- 発売日: 2009/02/10
- メディア: コミック
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ちなみに。さっき「新装版や文庫ではなく当時発売のものを読むべし」と書いたけど、この人のあとがきも面白いのよねー。自分と編集担当者を動物と飼育係にたとえてみたり、読者に向かって「ひとりに2,3冊購入をノルマに課したい…」みたいなことを、編集担当者にドツかれてる絵で書いてみせたりw
あらすじ。
ガリガリでお人好し。おまけにウスノロで…でも、とっても優しい天然・五百川の魅力に抗えず、ズルくてモテモテで格好良い…変態の倉橋先輩が、周りの迷惑お構いなしに変態ちっくに攻めまくり……!? 純情可憐な五百川の貞操の危機を巡って、万年発情男・倉橋の恋の行方は…!? 噂のラブコメ、新装版で登場!!
表題作はまあ先輩にセクハラされまくってソレに気づかぬオボコい受けの話って感じ。なのに純情さを残す卑怯さ。
受けの偏屈なまでに激しいオボコさ、それに口八丁でつけ込む攻め。読者は当然「アホかw騙されるなw」と笑い飛ばせるのだけど、何故か読んでいく内に男同士の常識・貞操観念がバカらしく思えてくる。「いやいや意識しすぎ」「でもお揃いのマグカップはやっぱり変じゃ?」「ああ先輩は僕を気遣ってくれただけなのに変態だなんて罵ってゴメンナサイ!」。受けと共にコッチまでじょじょに狂わされるw
…というか私自身、BL読み始めた頃特に、ノンケであるとか、アルハズノナイモノがアルハズノナイバショに生まれさせる力技を欲していたから、そういう意味で力強く感じたのかもしれないな。恥ずかしい話だけど。
あと、この人は作品を読めばどういう思考回路してるか何となく分かった気になれちゃうんだけど、時々繰り返される攻めの脳内会議(w)がぶっ飛んでる。なので読者を選ぶ作品かもしれない…。
とまれ、ヤッてることゲスイのに実は…というギャップが楽しいお話。
『褪せる』『密室』は本当に暗い。
本格的にレイプ監禁ものだから気をつけて欲しい。だがそのダークな破壊力は何かひきつけられる物がある。受けのズルさ、攻めの執着。
「どうしてあんたなんかが一番なのかよく解んない」
『めまい』も大概ダーク。
スポーツトレーナーの攻めはこれまで男子高校生と遊んでは捨ててたんだけど、今は高校球児の恋人が出来た。本気で惚れた彼といると心が洗われる、愛しい恋人。お話は妖しいムードから濃厚なセックスになだれ込むが、受けの言葉で関係は急直下する。ある種自虐的ですらある受けの加害欲求。
読んだ後やりきれなさが残るが、それゆえに生々しく痛みがのぞく。
まさに悪夢。だけど、悪夢が醒めない時は悪夢を読みたいもの。
さすがに口に合わなさそうならコチラをオススメ。
- 作者: 門地かおり
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2009/02/10
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人気歌舞伎役者・優紀は遊び仲間の秋川に密かな想いを寄せていた。戯れを装って身体の関係を持つようになった二人だが、優紀は彼の心にも期待し始め…!? 続編の「小春日和」や、人気読み切りも収録された特別編集・新装版!!
江戸時代モノ。こっちは『運命の人』もあるし。何ていうか恋することの不可能性について描かれてる。今気づいたけどこの人もモノローグ量が多いなぁ。
「誰にも影響のない人間でありたい」
無気力感がひどく堪らない。
表題作は結局男の自意識だけで話が周ってる。そんな主人公が女形というのがまた皮肉で、そしてみんなしっぺ返し食らう構成。
描き下ろしでは攻めが「一度いい仲になって別れてもこうして話してくれて、うんうん男同士はいいね、空しくないね」と言うのだけど、勿論んなこたーない。「あの子がいい子だっただけ」と受けにやんわり窘められると、失望した様子の攻め。
この描き下ろしで結ばれない二人も一応は救済されちゃうんだけど、その相思相愛をホモソーシャルな関係に結び付けない予防線が張ってあるのが面白い。
いや、けっして作者の意図したことではなく、これは攻めが抱く恋の不条理感を強調した演出。とまれ、“あえてオブラートに”結ばれる余地を描くことで、パートナーシップの幅が広がる印象を受けた。他にもショタ作品でそんな話描いてたけど、BLで明示的なカップルを描かずに許されるのが、この人の稀重なところだと思う。
私にはそのほうが居心地良いみたい。
ああ、私が求めてる物語はそういうものなんだなぁ。
ずっとBLを「自分の物語」として消費してきたけど、私は誰かといても<ひとり>の話を求める傾向があって、ソレを求める限りBLは自分の物語足り得ない部分が残るのだと思う。愛し合う結果が欲しいんじゃない、その過程でもいいから、恋という磁場だからこそ果たされる目的を描いて欲しい。有体に例えてしまえば、求められることで保たれる自己イメージや、自尊心とか。
それは恋愛や人間に対してとても不誠実な欲望だけど、私はあくまで自分を慰めるものが欲しいだけ。これからも誰かを好きになれるとは思えないけれど、やっぱり欲しいのだ。<ソレ>が手に入る磁場が恋愛にしかないのなら。
ある作家が「BLは社会的なことを抜きにして純粋に恋愛だけを描ける」と語っていたけど、どうやら「純粋」であるらしい恋愛を読むことで、副次的に得られるものがあるのは分かったわ。
…ひとにオススメしてるのに何自己発掘に勤しんでるんだろう。。。許されて。
さて、なんとかこの日付のうちにupしたかったから急ピッチで書いちゃったけど、ここらへんで締めるわ。
長くなったけどリクエストしてくれた紫のバラの人、そして読んでくださった方、ありがとうございました!
2010年マイベストBLコミックスcl。
こんばんわ。今年は思うように更新できないにもホドがある一年でしたがハッキリ言っていつの間に10年が過ぎたのかと思いました。せっかく10代目の「10」がついたおめでたい年なのに残念です。でも今年初めてリボコン(4)行ったんですよ。東京まで遠かったけど新幹線恐かったけどニットのワンピ着てオカマ度を上げてサンシャイン60でロックオン仕様に見せかけたしょぼい望遠鏡写メしたり乙女ロード散策して「ふぅんこんなもんかー世の中つくづく普通だなぁ」と思ったりして一人で遊びました。10月10日はもちろん10代目のおめでたい日なので大阪で衛星放送を映画館で見たり、ごっきゅんが「10」にちゃんと目をつけてフィーバーしてて嬉しかったです。さすがは獄寺魂だな、そう思いました。リボアニが終わったのでアンニュイな年でもあります。何も出来なかったや・・・。せっかくの10年なのにね。。。
そんなわけで今回もヤッツケ仕事のベストBLコミックス紹介です。例によって発売月日順の羅列です。
☆ネ タ バ レ★
- 作者: 富士山ひょうた
- 出版社/メーカー: フロンティアワークス
- 発売日: 2010/01/22
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きみにあげる。 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 34)
- 作者: 槇えびし
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: コミック
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借金取りから逃亡中の攻めは成り行きでその店に住み込みさせてもらうのだけど、元ヤクザが経営してるお店は偏屈なオッサン以外客がいない。そこで地元住民の心を開くのは相手に対してストレート(ええ、ゲイなのに「ストレート」笑 )な好意を示す攻め。なんだか朝の連ドラみたいw でも結局そんな上手くいく話でもなかったりする。人間関係って土地に根ざしてると余計大変。
自分に負い目のある受けは自分に対する恐怖も好意も警戒も全ての感情を受け止めるから、余計に。
このお話はどこかそういう人と人との壁みたいなものを受け入れてる。だから逃げることを辞さない。だって人との繋がりって実はかえって人を孤独にさせたり、いいことばかりじゃない複雑なモノだもの。
元ヤクザということで、借金持ちということで、居場所のない彼ら。おたがい「フツウ」じゃない彼ら。嵐の日に逃げたところをたまたま入った茶店で「きみにあげる」と言われた席に座る攻め。「男なのに男の君が好きです。僕だってフツウじゃないって言われてきた。君はそんな僕(堅気)をフツウだと言ってくれた。受け入れてくれた」。フツウの定義は複数の基準ごとに違うから、ゲイであろうと堅気という点で(は)フツウと言われても当たり前の話なんだけど、恐る恐る相手を信じる努力を始めた彼らだからこそ再出発できるんだろう。仲良くね。
- 作者: テラシマ
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2010/02/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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美人歯科医の双子の妹の「試してるんでしょう彼のこと 試してくじけた彼をつまらない男にして見下して終わらせたいのよ」とか。
美人歯科医師の知人の「あの子のことを理解しようとしてくれてる?それはとんだ思い上がりだ 理解が信頼を築くと思ってるようなら勘違い甚だしい」とか。
脇キャラの台詞も効いてくる。
しかし一つ不可解なんだが、美人歯科医師は自分とクリソツな妹で自分に付きまとう男をフェイドアウトさせてたようだが、成功しちゃったら妹さんはどうなるんだろう・・・(−−;妹さん守って生きていくんじゃないのかい。
- 作者: 柊のぞむ
- 出版社/メーカー: 茜新社
- 発売日: 2010/04/16
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鋼鉄のベイビー・リーフ (バーズコミックス リンクスコレクション)
- 作者: スナエハタ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2010/04/24
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半分騙し打ちで二人きりの部屋に連れ込んで、まんまるコロコロな犬と戯れる受けの様をあははうふふって言いながら写メする先輩、、、楽しげだがとっても気持ち悪いw
でもBLによくある、「ノンケなのに好きになってしまった、そんな理屈を超えた感情が恋・・・」みたいなモノローグがきゃーやめちくりー!って思った。
- 作者: 雲田はるこ
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2010/06/20
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表題作以外もすっごい良かった。カマバーで働く受けタンは女の子になりたい。好きな男もいる。ちゃんと女の子の体(って一体何?)になって告白したいな。けど彼はゲイだった・・・。性別移行を勧めつつ、男としての自分を好く彼・・・。
「あたしの性別は、いつだってあたしの邪魔をする」みたいな格好いい台詞一っぺん言ってみてーー!!でも性自認ってそんな愛で割り切れるのかな!?
もういっこの短編も旅モノでやさぐれた話だけど最後は胸がほっこりするお話だった。亡き母の生まれた地を行く男と、恨んでいる父を殺しに行く男。やっぱり旅の終わりには何てことはない新たな人生が待ってる。
- 作者: 日高ショーコ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/06/25
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- 作者: 倫敦巴里子
- 出版社/メーカー: 海王社
- 発売日: 2010/07/09
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あと、前年から続いてる『長生き猫』シリーズが良かった。「あの人たちは君を受け入れてるわけじゃないよ 君を受け入れる自分が好きなだけだ」って台詞がこの方らしくて秀逸。高遠さんの酷いくらいに (ガッシュ文庫)でもそゆ話あったよね。「障害者に優しい自分が好きなだけ、優しくするな、酷くしてほしい」って声に含まれる批判性は大事だと思う。ただ、批判に頷きつつも、そゆ声さえ私たちは悲恋として面白おかしく消費する、そんなジレンマを自覚すべきだよな。その声は悲しみの嘆きではなく、怒りの叫び。告発の怒声。
ところでばあちゃんは自分で名前をつけて呼ぶべきだったと思う。
- 作者: 草間さかえ
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2010/08/25
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カバー裏漫画で、世にも珍しい犬のオカマが出てて面白かった。だけどチンポがなけりゃ女って考えは間違いだと思うよ、草間さん。
イケメン君とさえない君 (IDコミックス GATEAUコミックス)
- 作者: 秀良子
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/08/12
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さえない君の体に乗り移ったイケメン君の亡霊彼女。彼女が乗り移ってる時間の描写が基本的にないせいで、BLに肝心の男同士の気持ちの変化が見えづらい。だからこそ三人の物語って感じがしたのが良かった。
彼女は女として遊園地に行き、イケメン君と手を繋ぐんだけど、周囲には同性カップルに見られる。ここらへんの描写が鋭かった。
「彼女は戻らなかった 悪意のない好奇の目に彼女はどんな現実をみたんだろう」
恋愛において大事なこと、を描いた話じゃなくって、子供の頃からある好きな子の笑顔を見たいとか皆一緒に仲良くしたいねって絆だとか、やんわりと描いた話だと思う。
ところでこのさえない君なにかに似てると思ったけど、げっ歯目だ…。
- 作者: 楢崎壮太
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/09/25
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僕の先輩 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 40)
- 作者: 羽生山へび子
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2010/10/16
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多くは語らん。氏のサイトはこちら。http://urasnakeship.cool.ne.jp/index.htm
さきっちょだけでも (バンブーコミックス 麗人セレクション)
- 作者: トジツキ ハジメ
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2010/10/27
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ネクタイとカマキリ ((ジュネットコミックス チェリーシリーズ))
- 作者: アユヤマネ
- 出版社/メーカー: ジュネット
- 発売日: 2010/11/26
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今回はBLの王道パターンをゆく感じだけど、絵本のようなタッチに漂う生活感に細やかなディティールを感じるアユヤマネ作風は変わらず、春夏秋冬それぞれのオムニバスストーリー。
今年のものを挙げてて思ったんだけど、二人の関係を繋ぎがたくするモノに対して彼らの持ちうる武器というのは、けっきょくそれを度外視できるだけの恋愛感情、より「強い」愛でしかないのだな、ということ。じゃあ、愛のない人間は?
壁と呼ばれるものに阻まれるのが合理で道理な帰結とでも言うんだろうか。
フツウじゃない、だから苦しい。そんなふうに思わせる「普通」なら、捨ててしまえ。普通じゃない部分を許す権利があるのは普通である俺たちだ、そういう人間を数多く見てきた。でもそれは思い上がりだ。自分が普通だから相手が普通じゃなくなる、ということなら、自分は普通ではなくなればいい。それだけのことを私たちは成せないまま、ただ他人事として鑑賞して勝手に同情したり共感したりする。そして普通じゃないものをこそ、普通でないからこそ、『ソレ』であるからこそ価値があるのだと、答える必要がある。
春。
職場の先輩夏木は虫が苦手。部屋にカマキリがいて帰りたくても帰れない自宅。そんなとき、後輩の常田に助けてもらった縁で仲良くなる二人。カマキリにおびえる夏樹に常田は「いつでも呼んで下さい、すっ飛んできますから」と笑う。常田はノンケだが、夏木の告白に胸を熱くさせ、二人は付き合いはじめた。カマキリが恐い、それを男らしくないと笑う人がいるだろう。夏木はゲイでストレートな『家庭』を持つことに無理がある。法事で帰省したところ、夏木は親戚の叔父さん連中につかまるのを恐れて家事の手伝いなどしていたようだが、婦人に「男の人はどうか座っててください」と頼まれたのでは断れない。結婚し子供を作らないことについて「一時は荒れてた弟にさき越されたな、いくら立派な会社に勤めてようと家庭を持てないようじゃ男として・・・」と言われる始末。夏木は言う。「結婚することが子供を作ることがそんなに偉いか。そんなこと猫にだって出来る」。たしかに、何が偉いのだろう。
ただ、妊娠出産するのはある種命がけの行為でリスキーなもの。それを男連中だけの酒の席で偉そうに自分の成果として語ったり、猫にでも出来るのにと悪づくこの環境は、ぐにもつかない。
夏木は思い余って電話口から別れ話を持ちかける。次の日常田は彼を捕まえ話をする。「普通の人生に戻った方が楽に過ごせる」けど、とっくに「手遅れ」。カマキリにおびえる彼の顔に惚れたのだから・・・。「つらくなったらいつでも呼んでくれなくちゃ、そんで存分にその情けない顔を見せてよ」。常田は男らしさから排除された男を、男らしくない部分をもって愛するのだ。その愛の強さが、「普通」の生活を捨てさせる。守るべき家庭がある証拠として結婚指輪を「男の人生」なんて思えるノンケの常田は、どこかで男らしさを損なわない強さがある。それゆえに彼はBL文法においても攻めでありえるんだろう。受け攻めというのは擬似男女関係的だけど、その男性役割によってゲイの夏木が肯定されるというのは、なんとも妙なことだ。
夏。
アルバイト仲間の柳瀬と加古。加古には生まれつき肌の血管が密集して痣が出来ている。普通ではない肌。子供の頃から良い行いをしたら魔法で美しくなる絵本などを見て良い子を振舞う加古に柳瀬は「魔法みたいにはいかないけど、そりゃ最初は驚いたよ、けど加古君のいい所いっぱい知ったりするとほとんど忘れてるんだ」と言うけど、じゃあなぜバイト先の店長には「客の見えるところに出てきちゃ気持ち悪がらせるだろう」などと言われなきゃいけないんだろう。電車でこどもに微笑みかけてもおびえられなきゃいけないんだろう。良い所を知ったから忘れる、というのであれば、加古がコミュニケーション能力のない性格の悪い人間であれば、ことあるごとに「あいつの肌は・・・」と思い出されると言うことだろうか?誉められるような良い人間性なんて。
ただ、柳瀬はこうも言った。「僕には可愛く見える、はじめて会ったとき笑った顔が桃の花みたいで可憐だなぁって」。普通ではないその肌こそを、美しいと、言った。このシーンで笑顔のバックには桃の花が効果演出として描かれてるが、その花模様はまだらで、まるで加古の肌のようだ。モノクロの漫画からも桃色の肌がどんな色か分かる。
秋。
昔の専門同級生、かつての恋人だった悠吾が突然姿を現した。睦はホモとして生きて行けないと悠吾を振っていたのだ。今は彼女もいる。望んだ「普通で平凡な生活」を得てる。「どこにでもいそうな女だ」と悠吾が言うと、「俺には大切な女だ」。すると「だろうよ、『普通の人生』を送るための大事な小道具」と返す。・・・これまで読んだBLでも似た話があったけど、つまりはそういうことなんだと思う。異性愛を普通だと語るとき、それは女を小道具にする展開を要請した。
悠吾が現れきしむ関係。けっきょく彼女とも別れることになる。睦は嘆く。「悠吾のせいだ、俺は普通で平凡で平和に暮らしていたいのに」。だけど悠吾は「平凡に暮らせばいいだろ、俺と一緒に・・・」。しかしそこで普通、とは言わなかった。
冬。
大学生の三好は教授の自宅に家政婦として雇ってもらいに行った。言葉遣いがなってない三好にも厳しい教授だが、じょじょに打ち解けてゆく二人。ある日三好宛の手紙が届く。入院先の医師である男と蒸発した母親からだ。彼は母を赦すことができない。しかし教授もまた赦すことが出来なかった過去がある。彼はゲイであることで父親から勘当された身で、父が病気になっても父が会いたがっても見舞いに行かず、死別した。そうすることで彼は赦さなかった代わりに今度は自分が赦されない罪を背負わされたんだと言う。
「我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく我らの罪をも赦したまえ」
昔三好が母に連れられていた教会で教わった言葉だ。
「あれは誰かを赦すことでその誰かを憎しみ続ける罪から解放されようってことだったのかも」。
罪は、なんだったろう?
普通ではない自分が罪だったのか、子を勘当した親が罪だったのか、拒むことが罪だったのか。あるいは苦しまざるを得ない選択が罪だったのか。分からない。
ただ、唯一罪は自分の中にあるのかもしれない。その罪を裁くのも赦すのも、自分自身でしかないとするなら、誰も他人を赦したり赦さない権利など、ない。
ということなんだろうか?
・・・ところで三好は母と駆け落ちした年上の男のことが好きだったようで、教授も最初からタイプだったらしい。母に好きな男性を取られた三好も、こうして同じく年上の先生をつかまえてしまうのだから、どっちも何も言えそうにないね。
他にも色々紹介しようと思った作品はあるんだけど、もう疲れちゃったからまた今度ね。
じゃ。